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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
80/113

七十七話 ヴァンデル遺跡








本日9月12日、10時。

凛堂がヴァンデル遺跡街中央にある遺跡へ侵入した。

それは、地下50層に渡る魔物達へ即座に危険信号という形で気付かれた。


既に探索中であった銅腕章持ちの20lv帯や銀腕章持ちの30lv帯の一行も突如凶暴になり始めた魔物に焦燥を見せる。




そんな状況を知りもせず砂岩による洞窟が続く一層目をどんどん進む。

途中で魔物が物陰に隠れて穏便に事を済まそうとしているのを見て魔王の楽さを感じていた。

だが凛堂の居る階層に点在する人間達は何故か魔物の気配を感じられず仕事が出来ないせいで困っていたが。


そうして魔力の気配が濃くなっている道を適当に選んで進行を続けていると。







目前で異様に興奮した様子のオークが萎縮している人間3人組の一行に即死の一手となる鉄棍棒の振り下ろしを行う。

それに対してたった一歩の踏み込みで飛び込み右手で掴む。


オークはその存在を数秒して理解したが、既に魔力を込めた左拳のボディブロウで血を噴き出し斃れる。

凛堂はそれを塵でも見るような目で放置するとパーティーからの感謝を記憶に残す事もなくさっさと下へ降りていく。















「こ、殺されるッッ!?」


「ならこんなところに来るな。」

「え、え?」







目前に迫っていた革装備ゴブリン達10匹の群れに一人の採集専門家が死を悟った時、凛堂が裏から魔力の圧を飛ばし四方へ蹴散らす。

男はフードを外し土下座で感激の言葉を伝えるがいつの間にか凛堂は居なくなっていた。


そんな調子で5、6、7。

ーーーーーーー。







10階層に到達する。

そこには巨大な石扉が閉ざされており、数人単位のパーティーが足を止めて冷汗を掻いているのが見て分かった。


凛堂はそれを気にもせず扉を蹴り付け重さ数百キロはあるだろう石の扉を抉じ開ける。

周囲は一人で我先と進む男に続いて入っていく。

そして、現れる。







「おー、でけえな。

確かこいつが、金オークだよな。」

「柄の素材だったな、まず1匹目。」


「oooooooahhhhhhhっ!!!」


「怖がってる所悪いが、死んでくれな。」

「歯抜いてくれるならそれでも良いけど。」


「uuuuuuhhhh!」








そんな凛堂の頭を横から左拳で殴り付ける。

体長3mはある巨体のオークの中でも、鉄、金といった金属の要素を持つ上位種は更に筋力や耐久力が高い。


それの攻撃を生身で喰らえば20lv帯の人間までは一撃で全身を粉砕される程。

その拳打の風圧が周辺数mに吹き込み後方の一行は緊張で固まっている。

話にならない。




だが土埃から現れたのは、無傷そのままに真顔の凛堂であった。

金オークは自身の魔素が漂う10階層の広場に居続けたせいで魔王の存在に気付けなかった。

しかし今になって理解した、目前の存在を。


腹部へ前蹴り、脇に左右の打ち込み。

膝への回し下段から下がった頭部の顎へ左拳を真上に打ち上げてオークの巨体が1m打ち上がる。



その純粋な身体能力だけで圧倒する謎の長身男に周りが呆然と見つめる中。





倒れ込んだオークの首元にコートの内側へ仕込んである鉄刀を一本取り出し当てがう。


そして魔力を込めて左から右へ薙ぎ飛ばす。

そうして体を煙状に変えながら最後に残された犬歯を2本回収する。

そのまま去って先へ進む凛堂を後ろから応援する人々の声が聞こえたが、これもまた記憶に残る出来事にはならなかった。


10階層毎に存在する魔物達に当たりが有るのだろうと目星を付けると、凛堂は1時間に10階層という脅威の速度で遺跡を降っていった。















15時過ぎ。

最後の50階層目に着く。


ーーーーーへぇ、この気配。

結構なのがいるぞ。


凛堂が荘厳な石の扉をまたも蹴り飛ばし入る。




そこには40lv帯だろう熟練の冒険者達が軒並み薙ぎ倒され伏しているのが見て取れた。

そこに居たのは魔物。

ーーーーー。






何だ。

凛堂が瞬きをした時点で、視界から失せる。

刹那遅れてから臨戦態勢に入るが、その一瞬が手遅れとなる。



首筋に当たったのは、剣。

魔物が使う事は滅多にない武具。

何故。


間に左手の刀を割り込ませて反射的に跳ね返す。

そうして視界前方へ着地した者を見て凛堂は思考が停止する。

コイツはーーーーー。








「おい、ここは人界だぞ。

何で、」








「冥界の黒鎧が居るんだ。」


「ooooooooooo!!」










この魔物は見た目こそ呪鎧に似てはいるが、両手に黒い木剣のような物を握っている。

性質も特殊で、毒魔力の込められた剣に斬られると手足に痺れが走り最終的には数分で気絶する。


その辺りに倒れている奴はそういう事だ。

だが、人界に居てはいけない奴が、何で。




そう考え込んでいる凛堂を余所に黒鎧は単純な脚力で秒速30mの突進を仕掛けてくる。

目視できる限り体捌きだけで躱すが、時折人体を超越した180°回転する振り向き攻撃を飛ばしてくるのには参る。


次第に右手へ持ち替えた刀を右脇へ垂らし左手を翳し居合を構える。

それも関係ないとばかりに突っ込んでくる。









「へ、馬鹿野郎。」

「uuuuuujhhhhaaaa‼︎」







「ーーーーーん、あれっ!?」

「oooooouuuu"hhhh!!」










3秒溜めて放った魔素の斬撃を双剣で正面から切り続け容易く切断する。

おまけと言わんばかりに左踏み込みから右前蹴りを顔面に喰らい後ろへ2mほど後退る。


これ等の行動を予想しておらず完全に受けてしまった為若干ふらつく。




そんな凛堂へ飛び上がりからの縦回転斬りを試行してくる。

流石に二度はないと即打ちの居合で鍔迫り合いを試みたが思っているよりも重く。

またもや後方へ3m近く、今度は両足で耐えられず俯せになる形で吹き飛ばされる。


ーーーー強いねぇ。

久しぶりに、気合い入ったぜ。









凛堂が空へ飛び上がり居合を構え続ける。

これはーーーー犠剣。


黒鎧も異常な魔力の奔流に危険を感じ即座に空中へ飛び上がる。

だがそこで3秒溜まっていた居合斬撃を飛ばし更に着地するとそのまま降りた地点で居合を構え直す。



黒鎧が空中の斬撃を上部へいなし地上へ縦回転斬りで落下する。

それに対して更に3秒溜まった居合斬撃を放ち後方数mへ下がるとそこで再び居合を構える。


ここまで無言だった黒鎧も、その異様な存在に初めて口を開く。










「oooooaaggaddddgggggaahhuuhgah。」

(お前、魔王だな。)


「ん、だったら何だ?止めるのか?」


「ggpaappaaaagmmmmdmmmmaaa。」

(笑わせるな、魔物は魔王の下ではない。)


「へぇ、自信満々だな。

確かに強いけど。」


「ーーーーーーーーoooyoooooooooohh!!」

(問答無用、切って捨てる。)


「おうおう魔物が生意気だな。

これ喰らっても耐えられんのか。」









溜まり切って打ち出される犠剣。

周囲30mを壊滅させる、雷纏う青黒の衝撃。


それの軌道を看破し上空へ飛び上がる黒鎧に合わせて更に容赦なく溜め始めて三秒経った斬撃を放ち黒鎧へ打ち出す。

基本状態の凛堂が本気を出すという事は、遠距離戦を徹底するという事だ。


幾らなんでも厳しく地上へ落下してくる黒鎧へ走って踏み込むと、限りなく左足を奥へ伸ばし地面に沿う程に低くした姿勢から真上に3秒居合を切り放つ。




それは胴の鎧へ直撃し、金属の削れる音が鳴り響く。

結果、胴の中心を割るような痕跡が残される。









凛堂は一旦後方へ跳び上がり着地する。

無言で立ち尽くす黒鎧に対してその強度を誉める。

遠慮なしに凄い硬度であり、まるで純度の高い鉄を刀で切り付けたような感触だった。




黒鎧はそんな凛堂に対して指を指す。

そこは、右の頬。


微かに毒魔力が侵食してきているのが確認出来たが、最初の前蹴りで皮を傷付けられていたらしい。

何となく体が重くなっているのに気付くが、だから何だと言わんばかりに再度居合を構える。




黒鎧はそんな凛堂に対して両手を向けると、一気に毒魔素を放ち始める。

それに警戒を強めた凛堂が三秒居合で吹き飛ばそうとするが、風圧が乱れ散り右頬の傷へ掠る。


たったそれだけで軽い頭痛が起き、厄介な魔力だと嫌気が差す。








肉体に魔力を練り出す。

流液魔力の応用により血流を限りなく低下させる事で体内へ毒が回るのを可能な限り遅延させた。


だが居合は三色魔力を攻撃へ振らなければ使えない、こうなると奥の手を使うしかない。

だが、気が進まない。



うーんっ。

……………まぁ、いいか。








首に刀を当て、態と切断する。

それには黒鎧も理解出来ず少し動揺を見せるが、それが理由も無しの行動でない事は理解出来る。


段々と全身から滲み出た魔素が顔面へ集約されていくと、そこには髪を後頭部へ靡かせながら表情を魔素で隠した凛堂の姿があった。



命の危険で発動する《堕落の魔王》を意図的に発動したのだ。

まぁ、文字通り死ぬ痛みを伴うので極力避けたいのだが。









そうして魔物と同じ言語形態へ変化した凛堂は、しかし意識はなく黒鎧と会話する事は叶わない。


黒鎧へゆっくりと歩み続ける。

その肉体から放たれる圧は魔物として上級の黒鎧ですら気圧される空気を纏っており、更に。





一気に踏み込み目下へ迫る凛堂に双剣を振う。

しかし防御もせずまともに鎖骨付近や脇腹へ3cm相当の深い切創を受ける。


その分密着で時間を掛けて溜められた3秒居合による斬撃は通常時よりも5割増しの威力。

一つ前に付けられた胴部の傷と同じ軌道で斬撃を喰らい今度は鎧を裂き斬るに至る。




負傷で体液代わりの黒い血液を噴出するが、そこへ畳み掛けるように左手の刀を突き刺し手放す。

痛みにより怯む黒鎧に対して所持する刀ではなく魔素で生み出す6尺級の《迷宮刀》を向ける。


本来ならこの刀を使い戦うのだが、迷宮武器は魔王本人の魔素から創られているだけあり少々強過ぎる所がある。

しかし相手も手練れである為、黒人テンや原初プライモと手合わせした時と同じく顕現させた。




魔素による仮面【魔面】による出力上昇で5割上昇。

迷宮武器による魔素の順応により更に5割程威力増加。


つまり全開状態は手加減と比べて【2倍】強い。

そこから放たれた犠剣は。



















不意に目覚める。

眼下に臥せる黒だった亡骸は幾らかの鎧片と目元を隠す形状の兜を残して消え失せていた。


凛堂は戦いの記憶が消えていたが、いつの間にやら入り口まで避難していた冒険者達が皆一斉に歓喜の雄叫びを上げて凛堂へ駆け寄る。




全身に走る痛みに立ちながら呻き声を漏らすが、周りの40lv帯の冒険者達が凛堂の戦いを見て強い憧れを抱き我先にと声を掛ける。

面倒にあしらおうとしたが、またも痛みで気絶し倒れ込んだ凛堂は、しかし確かな素材をコートに仕舞い探索を幕引く。




















ーーーーきろ。

起きろ。


声が頭に痛い程響き鳴り止まない。

勢いよく起き上がると、テンが凛堂へ声を掛けていたのが分かった。






あの後冒険者達に運ばれた凛堂は朦朧とした意識でテンの加工店へ上がり込みそのまま倒れた。


テンはその酷いやられ様に驚いたが、まさか黒鎧の討伐素材を取ってきたとは思っておらず素材袋を空けて驚愕していた。



そうして凛堂を工房から行ける二階の自室で寝かせて素材を使いやすい形へ成形しそこからは凛堂の横で机の椅子に座り看病ついでに鞘と細剣の設計案を見直していたのだ。


そして現在に至る。




痛む首や脇に苦い顔をしつつ、ダンジョンを心底羨ましく思う。

そんな複雑な表情の凛堂へテンが声を掛ける。










「お前、細剣の素材だけじゃなく冥界の化け物まで倒したんだなー。」

「もしかして、遺跡に居たのか?」


「あぁ、50階層にな。

ーーーー冥界の門って、もしかして遺跡にあるのか?」


「いや、今までに一度も出た事はない。

でもお前が来た影響で元々魔素の濃い遺跡深部に冥界が瞬間的に開いたんだろうな。」

「で、そこに居た冒険者や本来の階層担当に当る魔物を軒並み倒してたって訳だ。」





「お前が戦ってた時に後ろで見てた奴らはギルドでも優秀な金腕章の人間達だったんだが、流石に黒鎧は次元が違い過ぎだなぁー。」

「でも一人で倒せるんだからやっぱり魔王は化け物だよな、英雄なら単独での撃破は略不可能だぜ?」


「よせよせ、俺だって不甲斐なく本気になっちまった。

ま、良い戦いが多いから満足の行く日々だよ。」


「ハハ、そうか。

今は夜中の午前1時過ぎだからな、俺も寝る。」









「あ、おい入ってくんなって。」


「んん、ふぁあっ。

ならお前は床で寝ろよ。」


「ったくーーーー脇も首も、全身痛ぇ。」

「………………大人しく寝るか。」





「………………zzzzz…………」


「ーーーーほんっと、強いな。」










寝相の悪い凛堂に抱きつかれながら、冥界の上級魔物を単騎で討ち取る凛堂に心から感心する。


そうして凛堂の胸筋に顔を埋められつつ12日は終わりを迎え、13日の朝が来る。









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