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あくまで怠惰な悪役貴族   作者: イコ
序章
1/325

あくまで怠惰に

どうも作者のイコです。


普段はカクヨムで投稿しています。

どうぞよろしくお願いします。

 五歳の誕生の日、高熱を出して倒れた。


 熱にうなされながら夢を見た。


 夢の中で醜悪な顔をしたボクが、女性に囲まれた顔の良い騎士から剣を向けられて首を刎ねられる光景を見た。

 それは未来を予知するボクの姿だと、すぐに理解できた。


「ハァハァハァハァ」


 悪夢から目覚めたボクの頭の中は様々な記憶が再生される。


 この世界が大人向け恋愛戦略シミュレーションゲームの世界で。

 夢の中で殺された悪役貴族リューク・ヒュガロ・デスクストス。


 それがボクだ。


 公爵家の第二子息として生まれたリュークは、家族に認めてもらいたい一心で悪事を働き続けた。


 国を転覆させて、王に成り代わろうとしていた悪役公爵家の家族の思惑を知らず、利用されていたに過ぎない悪役貴族として死を迎える。


 ゲームの中で主人公達は、黒幕である公爵家の第一子息と当主を討ち果たし国の憂いを取り除くことで出世していく。


 リュークは、中ボスにもなれない主人公たちにとってヤラレ役。


 夢から覚めると、頭の中に二つの記憶が交じり合うような特殊な状態だった。

 現状把握するための時間が必要になり、一つ一つをゆっくりと整理していく。


 この世界は大人向け恋愛戦略シミュレーションゲーム。

 いわゆる大人向けの世界だ。

 ただ、戦略要素や、やり込み要素が多くあって、人気を爆発させたゲームなのだ。


 ゲームをしていた自分がどうなったかは思い出せない。

 ここがゲーム世界であること。

 主人公によって悪役貴族として首を撥ねられて死ぬ最後だけは思い出した。


 頭が整理出来たことで、自分の置かれた状況を思い出す。


 まだ悪役貴族として活躍する数年前。


 ボクは5歳という年齢で様々な記憶を取り戻した。

 主人公がゲームを開始するのは15歳の時だ。

 今から10年後の世界ということになる。


 その際に出てくるリュークは、魔法の才能はあるが努力をしないで、怠惰に生きるキモデブガマガエルという悪称が着くほど見た目が醜悪で性格も歪みに歪みまくっていた。


 その原因として、生まれてすぐに母親を亡くし、家族から相手にされない環境があった。

 だからこそ家族に認められたいという思いが強くなった結果として悪事を働いた。


 しかし、五歳のリューク君は多少ポッチャリさんではあるが、鋭い目つきをしたただの可愛い少年だ。


 容姿だけを見ればそれほど悪くない。


 悪役貴族として出現させるために、成長と共に醜悪になっていくのかと思うと絶対に阻止することを自分に誓った。


 ゲームは大人向けと言うこともあり、悪役貴族のリュークは主人公の邪魔をしながら女性を奪いとる役目を担っている。


 その際には女性を強引に責める描写が映し出される。

 拷問や、魔物をけしかけて触手プレイなどのハードな責め画像は見る人が見れば好きな映像なのだろうが、ボクはちょっと苦手だった。


 また恋愛戦略というタイトル通り。


 恋愛に重きを置いた学園パート。

 戦略に重きを置いた立身出世パート。


 二パートに分けてゲームが進行していく。


 リュークは学園パートでは醜悪な容姿をしながらも公爵家の権力を傘に、女性に言うことを聞かせていく悪役貴族っぷりを全力で発揮する。


 傲慢怠惰な暴君クソ野郎。


 立身出世パートでは、リュークの家であるデスクストス公爵家が暗躍してアレシダス王国を裏から乗っ取るため様々な事件を起こす。


 主人公は学園パートで付き合った女性によって立場が違うのだが、公爵家の仕掛けた事件を解決していくことで出世していくというシナリオになっていた。


 さて……状況はある程度整理できたわけだが、どうやらボクは未来の悪役貴族として転生してしまった。


 ゲームの進行上、悪役貴族として生きていかなければならない。


 幸い、高位貴族なので何不自由なく生活ができている。

 それに魔法の才能もあり、容姿もまだ醜悪なキモデブガマガエルキャラになっていない。


 なら、リュークの性格に合わせてあくまで怠惰に生きるのも一興かもしれない。


 だけど、不細工になるのも、家族に認めてもらおうと思うのも嫌だ。


 あくまで貴族として怠惰に過ごす日々を満喫するだけだ。


 怠惰と言っても、惰眠を貪るだけではせっかく転生したのにつまらない。リュークの身体は魔法の才能があるんだ。


 魔法の才能を活かして、快適な貴族生活を手に入れることができるはずだ。


 何より、将来家族が悪役貴族として暗躍を始めたときに、強さが無ければ主人公や悪い人たちに簡単に殺されてしまうのも嫌だ。


 本編が始まるのが10年後……。

 あくまで怠惰にゆっくりと快適に己を鍛えよう。


「魔法を教えてくれる人を見つけないと。でも、こういう場合、魔力を強化するのに魔力を使い切って絶対量を増やすとか聞いたことがあるな」


 目を閉じて魔力らしきものを感じようとしてみる。

 さすがは魔法の才能《《だけ》》はあるリュークの身体。

 すぐに魔力らしき特別な力を感じる。


「これが魔力か?」


 空気の塊の様なものが体を包み込むように膜を作り、それが体の中を巡ってまた排出されていく。

 身体の中を循環しているのが感じられた。


「使うためにはどうすればいいんだ?」


 ゲームの世界では攻撃魔法や回復魔法、補助魔法を放つ際にマジックポイントとして消費されていた魔力。


 だけど、今は魔法の使い方がわからない。


「回復魔法でも試してみるか?」


 攻撃魔法を使って部屋の中を壊してもよくない。

 そう思ったので、自分に向けて回復魔法を発動してみる。

 ゲーム時代の呪文ぐらいは覚えている。


「ヒール……あれ? 使えたのか?」


 自分のヒットポイントが見えないので回復したのかわからない。

 ただ、熱を出していた体が少し軽くなったような気がする。


「もっと楽になるかな?」


 そう思って回復魔法を連発すると10発程度で意識を失った。


 --コンッ、コンッ


「リューク様、起きる時間ですが、体調はいかがですか?」


 メイドの声で目が覚める。


 朝だ……専属メイドであるシロップに起こされるまで、ボクは眠っていたようだ。


 具合が悪そうなボクを見て、まだ熱が下がっていないと判断したシロップは、甲斐甲斐しく世話をしてくれて退出していった。


「まだ気分は悪いが、熱のせいでしんどいわけではないようだ」


 どうやら回復魔法は成功した。

 そのため魔力を枯渇させてしまったことで意識を失ったのだろう。


 回復魔法はハッキリと魔法を使えたという実感が薄い。


 そこで、ボクの専属メイドであり犬人族のシロップ12歳に魔法の本を読んでもらうことにした。


「シロップ。ご本読んで」


 白い犬耳と尻尾を付けた可愛らしいメイドさん。

 シロップはボクよりも少しお姉さんと言った感じではあるが、文字が読める偉い子だ。


「はい。リューク様」


 お願いをすると嬉しそうに本を持ってきてくれる。

 素直で甲斐甲斐しく健気な忠犬と言った感じだ。


「こんな難しい本でいいのですか?絵本とかもありますよ。私、忠犬はっちゃんとか好きで……」

「ボクは魔法を使ってみたいんだ」


 五歳児の演技は重要である。

 見た目が子供なのに大人のようにふるまえば、子供の強みを生かすことができない。

 幼い体を利用して発展途上であるシロップの膝に頭を預けて本を読んでもらう。


 太ももはまだまだ細いが、この体勢は楽でいい。


「リューク様も男の子ですね」


 こうして文字が読めるシロップに文字を習いながら、魔法勉強が始まった。



恋愛戦略ゲーム世界で悪役貴族として転生した主人公が、面白おかしく過ごす日々を書いていきたいと思います。


読んでくだされば嬉しく思います。


レビューやいいね♡

感想などもいただければ作品が生きてきますので、どうぞよろしくお願いします。

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