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19話 注意喚起

 受付さんに貰った地図を頼りに依頼で指定されている場所にまで向かっていると、道の先から若い男女の声が聞こえてくる。

 他の冒険者さんたちかな。


「余裕ー!」

「色が変わってるけど、たかがスライムだしな」


 この声、聞き覚えがある……。もしかして。


「あ、オタクがいる」


 召喚時にいた高校生達だ。制服からこの世界の服かな、それに着替えて、鎧を(まと)っていた。

 お城でわけがわからないまま笑われたときの場面が脳内をめぐる。その時の羞恥と、この場から逃げ出したい衝動に駆られる。中学のころにこうやって笑われていじめられた時みたいで、嫌だ。けど、大人になってバイトだけど社会の荒波に()まれたことで、少しだけ耐性もついてきた。


「オタクでも別にいいでしょ? あなた達に迷惑かけてないんだし……」

「いるだけでキモイじゃん」

「そんなこと言わなくていいじゃん」


 頑張って言ったことに、好き放題言う高校生に押されて何も言えなくなる。昔の嫌なことを完全に克服した訳ではないから、次第に言葉に詰まっちゃって、俯いた時


「人の趣味を馬鹿にするやつはそれ以下だと俺は思うが、君たちはどうかな?」


 と後ろからエヴァンが声を出した。私だけを見ていたみたいで、後ろにいるエヴァンを見た途端、女子から黄色い声が上がった。うん、分かるよ。エヴァンかっこいい顔してるからね。だけど、同性でも突然上がった高い声は苦手なのよ。耳の奥が痛くなる。


「あの、お名前はなんて言うんですか?」

「とてもお強そうですし、仲間になってくれませんか?」


 オタクなんかよりもこちらについて来た方が楽しいですよとか思ってるのかな?


「あかり、君の知り合いか?」


 女子の甲高い声を無視して、エヴァンが私に問いかけてくる。首を横に振る私の答えに、頷いたエヴァンは用はないと馬を進めた。


「ちょっと待って。彼らに言わなきゃいけないことが」

「……なるべく早くな」


 なるべく早く離れたいとでも言いたそうな表情をエヴァンがしている。

 ここがクトゥルフ神話TRPGの世界だと教えなきゃ。優しすぎると言われても教えないで行ったら、今でも不安だけど、その気持ちが更に増えてしまう。


「クトゥルフって言っても分からないかもしれないけれど、危険なところには行かないようにしてね。後、直感は馬鹿に出来ないからそれも大事にするんだよ。この世界は変なものに出会ったら、正気度が下がってしまうから」

「オタクがなんか言ってるんだけど」


 笑いながら馬鹿にしてくる。まともに聞いてくれないとは分かってる。それでも、言っておかないと。


「俺には君たちがどうなろうと興味はないが、人の忠告はきちんと聞いておけ」

「はぁーい」


 語尾にハートでも付いているかのような返事の仕方。

 エヴァンが言うことにはしっかり返事をするんだね。

 でも、ちょっと複雑。

 私の外見は高校生達に比べて普通の顔だし、服はパーカー。化粧も多少はしてるけど、そこまで変わらない。雰囲気も暗めだから。


「終わったか?」

「うん……」

「じゃあ行くぞ」


 言い寄ってくる高校生達を無視して、馬を進めるエヴァン。一応は言ったけど、ちゃんと覚えていてくれるかな。


「言っても聞かないならほっといていい」


 エヴァンはこうは言ってるけど、やっぱり心配なんだよ。心配だ心配だって言ってるけど、じゃあ、責任を負えるかって言われると何も出来ない。


「君の性格上、気にするなっていうのは難しいかもしれんが、言うだけのことを言ったんだ。あとは彼ら次第だ」


 そうだといいな。


「俺らは俺らでやるべき事に専念しなくては」


 後ろから聞こえる高校生たちの声がどんどん遠くなっていく。心なしか、高校生たちに会う前よりも、道を進んでいく速度が早いような。


「狼がいる場所はどこだったか」

「デリス草原にいるよ」


 地図と写真で撮っておいた情報を照らし合わせて確認する。


「ここから道沿いだな」

「うん」


 真っ直ぐ道が続いた後、坂道を下っていく。急斜面ではないけれど、ボールとか転がりやすい物を置いといたら勝手に転がっていく程の斜面だった。


後もう少しで依頼先にたどり着く。

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