第三十六話 ただのマッサージだから
その日の夜。オリガの部屋。
「……っ」
ロンは、目の前のベッドで優雅に寝そべる全裸の少女を見つめて、ゴクリと唾を呑む。
相手は俯せになっているので大事なトコロは見えていないものの、ベッド脇のちいさな魔法灯に照らされた女体は、危険なほどに艶めかしく、煽情的だ。
「本当に、ヤるのか……?」
こちらを誘うようにゆっくりと左右に揺れる獣人の尻尾を思わず目で追いながら、ロンは問う。
「ここまで来て怖気づいてンじゃねェよ……」
横目でこちらを見るオリガの顔が、今夜は一段と大人びてみえる。
「さっさとはじめろ。じゃないと──」
「わ、わかった! わかったって……」
覚悟を決めたロンはぎこちなくベッドに乗ると、無言で脚を開いたオリガの股の間に恐る恐る腰をおろした。
すると、たちまち少女のカラダからとろりと甘い、発酵した南国の果実をおもわせる刺激的な体臭が立ち昇り、ロンの嗅覚を襲う。
「うっ……!」
それは、まさに、生命の神秘。
発情した牝の獣人のみが放つといわれる、あらゆる牡の本能を覚醒させる天然の媚香。
(こっ、これは、ヤバい……!)
ロンは、ともすれば一瞬で吹き飛びそうになる理性をどうにか保とうと、唇を強く噛みしめる。
「ほら……、サッサと始めろよ……」
オリガがもどかしそうに呟くと、ロンの目の前で張りのある丸い尻がぷるるんっ、と無邪気な天使のように揺れる。
(うぅ……、目に毒とはこのことだ……)
視線を天井へ向けて欲望を振り払い、ロンは身を乗り出す。そして、
「よ、よしっ、ヤるぞ……」
相手と己に宣言して、両手をオリガの尻──の上に生えた太い尻尾の根元にそっと当てた。
すると、たったそれだけで、
「はあぁっ♡」
オリガが、なんとも淫靡な声で快感を叫ぶ。
ロンは驚き、慌てて少女のカラダから手を放した。
「ちょ、おいっ!? ヘンな声出すなよ!」
「だっ、出してねェよッ! いいから続けろッ!」
抗議を受けて、ロンはまた渋々彼女の尻に手を伸ばす。
「ヤッてやるから、ちゃんと静かにしてろよ……」
彼がいまやろうとしているのは、オリガが今日のゴホービとして要求した『尻尾マッサージ』だ。
なんでも、牝の獣人は毎日普通に過ごしているだけで尻尾の付け根の筋肉が凝ってしまうらしく、その「尻尾コリ」を解消するため定期的にマッサージする必要がある、とのことなのだが……。
「ぁはぁっ、あっ、んぁあっ」
ロンが尻尾の付け根を親指で適当に押してやるだけで、少女はビクンビクンッと小刻みに身体を震わせつつ、喘ぎにしか聞こえない切なげな声を漏らしつづける。
「あっ、ああっ、んっ、ぁあっ!」
それもそのはず……、オリガはロンに教えていないが、牝の獣人にとって尻尾の付け根は、×××にも匹敵する超高感度の×××なのだ。
「ぁあ、くぁあっ、だ、ダメッ……!」
「え、ダメなのか?」
「ちっ、チガウッ! もっと……もっと強く!」
「強くするのか? ……こんな感じか?」
何も知らないロンは、怪訝な顔をしつつも少女のカラダを絶妙な力加減で刺激しつづける。
「ああっロン! ソレッ……スゴイ! あっ、ぁああっ!」
全身に玉の汗を浮かべて悶えるオリガは、次第に呼吸を荒くし、その刹那に向かって急速に昂っていく。
(コレ、本当にただのマッサージなんだよな? よほど凝ってたのか……?)
ロンが疑念を抱きつつも、少女の尻尾の下、尻の割れ目の端あたりをぐいぐい押してやると──、
「っ! くぁああっ♡」
少女の喘ぎが急に1オクターブ上がった。
「あ、ゴメン。痛かったか?」
「ち、チガウ! そこ、もっとっ強く! はやくっ!」
「お、おう……」
ロンが指にさらに力を込めると、
「あぁあ、ダメ! ロン! あぁっ!? ダメッ! あっ! ああっ、んああぁあっ♡」
ひと際大きな声で叫んだのと同時、オリガはビググンッ! と激しく痙攣しながらカラダを弓なりに反らせて硬直し、数秒後、
「あふぅうぅ……」
ウットリと至福の呟きを漏らして、ベッドの上でぐったりと脱力した。




