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3話 現代機器は便利だけど、今は使えません

 どれくらい泣いたかわからないけど、喉渇いたな。



「落ち着いたようだな」

「ごめんね」

「謝る必要はないが、慣れないとな」



 エヴァンの迷彩服の胸あたりがパンダの黒目の部分みたいに涙で濡れちゃった。鼻水はつけてないよ。

 泣いてスッキリしたけど、これは一時的にしかならないものだよね。彼も言ってたし。

 すぐは無理だろうけど少しずつ慣れなきゃ。



「これからどうする?」

「どうしよう」



 お城らしきところから逃げちゃったけど、戻るのも何か嫌なんだよな。ほら、嫌な人と顔合わせると気まずくなるってこともあるでしょ?

 でも、ここから別の街を探すためにあっち行ってこっち行ってって体力、私にはないから疲れるしな。



「服装とか変えていったん街の方向に行こうかな」

「服を変えるのはいいが、どの街からここに来たんだ」

「あ……」



 そうじゃん。無我夢中でここまで走って来たから道とか全然覚えてないよ。

 勘を頼りにって思ったけど、そうやって迷子になりかけたこともあったからな。高校生の時テーマパークで。



「何も策がなさそうならここにいるのも一つだが」

「こんな怖いところにはいられないよ」

「ならどこかに向かって歩いて、人に会うのを祈るしかないな」



 そうするしかないのかな。

 疲れることはあまりしたくないんだけど、怖い思いするよりかはいいかな。



「……私体力ないから時々休むこともあるかもしれないけど、それでいい?」

「ああ。緊急の時以外は休め」



 そう言ってからエヴァンは自分が持っていたリュックの中身を見ながら準備し始めた。

 サバイバルの基礎があるから全部任せようかな。



「とりあえず肉は食っとけ。一時的に体力がつく。その間に準備をしておく」

「お願いします」


 全ての物を外に出して一つ一つ確認しながら丁寧にリュックの中へと戻していくエヴァン。その間私に話しかけても手は止まっていなかった。

 何も知識がない人がやるより、慣れている人がやった方が断然いいってことは良く知ってる。

 でも、ずっとエヴァンに任せるわけにはいかないから少しずつサバイバルのこと教えてもらおうかな。


 お肉を食べ終えてから何もすることがないな。

 ずっと何もしないってのも気が引けるから、無い知恵を振り(しぼ)りながらこれからのこと考えてみるかな。

 まずはここがどこなのかを知る必要があるけど、これは人に聞いた方が早いと思う。

 そして、エヴァンが何故ここにいるのかだよね。


 私が熊に襲われそうになった時に、多分あれは銃の音だと思うけど、それに助けられた。

 急に現れたってことは召喚っぽいけど、言葉とか発したかな。呪文的なもの。



「うーん」

「準備出来たぞ」

「あ、はーい」



 紙があればまとめられるんだけどな。

 あ、そういえば鞄の中にスマホがあったじゃん。その中のメモ帳使えばまとめられる。



「現代機器があると便利ー!」

「スマホか。充電は出来んから使いすぎるなよ」



 恥ずかしい物なんて一個もないから別にいいけど、勝手に鞄の中を見るのはプライバシーの侵害です! 

 なんて言えればよかったんだけど、小心者の私はエヴァンの行動が急すぎて何も言えなかった。こういうときに言えるようになれたらいいんだけどな。



「ああああ……」



 電波は圏外でスマホでマップを見たりとか調べ物とかが出来なかった。

 マップは迷子になる私にとっては重要な物だし、ネットは分からないことを調べる時に必要なものだし。

 仕方ない。諦めよう。時には諦めは肝心だから。


 メモとかは電波がなくても使えるからそれだけにしとこう。



「ほら行くぞ」

「うん」



 森の中を抜けて、それから人が通りそうな道沿いを歩き、私がひぃひぃ言いながら彼についていって、休憩しては歩いてを繰り返して、あっという間に夜になってしまった。

 見晴らしがいい草原で今日は野宿になっちゃったけど、もう足がむくんじゃってこれ以上は動けそうにない。


 ちなみに通行人は誰もいませんでした。悲しすぎる。



「ここらで今日は野宿だな。おい、大丈夫か」



 地面に座ってやっと落ち着けたけど、エヴァンの問いに何も答えられません。疲れすぎて。



「俺たちがいた世界だと車とかがあって便利だからそれで体力が落ちるのはそう珍しいことではないが、これから先、車も自転車もないがどうするつもりだ?」

「うー……」



 車か。あったら便利だよなって思ったけど無理なことだよね。専門の人たちがいないと作るのは難しいし、材料もないからな。5年も車に乗らなくなっちゃったからペーパードライバーだし。



「話せないほど疲れたのか?」



 首を縦に振ることすらも億劫(おっくう)だけど、返事はしなきゃ。

 って思ったけど、頭が重くて結局返事を返せなくてずっと地面ばっかり見てる。エヴァンが呆れた雰囲気をだしてるけど、そんな幻滅しなくてもいいのに。私傷付きやすいんだからね。


 息が整って、ようやく顔を上げられた。上げた先で焚火の準備をしているエヴァンを見ながら、とりあえず今わかっていないことまとめようかな。


 ・ここがどこなのか

 ・彼がどうやってここにきたのか

 ・自分の創作キャラクター召喚というスキル? はどんなことが出来るのか


 の3つ。1つ目のは他の人に聞くでしょ。2つ目はエヴァンをどうやってここに呼んだか。これは3つ目と少しかぶるね。最後のが少しでも分かったらやることが増えていきそう。


 頭痛くなるけど、こういうのは楽しいんだよな。

 そのキャラクターが何故そうなったのかっていう訳を作れるから。

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