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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第一章 
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リベラ・グリコ

《Sideリベラ・グリコ》



 私の名前はリベラ・グリコと申します。


 父は、魔法省属性管理委員会管理局局長を勤めるマルサ・グリコ男爵です。

 魔法省は王国に住まう者達が使う魔法を管理する機関です。

 そこに勤める父はエリート職員です。私の自慢です。

 父は幼い頃から魔法について様々な知識を与えてくれました。


 魔法には無限の可能性があり、無属性魔法と言ってバカにしてはいけないと耳にタコができるほど教えてもらいました。

 でも、それが嫌なことではなくて、私は魔法が大好きになりした。


 属性魔法は強力な魔法です。

 使う人によって、悪にも正義にもなるのだと父は私に言いました。

 それは確かに個人に与えられたギフトなのでしょう。

 ですが、魔法は誰もが使えるものであってほしい。

 魔法を本当に愛している者ならば、無属性魔法にこそ可能性を見出すことが出来るのだと父は言いました。


 私が11歳のとき、父は天才魔法少年と出会いました。


 良き教師だった父は天才少年に教えをこう生徒になって、楽しそうな顔をするようになりました。

 天才少年から得たインスピレーションを、私へ語り伝えてくれるのですが、天才少年の話は私の心も震わせました。


 天才少年は、他の人が思いつかない方法で魔力を利用して様々な変化を生み出していくのです。

 彼の話を聞く度に無属性魔法の可能性が広がり、父と二人では知り得なかった知識を知ることが出来ました。


 いつの間にか、私の中で彼は魔法の申し子、もしくは怪物と認識するようになりました。


 無属性魔法への理解力。

 属性魔法は父からは秘匿されて聞くことは出来ませんが、属性魔法への応用力、無属性であれ、属性魔法であれ、魔法への無限の創造力と発想力。


 父から聞く天才少年は、天才と言うだけでは足りないほど魔法の深淵を理解している怪物に思えました。


 だからこそ、もっと私も彼のことが知りたい。

 そう思ってアレシダス王立学園で、彼の従者として勤めることに志願しました。


 公爵家で第二子息の従者を募集しているのを見つけたとき、心臓が掴まれた気がして飛びつきました。


 どんな人なのだろうか?父からはとても美しい少年で、性格はめんどくさがりだと聞いています。


 魔法を極めているのに、美しさや生活環境まで整える知識まで持っていて、美容や食事も気にしているのに、めんどうくさがり?だそうです。


 美容って凄くめんどうくさいんです。

 魔法の研究だけに全ての時間を使えたらいいのに、食事や生活環境まで考えている?凄くめんどうなことをしている人だと思いました。


 天才少年の発明の一つに父に飲ませていただいたハーブティーがあります。

 スッキリとしていて飲みやすく、飲んだ後は頭がクリアになるような気がします。

 何より身体にも良いそうです。

 彼からの贈り物で、今ではうちの当たり前の飲み物になりました。


 父が彼について説明するとき……


 髪は肩にかかるほど長く、その髪は光を反射するほど美しい。

 肌は白く光を反射する透明度があり、少しばかりつり目な顔ではあるが、笑った顔は陽だまりのように暖かな雰囲気を持つという。


 えっ?そんな人いるの?


 私が思った感想は父の妄想の中に存在する人?と思ったほどです。


 寮へ向かう途中、風に吹かれる彼を見つけました。


 父が言ったことが本当であり、私は彼の姿に目を奪われました。


 美しい髪は春の風に靡いて輝きを増して、美しい肌は日光を反射する。

 黙って歩く顔は確かにつり目ではあるが、優しそうで柔らかな雰囲気が彼の周りに存在していました。


「リューク様ですか?」


 ずっと会いたかった彼が目の前にいる。


 想像よりも美しくて、想像よりもカッコイイ。


「君は?」

「ふふ、すぐに分かりました。父の言うとおりの人でしたね」

「父?」

「申し遅れました。私は魔法省属性管理委員会管理局局長を勤めるマルサ・グリコ男爵が娘。リベラ・グリコと申します」


 貴族社会では、階級が上の者から声をかけるのが礼儀となります。

 ここが学園でなければ話しかけることなど出来ない高貴な方。


 緊張しながら話しかけた私が名乗ると、リューク様の顔が笑顔へと変わりました。


「あ~、マルさんの娘さんか」


 クシャっと笑う陽だまりのような笑顔に胸が締め付けられました。


「ふふ。父をマルさんと呼ぶのはリューク様だけですよ」

「そう?マルさんの娘だから、リべさん?」

「いえ、さんは不要です。どうかリベラとお呼びください」


 父をこんなにも親しそうに呼ぶ人に初めて会いました。

 魔法省は、研究者が多く。

 馴れ合いを嫌う人が多いそうなので、友人と呼べる人は少ないと父が言っていました。


 会話に集中していなければ、笑顔を見た後から私の胸はドキドキと痛いほどです。


「リベラは魔法が好き?」


 いきなりリューク様から私が大好きな魔法について質問されました。


「大好きです!将来は魔法省に務めたいと思っています!」


 嬉しい。私が好きなことを好きだとハッキリ言えることが……女が魔法省なんてとバカする人もいます。


 だけどリューク様は……


「そっか。リベラは真面目そうだし絶対なれるよ」

「はい!でも、学園にいる間はリューク様の従者として、お世話をさせていただきます」


 なれると言ってくれた。

 それだけで私はこの方と居たいと思えた。


「ボクのことはそれほど気にしなくてもいいよ。自分のことは自分で出来るから」

「いえ!私がお世話をしたいんです」

「……そう?」

「はい!私は知りたいんです!リューク様のことが!リューク様の作る魔法を見たいです!」


 彼は無属性魔法を使ってオリジナル魔法を作り出せると父が言っていました。

 私はそれが見たい。知りたい。学びたい。


「まぁそれは追々ね。それよりも寮の登録を済ませようか」

「それは全て終わっております。リューク様の手を煩わせるわけにはいきません!!!」


 一秒でも彼の時間を無駄にしてはいけない。

 父から、「リューク様は凄くめんどくさがりだから世話をしてあげると喜ぶよ」と聞いていたので全力でお世話させていただきます。


「うん。わかったよ。じゃあ、魔法の話でもしながら入学式が始まるまでの時間を過ごそうか?」

「お願いします!あっお茶を入れますね!」


 入学式が始まるまで、私はリューク様の思考を十分に堪能することが出来ました。

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