1話 巻き込まれました
家から出て、今私が向かっている場所はバイト先の牛丼チェーン店。
ちょうど学生さんが帰る時間帯とかぶっている。
これからバイト先に向かっているんだけど、ちょっと今日は憂鬱なんだよ。
なんでかって?
嫌いな人とシフトが被っちゃったから。
なんだよね。その人のせいで毎日心臓が痛くなって病気になってしまってね。
バイト先に不満はないけど、その人がいるから楽しいのも楽しくなくなっちゃう。
病気になってからはシフトが被らないようにしてたんだけど、今日は運が悪すぎた。
こんな時は推しを見て頑張ろうっと。
中学2年生の頃からいろいろ見てきて推しが何度も変わっているけど、見ているとやっぱり元気になるね。
オタクになってから結構経って、その間にいろんな推しが結婚したり死んだりしているのを見て感動していたのがいい思い出。
挙句の果てに推しが好きすぎて、二次創作で自分でキャラを創作してその世界に入れて絡ませる始末。
そこまでいくと周りから引かれそうで、変な目で見られたくないから常に隠している。
今のでわかったかもしれないけれど、私は隠れオタク。
アニメや漫画、そして創作キャラを愛するオタクである。
そんな私の前から高校生たちが歩いてくる。
部活をしてない学生さんはこの時間に帰ってくるのが普通なんだけど、ちょっと恥ずかしいなって思うことがある。
就職しないでバイトとかって思われていそうで。
したほうがいいんだけど、なんかね。
自己嫌悪になりながらバイト先に向かっていたら、突然足元が光って、なにがなんだか分からないまま落ちているのだけはわかった。
ちょっと待って! むりむりむり! 心臓がっ! こわいこわいこわい!
こういうフリーフォール系の物は苦手なんだって!
「いっつ……」
やっと収まったと思ったら硬い床に思いっきりお尻うった……。また青あざができちゃう。
「おおっ! 勇者様」
「ほかにも巫女様もおられます!」
「これで魔王を討てますね」
え? なに? いきなり勇者とか巫女とかJRPGの話?
もしかしてゲームみたいな世界のところに落ちた? そんな馬鹿なことってある?
でも私歩きながらスマホゲームはしていなかったよ。
歩きスマホは危ないからね。
「あなたは?」
「え、あ……」
大騒ぎした後に、騎士の一人? が私に気づいたようで話しかけてきた。
こういう時に声が出せない。
まずここどこ? 目の前にいる人どうみても外国人。
てかなんで相手の言葉がわかるの? 私外国語話せないのに。
そもそも、なんでお城にいるの。呼ばれた覚えいっさいないんだけど。
「あなたのスキルは何ですか?」
「えっと……」
スキル? なにそれ。そんな技能持ってないよ。資格とか自動車免許しか。
「混乱しているようじゃ。見てあげなさい」
金色の王冠を被った白い立派なおひげを持つ王様らしき人が、ガラスみたい綺麗な丸い球体を持っている人に話しかけて、その人が近づいてきてから聞き取れない言語で何か呟いたけど、全然分からないし、なにを見られているのか分からないけど、私のことは見ないで! もしいろんなことが見られるんだったらオタクだってことがばれちゃう!
「巻き込まれた一般人。スキル『創作キャラクター召喚』と」
「なんじゃそれは」
「わかりません」
もう最悪だよ。スキルとか意味わからないし、なんで水晶でみたらそんなことが分かるのさ。
やだ、もう恥ずかしすぎる。いますぐここから立ち去りたい……。
私のスキル?を聞いた王様たちがどんなものなんだって首を傾げているけど、大したものじゃないんだよ……。
「創作キャラってなんだよ」
「もしかしてオタクってやつなんじゃない?」
「草はえるんだけど」
追い打ちをかけるようにたぶん高校生たちだと思うけど、馬鹿にしながら笑う声が聞こえたけど、もうここにいられない。誰かが何か言っていたけど、何も聞こえなかった。
勢いよくお城の外に出て無我夢中で街やら道やらを走っていたら周りはもう夕暮れ。しかも、最悪なことに森の中で彷徨ってしまった。
「どうしよう、迷子だ」
スマホで誰かに助けを呼んでもらおうとしたけど、電波が入ってない。
持っていたカバンの中を確認したらスマホと財布。後バイト用の服が入っていた。
とりあえず、落ち着こう。森の中でこれ以上迷ったら最悪死んじゃう。
「……どちらにしても死ぬかも。サバイバルとか出来ないし」
走っってきたから疲れてお腹空いてきちゃったし、喉も渇いてきた。空腹は我慢すればいいけど、渇きはどうしようもないからな。
「あ……」
泣きっ面に蜂ってことわざあるけど、本当に不幸なことって続くんだ。
雨が降ってきたから風邪ひかないようにって木の下に移動したら、まさか正面の草むらから熊が出てくるなんて思わないよ。
親孝行できなくてごめんなさい、お父さんお母さん。
怖くて目を瞑っていたら、軽い音と正面に誰かが立っている気配がした。
護ってくれた?
「無事か?」
誰だろうと目を開けたらそこには私が書いた小説の主人公エヴァンに似た人物が立っていた。
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