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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第八章

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式典参加者 6

《sideエリーナ・シルディー・ボーク・アレシダス》


 第一回の法廷が閉廷して、私はテーブルを叩きました。


「なっ、なんですか? 証拠って!」

「いえ、私も聞いておりませんでした。ですが、台本通りにちゃんと話はできていましたよ」

「アンナ! 私は納得できないと言っているんです。証拠なんて事前の打ち合わせではありませんでした」


 事前に、アイリス陣営からチューシン様がいらっしゃって、ある程度、法廷の流れを打ち合わせしました。

 私の発言やセリフなどもある程度は決まっていて、聖女ティア様を罪人にしないと言うはずでした。


「私はハメられたのですよ!」

「まぁ、そうですね。ですが、所詮はエリーナ様なのでアイリス・ヒュガロ・デスクストス様を信じた時点で敗北ではないでしょうか?」

「アンナ! リュークが事前に打ち合わせしていてくれたのだと思うじゃない!」

「エリーナ様」

「何よ?!」

「リューク様は絶対にそんなことをしません。面倒なので」

「なっ!」


 アンナの発言に私は驚きながらも納得してしまう。

 

 確かにリュークなら面倒だと言って、そんなことはしそうにない。

 だけど、チューシン様が言っていた流れは本当に存在していた。


 あの証拠だけが打ち合わせに無かったことなのだ。


「じゃ、あれはなんなんですか?」

「さぁ、わかりませんが。私にはアイリス様も驚いているように見えました。もしかしたら、検事役を務めたアクージ様が何かしたのかもしれませんね」

「どうしてアクージ家が聖女ティアさんを貶めるのですか? 前回の皇国侵略で多大な成果を得て領地を拡大したのですよ。ここにきて、聖女ティア様を貶める意味がわかりません」


 アンナにお茶を入れてもらって、気持ちを落ち着けようとしますが、全然納得できません。


「では、私たちも捜査をするしかありませんね」

「捜査?」

「はい。それぞれの人たちに話を聞いて状況を知り、本当に証拠がないのか調べてみるのです」

「なるほど、だけど、私たちだけで動いて何がわかるのかしら?」


 今、私の元にはアンナとフリー、数名の騎士たちだけです。

 それに対してパーティーに参加していたのは数百名に及ぶ。

 さらに、すでに街を離れている者もいて、全ての人間に話を聞くこともできない。


「そうですね。まずは、今回の事件に関与している人を絞るのです」

「絞る?」

「はい。私はエリーナ様の従者として多くの方を調査した経験があります」

「確かにそうね。リュークや他の女性たちの調査を今まで頼んできたわ」

「そんな私から教えられることは、中心になる人物に繋がる関係者に必ず犯人がいると言うことです」

「えっ! どう言うことなの?」


 私はアンナの発言に身を乗り出した。


「まず、今回の事件を思い出して見てください。迷宮都市ゴルゴンの領主ノーラ・ゴードン・ゴルゴン様は襲撃を受けて負傷。意識不明の重体です」


 それはリュークから聞いた話ね。

 リュークは、ノーラを目覚めさせるために塔のダンジョンに入っていったわ。


「そして、事件の犯人を捕まえたアイリス・ヒュガロ・デスクストス様」


 リュークから、アイリス様に取り仕切ることを頼んだと言われたわ。

 どうして私ではダメだったのかと言えば、ゴードン家とデスクストス家が親戚同士であり、貴族派に属しているためと説明を受けたわ。


「最後に、犯人たちに首謀者だと言われた聖女ティア様。この三人の近くに犯人がいると考えられます」

「つまりは、三人が主要人物で、三人は犯人ではないけれど、近くに犯人を抱えている恐れがあると言うことかしら?」

「はい。ノーラ様の従者。アイリス様の付き人。聖女様の関係者。いずれかに犯人がいると考えられます」

「それで、リュークはクロマに教会の調査をさせたのね」

「そうです。一番疑われているのは聖女ティア様です。そして、一番得しているのは?」

「アイリス・ヒュガロ・デスクストスかしら?」


 そう考えると、アイリスは聖女ティア様を失脚させて自分が聖女の地位に使うとしていると言うことかしら?


「アンナ! 凄いわ。私でもだんだん犯人らしき人物が見えてきたわ」

「はい。それでは同時に犯人らしき人物の名前を言いましょうか?

「いいわ! 自信があるもの!」

「それでは「せ〜の」」


 「アイリス・ヒュガロ・デスクストス」

 「ディアスポラ・グフ・アクージ」


 私たちは同時に全く違う人物の名前を出しました。


「どうしてよ! 得をしているのはアイリスでしょ?!」

「ハァ〜、エリーナ様。アイリス様は得をしておりません」

「なぜよ! 王都で聖女と言われて、いい気になっていたじゃない。それが本物の聖女ティアが犯人として失脚すれば、聖女アイリスが聖女として任命されるのよ! 得しているわ!」


 私の言葉にアンナが物凄くバカにしたような顔をする。


「良いですか? 聖女ティア様の力は唯一無二です。それを受け継ぐことはできません。そして、アイリス様は聖女であることを疎ましく思われています。疎ましく思っている地位に執着はありません。それにアイリス様であればもっと華やかで大胆なことをしでかすと思います」

「なるほどね。それでアクージ? でもどうしてアクージなのかしら?」


 アンナは暖かな紅茶を入れ直してくれました。


「簡単なことです。本日の証拠を提示してきたからです。他の人たちは知らない証拠をアクージ検事は発表したからです。あのタイミングで用意できるのは、本当に調査した者か、犯人側で聖女ティアを陥れるために動いた者にしかできません」

「あっ!」


 私にもやっと辻褄が合わさったように感じる。


「アクージの目的は?」

「混乱だと思います。どのような思いいれかわかりません。それを調査しなければいけないのです」


 アンナの言葉に頷き返す。

 

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