使い魔《影》
次回はマオ視点になります。
「ん……。」
目を開けると、目の前に黒髪が飛び込んできた。
「マオ……。」
ベッドサイドに椅子を置いて、マオが眠っている。
シェルターから運んでもらって……それから……
もぞもぞっと足元でなにか動いた!
驚いて布団の中の足を引っ込めるとると、黒猫が迷惑そうに寝返りを打った。
どこから入り込んだのかしら…。
堂々としてるその猫は、また寝てしまった。
触りたい……。
外からは白い陽光が差し込んでいる。
「ふぁー。」
朝なのね、どれくらい寝てたのかしら。。
陽の光を浴びて紫紺色に見える愛しい髪をサラサラと指先で触れて弄ぶ。
もう一度寝てしまいそうになって、目を閉じる。
それから、また寝てしまったのかも知れない。たぶん。。
次に目を開けると、マオと目があった。
「おはよう。」マオは少し眠そうな顔で、柔らかく微笑む。長い指先で目尻を擦っている。
「おはよう、マオ。」
先ほどより陽の光が少し強くなっていて、また寝てしまったのだと気付く。
あの黒猫は居なくなっていた。
「具合はどう?辛いところはない?」
マオはサイドボードでグラスにお水を入れて、ベッドに腰を降ろすと渡してくれた。
グラスに口をつける。
程よく冷えたお水は、ほのかに柑橘系の香りがした。
「私、大分寝ていたのね。」
「そうだね、丸一日寝ていたよ。」
「丸一日……助けてくれて、ありがとう。」
そう言うと、マオは目を伏せて
「……僕にはまだ、力が足りない。」
力のない声だった。
私はその声を知ってる。
あの日、お父様が冷たくなったお母様に話しかけていたような。
「そんな事無いわ、ちょっと風邪を引いただけで大袈裟ね。昨日……じゃない、一昨日の夜、マオは何処に行ってたの?」
「ずっと部屋で寝ていたんだ。すまない。」
何故か沈黙が重い。
「何があったの? 話してほしいの。私はね、もう守られてるだけは嫌なの。」
そう言うと、マオにふわっと抱き締められた。
「リリー、絶対に離さないから。僕を信じて待っていて。」
泣きそうな、それでいて力強い声だった。
「まるでどこかに行ってしまうみたいじゃない。変なの!」
いつになく辛そうなマオを元気づけたくて、明るい声で答えてみた。
「これから、少し学園を離れる事が多くなる。」
そう言うとマオは自分の髪の毛を掴み、引っ張った。
髪の毛を一本、掌に乗せて「ふぅ」と息をかけると、先程の黒猫がぴょんと飛び出してきた。
「わっ!さっきの猫ちゃん。」
「うん、僕の使い魔。リリーの側に置いていいかな?」
マオの髪の色と同じその黒猫に、ゆっくり手を伸ばし、そーっと両脇から抱き上げ、顔の前に持ってきて。
「あなた、お名前は?」
首を傾げて聞いてみた。
すると、黒猫も首を傾げた。
代わりにマオが答えてくれた。
「名前は特にないですけど、《影》カゲと呼んでいます。」
「ふふふ、カゲ宜しくね。」
そうっと胸に抱き込むと、少し暴れて、ぴょんと飛んだ。
「妬けるね……。」
「この子はマオが作ったの?」
「僕の魔力で出来ています。視覚と聴覚も共有できますけど……変なことには使いません。」
「おいでー。」
リリアーナはいつもより少し高い声で、カゲの気を引く様に、掌をひらひらして見せた。
「まったく……聞いてませんね? 変なことに使いますよ?」
カゲは子猫のように、好奇心旺盛で私の掌の動きを目で追っている。
せっかく明るい気持ちになったけど、聞いておかなきゃならないことがある。
「ユーリア様よね? シェルターに鍵をかけたのは……。」
「はい、恐らく。正確に言うと鍵ではなく、封印魔法でした。それも、王家に伝わる強力な封印魔法です。ミリオン公爵家の動きも心配です。本当は僕がずっと側にいたいのですが。」
ミリオン公爵家は、お祖父さまが教会の大司教をされている。
現ミリオン公爵である、ユーリア様の父君は、王家から降嫁したユーリア様の母君である、マリア様を迎えたことによって、王家と教会を上手く取り持っていた。
教会側に傾いているのかしら……。
ユーリア様がマオを手に入れたいのだと思ったけど、それだけではないのね……。
「大丈夫よ、私だって守られてばかりでは、いられないもの。ウォーターボールを極めるわ!」
私には何も出来ない。今はそう思わない。
「ぷふ、もっとあるでしょ、使いやすい魔法。また練習付き合いますよ。」
ーーーーーー
翌日、マオは英雄・ナカムラ様のところへ戻っていった。
しばらく会えない寂しさはあるけど、カゲからはマオの魔力を感じる。
木陰で刺繍を刺す時は傍らに居て、食事中は膝の上に、眠る時は一緒にベッドに入る。
マオの魔力を感じるから、気持ちが温かくなって、すぐに眠りについた。
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