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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
第二章
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塔のダンジョン 2日目

《sideアンナ》


 推しが…… いません。


 昨日は、推しと初めてのダンジョンに入ったため、デートをしている気持ちになってしまいました。

 舞い上がっておりました。一時も見逃すまいと観察しておりました。

 推しであるリューク・ヒュガロ・デスクストス様は、あの紫のヌイグルミを武器として使われるのです。可愛いのに動くのです。魔道具として活躍するのです。

 その魔道具を使って、魔物の間引きをしてくださったことに私は気付いておりました。


 推しがすることですから!当たり前です。


「さぁ張り切っていくわよ」


 ですが、ダンジョンでの活動が終わり、お茶に誘うと……


「主が一緒にお茶をしたいと申しております。お付き合い頂ければ幸いです」

「アンナさんは一緒に飲んでくれるの?」

「!!!!!!!」


 今日は私の命日でしょうか?これほどの幸せを感じて良いのでしょうか?

 推しが、推しが、私を求めておられます!!!!


「……ご所望であれば」

「じゃ、所望で」

「かしこまりました」


 ビバッ!私!!!はっ!いけません。


 私はエリーナ様とリューク様を結婚させるために作戦を考えなければならないのです。喜んでばかりではいけません。ですが、ダメです。

 推しとは…… なんと尊い生き物なのでしょうか?こんなにも近くで直視できません。まともに会話を成立させることの難易度が、これほど高いとは、想像もしておりませんでした。


「了解。アンナ」

「!!!!!!」


 私利私欲に走った私は名前呼びをお願いしてしまいました。推しが名前を呼んでくれる。


 脳とは本当にフリーズするのですね……


 エリーナ様が何やら話をして、リューク様が去って行かれます。


 そして、本日……推しがチームを欠席されました。


 代わりに、我が主がリーダーを務めておられるのです。


「ハァハァハァ、どうして昨日よりも魔物の数が多いのよ!」


 前衛を務めているダン君とリンシャン様は、良く戦ってくれています。

 中衛を務める私が援護をしながら、後衛のエリーナ様からの指示に従ってチームとしては悪くありません。


 ですが、森ダンジョンよりも狭い空間で戦う塔のダンジョンでは、動きが制限されており遭遇する魔物が多いことで疲弊するのが昨日とは段違いに早いのです。

 やはり、リューク様は最高です。影ながら私たちを守っていてくださったのですから。


「おい、エリーナ。まだ三階層なんだ。そこまで張り切らなくてもいいんじゃないか?」

「そうだな。今日はリュークやシーラス先生もいないんだ。ゆっくり進もう」


 ダン君とリンシャン様は、やはり戦闘の経験値がエリーナ様よりも多いため、状況判断が出来ています。

 エリーナ様は優秀です。机上の空論を語らせたら、たぶんこの場で一番でしょう。ですが、実戦とは机上通りには進まないものです。


「もう!どうしてよ。昨日はあんなにもスムーズに進んでいたじゃない!」

「エリーナ様…… 思うようにいかないからと言って騒がないでください。魔物がやってまいります」

「もう、一旦休憩にするわ」


 体力だけでなく、エリーナ様の魔力が枯渇し始めました。消耗しながらも、なんとかたどり着く事が出来たのは5階層まででした。


「なんなのよ!どうして思う通りにいかないのよ」


 単純なレベル不足です。魔力が枯渇したエリーナ様は、精神が不安定になってしまって、幼児退行してしまっています。


「え、エリーナ?」


 エリーナ様の態度に、ダン君が戸惑った顔をしています。リンシャン様は、見たことがあるのでどうということもありません。

 ただ、そういう姿は男性に見せるのはどうかと思います。


「何よ!ダン。あなたもどうせ私を無能だと思っているのでしょ?」

「えっ、いやそんなことはないぞ!一年次のときもエリーナにはたくさん助けられたじゃないか。あのときみたいに」


 エリーナ様は、大規模な魔法を得意としておられるので、小技の魔法を使うのが苦手です。どうしても魔力消費が大きくなってしまいます。

 そのためリベラ様よりも魔力量が多くても、使い方という点で負けてしまうのです。

 そういう意味で、魔法成績では次席に甘んじなければいけないのです。


 もちろん、リューク様は別格としてです。本来の力を出しておられないので……


「うるさいわね。塔のダンジョンって何よ。いっそ、この塔ごと倒してやろうかしら」


 そんなことが出来るならむしろやってほしいです。

 あなたにはそれを成すための魔力もありません。


「いい加減にしろ。エリーナ。私たちのレベルが低いことが原因なんだ。そのために訓練をしているんだろ?」

「ハァ?何よ。リンシャン、あんた私に文句でもあるわけ?はっ!あなたはいいわよね。婚約者がいるのに好きな人も居て、自分は成長してますって顔してさ」

「エリーナ!お前!」

「うん?姫様に好きな人?」


 これはいけませんね。残念な人でも、やっていいことと悪いことがあります。


「エリーナ様」

「何よ?アンナ!私は、王女なのよ。私の命令に従うのが当たり前じゃない!」


 ハァ、こういうときの止め方は一つだけです。


「黙りなさい」


 私は全力で腹パンをお見舞いして意識を刈り取ります。

 睡眠を取れば魔力も回復するので、これが一番です。


「お見苦しい姿をお見せしました」


 私は深々と頭を下げて二人に謝罪を口にしました。


「申し訳ありませんが、本日の攻略はここまでにさせてください」

「アンナ…… わかった。このまま続けていても上手くはいかないだろ」


 リンシャン様が応じてくれたので、本日は解散することになりました。


 ふと、ダンジョンから出た私が二人を見ると、どこか余所余所しい態度をしておりました。


 リンシャン様にも、リューク様にも、ダン君にも……


 全員に迷惑をかけてしまいました。


 エリーナ様の意識改革を早急に行う決心をしました。


 私は、エリーナ様に恋をしてもらいます。

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