18話 次の依頼へ
「移動間に必要だからって流れるように冒険者登録したけど、この世界に来てしまった以上どうにかして生活しなきゃ」
「今のところ依頼をこなすことくらいか」
たくさんの依頼書が貼ってある掲示板を見るエヴァン。その前には、他の冒険者の人達が仲間と相談しながら紙を取り、受付に向かって、外に出ていく。そんな姿が何度も繰り返されていた。
「早くしないと取られるな」
人の根を掻き分けて掲示板に向かうエヴァンを私は追いかけた。戦闘とかしたことがない私は、他の人達よりも力は弱い。根からはじき出されないようにエヴァンのの服をしっかり掴んで引っ付いておかないと。
「スライム討伐か狼討伐のどちらにする」
「危険が少ないほう」
「どちらも危険だと思うが」
「より少ないほう」
自分も行くとなると怪我を負うかもしれない。エヴァンも怪我するかもしれない。いくらエヴァンを強い人にしたって彼も人だから、何かが原因で動けなくなることもある。それを考えたらより少ないほうが断然いい。
「特徴も分からんし、また本を借りるか」
「そうだね」
そうと決まれば、私たちは受付に向かい、本を借りた。持ち出しは駄目だけど、施設内であれば貸し出し出来るのはありがたいなって思う。現代人の、しかもアルバイトをしている私からすれば、無料ほど嬉しいことは無い。その分しっかりとルールは守らないといけないけれど。
狼とスライムの情報が書かれている所を写真で撮ったけれど、どちらも弱点とどの場所でよく見かけかるということし書いていなかった。
「弱点と居場所しか分からないね……」
「スライムは俺も同じく。ただ、狼に関しては隠れながら倒せば簡単にいけるらしいぞ」
「そうなの?」
同じ本を読んでいるはずなのに得られる情報が違うのは何でだろう。
「それってどこに書いてあった?」
「さっきから一緒に見ている本にだ。薬草採取の時、凝視ってしただろ。それをその本にもしただけだ」
「なるほど」
凝視することで更に情報が見られるっていう仕組みか。じゃあ、これから調べものをするときは毎回した方がよさそうだね。
その時、覚えていられたらだけど……。
「狼の依頼書ってまだ残ってる?」
エヴァンと一緒に依頼書が張られている所に向かった。先程よりかは掲示板の前にいる人は少なくなっているけど、それでも私の身長では全然見えない。
「残っているぞ」
「じゃあ、それ受付に持っていこ」
掲示板に貼ってある依頼書をエヴァンが剥がし、受付に向かう。不思議だよね。画鋲とかあるわけじゃないのにその場に留まってる。どうやって壁に引っ付いているんだろう。
本を返すついでに依頼を受けて、私たちは狼がいると言われている場所に向かおうとしたけれど、そこに行くまでの地図がないことを思いだして、受付さんに地図を貰った。
前回持っていなかったけど、今回は持っていたほうがいい気がする。
言葉では表しずらいのだけど、今まで感じたことがある心がザワつく感じ。これ以上は進んだらいけないよって言われているような感覚。
「行くか」
「うん」
ギルドから出て、ネイビーサンを連れた私たちは街の外に出るため、門へと向かった。
出る時は承認とかはいらないようで、すんなりと通れた。
「街の中だと乗れなかったけど、街からある程度離れたし大丈夫だよね」
従魔登録で貰っていた首輪をつけてから、周りが何も言ってなかったから一緒に見えなくなっていたんだと思う。姿が見えなくなるっていうのはとても便利だね。どこかに慌てて隠す必要もないから。
「ほら、乗りな」
「ありがと」
先にエヴァンが乗って、片手で私を持ち上げてくれた。また後ろに乗るのかと思ったけど、今回は前だった。なんで前にしてくれたんだろう。
「前乗っていた時、後ろからじゃ景色見えなかったろ」
「確かに、ちょっと見えずらかったけど……」
見えないってあの時私言わなかったし、エヴァンずっと前見てたから気付いてないのかと思ってた。些細な事だけど、気付いてくれてこうして行動してくれると、嬉しくて脈が早くなっちゃう。
「これなら俺もあかりも景色が見れるしな」
「うん。あ、でも、横向きになっていい? 支えが欲しい」
既に乗っている状態だと難しいけど、何とか体を横にすることが出来た。エヴァンの胸に肩を預ける形になった。背中を預けても良かったけど、こっちの方が安定している気がする。
「よし、じゃあ目的地に行こうか」