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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
84/113

八十一話 赤紅

少し日常を見せます。







現在、9月20日。


17日にあった涼木とウォーレンの闘い。

陣鉄のいた最上階に設置されている映写水晶によりペルシア皇国内の各地にある噴水広場にて放映されており、18日以降外出する度に様々な人間に声を掛けられる様になった。


嬉しいのか面倒なのか分からなくなるが、兎に角国が以前より明るくなったのは事実だ。

そういう事ならまぁ、構わない。







涼木は朝7時起床の規則に従いバルト王国にいた時とは違って健康的な生活リズムを送っていた。


ただ城内を動く際には常に陣鉄が纏わり付いてくるのが邪魔臭いが、もう邪険に扱う様な関係でも無いので面倒に思いつつもくっ付いて活動している。



陣鉄からすれば生前叶わなかった対等な異性との交際が現実となり舞い上がるのも当然といった精神環境なのだ。


7時30分=2階の食卓室で朝食

8時〜12時=共同での依頼遂行


12時30分=国内の店で昼食

13〜18時=国内警備

19時=2階の食卓室で夜食

20時=水浴び

21〜23時=自由時間

23〜24時=就寝


この全てを基本共に生活している為、国中の人々に新婚を見る目で見られるが、事実そうなので否定はしない。

ただ涼木からすれば恥ずかしい。







陣鉄は日頃赤いYシャツを身に付けており、袖も捲るのが基本礼装らしい。

下も黒の傷付き長ズボンを履いており、色気らしさは無しだ。


だからこそ夜のパジャマ姿が脳裏に垣間見えその相違に自身の今の立場を実感する。

あぁ俺、巳浦達にどう思われてんのかな。



そうして国内では知らぬ者など居ない有名な二人組は、その赤髪と薄赤い黒髪の容姿から連想し、

赤紅しゃっこう】という俗称で呼ばれている。

ギルドでのパーティ登録名も同じである。








「なぁ拳勢よ、今日はどんな依頼を受ける?」


「そうだな、ちょっとこの講師募集ってのに行こうと思う。」


「ふうむ?講師のぉ………………体術講師!」




「面白いのそれ!

儂も一緒に応募しようかの。」


「え、本気かよ?

……………まぁ、良いか。」


「もし受付よーーー!これまだ空いとるー?」


ーーーーー空いてます!


「良し良し、なら決まりじゃ。

拳勢と二人で申請宜しゅうな!」





「どんどん一人で決めやがって。

あとその呼び方止めろ!涼木で良い!」


「えぇ?照れるでないもうっ!

ならパパと呼ぶかの?ん?」


「正直その方がマシだ!ママ!」


「えっその呼び方はちょっと、厳しいのぉ。

恥ずかしい……恥ずかしいの。」


「外ではこれで通すぞ、解ったな。」


「…………ぅ分かっ、たぞ。」







そのやり取りを見ていたカップル冒険者達はあまりの急展開に見てて恥ずかしくなっていたが、何より羞恥に襲われているのは涼木だ。


男の一行から酒混じりの嫉妬を向けられるが、お前らも頑張れ!と適当に声掛けして外に置かれた卓に座る。



陣鉄は毛先で結ばれている背面の毛束を右胸に垂らし、道行く人々の目に付く様に朝から熱愛に耽る。

対面にあった席を態々涼木の横に置き胸元に寄り添ってくるのだ、誰でも恥じらいで震える。


良い加減止めて貰いたいと思い肩を押すが、女らしからぬ力でしがみ付いてくるので離せない。

とんだ怪力に諦めが付きなすがまま、これが普段の一連のやりとりとなっていた。







30分近く軽いサラダなどを注文したり飲み物を飲んでいると。

9時頃になって受付の男性が外まで出て来て先程の募集が受理された事を伝えに来た。


陣鉄は諦めて体から離れると、その依頼内容に目を通す。


『ペルシア南学園臨時体育講師の両者へ。

午後13時から15時までの5時限、6時限に行う実践授業で今年卒業になる6年生達に厳しく戦闘を教えて頂きたいと思います。

来年度から冒険者となる者達が大勢居ますので、

どうぞ宜しくお願いします。


10分前までには到着して頂き、学園一階にあります職員室までお越し下さい。

説明が終わり次第4階東側に計5つある6年教室の生徒に声を掛けて外の校庭にて授業を進行します。

その際の進行役はこれを執筆している学園長の私が自ら担当しますのでご心配なく。』


そんな事が書かれており、陣鉄は初の経験で興奮していた。

涼木はバルト王国で似た様な事をやっているので別段普通だが。







「ーーーーそういえば、バルト中央学院は名門なんだっけか。

6年生の平均lvが20帯前半だから、ギルドに登録する時には既に銅腕章を貰えるとか。」


「ほぉ、そうなんじゃな。

ならばここペルシア皇国はどうなんじゃ?」


「知らねぇが、まぁそれよりは下なのかもな。

バルト学院に入りたくても8割、つまり五人の内四人は落ちる倍率だ。

今はハイデン王国が取ったらしい騎士の名誉もそれまではバルト王国が独占してたらしい。」


「そういった話はペルシア皇国では聞かぬな。

依頼を出すという事は、それだけ危機的な状況なのかも知れぬな。」


「まぁ、多分な。」








その後二人は午後に行う予定だった警備を今に切り替え、そのまま12時まで続けた。


















そして南5km地点にある鉄柵に囲まれた学園に早めに入ると、12時30分に摂る予定の食事を学園一階にある食堂で済ませた。



その時点で各学年の生徒達が何者だ?と言った顔で見ていたが自前の服装が互いにYシャツなのと適当な眼鏡を掛けていた為時期外れの新規教師だと思っていた。


そんな訳はないが。







学園長がその二人を見るや駆け付けて幾度も頭を下げていた様子を見て、生徒達も異変に気付く。


徐々に騒がれ始める食堂内にて学園長が早めの説明を始める。






「良いですか6年生の皆さん。」


「このお二方は今日こんにちの午後から始まる体育の実践を担当する特別講師です。

どちらも冒険者として日々を過ごしている方々ですので良く勉強させて貰いなさい。」




ーーーーはーい。




「それで、お二方のお名前は何と?」







名前。

他国で自身の名が知れ渡っているかは分からないが、偽名を使うのは今の講師という立場上あまり良くない。


取り敢えず二人は本名を語る事にした。







「涼木だ。」

「陣鉄じゃ。」






「ーーーーーーーへ。」

「んーとですね、今更ながら二人はその、」


「ーーーーーー英雄、の方々でしょうか?」



「あぁ、そうだ。」

「そうじゃぞ。」



「はぁ。

…………………なんですとぉぉぉおぉぉっ!!?」








生徒達が飛び上がる。

教科書で習った事のある歴史上の人物。


何故かそれを名乗る人物が二人、この学園に来ている。



信じるのは難しいが、学園長は偶々17日の午後1時過ぎに園長室で見ていた放映を思い出した。


丁度午後13〜14時は5時限で生徒達は知らなかったが、職員室の一部の教員や学園長はその映像に映っていた人間の片割れが目前にいる人物だと理解した。

その瞬間、涼木の元へ群がる。







「私の運営する学園に、まさか貴方の様な方が講師として来て頂けるとはっっ!」

「俺達、3日前にあんたともう一人の男が戦ってる映像を見てたよ、凄すぎたぜありゃあ!」

「私貴方のファンで。サイン貰えますか!?」


「お、おぉ?儂は?」

「お前は映って無いだろ。

取り敢えずなんだ、落ち着いてくれ。」




ーーーはいっ!




「俺達は普通に依頼をこなしに来ただけだ。

普通に2時間講師をやって、それが終わればもう会う事はない。」


「だが2時間だけ、俺達はこの学園の人間だ。

その時間内なら答えられる要望には応える。」

「流石じゃな、良き対応じゃ!」




ーーーサイン下さぁぁぁい!!

ーーー俺に体術を教えてくれっ!!

ーーーここで働いてくれーーーっ!!







そんな調子で荒ぶる教員達を見て生徒達が自然と寄ってくる。


片やシャツ越しに張った筋肉が分かる程鍛え抜かれた体の男。

もう一人は一目見ただけで男女共に見惚れる様な大人の雰囲気を醸す赤髪の女性。



興味が尽きず、全員が質問や疑問を投げる。

しかしそれに答え切る事は出来ない為一時的に職員室まで避難する事にした。
















そうして諸々が経ち、外の広々とした校庭にて6年生100名を男女に分けそれぞれを担当する。


涼木と陣鉄はその日、少年少女達に忘れられない思い出を作る事になる。

それは、







「先生、も、無理ですっっ。」

「助けて……………助けてぇぇっ!」


「駄目だ、早く起きろ。

そんなんじゃ魔物に殺されるぞ。」


「アンタに殺されるぅぅぅぅっ!!!」

「嫌だぁぁぁぁーーーーっっ!!」






「陣鉄先生、もっと優しく教えて下さいっ。」

「私達の体力、無限じゃないです、からっ!」


「最初の内は組み手じゃ、まず対人で負けないだけの運動能力を身に付けるんじゃ。

そしたら次は各々の好きに武装して、」


「無理無理無理ぃぃぃぃっ!!!」

「嫌ぁぁぁあああぁぁっ!!?」







ーーーーーー。

忘れられない、思い出になった事だろう。


教師達は皆が顔を青くし、生徒達は15時を迎えた時点で全員汗と土に塗れ地に倒れていた。

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