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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第六章

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深海ダンジョン調査隊 1

 常夏のカリビアン領内は、海に面していて、浜風が街中に吹いている。


 海辺に近い家々は、トロピカルな気候に適したカリビアン・スタイルの家が立ち並ぶ。


 広い屋根と高い天井、風通しの良い開口部を持ち、内外の境界線が曖昧なオープンな空間を作り出している。


 また、カリビアン・スタイルの家は、現地産の素材を使って建てられることが多く、木材や竹、花崗岩、ココナッツの葉などが使われている家が見える。


 他にもアレシダス・スタイルやゴルゴン・スタイルの家が多く見られ、他領の家々が混ざり合って街を作っている。


 飲食店街はカリンの発案で王国人全体が馴染みのあるアレシダス・スタイル。

 所謂、王都でよく見かける平民の家々が立ち並ぶ。


 ゴルゴン・スタイルはゴルゴン地域からきたドワーフたち職人が持ち込んだスタイルで、レンガやコンクリートの壁、広いバルコニーやデッキ、大きな窓が特徴的で、内装は広々とした仕事部屋や大衆食堂のようなダイニングルームが中心となっている。


 皇国テイストはアカリの研究所付近に見られ、皇国の文化や建築スタイルが取り入れられたキヨイ・スタイルの家もいくつか存在する。


 ボクから見れば日本の伝統的な建築様式である和風の家が立っているのは、なんだか嬉しい。


 以上のように、リューの街は、多種多様な種族による文化と、気候に合わせた様々な建築スタイルが混ざり合った、独自の魅力を持った街になりつつある。


 だが、多種多様な種族たちも、一度仕事を与えれば、己が得意な方法で連携を取り合って素晴らしい力を発揮する。


 今回は深海ダンジョンを攻略するために、各部門に開発を頼んでいた。


 海の中を調査するために必要な物だ。

 

 いくらバルニャンが優秀だと言っても、海の中では息ができない。


 ボクが一人で動くにしても、バルニャンにバルーンのようになってもらい、深海へ突入して、息が保つのか? バルニャンを保持する魔力を深海でも維持できるのか? わからないことが多すぎる。


 そのため深海ダンジョンのことを知ることから始めなければならなかった。


 戦とは、戦う前から勝利を確信していなければやってはいけないとボクは思っている。

 負ける確率が高い状態では挑むことはできない。


 深海ダンジョンに関しては、ダンジョンマスターにならなければ知らなかった。

 そもそもカリビアン領にダンジョンがあることも知られていない。


 海の魔物は草原に現れる魔物と同じく、どこからともなく生まれて、出現しているのだと思っていた。


 それが深海ダンジョンから魔物の行軍として、出現しているなら、深海ダンジョンの大きさは少なくとも迷いの森よりも大きい可能性がある。


「ダーリン、言われとったアイテムやで、めっちゃ苦労してんからね」


 アカリには、今回電気の開発から行ってもらった。


 それは以前から、アカリが魔法ではできないことについて研究をしていたこともあり、ボクが提案した電気の理論に興味を持ったからだ。


 そのため、数年前から太陽光発電システム、風力発電システムを開発してもらっていた。


 まだまだ家庭用で使えるほど、発電量はないが、多少の蓄電はできるようになり、深海ダンジョン攻略の鍵となるアイテムを開発した。


「さすがはアカリだな。このアイテムは十分に使えそうだ」

「へへ、後でご褒美いっぱい頂戴ね」


 アカリが寝ると言って、その場を離れていく。


「魔法陣の調査はこちらです。空気という魔法は存在しなかったので、試行錯誤することになりました」


 リベラには魔法陣の調査を依頼していた。


 学生の時はシロップにしてもらっていた仕事だが、リベラの方が適任だと思ってお願いした。


 また、リベラにはメルロと協力して酸素ボンベ開発を行ってもらっていた。


 酸素ボンベはボクも原理がわからない。


 何より、酸素ボンベは下手な扱いをすれば大爆発を起こす危険なものだ。


 この辺り一帯を吹き飛ばすほどの威力の兵器を作りたいわけじゃない。

 そこで、空気の魔法陣、もしくは酸素の魔法陣がないのかリベラに調べてもらった。


 また、メルロにはボンベと言う形で、深海でも潰れない材質の筒と、金属の蓋を開発してもらった。

 量はないが、酸素を貯めるボンベは、ダンジョンで作って見せることができた。


「水圧に耐えられる体と病気の情報もしっかりと調査が済んでいます」


 ミリルには潜水病について知らせて、研究を行ってもらっていた。


 カリビアンで漁と言えば、もっぱら船で魚を取るか、魚の魔物との戦いを意味する。


 潜る習慣のない王国の民には馴染みがない言葉だったようで、ミリルは新しい実験が楽しそうだ。


 他にもアカリには、水の中で行動するための潜水服を作ってもらい。


 リベラは父であるグリコと連絡をとって、水の中で息をする方法を調べてくれて。


 ルビー一家が、それぞれの素材集めに奔走してくれたようだ。


 彼女たちがボクのしたいことのために動いてくれたおかげで、随分と楽になった。


「何かあればお願いするね」


 ボクは彼女たちに見送られて、バルに海の中に入れるようにバルーン化してもらって、潜水服を着て突入する。


 ボクはボクで、ここ最近はリンシャンと遊びながらも、水に潜れるのか、バルニャンと何度も実験を繰り返している。


 深海ダンジョンと言われるほどの深い海の底にあるダンジョンは、ダンジョンマスターになったおかげで場所の特定はできている。


 あとは深海のどれくらいの深さなのか、そしてどんな魔物が出て、どのような戦いになるのか調べなければならない。


 だが、他の者に任せて死なれても目覚めが悪いので、ボクが行くことが一番生存率が高い。


「ありがとう。バルニャン。今日こそ、深海1000メートルに行こう」


 最初は三百メートルほどに潜るのがやっとだった。


 海の中に入ると呼吸法がうまくできない。


 自分の内包する魔力だけで、バルニャンを維持しなければならないため、長くは潜っていられない。


 それに潜ることだけに集中していると、海の魔物に襲われることになる。


 とんでもなく厄介な相手に、ボクは楽しさと大変さで海に潜る以外はだらだらして過ごしている。


「ふぅ、やっと深海500メートルだ」


 底はどこまで潜っても見えてはこない。魔力吸収もできない。これはかなり厄介な相手になりそうだ。


「ふぅ、750メートル達成だ。今日は戻ろう」


 750メートルまでは潜れたが、深海ダンジョンは全く見えなかった。

 

 ただ、カリビアン領のリューが一番近くであることは間違いない。


「挑戦を続けよう」


 ボクは疲労と上手く進まない調査に、焦りを感じていた。

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