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32話 国の歴史

 ゾーイが持ってきた本の中身を見てみよう。これなら大丈夫。


「あかり、これは大丈夫そうか?」

「うん、なんともなさそう」


 先程みたいに悪寒はなにも感じない。椅子に座り、私をはさむように2人が両側に座ったのを確認し、本を開く。開いてめまいが起きそうになった。まったく理解できなくて気を失いそう。だけど、今回は強力な助っ人が隣に2人もいるからね。ある程度は頑張るけど、無理そうだったら助けてもらう。


「もくじ……」

「それはあとがきだな」

「左から開くのよ」


 日本の小説本と同じように右から開いたら、本の最後を開いてしまって2人からツッコミをもらった。恥ずかしさで耳が熱くなってる。


「うんと、国の歴史の始まりは少年……100? 違う……。あ、これサウザントだから1000か」

「【1000年前、この国は1人の少年によって創られた】」

「それだ」


 ガインさんがいるから机の下に隠しながらエヴァンが説明してくれたことをメモ帳に書いておく。英語なうえに、私記憶力もあまりないからね。


「次は、時代が飛んでる。500年前かな?」

「そうね。【少年が王となりて時が経ち、怪物が突如として現れた。街の者達が混乱し、次々と倒れていく】。この怪物については何も書かれてないわね」

「クトゥルフなのか、神話の怪物なのか。どっちだろう」


 著者(ちょしゃ)の人、そこをもっと詳しく書いて欲しかったな。とりあえずこれも書いておこう。


「あかり、この倒れていくというのは今起きていることと同じか?」

「どうなんだろう。この倒れていくが今と同じく気絶しているならば、手当てとかすれば目を覚ますよ。でも、クトゥルフっていうのは見るだけでSAN値、つまり正気度が減るってことになる。そして、今回襲ってきた深きもの以上に強大な存在を見てしまうと、死んでしまう」


 私の説明にエヴァンは無表情に近い顔だったけど、ゾーイは青ざめていた。そりゃそうだよね。見ただけで死んでしまうなんて呪いみたいなものだから。

 それにしても、死がいつもそばにある2人でもこんだけ顔が変わるんだね。


「もしかしてだけど、さっき本を見ないでって言ってたのも同じことになりやすいから?」

「可能性は否定できないかな」

「なおさら手放したらダメだったんじゃないか?」

「そうなんだけど、ガインさんが入ることを許可してくれたからこそ、自分たちはここのルールを守らなきゃいけないし……」

「When in Rome, do as the Romans do.ってことか」

「うん」


 ルールが決められている以上それを守らないといけない。自分はれきっとした日本人だから。例えここが異世界だとしてもそれは変わらない。


「あの本のことは諦めよ。それよりも情報を探さなきゃ」


 再開しようとしたとき、ガインさんが近づいてきた。


「すまんが、一瞬だけここから出る。急用が入ってな」

「分かりました。私たちはしばらくここにいます」

「ああ。心ゆくまで探し物をしててくれ」


 そう言ってドアを開けて慌てて出ていくガインさん。外で何かあったのかな。気になるけど、まずは本の方が大事だ。


「えっと、続きはモンスター……殺す……」

「【怪物を倒すために悩んでいた王は、1人の男から異なる世界より人を呼ぶ召喚術を授かった】」

「これ、私と高校生たちが呼ばれたときに使われたのかな?」

「おそらくな」


 召喚術というより次元を超えさせるクトゥルフ。誰がいたかな。

 必死に頭の中で、これは違う、これでもないって思いながら情報を整理しつつ探しているけど、出てくるのは漫画とかアニメのことばっかり。

 これだったらもっと動画みたり本買って勉強しとけばよかった。


「【にっぽんという国から勇者を呼ぶことに成功したが、その代の王が突如として失踪したため禁止された】」

「失踪ということは、この国の王様も……」


 失踪となればおいそれと使えるものではない。禁止されているなら、なぜ王様は召喚術を使ったんだろう。


「そこまでして呼ぶほど危機的状況だったということ?」

「それにしては平和だがな」

「エヴァンからしたらそう見えるんだね」


 戦争に行った経験があるからこそ空気感というものをエヴァンは知っている。私は資料でしか知らないから実際に知っているわけではない。所詮は本の知識でしかない。


「悩んでいるみたいだね」


 ゾーイでも受付さんの声でもない、誰かの声が聞こえてきて心臓が飛び出しそうになった。いったい誰? 心臓に悪いことしないでよ!


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