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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
81/113

七十八話 ゼツ鎖国







9月13日、朝の8時少し。

ハイデン王国3階にて6〜8時に行われる稽古は、先日までの凛堂による稽古とは違いレイレンが受け持っていた。


というよりいじめの様な有り様で寝転がるブレイ、ベレッタ、レベルタの三人は一人片隅で怯えているベイルを恨めしそうに見つめていた。


レイレンは汗一粒ほどを掻いているだけで殆ど疲れを感じていない様子だ。








そこに凛堂が帰還する。

急いで駆け寄ってくるレイレンの頭を抑えて面倒臭そうに対応する中、約束の物を渡す。


柄は金オーク、剣身は鉄心臓、鞘は翅。

特別な材質で出来た細剣を渡されるが、レイレンにはまだ扱いきれぬ様で重さに耐えられず床へ落ちてしまう。


しかもその重さが原因で床の舗装された石畳へ数cm陥没する。

一体どうなってるんだこれは、とザラデス家はこれを人力で運んできた凛堂に恐怖の目を向ける。





そんな凛堂の身に付ける長丈のコートの右腰に付けられている鞘らしき物にレイレンが気付く。


気になって凛堂に訊くと、これも作って貰ったと返され興味で触ろうとする。

凛堂が咄嗟にそれを遮ると、レイレンは見るからに拗ねてしまう。


だがこれは黒鎧の毒性質を強烈に帯びている為見た目は漆の様に美しくても触れるだけで人間には猛毒となる。

それに、この鞘を介した居合は凛堂の持つ三魔力に追加で毒も付与する為あまりにも強力過ぎるのだ。




レイレンや他の者達にもこの鞘は強力な魔素が纏われていて危険で在ると予め説明をしておく。

興味本意で触ると毒死すると伝えこれを常に持ち歩くことに決める。

ーーーー内心相当の出来で喜んでいるのだが。


ブレイはその男心を擽る外観の鞘に憧れるが、女性陣はあまりの貫禄に凛堂級でないと似合わないだろうという結論に至り諦める。


そしてレイレンは自分への贈り物である、

【金鉄の翅細剣】と名付けられた細剣を愛おしそうに見つめながら両手で何とか持ち上げ部屋に持っていった。

















「おーーーい切咲殿ーーーー!!」



「ん?何です。

私はこの凄い戦いの記録された水晶を見るのにハマっているので邪魔しないで下さいよ。」



「いやぁその、魔王らしい方が一名来ていまして。

わざわざゼツ国までお越しになられた様なので用件をお聞きになられては、と。」



「え、そうなの。

分かった行くよ…………この腕相撲凄いな。」









和風の座敷に暮らす切咲は、その青を基調とした蝶の刺繍された着物を身に付け応接部屋の戸を開ける。

ゼツ国に召還されて直ぐ様自室となる一家屋を贈られ、国主屋敷から近い所で住む彼女は日頃から従者に当るこの好青年を使い回している。


そして15日の午前8時という早い時間から来客が来るという珍事に好奇心が勝り招き入れたのだが、座り込む三人を見て途端に態度を改める。




後頭部に長い髪を縛る武士さながらの空気を纏った爽やかな顔の男。

長髪を一つに編み込み背中へ垂らす細目の男。

丸頭で渋い顔付きの上背がある男。


確かに以前のダイエン闘技場で見た覚えがある。

向かいで胡座を掻いたり正座で座ったりと個性がある三名の正面側に丁寧に正座で座り給仕に煎餅とお茶を出させる。


黙々と食べる縛り髪の男は別にゼツの服装に合わせたわけではないのだが元より武家の様な和服を身につけている為、その墨画調の着物と鹿威し宛らの風情を纏った彼に親近感が湧き話しかけてみる事にした。








「髪を縛っている貴方の名前は何ですか?

ゼツ国に良く似合う服装なのでお声掛けしてみました。」



「ん?あぁ私かい?名はライメスだ。

まぁ魔王の頭は私じゃないからねぇ、禿頭のガイダルに話した方が良いだろうね。」



「あ、そうですか。」

(凛堂様とは違うけど、この洋と違う和も素敵だなぁ。)








一方のガイダル本人は見事な正座のまま目を閉じて顔を下に向けている。

静かに名を呼び話をすると、何やら以前に松薔薇とかいう眼鏡の男性が呼び掛けていた国同士の諍いの停止に関する件について訊きに来たとか。


それなら無問題なので別に構わないと伝えるが、話を遮る様にレイバルと名乗る長髪の男がゼツ国の体制からしてまずいのではと返してくる。

闘技場での一件以降ゼツ国内でも議論を交わし国交開港に異論なしと結論が出ている事を伝える。



まぁゼツ国は頑なに他国との交流を拒絶する古参派が根強く居るのだが、今現在ゼツ国の政治を担っているのが【絶門一家】であるのと召還された英雄も【切咲・絶門】であった事が相乗して無理矢理納得させる形となった。







そうして協力する旨を松薔薇達ギルドの人間に伝えると一言告げるとガイダルはさっさと離れようとする。

しかしレイバルが無言のままガイダルを手で呼び止めると、小言で何やら耳打ちし始める。


するとガイダルは呆れた顔をして切咲に要望を送る。



菓子の追加、頼めるか。

切咲はそれを聞くと笑って給仕に追加を頼む。

どうやら余程美味しかったらしい。


ライメスも先程から空になった木皿を見つめているのでそうなのだろう。

魔王は食いしん坊なのだろうか?

(その通り。)








何となしにガイダルに質問をする。

凛堂様とダンジョンとかいう化け物はどうしてるんですか?と。


凛堂はハイデン王国で静かに暮らしている事。

ダンジョンはバルト王国から東に35km地点にあるキャロ村で【迷宮庵ー万屋ダンジョンさん】と名乗って依頼屋をこなしている状況。





その二つを伝えると魔王の自由さに笑いながら君たち三人は日頃はどうしてるのかと訊く。


ガイダルは世界中を転々として何か異変が起きていないか静かに見守る旅をしている。

レイバルは魔物が巣食う森や山などで一人ゆっくりと暮らしているとか。

ライメスは世界中の料理、菓子を食べ歩いてるんだそう。


ほんと面白いなぁ魔王ってのは。

切咲はふと寂れた顔をしたが、ライメス達に悟られぬ様に直ぐに表情を戻す。








そうして適当な会話で盛り上がる中、絶門の現当主に当たる【血川】と呼ばれる男が切咲に用ありと部屋を訪れる。

すると只ならぬ気配を放つ三名に気付き自己紹介を済ませる。


そうして改めて切咲に用を伝える。

何やら北東200km地点にある【ペルシア皇国】にて【陣鉄】と言う英雄が奇怪な話題を挙げているらしい。





『儂は陣鉄・領王と言う。

儂が召還されたペルシア皇国の書記把握と儂のギルド登録をしてほしければ儂の頼みも聞け!』


『儂は可愛い女子も好きじゃが強い男児も大好きじゃ。

よって儂と同じ加速魔力を使う猛者を募る!』


『もし儂に勝てる加速魔力の男が居たら儂はギルド登録を行い書記の共有と率先した国交も約束する!

あとこっちが本命なんじゃが、』






『儂に勝ったら儂を嫁にしろぉぉぉぉおっ!!』

『前世から釣り合う者が居らず独り身だったんじゃああぁあぁ!!本気じゃぞおおお!?』









そんな事を各国に配っているらしい。

確か口調は可愛くないけど外見はとても綺麗な赤髪の女性だったかな。

誰かの連れっぽい女の子にちょっかい掛けてたけど、やっぱり強い人は強い人と結ばれたいのか。


ーーーー私も、凛堂様と。

そう考えているとガイダルがふとある男の名前を口にする。






その名を聞きレイバルやライメスも確かに!と同意の声を挙げる。


その者の名はーーーーーーー涼木。

先日の闘技場の日に召還された英雄の名だ。


と言う事は加速魔力を使う人なのだろう。

しかし子孫らしき子も居たし、果たして受けるのかと言う疑問はあるが。





ガイダル達は直ぐにバルト王国の松薔薇へ連絡水晶で話を訊く。

すると、既に涼木は強者と戦える良い機会に喜んでペルシア皇国へ向かう準備を進めているそう。

※話半分に聞いたらしく婚約の件は知らないと。


何だか面白そうな話だと興味を惹かれるが、切咲にも国に滞在し突然の危機に対応する仕事があるので国から迂闊には出られない。


また遊びに来てねと伝えると魔王達一行を帰路へ帰す。






そうしてペルシア皇国のトーナメントが開催される9月17日の正午まで、日は経つ。






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