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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第六章

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逃亡

《sideヤマト》


 酷い疲れと倦怠感が残る。

 リューク・ヒュガロ・デスクストスの首を刎ねた感触は、この手に残っている。


 学園剣帝杯でメイ皇女が戦っている最中に行われた。

 拙者は、皇国の命を受け、討てる要人を探し始末する役目を担っていた。

 それは、メイ皇女やココロ皇女も理解しており、我々が知る人物で、今後皇国の脅威となり得た人物。


 それがリュークだった。


 それは、ココロ皇女の占いでも、拙者の神刀でもわかっていたことだ。


 だが、なんだ? やつを切った後から我を襲う倦怠感は?


 オボロ、ユヅキには伝えていたこともあり、皇国からの密偵として送り込まれたモースキー・マイドの手引きで王国を脱出することに成功した。


「すんませんな。こういう雑な方法になってしもうて」


 荒地を急ぎ馬車を走らせたことで、皇国の皇女が乗っている馬車とは思えないほど雑な馬車の操作をしている。


「構いません。ヤマト、本当にリュークを殺したのですね?」


 メイ皇女は、学園剣帝杯の決勝戦を終えたばかりで、疲労した顔をされていた。

 カスミは拙者を睨み、メイ皇女は信じられないという顔をしている。


 ただ、ココロ皇女だけは取り乱すかと思ったが、意外にも冷静な様子を見せていた。


「この手にリュークの首を飛ばした感触が残っております。何よりも、殺した後にリュークの胴体と頭が離れていたのを見ました。生き物で体と頭部が離れて生きていられる者はおりますまい」

「そう、ならば、我々の任務は達成できたということですね」

「はっ!」


 メイ皇女はまだ納得していないようだったが、それ以上話を聞いてくることはなかった。


 我々は辺境伯領を通り皇国へ帰還する。


 しかし、途中でバイオレット騎士団に見つかってしまい交戦することになった。途中でモースキー・マイドが囮になり散り散りで逃げた。


 メイ皇女と共に皇国に帰り着いた際。


 拙者の横にはメイ皇女とオボロだけが残っていた。


「ココロは?ココロはどこです?」

「途中でカスミとユヅキと共に逃げておりました」

「そう、カスミがついているのであれば、大丈夫ですね」


 なんとか、祖国の地を踏めたことに安堵して、首都キヨイに帰りつくと拙者は意識を失うように倒れた。

 それから三日三晩熱を出して、倦怠感と疲労で苦しんだ。


 目が覚めた時、議会へと呼び出されることになる。


 皇王陛下が御簾ミスの向こうでお座りになり、左右の上座にも五大老の方々が座る。


 方々に向き合うように中央の下座に膝を突き、頭を下げる拙者とメイ皇女。


 尋問官を務められるハク皇太子様が姿を表した。


「まずは、無事な帰還大義であった」

「「はっ!」」

「そして、報告はメイより受けているが、もう一度確認と、ヤマトの回復に伴って聞いておきたい事がある」

「何なりとお聞きくださいませ」

「よろしい。それではまず、留学に伴い王国の戦力調査並びに、要人で皇国の脅威になり得ると判断した者を可能であれば殺すという対象として、リューク・ヒュガロ・デスクストスを殺した事に相違はないか?」

「ありません」


 すでにメイ皇女によって報告がなされているので、反論することもない。


「……そうか。リューク・ヒュガロ・デスクストスについては追々調査をして、対象となり得たのか調べることになる」

「はっ!」


 拙者の判断に間違いはない。

 最も力があり、皇国の脅威になり得たことは、神刀、それにココロ皇女が証人になってくれるはずだ。


「続いて、ココロの死についてだ」

「はっ?」

「うん?まだ聞いてはおらぬか? ココロが死んだ。貴殿らとの逃走の最中、カスミと共にバイオレット騎士団によって殺された」

「なっ! なんですと! そんなはずは、騎士団はモースキー・マイドが殿を務めて」

「モースキー・マイドの死も確認された」

「なっ!」


 続く訃報に拙者は言葉を失うことになる。


「貴殿らの失態は理解できただろう。生かすべき者を殺され、要人かもわからぬ子供を手にかけた」

「それは! リューク・ヒュガロ・デスクストスは皇国の脅威になり得ます」

「そうだったとしよう。だが、今回のことで王国貴族であるデスクストス家、《《あの》》魔の家から宣戦布告がなされた」


 拙者は間違ったことはしていないはずだ。


「さらに、これまで王国でも友好的な関係を築いてきた辺境伯より、絶縁の書状が届いた。リューク・ヒュガロ・デスクストスの母は辺境伯家の血縁者だった」


 脅威にはなり得る。

 だが、あまりにもリューク・ヒュガロ・デスクストスという人物が王国の主要な要人であることがわかってくる。


「さて、ヤマトよ。貴殿は神刀に選ばれた者だ。もしも、それがなければ死罪として王国へ首を届けたほどの失態を犯したことは理解できただろうか?」


 ハク皇太子から、冷たい視線を向けられる。


「……はっ」


 なんとか、言葉を発するのがやっとだった。


「貴殿の処遇は、ゴセイ殿に預けることになった」

「なっ!またれよ。拙者は侍で」

「貴殿に選択肢があるとでも思っているのか? 今すぐ神刀を取り上げて死罪にしても良いのだぞ?」


 ゴセイ家は忍びを生業にする一族で、侍とは管轄が別になる。


「……謹んで御役目お受けいたします」

「よろしい。では下がるがいい。ここからメイ皇女の裁判だ」


 血の気が引いていくのを感じる。

 座敷を出た拙者は、信じられない思いで廊下を歩いていた。


 前方から侍大将を務めるジュウベイと相対する。


「おう、ヤマト。話は聞いたぞ。とんだ失態だったな。近衛隊はコジロウが継ぐそうだ。まぁせいぜい頑張ることだ。ガハハハ」


 四人の侍大将の一人だった拙者は、此度の件で近衛隊を外されることが決まっている。

 この先の行く末はわからぬが、国に使い潰されることは目に見えている。


 いっそ脱藩を……


「そうだ。今後はハットリがお前を指導を兼ねて、見張るそうだ。逃げるなど考えぬことだ」


 ハットリはゴセイ家の次期当主であり、忍びのトップに与えられる名でもある。

 それは拙者が逃げることが絶対に許されないことを意味していた。



どうも作者のイコです。


七章開始ではありますが、まずはヤマトとダン視点を挟んでから、リューク視点に向かいます。

ヤマト視点六章からの流れになります。


どうぞ、楽しめるように頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします(๑>◡<๑)

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