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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第三章
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報告

 ボクの前には、タシテ君とナターシャがソファーに座っている。

 クウが二人の前にハーブティーを入れてカップをおいた。


「以上が報告になります」

「そうか…… これをどう判断するべきかな?」


 ボクの前には、ダンとユーシュンについての調査報告書が置かれている。

 ダンに関しては、ボクが仕組んだ三人との関係性や他の女性との付き合い方などをまとめた資料だ。


 ゲームなら好感度などが見えるからやりやすい。

 この世界にそんな便利な物はないので、仕方なく調査を行わなければならない。今回の調査を行った人物が、目の前に座るナターシャだ。


 彼女はタシテ君の……


「オリエンタル料理屋で働いている手の者に寄れば、会話内容まではわかりませんでした。ただ、リューク様が出て行かれた後に、二人で話し合いをしていたようです。その場にはハヤセ嬢もいたことが確認されています」


 さすがは情報を取り扱うプロだ。

 ネズール家に情報戦で勝る者はいないな。


「そうか、ハヤセはやはり王子と繋がっていたか……」

「知っておられたのですか?そのようです」


 ボクの知識はゲーム世界のものだ。

 ハヤセはある役目を持つキャラとして覚えている。


「先日、ナターシャが二人の後押しをするために演技をしました。

 その際にダンがハヤセに告白したのですが、その真意はわかりません」

「ふむ、ボクの目的は達成されたわけか」


 ダンが愛を知り、守りたい者を見つけたのは第一段階として悪いことじゃない。

 ハヤセの気持ちはわからないが、大人向けゲーム主人公として、ダンが動き出さなければ意味がない。


「よろし〜ですか〜?」


 今まで黙ってお菓子を食べていたナターシャが声を発した。

 ボクとタシテ君が彼女へ視線を向ける。


「なんだい?」

「リューク様は〜ハヤセちゃんを〜殺すのですか?」


 笑顔でありながら、その瞳には光を差していない。

 彼女はどこか壊れているのではないかと思う狂気を感じさせる瞳をしていた。


「いいや、ダンがハヤセを選ぶのであれば、そのまま泳がせる」

「そうですか〜よかったです〜ハヤセちゃんはお友達なので〜」


 ニッコリと目を閉じて笑顔を作る。

 その顔はまるで能面のようだ。


 感情が一切読めない。


「そろそろ剣帝杯が開催されます。

 私はその準備に入ろうと思いますが、今年はいかがされますか?」


 ナターシャに注意を向けていると、タシテ君が話題を変えた。


「この報告書を読むと、ダンがハヤセを手に入れるためにはボクよりも上位に食い込む必要があるんだろ?

 なら、ボクは予選で敗退して、ダンを決勝リーグに上げる方がいいか?」


 タシテ君の調べてくれた資料によれば、ダンがハヤセと付き合う条件は剣帝杯でボクよりも上位に入ることだと書かれている

 ボクは元々不参加でもよかったのだが、参加しなければハヤセやユーシュンの思惑から外れてしまうかもしれない。


「ダメですよ〜やっぱり〜リューク様とダン先輩が戦っているところを見せないと〜ハヤセちゃんも納得しないんじゃないですか〜」

「こら、ナターシャ!何を言っているんだ。

 それでは報告書と違うではないか!?」


 ナターシャの発言に、タシテ君が注意を促す。


「女心ですよ〜確かに〜リューク様よりも〜上になれば〜いいと思いますけど〜リューク様は〜気持ちを高めてあげるのが目的ですよねぇ〜」


 タシテ君に窘められたナターシャは、言葉を止めることなくボクを見て目的を聞いてきた。


「そうだな。ダンとハヤセの絆が深まればそういう演出をしてもいい」

「でしたら〜ダン先輩が〜困難を乗り越えて〜リューク様に勝つ方が素敵だと思います〜」


 ダンに負けるか……想像ができないな。

 ゲームのダンは、リュークに何度も勝利していた。

 キモデブガマガエルリュークは、その度に強い者を雇って仕返しをしようとした。


 その全てをダンが勝利して、リュークは失敗を繰り返すやられ役を演じていた。

 果たして、ボクはやられ役を演じられるだろうか?


「どちらにしても、今年の剣帝杯の準備に入らなければいけません。

 剣帝杯は、我々だけで行う訳ではありませんので準備が必要です。

 三年生や、一年生からも力ある者が出てくる可能性を考慮しなくてはいけませんので」


 ボクが思考しているとタシテ君が話題を剣帝杯へ戻した。


「三年生はやっぱりアイリス姉様か?」

「アイリス様は、すでに昨年のチャンピオンです。

 決勝進出者とのエキシビジョンマッチなら行うかもしれませんが、本戦への参加はありません」


 知らなかった。

 優勝したら出なくていいのか……

 まぁ優勝する気もないが、アイリス姉様ズルいな。


「それじゃあ、誰が今回の優勝候補なんだ?」

「筆頭はリューク様です」

「うん?ボクか?」

「はい。昨年度、棄権したとは言えど3位入賞をされております。

 戦ったのは準決勝の一度だけですが、優勝候補であったアクージを倒して棄権されていますので、今回もリューク様に当たった者は全て棄権することでしょう」


 裏工作を恐れる者が増えるということか……


「それはまためんどうだな。それじゃあ対抗は昨年同じく3位のダンか?」

「いえ、ダンは昨年のアイリス戦の結果が不評な様子です。

 リューク様の次に人気なのは、リンシャン殿ですね」


 アイリス姉様は、今回は本戦に出ない。

 ダンが、あの醜態を晒すことはないから良かったな。


「リンシャン?」

「はい。アクージ戦以外にも、リベラ・グリコ戦が評価されたのでしょうね。

 三番目はルビー殿です」


 ルビーは、今でも二年次の実技一位をキープしている。

 ガッツ戦でも本気で戦えば良い勝負ができただろう。

 未だにルビーが本気で戦っている姿を見たことがない。


「三年生は強そうな者はいないのか?」

「一人だけおります」

「へぇ〜誰なんだ?」


 ボクが知っているキャラはいたかな?今の所、出てきていないのは……


「ゴードン侯爵様のご令嬢です」

「ブフッ!」


 ボクは思い出した。

 隠れヒロインの正体を、そして思い出されるお姉様の顔を……


「リューク様、アイリス様の従姉妹であるゴードン侯爵令嬢、ノーラ・ゴルゴン・ゴードン様です」 


 ボクは厄介な相手が出てきたと深々と溜息を吐いた。

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