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7話 緊張と不安でいっぱいです

 お姫様からハンカチを貰ってしまった。

 洗って返さなきゃと思ったけど、あまり粗末(そまつ)に洗うと(しわ)がついちゃうかもしれないから、気をつけなきゃ。



「この後どうされるのです?」

「何処かの街へと向かう予定です」


 何も話せない私の代わりにエヴァンが答えてくれた。ごめんね、何もかも任せちゃって。

 まだこの状況がちゃんと理解できてないし、頭の中がずっと真っ白な状態だから。


「それでしたら、一緒にわたくしが住んでいる街へ向かいませんか? ちょうど移動中のお話相手を欲していたところなのです」

「私は構いませんが、あかりはどうする?」



 これは好機とお姫様が両手を合わせ、エヴァンと一緒に私の方を見てくる。


 少しだけ落ち着いてきた。と思ったらとんとん拍子で話が進んでいく。


 馬車は煌びやか。

 でも、そこまで派手ではない豪華なものに乗るなんてことは滅多にない事だから乗った方がいいけど、私みたいな一般人が乗って周りから変な目で見られないか、不安な気持ちもある。


 でも、またとない機会。こんな時しか体験出来ないし、やってた方がいいよね。

 断るのも失礼だと言うし。



「で、では、お言葉に甘えさせてもらいます」



 海外の挨拶には(うと)いし、つたないかもしれないけれど、最低限礼儀正しくしなきゃ。

 失礼になっちゃうからね。

 あ、お辞儀もちゃんとしないと。日本のやり方で大丈夫かな。初対面の方だから敬礼が正しいかな。



「ええ、どうぞ」



 すごい。執事さんかな。その人が映画とかで見たことのある、女性が乗車しやすくするためのエスコートが目の前で行われている。海外の人すごく似合うな。やるほうは当然って顔してるし、されるほうもこれが当たり前だって雰囲気だ。



「どうした? 乗らないのか?」

「あ、乗る」



 エヴァンが自然に私に手を差し伸べてきたけど、えっと、こういうときって私はどうしたらいいんだっけ。

 小説の資料を探してた時にたまたま見たんだけど、たしかエスコートしてくれる人がいるときは、勝手に乗らないんだったかな。

 いろいろと調べすぎてごっちゃになっちゃってる。


 まずは、片手差し出してるからそこに手を置いて、次に足場に足を乗せて……。



「慣れていないなら無理にする必要はないぞ」

「でも、礼儀が」

「そこは甘く見ますわ」



 お姫様はそう言ってくれたけど一般人の私とじゃ立場が違うし、彼女が良いと言っても側近の人達が許してくれなかったりとかあるかもしれないから。



「そう固くなる必要はありませんわ。少し気持ちを楽に持って?」

「は、はい」



 ぎこちなさがありながらも席に座ったけど、とても柔らかくて気を楽にするどころか逆に緊張してしまう。

 ドアが閉められたけど、エヴァンは中に座らないの?  もしかして私とお姫様の2人だけ? 


 お姫様の服は白を基準とした可愛らしいドレスで、反対に私はファッションセンス皆無だから灰色のパーカーに黒いズボン着とけばいいやって楽してたけど、お姫様に会うんだったら服装もちゃんとしておけばよかった。

 っていっても難しい話か。まさか会うなんて微塵も思っていなかったから。

 場違い感がすごいな。



「そういえばわたくしの名前を教えておりませんでしたね。メアリーと申します」

「あかりと言います」

「よろしくお願い致しますわ」

「よ、よろしくお願いします」



 言葉使いしぐさも全然違う。予想でしかないんだけど、お姫様は小さい頃から英才教育を受けていたから当然のことをしているだけ。私のあいさつ、あんな感じでいいのかな。



「あなたたちはどちらからいらっしゃったのですか?」

「えっと……」


 そうお姫様から質問されて言葉に詰まってしまった。

 どうしよう、なんて答えよう。日本からって言って通じるかな。そもそもここに日本って国があるんだろうか。ネットがあれば調べられるんだろうけど、それすら今は使えない。



「彼女は遥か東方の地から参りました。私は北の地から。彼女のほうはあまり知られていない場所です」

「は、はい、そうなんです」



 言い淀んでいる所に助け舟出してくれて助かったよ、エヴァン。

 緊張しがちな私じゃ変なことを言いそうで怖かった。



「まぁ、そんな遠いところから。どのようにして出会ったのですか?」

「私が旅をしているとき、彼女が倒れそうになっていたところを助けたといった感じですね」



 嘘は言ってないし、倒れたというか死にかけたけど、本当のことだから何も間違ってない。


 しかし、これからどうしようかな。生活するにしてもずっと野宿じゃいろいろと問題が出てくる。現代で充実した環境に慣れ切っているから不便にもなると思う。ここがどこかもまだ分かっていないのに。

 お姫様が目の前にいるけど、ここはどこですかって聞くのも引ける。

 ここに来ちゃった以上、慣れるしかないのかな。



「一つ、質問してもよろしいでしょうか?」

「ええ」

「先程申した通り、私たちはそれぞれ別の地から参った者で、ここがどういう場所かまだ不明なのです」



 私が聞こうと思ったけど、聞けなかったことをエヴァンが代わりに聞いてくれた。

 まるで私が言いたかったことを分かっているみたいに的確な質問を次々としてくれる。

 本当ありがたいな。

 彼がいなかったら、私は路頭に迷ってのだれ死んでいたと思う。

 初対面の人に緊張して、上手く話せず一人ぼっちに。

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