表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第一章 
18/380

魔法狂い

『アレシダス王立学園』


 王国史上最も古い歴史と格式を重んじる学園として知られていたが、魔法の発展により、近年は平民からも優秀な人材を見出す人材発掘に助力しだしたことで、広い門徒を募集するようになった。


 学問や身体能力で優れた者ならば、どんな出自であろうと王国に貢献することを誓うものであるならば受け入れるようになり。


 それは王国の発展を願うことで、マーシャル領のように未だに魔物の被害が絶えない王国領内の武力増強にも役だってもらうためでもある。


『アレシダス王立学園』こそが、大人向け恋愛戦略シュミレーションゲームの開始場所であり、いよいよ悪役貴族としての舞台が始まろうとしていた。


 ♢


 アレシダス王立学園の制服のデザインはブレザーだ。

 魔法式が組み込まれていて防具としての機能も備わっている優れ物だ。


 ボクは鏡の前に立って自分自身を見つめる。


 15歳になったことで、身長180㌢を超えて、顔は小さく肌は透き通るように白い。

 手足が長いのでスラッとしたモデル体型になり、髪は肩まで伸びてユルふわサラサラヘヤーが輝きを放っている。


 どこからどう見てもキモデブガマガエルではない!


 自分で言うのもなんだが…


「美しい」


 これほど完璧な見た目の男性はいないだろう。


「リューク様、忘れ物はないですか?」


 シロップは歳を重ねるごとにボクの世話をすることに使命感を感じているようだ。

 少しばかり口うるさくはあるが、怠惰なボクとは相性がいい。何よりシロップが世話を焼いてくれるのは嬉しい。


 アレシダス王立学園は全寮制なので、しばしの別れを体験しなければならない。


「ないよ。全部シロップが用意してくれたからね」

「もう、本当にリューク様はマイペースなんですから……私は寮に入れません。本当に大丈夫なのでしょうか?」

「本当は来てほしいと思っているけど、こればかりは学園のルールだからね」


 貴族は自分のことが自分で出来ない者もいるので、学園側も従者を同行させることは受け入れている。

 しかし、学園側のルールとして通う者の従者は、主人と前後二歳差までとされているのだ。


 そのため有力な貴族は専属のメイドや執事を自分の子につけているけれど。

 ボクにはシロップ以外のメイドはいないので、学校にも一人で行かなければならない。


 公爵家の権力を使えば、強引にシロップを連れて行くことが出来たかもしれない。

 だけど、獣人であるシロップは、学園で活動するには色々と問題がある。

 シロップを連れて行かないのは、シロップのためでもある。


 本来は貴族と言っても従者を連れて行く義務はないのだ。ただ、高位貴族である公爵家の子息に従者がいないというわけにはいかないらしい。

 メンツというモノだ。

 どうするのだろうかと思っていると、父から従者に関しては志願者がいた。と言う報告を受けた。


「ですが、どんな方がリューク様のお世話をするのか専属メイドの私には気になって仕方ありません」

「はいはい。シロップも知っているでしょ。ボクはほとんどお世話がいらないから」

「それはそうですが…… 私がリューク様のお世話をしたいんです!」


 随分シロップには好かれたものだ。

 家族から見放されているボクをよくぞここまで愛してくれた。


 何から何まで頭が上がらないよ。


「ありがとう、シロップ。君には感謝しても仕切れないよ」


 そう言ってシロップを抱きしめた。


「リューク様!!!」


 シロップの尻尾がピンと伸びて驚いている。


「ボクを信じて待っていて」

「信じてお待ちしております。ですが……寂しいのです」

「ありがとう。ボクのいない間、家のことは頼むね」

「かしこまりました……お帰りを心からお待ちしております」


 入学式という事で、本日は公爵家の家紋入りの馬車に専属御者の運転で登校する。


 目の前に座るシロップは、本当の姉よりも姉であり、母であった。

 ボクのことを愛してくれたシロップを大切にしたい。


「うん。学園を卒業したら、カリンと結婚だからね。そのときも着いてきてね」

「もちろんです!えっ?いいんですか?!」


 結婚したらメイドの仕事は終わりにするつもりだったのかもしれない。

 ついてきて欲しいと伝えるとシッポ振って喜んでくれる。


「うん。カリンが許してくれるかわからないけど、よかったらボクの子を産んでよ」

「えっ!!!」

「ふふ。あっ着いたみたいだね。行ってきます」


 ボクは馬車にシロップを残して学園の門を通る。


「行ってらっしゃいませ!!!」


 シロップが馬車から降りて深々と頭を下げて見送ってくれる。


 ボクは振り返って手を振った。

 シロップと会えない日々は寂しいけれど。

 一年が終われば一度家に帰ることが出来るので、それまでの辛抱だ。


 入学式前は、寮へ入寮申請を済ませなければならない。

 その前に従者をしてくれる人と会う約束をしている。


「リューク様ですか?」


 待ち合わせ場所に行く前に貴族寮へ行く道で声を掛けられた。

 女性の声で振り返ると、メガネをかけたオカッパ頭の女の子が立っていた。


「君は?」

「ふふ、すぐに分かりました。父の言うとおりの人でしたね」

「父?」

「申し遅れました。私は魔法省属性管理委員会管理局局長を勤めるマルサ・グリコ男爵が娘、リベラ・グリコと申します」


 長ったらしい役職を名乗ったリベラに、ボクは鑑定魔法を使ってくれたマルさんを思い出す。

 マルさんとは今でも手紙のやりとりをしている。

 アドバイスだけだが、ボクにとっての魔法の師だと思っているのだ。


「あ~、マルさんの娘さんか」

「ふふ、父をマルさんと呼ぶのはリューク様だけですよ」

「そう?マルさんの娘だから、リべさん?」

「いえ、さんは不要です。どうかリベラとお呼びください」


 真面目そうな雰囲気をしているリベラは委員長タイプと言った感じだ。


 確か主人公の攻略対象だったはずだ。


 主人公は、マーシャル公爵家のお抱え名誉騎士を父に持つ少年で、亡き父の志を胸に学園で勉強して王国騎士を目指す。


 血筋こそ平民だが、属性魔法を所持していて、子供の頃から魔物と戦っているので戦闘が得意だ。


 ただ、そこはエロゲーの世界。


 他の女性とのラブロマンスを選ぶことで、立身出世パートのシナリオが変わっていくというわけだ。


 特待生として入ってくる孤児。

 商家の娘。

 魔法省の父を持つ魔女っ子。

 冒険者の両親を持つ獣人。

 教師として勤めている精霊族。

 公爵令嬢。

 第一王女。


 七人の女性以外にも隠しヒロインが用意されていて、やりこみ要素が満載されている。


「リベラは魔法が好き?」


 ふと魔法省の娘であるリベラの好みを思い出して問いかけてみる。


「大好きです!将来は魔法省に務めたいと思っています!」


 確か、魔法省の娘は魔法が大好きで魔法力を高めることで仲良くなれるはずだ。

 魔法技術をある程度高めて出会い、仲良くなっていくと三年生のときに「私と魔法を極めましょう」と言って告白される。


「そっか。リベラは真面目そうだし絶対なれるよ」

「はい!でも、学園にいる間はリューク様の従者として、お世話をさせていただきます」

「ボクのことはそれほど気にしなくてもいいよ。自分のことは自分で出来るから」

「いえ!私がお世話をしたいんです」


 シロップみたいなことを言われて一瞬驚いてしまう。


「……そう?」

「はい。それに知りたいんです!リューク様のことが!リューク様の作る魔法を見たいです!」


 あ~そっちか……この子は魔法狂いという設定だった。

 魔法のこととなると見境がなくて、色々なトラブルを引き起こすのを主人公が助けることで仲を深めていくのだ。


「まぁそれは追々ね。それよりも寮の登録を済ませようか」

「それは全て終わっております。リューク様の手を煩わせるわけにはいきません!!!」


 物凄くやる気があって仕事が早い。

 どうしてここまで好感度が高いのか分からないけど、どうやらマルさんからかなり言われてきているんだろうな。


「うん。わかったよ。じゃあ、魔法の話でもしながら入学式が始まるまでの時間を過ごそうか?」

「お願いします!あっお茶を入れますね!」


 そう言って入れてくれたお茶は、マルさんに定期的に送っているハーブティーだった。


一年次学園編スタートです。


どうぞよろしくお願いまします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ