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ノルン・エッダ#6

「おい、お前。こんなところで何してんだ?

見たところやっぱアンデッドではないし、人?違うな。幽霊か?」


騎士は俯いていた顔をゆっくりと上げる。


「私?私ですか?あなたは私が見えてるのですか?」


「お前しかいないだろ。この墓地には。」


「はあ...。」


騎士は開いた口が塞がらないようだ。


「おい、聞いてんのか?何してんだって。」


「あ、すみません。久方ぶりに人に会ったものでして。加えて私が見えるという。

話せば長くなるのですが、お付き合い願えますか?」


「そうだな。俺も目的があってここに来たんだけど、その目的も今は見当たんないしいいよ。」


「ありがとうございます。では、私の紹介から。

私はアステラ大森林を超えた先にある王都『アースガル』の王国騎士団副団長リーガルです。

今では元副団長ですね。はははっ...。

そして、あなたのご明察通り私は幽霊です。

何故私がここにいるのかということですが、今から45年前ここら一帯で魔物の暴走(スタンピード)が起こりました。

それを鎮圧するため王都から王国騎士団が派遣されたのです。

その一団に私も当然いました。副団長ですから。

ですが、生憎私は戦闘の最中死んでしまいます。不覚の限りです。

そして、幽霊になり森林を出るため彷徨っているとここに辿り着き、妙にこのベンチに惹かれちょっと休憩しようと思い、この墓地に入ったが最後でした。墓地から出ようとすると結界に阻まれ出れないのです。

私が来る以前から結界は張ってあったのでしょう。外からは入れるけど中からは出れない仕組みみたいですね。ははっ...。

それでかれこれ40年ちょっとこの墓地にいるわけです。」


「そうだったのか。そりゃ人に会わないな。だってこの墓地がある村、廃村になってるしな!ハハハッ!」


「そうですよね、40何年もいればわかります...。」


「しっかし、リーガルさんも不運だな!その魔物の暴走(スタンピード)が終わったあと、襲われていたここにはアンデッドが蔓延っていて、それを封じるための結界だってのに、幽霊も出れないんだな、この結界!

え、待って...。まさか俺も出れないなんてことないよな?ちょっと確かめてくる!」


ウルはすぐさま墓地の外に走り出して、墓地を出れた途端すぐに折り返してきた。


「大丈夫だったわ!良かったー!」


「良かったですね...。」

(この方は元気が良い方だ...。)


それからウルとリーガルは少しの間、話をした。

相手が幽霊だからかウルは気兼ねなく知りたかったことを聞けた。


時間のこと、魔物の暴走(スタンピード)のこと、王都のことなどなど。


時間は1刻で1時間という認識で、1日は24刻で回ってるとのこと。

時間は元の世界と単位が違うだけで、あとは一緒で助かった。


魔物の暴走(スタンピード)とは、様々な魔物で構成された魔物の大群のことを指すのだそう。

ただ、起こる原因はわかっていないのと何十年かに一度起こるか起こらないかの天災みたいな扱いになっていて、その大群には今までAランク以上の魔物は確認されたことがないということ。


そして、この先の王都アースガルは、大陸の東の大部分を領土として持つ『アース王国』の王都だそう。

アステラ大森林を挟んで東側と中央側の交易の中心地として栄えているそうだ。


「ところで、ウルさんがここに来た目的はなんだったのですか?」


「お、そうだった。話し込んですっかり忘れてた。

俺は屍術師(ネクロマンサー)なんだ。それで配下にできるアンデッドを探しに来たんだ。」


「なるほど、そういうことでしたか...。うーん、それは難しいかもしれません。」


「なんでだ!?」


「はい、私がこの墓地に来たときからアンデッドたちは何故か私を避けるのです。

そして、いつの間にか姿さえ見なくなってしまいました。

恐らく地面の下にでも行ってるのでしょう。結界が地面の下まで続いてるので、墓地の範囲からは出て行ってると思いませんが。」


「えー--!?リーガルさんのせいかよ!?」


「すみません...。」


「冗談冗談。リーガルさんが謝ることじゃないよ。原因わかんないんだし。

けど、どうすっかなー。」


「ウルさん、良ければ私から提案があります。」


「なんだ?」


「実は、私魔物の暴走(スタンピード)に派遣される直前に当時お付き合いしてた女性に婚約を申し出たんです。

しかし、その女性はちゃんと生きて帰って来た時にもう一度言って、待っているからと言い、この指輪をその場では受け取って頂けませんでした。

それだけが生前の後悔なのです。

その女性は今はどうしているのか。幸せに過ごしているのか。そして、この指輪だけでも届けたいと。

そこでウルさんの配下に私を加えて頂きたいのです。配下になれば一緒にこの墓地から出れるのではないでしょうか?

それに配下になり墓地を出れれば地面に潜っていたアンデッドたちも這い出てくるかもしれません。

私、不肖ながらも剣の腕には多少の覚えがあります。」


「おお、なるほど!それで俺には王都に行き、その女性を探し出して欲しいということだな。

んん!いいよ!ぜんっぜんいい!

只、俺の配下になると多分ここから出れるとは思うけど、リーガルさんアンデッドになっちまうよ?」


「何も問題はありません。

40年ちょっとここに閉じ込められ後悔に苛まされるだけの日々から解放され、ましてやウルさんに剣を捧げもう一度騎士にして頂けるなど、これ以上のことはありません。」


「わかった!じゃあこれからリーガルさんを配下にする!」


ウルは立ち上がり、リーガルはウルの前に跪き剣を前に立てる。


「お前の魂を捧げろ。冥府門(ヘルゲート)


ウルの背後に、地面から恐惶とするような門が出現し、

辺りには凍てつく寒さに覆われているかのような雰囲気が漂う。


「女性の名は、リーヤ。パン屋の娘でした。我が剣を御身に。」


ゲートが開き中から手が出てくるとリーガルの肩を掴み、中へと連れて行きゲートは消えた。


「よし!配下第一号だ!」


配下の情報が頭の中に流れ込んでくる。


「おお!配下にするとそいつの情報がわかるのか!

えーっと、リーガルさんは亡霊騎士(ファントムナイト)になったのか。

幽鬼ね。ランクまではわからないか。」


配下の情報を確認していると、突然地面からアンデッドたちが湧き出てきた。

リーガルがいなくなったからだろう。


「おい、まじかよ!?出てくんの早すぎね!?一旦墓地から出るか!」


ウルは墓地の出口まで走ろうと後ろを振り返る。


「な!?出口の方も出てきてんじゃん!

塞がれた!くっそ!やるしかねえか。

早速出番だ。亡霊騎士(ファントムナイト)!」

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