式典参加者 8
《sideノーラ・ゴルゴン・ゴードン》
わっちは迷宮都市ゴルゴンを焼いた者を許さないでありんす。
本日、その火をかけたかもしれない者たちが集まっているでありんす。
「リューク、わっちを助けてくれてありがとうでありんす。リュークがいなければ、今のわっちはありゃせん。ホンマに感謝しているでありんす」
二週間も眠ったまま、一度も目を覚さないリューク。
死んでしまったのではないかと不安に思いんすが。
ミリルとシーラスが頑張ってくれているでありんす。
「リュークがわっちのためにヒナタを連れてきてくれたこと、感謝しているでありんす」
わっちの実母の妹である叔母と、その娘であるヒナタは、わっちの血縁者としてリュークが態々連れてきてくれたでありんす。
「ヒナタにはたくさん励ましてもらったでありんす」
可愛い妹ができたようで嬉しかったでありんす。
「それと、わっちにはこの腕輪は必要ないでありんす。これはリュークが持っていて欲しいでありんす。力などなくても必ず解決して見せるでありんす」
わっちは暴食の腕輪を吸収とは逆の反転をつけたままリュークにつけんした。
「これはエネルギーを与えてくれる物だとリュークは言っておりんした。だから、少しでもリュークの力になってくれれば嬉しく思うでありんす」
リュークの左腕に暴食の腕輪をつけて、わっちはリュークにキスをするでありんす。
本当はリュークからしてくれる方が嬉しいでありんす。
「どうか、目を覚まして、わっちにキスをしてほしいでありんす」
「ノーラ」
「わかっているでありんす」
シーラスの声でわっちはリュークが眠る部屋を出たでありんす。
ミリルとルビーがリュークの世話をして、わっちはシーラスと共に裁判場へ向かったでありんす。
迷宮都市ゴルゴンの大広場。
誰もが見物ができるようにそこを選んだでありんす。
わっちは作られた台に上がって会場を見下ろすでありんす。
「これより、第二回迷宮都市ゴルゴン襲撃事件の解決をするため、重要参考人に話を聞いていくでありんす。これは正式な場として、記録を残させてもらうでありんす。記録モニターを設置しているの、そのつもりでいて欲しいでありんす」
わっちの宣言に集まった者たちから意を唱える者はおられんした。
「それでは、改めて事件の整理をしていこうと思うでありんす。解説はチューシン・ドスーベ・ブフ様お願いできるでありんすか?」
「お任せください。全てはあの方のために」
わっちにだけ聞こえる小さな声で、チューシン様が広場の中央へ出たでありんす。
「事件が起きのは、今より二十日前。大図書館完成発表前夜でした。パーティー会場に集まった来賓を襲うように爆発と、主賓であるノーラ・ゴルゴン・ゴードン様が襲撃を受けました」
会場が響めき、騒がしくなりんす。
「襲撃したのは、深淵の預言者と呼ばれたアケガラス。そして、爆弾を仕込んだと言われるヒルカラスの二名です。その襲撃犯の一人であるヒルカラスが聖女ティア様のために行ったと言って、何者かに殺されました」
注目が聖女ティアへと集まりんす。
「そして、犯人の証拠となるアケガラスたちが着ていた衣装が聖女ティア様の泊まられているホテルで見つかりました。そして、その三日後、迷宮都市ゴルゴンは火の海に飲まれました。式典参加のためにいらっしゃっていた深淵を知る魔女シーラス様のおかげで被害は最小限に抑えられました」
ここまでが二週間前までにわかっていたことでありんす。
そして、ここからはこの二週間で起きた出来事でありんす。
「ですが、今回の事件を調査している最中に、エリーナ・シルディー・ボーク・アレシダス様の従者であるアンナ様が、アイリス・ヒュガロ・デスクストス様の従者であるディアスポラ・グフ・アクージ様に誘拐未遂の疑いがかけられています。それは今回の事件を隠蔽するためであると疑いがかかりました」
聖女ティアに続いて、ディアスポラ・グフ・アクージへ注目が集まりんした。
「そして、ディアスポラ・グフ・アクージ様は仕事として依頼を受けられました。それを依頼した者を調査したところ、名が上がってきたのが教皇ジェルミナス・アッカーマン様であるというわけです」
最後の一人として、ジェルミナス・アッカーマンと呼ばれた二十代後半の柔和な顔をした男性に注目が集まる。
メガネをかけて、いかにも人が良さそうな姿に誰もが疑問を浮かべて首を傾げる。
誰が見ても善人、そうとしか見えない男性がおりんした。
「以上の三名を今回の重要参考人として召集させていただきました。
アイリス・ヒュガロ・デスクストス様には、ディアスポラ・グフ・アクージの弁護側として。
エリーナ・シルディー・ボーク・アレシダス様、並びに従者の方々には聖女ティア様の弁護側として。
十二使徒のお一人であるユダ・タコブ様には、教皇ジェルミナス・アッカーマン様の弁護人をしていただきます」
最後の弁護人として名を呼ばれんしたのは、禿頭に法衣を纏った中年の男性でありんした。
「あらましは以上になります」
「ありがとうございんした。それでは法廷を進めていくでありんす」
わっちの声に、会場に集まった迷宮都市ゴルゴンの住民が息を飲む声が響きんした。




