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15話 依頼完了

「ここらを探せばいいんだよな?」

「うん。後、目を凝らして探すと見つかりやすいって」

「それは先程からしているのだが、一向に見つからん」


 私も座りながらしているけど、なんで見つからないんだろう。

 他に探すためにヒントとかがあるのかな?

 スマホで取っていた写真の本には、目を凝らして探すといい以外のヒントは書いてないし、手で鼻を押さえているのに、さっきから血の匂いがして不快な気分になっちゃうし。


「ねぇ、エヴァン。さっき花の香りがしたって言ってたよね? それは今でもする?」

「するがそれがどうした?」

「どこからするかって分かる?」


 もしかしたら匂いがヒントなのかも。

 本当にそうなら、またエヴァンに任せることになってしまうけど。


「匂いが強いのはこっちだな」

「じゃあ、それとは逆の方向行ってみない?」


 左右前後を見渡し、匂いを嗅いだエヴァンが左側見ながら首を傾げている。

 

「何故だ? こっちにあるのかもしれんぞ」

「甘い匂いで誘い出して騙すこともあるかもしれないから。世の中にはそうやって獲物をおびき寄せる草もあるみたいだし」

「なるほど」


 右側に向かって歩き出すエヴァン。

 重い腰をあげてエヴァンに付いていくと、より血の匂いが強くなってきた。最後まで耐えきれるかな。


「おい、あれじゃないか?」


 水が溜まっているだけの池だと思っていた場所から、エヴァンが歩く先に小川が続いていて、その先には滝があり、そこの水溜まりの周りに赤黒い花が咲いていた。


「これだけ近かったら水が落ちる音で気付くはずなんだけど」

「確かに。流れ落ちる音は結構大きいからな」

「とにかく、これで合ってるか確認してから採取しよっか」

「そうだな」


 似たような薬草があるって受付の人も言ってたから、1つ1つちゃんと写真で確認して、鞄の中に入れよう。

 時々エヴァンが横から顔を覗かせ、私がもっているスマホの写真を確認しながらまた採る作業に戻っていく。

 ある程度採り終わったエヴァンが私に近づいて、リュックサックに入れていた。まだまだ中にはいるんだけど、他に取る人が困らないように少しだけ残して、ギルドに戻ろうかな。


 それにしても、なんで血の匂いがしたんだろう。

 もしかしたら受付の人が知っているかも。帰ったら聞いてみよう。

 さっきの池に戻るとお馬さんが草を食べていた。そういえば、名前も考えてあげなきゃいけないんだった。

 どんな名前がいいかな。ネイビーは絶対入れたい。


「どうした、乗らないのか?」

「あ、うん、乗る」


 考え事している間にエヴァンはお馬さんに既に乗っていて、手を私に向けて差し出していた。

 いろいろと考えるのは乗ってからにしよう。


「多く見つかってよかったな」

「うん。ただ、これが違う薬草だったら悲しいけど……」

「その時はまたここに()りゃいい」

「そうだね」


 間違っていないことを祈るしかないかな。エヴァンが言うようにもう一回ここに来て探せばいいし。

 ゆっくり進んでいるから街まではまだまだ遠いし、その間にこの子の名前を考えよう。


「先程から何を考えているんだ」

「この子の名前」

「まだ決まっていなかったんだな」

「なかなかいいのが思いつかなくてね」


 名前と共に一生を過ごすわけだし、いい名前にしてあげなくちゃ。小説を書いているのに語彙力が低いんだよね、私。そこももっと鍛えなきゃな。


 うーん、だめだ。太陽のサンしか頭に浮かばない。他の国の言葉を調べて……ってそうだった。電波ないから検索出来ないじゃん。いつもの癖で鞄から取り出して調べようとしちゃってた。


 そうこうして悩んでいるうちに街についてしまって、エヴァンと私は証明書である印を見せて街の中に入った。結局名前全然思いつかなかった。


「報告に行くぞ」

「うん。あ、でもこの子どうしよう」

「いなくなるなんてことはないかもしれんが、心配ならここで待っておくか? 俺が報告してきてもいい」

「頼んでいい?」


 鞄をエヴァンに渡し、建物の中に入って行くのを確認して、お馬さんを見つめた。

 あれ、そういえば私挨拶したっけ。


「いまさらだけど、よろしくね」


 確か鼻に手を近づけるといいんだったような。匂いを覚えてもらうためだったかな。

 最初から懐いている状態だとは言え、これから移動とかでお世話になるわけだから挨拶はしておかないとね。


「おい、あかり。中に入って従魔登録しろってよ」

「あ、うん。ちょっと待っててね」


 依頼を報告し終わったエヴァンが戻ってきて鞄を受け取り、背負ってからお馬さんの背を撫でて、エヴァンと一緒に中に入って行く。 

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