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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
88/113

八十五話 学院戦






10月1日、午前10時頃。

ザラデス家側にはレイレンとレインド、凛堂が付いて行き。

ロルナレ家側にはブレイド一行と巳浦、ヴェルウェラが同行していた。




4台の馬車が二手に分かれ北方の闘技場に着く形にして集中するのが目的だ。

巳浦はヴェルウェラにずっと腕を組まれており外を出歩くのも恥ずかしがっていたが。


9時過ぎに北側にある街ベンデに到着し、ブレイド組とは別れて好き勝手動いている。

若い頃を思い出す。
















ブレイド一行はと言うと以前と比べ強くなった自分達の力がどの程度か気になっており、闘技場でのブレイドの戦いを基準に考えるつもりだ。


ブレイドは俺が強すぎて参考にならねえな、などと茶目っ気を出しており普段通りの空気感にクラス達も安心する。

それはそうと生意気なので全員して首を絞める。




そんな呑気な時間を過ごしていると、ソディア達に帰国した連絡をしてない事に全員が気付く。

まぁ良いか、と一旦置いておき適当に散策しようとした時。





ーーーーーブレイド〜〜!何処だ〜〜?

ーーーーー私達も見に行くわよーー!

ーーーーー私は付き合いで見に行くだけだぞ?


学院で毎日聞いていた彼女達の声を半月以上振りに耳にする。

四人が振り向くと、丁度来た道をなぞる様に後ろから小走りで追いかけて来ていた。



ブレイドが駆け寄ってソディアに声を掛ける。

周りも付いて行き久方の再会を遂げる。








「よぉソディア!俺前より強くなったぜ!

ーーーー多分だけどな。」


「あぁ、期待しているよ。

それよりも先ずは、おかえり。」

「まだ時間があるだろう?一緒に街を回ろう!」


「あぁ、分かった。

おっとそうだ、修行中に訳ありで金貨を13枚稼いでさ!余りが丁度10枚あるからこれで好きに買い物行けるぜっ!?」


「そうなのか?うーんどうした物か。

貯蓄に回しても良いか?」


「え?ーーーーいや、使おう。

母さんから毎月貰ってる仕送りを卒業までに貯めれば行けるはずだ。」


「んー、でも君が前に言ってたのだぞ?

このままじゃキツい、とか何とか。」

「貯めておこう?」


「ーーーーーうん、ごめん。」








そうして腹が空いて来るのを感じると、ソディアは作った野菜と肉のサンドイッチに果物を潰したジュースなどを、広場に置かれた大きなテーブルの一つに広げる。

便乗してナジャも手作りのクッキーや焼きパン、付け合わせのオレンジジャムを籠から取り出し卓上に置いた。




ブレイズは暇つぶしに来ていただけなので特に何もなく、且つ料理下手で碌な物を作れない為ここに来て女子力もとい家庭力に於いて大きな差を実感し黙り込んでいた。


フレムがそんな彼女達の料理を二人分貰ってくると、ブレイズに一つ渡す。







フレムは冷め気味のパンを少し熱魔力で温めると、それにジャムを塗って美味しそうに食べていた。


試しにサンドイッチを食べてみるととても新鮮で無駄な味付けがなく、美味し過ぎて20秒ほどで一つ食べ終えてしまう。

情けないと思いながらもソディアにお代わりを一つ貰い再度食べていた。


何とも静かで暖かい光景だ。

ナジャがクッキーを皆んなに配り食べてもらっていたが、その時もブレイズだけ2枚貰った。








「中々どうして、良い食べっぷりよねぇ?」


「んっ……………ふん、知るか。」


「私は美味しく食べて貰えるだけで嬉しい。

貴女が使ったご飯、下手でも食べてみたいわ。」


「ーーーーーま、魔物も逃げると評判だが?」


「へぇそう?

ならフレム達に練習で食べて貰って来なさい。」

「美味しい自信を持てたら私達にご馳走して♪」


「わ、分かったわ。

…………二人とも上手だし、いつになるか。」





「私が教えてあげようか?」


「ソディア…………良いの?

無理に時間を空ける必要は無いからな。」


「良いんだよっ。

友達は多い方が楽しいだろう?」


「…………そう、なのかもな。

なら今日の五時過ぎから私の部屋に来てくれ。」


「了解した!色々と聞いてくれっ。」







団体戦以前の頃は、同性と仲良くなる事など考えてすら無かった。


ガトレット、ブレイズ、グラプロ、デガーは特別枠として入学している為誰よりも結果に飢えている。

仲良くやっていては気が保たない故の防衛反応だったのだが、これだけ自身と同等の者となら対等の友達になれる。




ブレイズは今日ソディアに言われた言葉を切っ掛けに初めて正式友達が出来た。

暫し前にソディアがブレイドと初の友人になった時と同じように。




ナジャはソディアが人間的に大きく変化した事を嬉しく思いながら、然りげ無くブレイズに対し、


『私も一緒に友達になるから、宜しくねー♪』


と伝えて余ったクッキー2枚を渡しフィスタの元へ戻って行った。

実感が湧かぬままクッキーを食べ続けた。







「俺は10時過ぎ現在から12時手前までに闘技場に入らなくちゃいけないから…………フィスタ!

お前ら他のグループは11時30分頃までに向かっておいてくれよー!」

「もし混んだりしたら大変だからなー。」


「お前の試合なんか混むかっての。」

「私はフィスタの試合なら全部見に行くわ〜!」


「私実はですね、以前のダイエン共和国の試合以来妙な女性陣に追われてまして。

まぁ、上手く撒いてから行きます。」


「私とフレムは適当な魔力の雑談でもしながら適当に向かう。

ーーーーー他の特待組の三人は知らんが。」




「まぁ来るなら最前列の関係者席に来るだろ。

ちゃんと遅れずに来いよ!俺の見せ場があるんだから!」


ーーーーお前の前にロルナレ家が負け越したら終わりだぞー。





「うるせぇ!あの人達は強いよ、負けねぇ!」


「あぁそうだな。

9月以降私もお前に負けないよう王城での朝稽古に参加していたから良く知っているぞ。」


「俺は3日にはもうダイエン共和国に連れられてたからな、お前の頑張りが見れなくて寂しかったぜ。」

「俺も明日の10月2日からは5時〜8時の稽古に参加するから一緒に頑張ろうな。」


「っあぁ!

巳浦先生?がいつまでも9月以降教師として復帰しないせいでお前直々に明朝の王城へ連れてかれたのに、当のお前が直ぐ他国に行った時は驚いたぞ?」


「うん、俺にも分からない事は有るぜ。」







そうして、時間になるまで各々は好きに動く事になった。

とはいえブレイドは碌に金を使う余裕が無いのでソディアの方から工面して貰う情けない状況であったが。
















12時。

闘技場内には刺激を求めて沢山の国民が来場している。


西にロルナレ家一行とブレイド。

東にザラデス家一行とレイレン。

責任者付きで通路の椅子に待機しており、今か今かと緊張に包まれていた。


巳浦は肩を軽くする様に言うが、これだけの人数に見られるのは幾らなんでも。




ーーーーーと思ったがダイエン共和国で見られてた事を思い出すと割と軽くなった。

まぁ、他のロルナレ家の者達は経験不足の為固く石のようになっている。


一方東はというと。









長男のブレイ、次男のパムルス。

長女のベレッタ、次女のレベルタ。

そしてレイレン。


今回戦う5戦の内の先鋒次鋒、中堅副将、大将はこの上記5名な訳だが。

既に鼻歌混じりに御機嫌な様子のレイレンを他所に他は誰が先鋒をするのかで騒いでいる。




ロルナレ家の人員は、


長男のアラガン、次男のルーラン。

三男のエイガ、唯一長女で参加のイジャエ。

最後にブレイドとなっている。







最後以外はまだ未確定であったが、面倒に感じた責任者の巳浦、凛堂が適当に順番を決めてしまう。


先鋒 エイガ/パムルス

次鋒 ルーラン/レベルタ

中堅 イジャエ/ベレッタ

副将 アラガン/ブレイ

大将 ブレイド/レイレン


この様に決定された。

奇しくも似た境遇、立場の者同士が噛み合い既に睨み合う様な状況となる。







「俺とレイレンが戦う前に味方が3敗したら終わりですからね!頼みますよエイガさーん!」


「舐めすぎだぞブレイド〜!?

もっと俺達を信用しろって!」


「まぁ、確かにエイガは微妙だが。」

「私は唯一エイガを心配しているぞ。」

「負けない様に頑張ってね、エイガ兄さん。」


「くそっ!舐めやがって!」






「私なんかが、果たしてやれるのだろうか。

相手は同じ程度の男…………だが。」


「うるさいぞパムルス。

やれるだけやる、それだけだ。」

「私達は負けないとしても、貴方は弱いわ。

確りと集中なさい。」

「姉さんも私も負けるつもりはないから。」


「そ、そうですか。

ーーーーー腹痛がっ。」


「まぁ、私が戦える様に2対2で宜しくね?」


「お前は誰なんだ!?私の知らない者が大将など認めーーー」






口を塞がれ頬を叩かれる。


終いには腹を膝蹴りされ沈黙するパムルスを傍にレイレンへ謝る兄、姉達を見てその華麗な女性の強さを薄々と理解する。


パムルスは前日の九月末に急遽帰国させられ突然人数合わせに参加させられた、知る由もない。

しかしそれはそれとして制裁する。







そうして東西で独特な盛り上がりを見せる中、バルト国王の呼び出しで中央に整列し向き合う。


丁度対戦順となる顔合わせで揃い、互いの相手を確認する中。

ブレイドは自信しかない顔で薄く笑みを浮かべるレイレンに大見得を切る。







「いいか妹。」

「んー。」


「俺は、前に会った時とは別物だ。

それを分かった上で戦え。」

「うん、分かった。」


「ーーーーっ何か軽いな。

緊張してるのか?お前。」

「別に?楽しみでウキウキしてるっ!」

「………………」




「兎に角だ!

好きな様に戦おう!全力だ!」


「勿論!ちゃんと戦いになりそうで楽しみっ。」

「ーーーー試したい事もあるし。」


「っ?まぁ、好きにしろ。

俺も実験してる事があんだ、喜べこのっ!」


「ふふ、はいはーい。」







そうして、観客が数千人規模で円形闘技場に座りその時を待つ。




凛堂と巳浦は双方共に一旦闘技場一段目の最前列、中央正面にある関係者席を隣同士に座る。


勝敗の予想をする中で売り子に焼き菓子や飲み物のジュースを頼み完全に楽しんでいた。




その一段目関係者席の左右にはヴェルウェラやまだ幼いロルナレ家の子供達に、ブレイド組三人とその連れの女子と特待生徒四人が座っていた。

皆が食べ物を口にしながらその瞬間を待つ。


そして、始まる。

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