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34話 アドバイス

「どうしたらいいの」

「ここでアドバイスを出すだけでもみんなの助けになると私は思っているわ」


 それがたぶん一番安全なんだよね。怪我をするのは怖いし、外に出ても足手まといになる。

 でも、教えたからって解決できる? まだここにきて1週間も経っていない。クトゥルフに苦戦しているだけで、この世界の人たちの実力も知らない。


 もしかしたら解決できる人がいるかもしれない。しかし、どうやって見つける? ギルド登録で使った水晶型の鑑定機、もしくは召喚されたときに王様が使っていたものならば出来るかもしれない。お城の人たちが使っていたものは簡単には使わせてくれない。


 だったらギルドの鑑定機を使って、見つけるしかない。


「まとまったか?」

「ある程度は」

「ならガインのところに行くか」


 銃のメンテナンスが終わったエヴァンが銃を袋にいれ、立ち上がる。


「ゾーイ。私ここに残ることにした。でも、緊急事態が起きた時は動くよ。それでもいい?」

「あかりちゃんが考えてそこまで決めたのなら、私からこれ以上何も言うことはないわ」


 まだゾーイの心の中では不安な気持ちでいっぱいになっているんだろうと思う。それでも、私の意見も尊重してくれるのはとても嬉しい。感謝とこれから頑張ろうの意味を込めて抱きしめた。


 長椅子から立ち上がり、ガインさんがいる部屋へ向かい、ノックしてから入った。資料に囲まれて忙しそうに手を動かしているが、入ってきたのが私たちだと分かり、顔を上げて長椅子に座るよう促(うなが)してくれた。


「で、どうだ」

「私たちはここに残ることにしました」

「そうか」


 目をつむりながら少しだけ俯(うつむ)くガインさん。


「けど、ただ残るだけではなく、私が知っている限りの知識を皆さんに共有してほしいんです」


 出来ないなら出来ないでやれるだけのことをする。知識は持っているだけでは意味がない。共有し、広める。それこそが大事だ。


「全員にか?」

「そうです。全員にです。冒険者だけではなく国(・)民(・)す(・)べ(・)て(・)にです」


 ガインさんが目をかっぴらいて驚いている。戦う人だけって思ってたのかな。皆が気づいていないだけで、日常生活でも知識はフル活用しているよ。あれをしたら便利になる。これをやっている間にあれをしておけば後が楽だって。命を懸ける戦いはもっと知識を使ってはいるけど。


「疑う者や嘘を言うやつらも出てくるぞ」

「出てくると思います。だからギルド長のガインさん。貴方が正しいことをしっかりと広めてほしいんです。私みたいな新人では会えることはないですが、もしこの国の王様にお会いすることがあるならば、その方にも広めてもらうのもいいでしょう」

 

 腕を組み、眉間にしわを寄せながら悩んでいるガインさん。

 

「モンスターと遭遇して、冒険者の方々が戦いかたを知っているのは、過去の人たちが知識を共有してくれたおかげですよね」

「ああ」

「それと同じことをすればいいんです。ただ、注意しなければならないこともあります」


 注意?と首を傾げるガインさんに更に説明をする。こんなに頭をフル回転させながら話すのは久しぶりだから少しだけ疲れてきた。

 

「襲撃者が深きものという名前だってことは教えましたね」

「ああ」

「それ以外にもいるんです。あの深きもの以上の存在が」

「……あれ以上のものがまだいるだと」


 眉間に皺をよせ、指で挟(はさ)みながら揉(も)んでいる。そうだよね。深きものだけでこれだけの混乱に陥(おちい)ってしまったんだから悩みはするよね。


「深きものなどを合わせて【クトゥルフ神話生物】と言います。そいつらと会ったら極力戦闘は避けてください。基本的に人はそいつらに勝てません」

「勝てない?」

「はい。中には神と同等の存在もいますので」


 天井を見上げたガインさん。一気に説明しすぎたかな。それとも、深きもの以上がいると知って絶望してしまったのか。


「そして、ステータス表が見れる鑑定機ありますよね? それを」

「待て待て、それ以上話されると訳が分からなくなる」


 そりゃそうだ。私でもこんな一気に話されたら分からなくなっちゃうもん。そこは少し反省しとかなきゃ。


「私が言ったことをまとめる人が必要かもですね」

「ああ、今から1人呼んでくる」


 そう言って深いため息をつきながら椅子から立ち上がったガインさんは、受付の方へ向かうべくドアを開けて出ていった。


「頭が沸騰(ふっとう)しそう」

「あれ以外もいるなんて」


 甘いものが食べたくなってきた……。絶望している声が聞こえたと思ったらゾーイだった。


「会わなければ大丈夫だよ。この世界だと厳しいけど」

「もし会ってしまったらどうすれば?」

「逃げられるんだったら逃げる」


 難しいかもしれないけど、それが最善策。

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