11話 いよいよ出発
「なんて?」
「スマホで写真とればいいんじゃないか? って言ったんだが」
すまほ……スマホ……。
「ああああ!」
「うるさいぞ」
「そうだよ! 便利なやつがあるのに全然思いつかなかった! なんで教えてくれなかったの!」
「本にずっと拘ってたから必要ないかと思ってな。本当に頭の中にはなかったのか?」
「うん」
なんでスマホのこと忘れてたんだろう。スマホ依存だって自分で分かってるほどなのに、お姫様と会ってからずっと触ってなかった。
「大丈夫ですか?」
「あ、すみません。急に大声出してしまって……」
受付さんに驚かれてしまった。受付さんどころか今この場にいる人全員私の方を見てる。どうしよ、恥ずかし。
とりあえずエヴァンの目の前に立って、彼を盾にして隠れておこう。これなら安心だ。見られるのは受付さんだけになるし。
「依頼どうしますか?」
「受けます。それと、本を見てもいいですか?」
「分かりました。では少々お待ちください」
依頼書かな? それに印を押して、本を取りに裏に行ってしまった。
来るまで暇だなって思ったけど、今のうちにスマホの充電とか確認しとこう。前の80パーセントのままなのか、それとも充電が切れちゃってるのか。写真撮るときになかったじゃ悲しいからね。
鞄の中にあるスマホの充電を確認してみたら100パーセントになっていた。1回も充電とかしてないんだけど。 なんでだろう。
写真を撮るときは、撮っていいか聞いてから撮ろう。
どうやって聞こうかな。写真を撮りたいんですと通じるかどうか。
複製っていう概念があるから通じそうな気はするけどね。
「薬草が載っている本持ってきましたよ」
「ありがとうございます。それと、あの、1つだけ相談がありまして」
何でもだけど、相談するときっていつも緊張しちゃうんだよね。
「はい、なんでしょう」
「その部分を写すことは出来ますか?」
「複製とかが出来るということでしょうか!」
受付机から勢いよく身を乗り出し、興奮した顔を近づけてきた。
その目が飛び出てしまうんじゃないかと思えるほど開いててちょっと怖い。
自分でエヴァンの前に移動したのに、後ろに下がれなくて受付さんの顔が目の前に。
「複製という技術を見たことがないので出来るとは言えないんですけど、似たようなものだと思ってもらえれば」
「それは他の人は使えたりしますか?」
「たぶん、私だけかなって……」
たぶんと言ったのは、一緒に召喚されていた高校生たちの事。
今の時代だと高校生でもスマホを持っているから、出来ていてもおかしくない。
充電がどうのこうのとかは分からない。
他人のスマホを勝手に見るほどプライバシーのかけらもない大人ではないし。
「そうですか……」
とても落ち込んでいるけど、ごめんなさい受付さん。
撮ったとしても紙にすることは出来ないと思う。紙にするための機械がないから。
「そ、それじゃこの本ちょっとお借りしますね」
「複製が終わったらしっかり返してくださいね」
「はい」
依頼書と本を受け取り、ギルド内でも人が少ない方へ。見られるのはちょっと恥ずかしいから。
さっきの私の悲鳴と、物珍しいかもしれないスマホでこれ以上の注目を浴びたくないからね。
「なにか疲れた……」
「あんだけ大声を上げたらそうなるな」
少し休んで、写真を撮ったら外に出よう。
武器は今のところ準備できないかな。エヴァンは銃があるからいいけど、私は身を守るものがない。
お金のことについてもまだ分かってないし。
「充電は大丈夫か?」
「うん、それは大丈夫だった」
薬草の名前が書いてあるページ、っと。
目的のものは見つけたけど凄く赤黒い色してるし、これ本当に薬草なの? 血を吸ってこの色になったとかじゃない?
依頼のだし撮るけど、あまり見たくはないかな。
採取との仕方とか生えている場所も念のため撮っておこう。
それにしてもスマホが機能してくれてよかった。正直撮るまでは不安だった。
「撮れたか?」
「うん」
「じゃあ行くぞ」
本を受付さんに返して、いざ初依頼場所へ。
薬草採取の時に何も起きなければ、スマホで出来そうなことをもっと調べておこうかな。
「あ、ご飯買っとかないと!」
「食べる物には気を付けておけよ」
「そ、そうだね」
日本とは違ってここの食べ物はどういう味をしているのか分からないから買うときは慎重に。
試食とか出来ないかな?
出店での食料選びは、慎重になり過ぎて全然買えなかった。
現地調達かな。
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