人助け
「ミンチにする程の威力とはな、まぁいいかでも」
◻️問題がある事に気がついた。高威力の魔法を打つと疲れが貯まるようだ。携帯を見ると、ステータスの画面もあり、タップしてみると、MPとSP、即ち魔力が半分、スタミナが四分の一位に減っているのがわかった。この世界の魔法はMPだけの消費では魔法は打てないと言う事だ。
「お…」
「魔王様?…」
「はい?」
◻️魔王?ゲームであるラスボスの?初対面の少女はそう言うと、いきなり怯えだして、魔王様殺さないでくださいを連呼し始めた。話をしたいだけなのに、話ができず、連呼され、少しイラつき出した時、気が引けたが少女の頭を強めに叩いて事情を話した。
◻️そうすると冷静になったのか、何故あの牛もとい悪魔に追われてたのかを話してくれた。その説明で何故魔王と呼ばれたのかも理解できた。
◻️あの牛は七魔将と呼ばれ、魔王直属の配下だそうだ。その魔将にダメージを与えるだけでなく、倒してしまうなど勇者か魔王しかいないようだ。少女は勇者は既に存在していることから、風魔法の威力もあり、魔王だと勘違いしたようだ。
「あの!それなら村を助けてくれませんか!?まだ魔将の配下が村にいるんです!!」
◻️異世界転生早々に人助けイベント発生、魔将があの程度ならその配下くらい楽勝で勝てる相手である。試したい事も増えたし、魔将の配下なら残りの試したい事も試せるかも知れない。こちらにメリットがあり、あちらにもメリットだ。なら断る理由はなかった。早急に村へと向かう。
◻️風魔法とスタミナを消費して、少女抱きかかえながら走っていると、焦げ臭い臭いと、異臭が鼻を刺激した。
◻️その臭いの原因は村に着くと直ぐにわかった。少女を下ろして、周囲を警戒すると、建物が焼け、その中には死体だろうか、人の様な物の影が辛うじて原型をとどめていた。
「こりゃひどいな」
「助けてくれーー!!」
「お父さん!!」
「おっ、おい、ったく」
◻️少女は直ぐに駆け出し、父親の声の元まで向かう、守る対象が駆け出すのと同時に純も後を追った。
『助けてそんなものくるものか』
「お父さん!!」
「シルク何故ここに」
『貴様、デーモ様が追いかけて行ったガキか、何故ここに?そうか運良く逃げおうせたか、しかし戻ってくるとは所詮はガキだな、バカな事だ。デーモ様には悪いが俺が食ってやる』
「シルク!!」
◻️父親が娘を庇い、悪魔が腕を伸ばした時、その腕は吹き飛ばされるではなく、切り落とされた。聞き覚えのある苦痛の声の後またも聞き覚えのある台詞が続いた。
『誰だ!!』
「シルク、走るなよ、守るに守れんだろうが」
「ごめんなさい、純様」
「さてと、そこの悪魔逃げるなら見逃してやる。闘うなら殺すどっちがいい?」
『下等な人間ごときが、七魔将の配下の我に大きな口を叩くな』
「お前の上司は殺したぞ」
『何を言うかと思えば、嘘をつくな、貴様程度にデーモ様が殺られるものか』
「悪魔は皆こうなのか?相手との力量を計れないとは、ここまでくると滑稽にすら写る。いいだろ相手をしてやる」
『その面を絶望に変えてやる!お前ら続け!!』
◻️悪魔が命令すると、周囲を破壊していた悪魔が集まり、純へと向かう、笑顔を見せ、純は風魔法で次々切り刻んでいく、先ずは両腕足を切り飛ばす再生する効果なし、胴体の心臓の位置を貫く再生効果なし、次は胴体から頭を切り離す効果あり半分を動く個体と動かない個体あり、最後は頭だけをミンチにする効果あり再生蘇生なしの結果に終わった。
「こんなものか」
『あり得ない…何故人間にこんな事ができる…』
「顔が絶望に変わったのはお前の方だったな、さて終わりにしよう」
◻️魔法を向けると悪魔は逃走をしようと羽を広げる。
「させるか!」
◻️風魔法で羽を切り離し、地面に落としてから止めの一撃頭をミンチにする。
「ありがとよ。いいデータが取れた。悪魔は頭が弱点の様だな」
◻️悪魔は頭をミンチにすれば死ぬ、しかし他の場所だと再生で殆どが治る。再生力にも個体差があるようで、再生は上位種になると高いととれた。
◻️いきなりの脱力感、携帯のステータスを見ると、MPだけが底をつきかけていた。それに眠気もある。
「なるほどね…この闘いは…参考になったよ」
「純様どうしたんですか!?お怪我を!?」
「嫌魔力を…使い過ぎた…様だ…眠…い」
◻️強烈な眠気に意識がなくなる。その後の事は覚えていない。わかるのは村は救えた事実だけだった。