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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第六章

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あの人は今

《sideココロ》


 夢を見ました。


 怖い人たちがたくさんやってきて悪いことをしていく。

 ココロは、悪い人たちに飲み込まれてしまう。

 もうダメ! そう思った時に一筋の光が差し込むのです。

 

 悪い人たちが作り出した闇を祓う巨大な光は暖かくて、ココロは誰かもわからない背中に守られて安心を手に入れました。


 それは今まで私を縛り付けていた鎖を解き放って、心まで解放してくれるのです。光はそのまま道となり、新たな場所へ導いてくれるのです。


 でも、光は私が捕まえようとするとスッと消えていなくなってしまいました。


「あっ!」

「目覚められましたか?」


 暖かな光は無くなって、側にいたカスミと視線が合いました。


「カスミ? どれくらい経ったの?」

「ユズキと三日三晩お運びしました」


 私は占いを行って体力を消耗して、二人に身を委ねた。


「そう、ならもうすぐね」


 占いに寄れば、私の目覚めと共に使者がやってきます。

 

 この場にはヤマトやメイ姉様はいない。

 私たちは自分たちの意思で皇国を離れました。

 皇国という鎖から解き放たれる方法を、死という形で旦那様が教えてくれました。


 占いがあったからこそ、カスミとユズキを選ぶことができた。

 

 ヤマトはダメ。こちらの話を聞く余裕がなくなっていたから。

 メイお姉様もダメ。

 今回のことを考えられる頭も、旦那様を思える心もない。

 オボロには申し訳ないけど、オボロはハンゾウの奥さん。

 連れていくことはできない。


「そこにいる二人」


 声をかけられて、ココロは身を起こした。

 使者が来た。


「お前たちのツレが助けを求めてきた。亡命をしたい言うのは本当か?」

「はい! 本当です」


 カスミが兵士に返答をすれば、兵士たちの間が開いて一人騎士が前に出る。


「ついて来て頂こう」


 声を聞いて、ココロは占いが当たったことに笑みを作る。


「わかりました。オリガ・ヒレン・ベルーガ辺境伯様」

「ほう、兜によって顔は見えないはずだが、わかるのですか? ココロ・キヨイ様」


 お互いに名前を呼び合う。

 思惑は一致していると言うことだ。


「ココロたちを保護していただけますか?」

「もちろんです。ですが、皇国の姫巫女であるあなたには聞きたいことが幾つがあるので、協力してもらえるでしょうか?」

「交換条件をのみます」

「よろしい。では、参りましょうか? マイド・モースキー殿。ユズキ殿は保護させていただいているわ」

「感謝します」


 ココロは、旦那様の側にいたい。

 そのためには国を捨てる必要があるなら、国など捨ててみせる。

 家族は、大事。

 だけど、旦那様の方が大事。


 私たち四人はオリガ・ヒレン・ベルーガ辺境伯様に保護されて、折りを見てカリビアン領へ連れて行ってもらえることになった。

 そこにはマイド・モースキーの娘であり、旦那様の妾であるアカリ嬢がいるそうだ。


 占いでもどこに誰がいるのか全てを当てることはできない。


 だけど、時期を読むことはできる。


 私はベルーガ辺境伯領で過ごす日々の間に様々な情勢の変化を知った。

 旦那様の葬儀が行われ。

 王国のデスクストス公爵様が挙兵して、皇国と戦争が始まった。


 そのきっかけを作ったのは、旦那様とココロ。


「もうすぐこの領はお祭りが始まるのよ」


 一人で夜空を見ながら考え事をしていると、オリガ様に話しかけられた。


「……オリガ様」


 あの日、旦那様と一緒に見た月を思い出してしまう。

 森のダンジョンは穏やかで、二人きりの世界は、静かで私にとって幸せな時間。


「何を考えていたのかしら?」

「星を詠んでおりました」

「星を?」

「はい。星は時の瞬きを教えてくれます。時期を測っておりました」


 旦那様といつ会えるだろうか?

 あの穏やかな時間を、旦那様の隣にいたい。


「何が見えたのかしら?」

「巨大な星々の光が集結しようとしています。そして、墜落する巨大な星が見えます」

「それは何を知らせているのかしら?」

「もうすぐ、この地で争いが起きます。それは祭りに乗じて悪意が混じり合う」

「なるほど。これが姫巫女殿の力ということですね」


 私は体から力が抜ける感覚がある。

 先を詠むような占いをすると力が奪われる。

 

 足の力が抜けて、オリガ様に抱き止められる。


「まだ、お疲れのご様子ですね」

「申し訳ありません」

「いえ、まだ体の調子が戻られていないようですから、お休みください」

「はい」


 昔から、私は体が弱かった。

 メイ姉様のように体を鍛えて戦うことはできない。

 占いの力を使うために、魔力を使うこともできない。


 占い以外に力のない私が旦那様の元へ行って、役に立てるのか不安ではある。

 だけど、あの人は私の運命の人であり、あの人の側にいることが幸せだと知ってしまった。

 

「ねぇ、ココロちゃん」

「はい?」

「あなたはリュークを好きなのかしら?」


 オリガ様の質問は私にとって愚問でしかない。


「好き。大好きです」

「ふふ、リュークは幸せ者ね。こんなにも可愛い子に好きになってもらって」

「わからない。旦那様はいっぱい愛されているから」

「そうなのね。罪な男ね」


 オリガ様は旦那様の話をすると嬉しそうに笑ってくれる。

 旦那様とは違うけど、オリガ様の雰囲気も好き。

 穏やかで、包み込むような優しを含んでいる。


 できれば、彼女も一緒に過ごせたなら幸せなのに私は部屋に戻ってカスミに介抱されて眠りについた。

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