27話 恐怖
夕食を食べ終わり、しばらくしてから寝ようかとなった夜。毛布を借りようとしたけど、叩けばほこりが出てくるものは極力避けるようにとゾーイに言われ、ギルドの隣にあった宿から毛布を借りた。たった短い距離の移動なのに、今まで叫んでいた人たちの言葉『青いなにか』がいつ来るか分からない恐怖で背中がゾクゾクする。建物へ入るたびに急ぎ足でドアを勢いよく開け、中の人をびっくりさせてしまっているのは本当申し訳ない。静かに閉めなさいとか言われそうだけど、そんなこと怖くなっている時に考えられないからね。
「怖いのか?」
「うん。見えないからこそ幽霊がいるんじゃないかって想像しちゃうの」
「それはいつもか?」
「いつもだね」
そう。いつも気配を感じる時がある。風呂場とかだとよく聞く話だけど、自分の場合は自室にいても同じことが起きる。もし、自分が見える人だったら確実に悲鳴をあげていると思う。
「安心させられるものがあれば平気か?」
「人とかがいれば」
「それじゃ私と一緒に寝ましょ」
いつのまにか後ろにいたゾーイに抱きしめられそのまま、床にゆっくりと倒れた。床に直で寝るのもゾーイが許さなかったからか、布が敷かれている。
「寝不足は美容の敵よ」
そう言いながら私の頭を撫でながらもゾーイの手の動きがゆっくりになっていく。眠りに入るのが早いんだね。逆に私はとても遅い。1時間過ぎても寝られないことが多いから少し羨ましいな。
「エヴァンは寝ないの?」
「やること終わらせたら寝る。先に寝とけ」
「うん」
誰かと一緒に寝るのが小さいとき以来だからか、いつもとは違って早くに眠気が来た。
朝目覚めると周りはすでに起きていて、今日も気絶している人たちの看病をし、忙しく動いていた。私はいつの間にか床から近くにあった木製の長いイスに移動していた。近くにゾーイがいないから移動させてくれたのかな? エヴァンは近くにいるけど、ゾーイはどこに行ったんだろう。
「起きたか」
武器の点検をしているのか、パーツごとに分解された銃がエヴァンの近くの机に置かれている。
「おはよう。ゾーイは?」
「朝飯を取りに行ってる」
「そっか」
眠気で働かない頭を必死に動かしながらゾーイを探す。すると奥から2人分のスープをゾーイが持ってきた。え、2人分?エヴァンの分は?
「あら、起きたのね。よく眠れた?」
「久しぶりにぐっすり眠れた」
「それは良かった」
起き上がった私の隣に座り、にっこりと笑ったゾーイからスープが入った木皿を受け取った。行儀悪いけど片手だけでいただきますと言ってから食べる。
「ねぇ、ゾーイ。エヴァンのは?」
「私が起きた時に食べてたわよ」
「そっか。ゾーイが戻ってきたときに2つしか持ってなかったからびっくりした」
「優しいのね」
ゾーイが微笑む姿を見ながらもゆっくりとスープを食べつつ、今日はどうしようかと話し合った。
「昨日できなかった報告と今日は街の中を探索しよ」
「報告は最初にするか」
「そうね。昨日と何も変わらなそうなら、何か本でも探してみるのはどうかしら?」
街を周って何もなければ本を借りて少しでも情報になりそうなものを探さなきゃ。どんな小さいことでもそれが大事なことにつながることもあるし、クトゥルフで情報を集めるのは必要なことだしね。後、なるべく戦闘しないことも大事。
朝ごはんを食べ終わり、受付さんに青く人ではないという情報を手に入れたことを報告し、今日も情報集めをすることを伝えた。
「街の中だとはいえあんなことがあったんだ。気を付けるぞ」
「襲撃にも遭ったって受付さん言ってたし」
いつ襲われるか分からない恐怖と戦いながらも私たちは街を歩きまわり情報を集めることにした。最初は大通り。襲撃者に襲われていろいろとぐちゃぐちゃになっている。昨日は動転していて細かいところまで見られなかったけど、改めて見ると血や何かが地面に転がっていた。遠くからではよく見えない。近づこうとしたけど、エヴァンに止められてしまった。
「俺に任せておけ。見終わったら何があるかは報告する」
「……分かった」
そう言って特に激しい場所に向かっていくエヴァンを、ゾーイと私は見守ることにした。
「ゾーイ、大丈夫?」
「え、ええ。平気よ」
そう言いつつも私の体を抱きしめていた腕が微かにだが震えている。SAN値が減ってしまったのかもしれない。今少しでも癒せるならしておいた方がいい。減りすぎて発狂とかしたら大変なことになるから。




