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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

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式典参加者 7

《sideアンナ》


 今回の事件を解決するために、私はエリーナ様と離れて調査を開始しました。


 良くも悪くも、エリーナ様は表舞台に立つ人です。


 良い意味であれば、美しく目立つがためにカリスマ性があります。

 悪い意味であれば、どうしても目立つので隠密には向きません。


 私は元々、エリーナ様の影として生きてまいりました。

 自分の存在を消すのは得意なため、調査はエリーナ様がいない方が楽にできるのです。


 エリーナ様のことは他のメイドに頼み。

 護衛にフリーさんがいるので問題ありません。


「迷宮都市ゴルゴンは美しい街ですね」


 職人の街と言われるだけあり、街のあちこちに職人さんが作った道具はキラキラとした物やゴツゴツしていて、見ていてあきません。


 普段はエリーナ様を一番に考えているので、このように街をゆっくりと歩くことは私にとっては珍しいことです。

 これも全てはリューク様のためになると思えば、気持ちが昂りますね。


「さて、クロマが聖女ティア様については調査をしてくれるでしょう。ですから、私が調査するべき相手はアイリス・ヒュガロ・デスクストス様とディアスポラ・グフ・アクージ様を調べるとしましょうか?」


 私はいつものメイド服を脱ぎ捨てて、民衆の中に紛れ込むように迷宮都市ゴルゴンの人々が着ている服装に合わせました。


 そして、アイリス様たちが泊まられているホテルへと向かいました。


「アイリス様、本日はどうされるのですか?」


 ホテルのロビーでは、アイリス様がお茶を飲みながら、メイドのレイさんと話をされていました。


「何も。調査はディアスに任せていますの。チューシンには教国と連絡をとってもらっていますの。わたくしは何もしませんの」

「それでこそアイリス様です。優雅です」

「当たり前ですの。私は美しく優雅に過ごしますの」


 どうやら、アイリス・ヒュガロ・デスクストス様はご自身では動かないようです。


「それにしてもあの証拠はどこから出てきましたの?」

「わかりません。ですが、ディアス様が部下が持ってきたものだと言われておりましたね」

「そうですの。アクージ家の部下が数名動いておりましたの。わたくしは聞いておりませんの」

「アイリス様に事後報告とは、ディアス様は命知らずですね」

「なんですって?」

「あっいえ、なんでもありません」


 どうやら、ディアスポラ・グフ・アクージ様のご実家から持ってこられたと言うことですね。


 私はその場を離れてディアスポラ・グフ・アクージを探すことにしました。

 ホテルの部屋にいるなら、仕方ありませんが一応周囲を確認して、聞き込みをしている私の背後から。


「おや、あなたはエリーナ嬢のメイドをされている方ではありませんか?」


 そう言って声をかけてきたのは、銀縁メガネに、黒いスーツ。黒い革手袋をしたディアスポラ・グフ・アクージ様でした。


「これはアクージ様、ご機嫌よう」


 私は優雅にスカートの裾を持ち上げて、貴族の令嬢らしく挨拶をする。


「ええ、アンナさんでしたね? どうしてこちらへ?」

「はい。エリーナ様の使いで今回の事件を調査しております」

「それはそれは、エリーナ様は美しく優秀だと評判ですからね。どのような推察をされているのか、興味がありますね」

「私ではエリーナ様の考えまでは読みきれません。私はアイリス様の周辺に違和感がないか調査してきてほしいと言われただけですので」

「アイリス様の? それはまたどうして?」

「さぁ? 強いてあげるとすれば、エリーナ様がアイリス様は聖女になりたくて、ティア様を陥れようとしているのではないかとお考えのようです」

「なるほど、それでアイリス様を」


 私はエリーナ様が発した言葉を伝えることで嘘はついておりません。

 自分自身の考えを言うなど愚の骨頂です。


「ですが、アイリス様はホテルのロビーで、このような路地裏には居られませんよ」

「はい。先ほどまでアイリス様の元へ行っておりました。ですが、護衛を務めるチューシン・ドスーベ・ブフ様、並びにディアスポラ・グフ・アクージ様のお姿が見えなかったので、私と同じく調査をされているのであれば、どのような調査をされているのかと思い探しておりました」


 これも決して嘘はついていない。


 事実、私が探していたのはディアスポラ・グフ・アクージなのだから。


「ふむ。確かにあなたからは嘘の気配がしませんね。私は人の嘘を系によって判別することができるのです。どうやらあなたは本当のことを言っているようだ」


 美しいながらも、リューク様とは違う冷たさを感じるディアスポラ・グフ・アクージの瞳は、まるで機械と話しているような印象を受けます。

 

 そこに暖かさはなく、ギロチンの前に立っているようです。


「ちなみにどのような調査を?」

「それはお教えできません。まずは、アイリス様に報告するのが私の仕事ですので」

「そうですね。独自で調査を続けてみます」

「ええ、ご協力できなくて申し訳ありません」


 形式上の挨拶を終えて、私はそのばを離れようとしました。


 私が背中を向けると。


「ふぅ、あなたは嘘をついていませんが、私には匂いがありました。ですから」


 次の瞬間。


 全身に糸が巻き付いて、私は締め付けられておりました。


 リューク様から与えられる痛みとは全くことなる苦しさに、ディアスポラ・グフ・アクージ様を睨みつける。


「なっ、何をなさるのですか?!」

「あなたは嘘をついていないが、鋭い洞察力をお持ちのようだ。今は出てこられると面倒なので、少し排除させていただきます。もちろん、特等席で素晴らしいショーをお見せしますよ」


 そう言って、私は迷宮都市ゴルゴンから離れた古屋へと連れてこられる。


「すみません。私も仕事の依頼を完遂したいだけなのです。あなたを殺すことは依頼に入っていません。それにあなたを殺してしまうと厄介な人を敵に回してしまうので、私はご遠慮願いたい。申し訳ありませんが、しばらくここで大人しくしておいてください」


 そう言ってディアスポラ・グフ・アクージによって縛られた私は意識を失った。


 次に気づいた時。


 視界の向こうに見える窓には、真っ赤な景色が広がっていた。


「なっ!」


 糸ではなくローブに代わっていたこともあり、私は魔法で切り裂いて手錠を外して古屋を出る。

 そこには迷宮都市全体が火の海に飲まれていた。


「エリーナ様!!!」


 急いで、私は街へと向かった。

 街の周囲には避難した人が集まっていて、そこに。


「エリーナ様! よくぞ、よくぞご無事で」


 エリーナ様に抱きついて、私は力無く膝から崩れ落ちました。


「アンナ! 無事だったのね! 私はフリーが助けてくれたのよ。だけど、街が」

「一体何があったのです?」

「あなたが帰らない間に、またテロ行為が起きたのよ。今度は大規模な通人至上主義教会の信者たちが一斉に家々に火を放ったのよ」

「なんと!」


 何が起きているのか、判明ができないまま。

 街は火の海に飲まれていく。



 

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