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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
76/113

七十三話 なんで?

色々あります。






9月7日正午に終わりを迎えた原初対魔王。

だがこの世には、とあるよう法則が存在する。


それは、【魔力濃度が高い一帯】に魔物が出現すると言う決まり。



これだけの激戦を行わずともそもそも猛者達が集まった影響で濃度は時間と共に上がっていた。

しかし先の戦いで大量に放たれた魔巣の残滓は、途方もない量であった。


そうして、既に一息吐いていた壇上者の背後に生み出された黒い魔力の塊は、歴史上でも最大級の危険度を誇る魔物であった。







英雄等が一斉に気付き、即座にその存在を思い出す。

人間が99lvから100lvに上がる為に必要とされる特別な素材の一つを保有する魔物。


全身を黒い鎧で隙間なく包む、細身の人型。

名を【呪鎧】。

推定lv99〜とされる。




そしてプライモが先刻言っていた理屈。

人間換算と上位と言った別格の存在では同じレベルでも計算が違うと言う話。


魔物もそうである。

魔物基準で推測されるlvは、人間換算でいう所の99lvと違いその数値を【1.2倍】で考える。

つまり人間で捉えた場合ーーーー118lv相当。

英雄一人ではかなり厳しいとされる。







皆が回避する選択を取る危険度の魔物が現れて、観客達は訳も分からず盛り上がる。

松薔薇は即座に避難指示を出すが、見物だと席を離れる様子はない。


珍しく怒りを顔に浮かべる中、誰が相手取るかと言う話になる。

この魔物の性質として、接触しなければ起動しない習性がある。

その間に話を決めようと言う事だ。



戦った事がない者もいる為その者達は手を挙げてくが、呪鎧を知っている者は皆一様に下を向く。


それはあの大英雄巳浦ですら顔を渋くさせる程。

当然同世代の涼木、永澤、松薔薇も同様に戦いたくはなかった。

そんな中、矢鱈と元気に声を上げる者がいた。







ーーーーー【切咲・絶門】。


彼女は北西300kmにある非友好国。

鎖国ゼツで21世紀後半に活躍した英雄。


松薔薇が長寿薬を作る以前、老体を叩き。

【領土侵魔記】と呼ばれる大量の魔物に溢れた世界から戦車魔物【館】と協力し生きた時代。



国交を閉ざしていた鎖国ゼツを唯一守る存在であった切咲は、幼い頃から武家の跡取りとして死ぬ様な稽古を付けられ磨かれた強さで数多の魔物を打ち破っていた。

最も多くの魔物と対峙した英雄とされている。







そんな彼女は、自分が未だ知らない人界の魔物に興味が尽きず勢いそのままに飛び出していく。

そんな様子の彼女に気圧されて他の候補者が手を引く空気でたった一人。

凛堂だけは彼女と知り合いでありその変わらぬ性格に大笑いしていた。



切咲は愛着している黒の男子制服の袖を捲り、軽い柔軟を行う。


前髪を真ん中分けし左右をピンで止めて後ろは項辺りに切り揃えているヘアスタイルはあまり女性としての色気はないが、活発な子が好みの男性からは最高のアイドルの様な外見と性格である。


そうしていつかに見た記憶のある行動を取る。




右の掌を大きく開き、真上へ突き上げる。

そして叫ぶ。

ーーーーーー来い!青ちゃん!


そうして右手に大量の青い魔素が煙の風体で集中する。

巳浦は自身が剣を呼ぶ時と酷似しているのに気付き、武具使いは基本的に武具と魂が連結するのだと理解した。



そうして右手に握られる短剣。

その正体は、30年という生涯を通じて最期まで使用していた家系に伝わる武器【隠者の脇差】。

それが英雄として昇華される際に共に神器として昇格した物である。


勿論巳浦の使う四刀剣も全て神器に分類される。






そして彼女が恐ろしく効率的な手付きで右手と左手に回した短剣を交錯させつつ、準備完了と言った顔で地面に落ちていた煉瓦の欠片を投げ付ける。

とうとう始まる。


起きたと同時に、呪鎧は空中数mへと飛び上がる。

そして視界に認識される数十の強者を確認しながらも相手すべき存在を感知する。




それは魔素を放ち右腕を前へ突き出す切咲。

ーーーーではなかった。

唖然と立ち尽くす彼女を無視して呪鎧が突然攻撃を仕掛けたのは、自身を生む原因にもなった極大攻撃の源。

ダンジョンであった。








ダンジョンが席へ着く前にそれを察知し再度舞台へ戻るや否や、上空3mに飛び上がり右の踵落としを放って来る。

切咲は凛堂に慰められて落胆した様子で帰っていく。


ダンジョンは呪鎧に話し掛ける。

しかし彼は、自身を生み出した存在に戦闘を挑むのが存在意義と魔語で話し問答無用で襲い掛かる。




避けた後の空中回転を活かし一周した勢いで左の踵落としを放つ。

その不可解な挙動の正体は重力魔力であり、常に空中に浮いた状態から肉弾戦を仕掛けて来る様を見て多くの英雄が恐怖を思い出す。


だが相手は最強の魔王ダンジョン。

彼の左足首を右手で普通に掴むと、地上へ引き落としてから正面へ野球の様に放り投げる。



そうして前方10m程まで投げ飛ばされる光景に改めて魔王ダンジョンは怪物なのだと認識する。

重さ100〜150kg程度を球かと思わせる軽快な投げで飛ばす姿は、到底敵わない存在だと周囲へ理解させる。






そして投げられたにも関わらず空中で魔力を放ち逆立ちのような姿勢で浮くと、その状況から両足を真横に開脚し徐々に時計回りで加速していく。


それはフィスタの【螺旋脚】の空中版と言った様相だが、明らかに引力で大気を吸い込む様子から打撃の強烈さを感じ取れた。

常に通常の二倍の威力を生む絡繰に多くの英雄が敗北を喫しており、その討伐は至難を極める。




だが、魔王ダンジョンはそれを見ても未だ仁王立ちで見つめるだけだった。

そのまま向かって来る相手に対して左腕を回して主張する。


こっちも回すぞ、という事か。

呆れた顔で多くの英雄が笑う最中、それは起きる。







正面右側から迫る左脚に対してその場から左腕のラリアットをかます。

瞬間的に大気を揺らす衝撃が生まれる。


そうして左脚を止められながらも残る回転力で右脚を蹴り込んでくるが、それを右手で掴む。

自身の右脚に最大限の魔力を込めて真下にある頭部へ蹴り込む。



その威力は英雄のskillに匹敵する代物であり、緑色の魔素の風圧が闘技場に吹き込まれる。







慣性で垂直20mまで飛ばされるも、鎧は頭部へ入る大きな亀裂を気にも掛けず天を仰ぐ姿勢のまま最大まで纏った重力魔力で地上に落下する。


そして半径3m程陥没させながらも起き上がる。


成る程、巻き込まれてたら負傷してたっすかね。

そう思いつつも余裕のある顔のままだ。




切咲は目の前で化け物同士の戦いが見れて興奮しているが、その可愛らしい姿を見て心を揺らされる英雄や反英雄がチラチラ居た。

しかしそれは恋ではなく愛であり、それに感銘を受け同じ様に立ち上がり観戦する者が現れる。


その中には涼木等もおりダンジョンに応援の声を掛ける。

ダンジョンはそれを聞き取りちょっと張り切る事にした。







右腕を正面に向け、縦に構えた掌に下向きで大剣を生成する。


そうして地面に突き刺した大剣を縦に向けず横にし、まるでその40cmの横幅を利用して戦うつもりと取れる。

いや、事実そのつもりである。




踏み込んで飛び掛かる鎧に合わせて大剣の腹を盾として使い受け止める。

その威力で後方へ1m後退するが、お返しとばかりに両手で握った大剣を横に持ち真上から叩き付ける。


鎧はその攻撃で地面に体全てを埋め込まれてしまい簡単に動けなくなる。

そこに対してダンジョンは右手の大剣を横に持ったまま極砲の時同様に尋常ではない魔力を練り始める。


松薔薇が周囲への被害を考え注意をするが、ダンジョンは大丈夫とだけ返す。

松薔薇は呆けた顔で口を開けっ放しにする。









少しずつ抜け出してきている鎧の頭部を左手で掴むと、全開の力を込め上空20m付近に投げる。


そして自身も高速で飛び上がりながらその勢いで

鎧の左脚を無造作に掴み更に上空40m付近に投げる。

その異次元の攻撃に同じ魔王達すらも呆れて溜息を吐く程。




そして10秒の溜めが終わった大剣を上に突き出すのではなく大剣の腹で叩く様に右から左へ振り払う。

そこから切り離された暴虐の如き魔素風は横50m縦幅50m程の膨大な円形範囲で右側面から叩き付けられた。


鎧は既に崩壊手前だった全身の鎧を激しく削り取る魔素の暴風に巻き込まれながら上空左へと飛ばされ続け。

進行方向に100m打ち飛ばされながら大気へ砕けて消えていった。



控えめに言って、圧勝である。

これが魔王の力、いやダンジョンの力。








そのまま当然の顔で地上へと落下して来ると、またもや半径3m程度の陥没穴を作りながら周りへ勝利を告げる。



英雄達が歓声を上げ魔王を褒め称える。

一部はそんなダンジョンと手合わせしたいと考える者も居たが、恐らくは勝てないだろう。


そんな彼の左腕に、眩い光を放つ結晶が生み出される。

これが、人間の限界を破る秘宝。

【魔晶】である。








ダンジョンは誰か欲しい人居ます?と呑気に切り出す。

それに手を挙げたのは、まさかの全員。



実はここまでで語られていない秘密がある。

人間は別に100lvが限界ではない。

しかしこの【特別系統】の魔物は自然では滅多に居ない上世界の均衡を崩さぬ為数分で消えてしまい、更に人間の手に余る強さを持つのだ。

そして人間では一人につき一度までしか出現しないのだ。

魔物の【試闘】。

黒人の【試験】。

魔王の【試合】。

天使の【試練】。

原初の【試命】。

この人類律に従っているのだ。


この呪鎧だけではなく様々な特別級がいるが、どれも同等以上の強さを持つ化け物ばかり。

自然発生した個体でないと生成者本人以外に戦う権利が無く、それを倒し貰った魔晶を他者に渡す馬鹿はいない。

先程戦いたがっていた者達も当初は【自然発生の判定】だと思っていた。


でなければ戦いたくない。

だが魔王や天使といった格上の存在も人と同じく【故意発生の判定】になってしまうらしい。





で、だ。

そんなダンジョンが渡すと言っているこの【魔晶】を、喉から手が出る程皆欲しがっている。


荒れる観戦席を鎮めようとして逆に追い出される松薔薇が疲れた様子で声を出す。

そんな松薔薇の頭に、ふと気紛れでダンジョンが魔晶を叩き付けた。









その直後静まり返る。

松薔薇の肉体から明確に99→100lvへの限界突破時に起こる魔素の暴走が起こり始めたのだ。

これはつまり、松薔薇の100lvの壁が破られ、未知の領域に達した証。



ダンジョンが面白い物を見る顔で見つめる中。

これまでの21世紀〜41世紀を生身で生きていく内に溜め込まれてきた経験値が一気に肉体を成長させる。

これは他の者ではあり得ない現象だ。








松薔薇のlvは今。

ーーーーー。


そして膝を突き疲弊する松薔薇の顔は、その疲労に見合わぬ程大きく笑っていた。



自身の肉体にthird skill《完全分析》を掛ける。

映し出された能力値は、驚異的な物であった。






















↓old status↓

《名称:松薔薇》

《種:人間》《LV:100》《系統:自然》《性別:男》

《first skill:観察》

《second skill:解析》

《third skill:完全分析》

《Special skill:弾変質》

《Special skill:最速装填》

《Special skill:情報弾》


↓new status↓

《名称:松薔薇》

《種:人間》《LV:140》《系統:自然》《性別:男》

《first skill:観察》

《second skill:解析》

《third skill:完全分析》

new《fourth skill:観測》new

《Special skill:弾変質》

《Special skill:最速装填》

《Special skill:情報弾》






この能力を本質的に理解し、即席で空中に両手を翳し発動する。

するとfirst skill《観察》の能力である生体の動作を予測演算する性質と似て非なる性質。


不規則な凡ゆる無機物。

空気、魔素、人工物と言った生体以外の全ての未来を丸一日完璧に演算する超常の能力。






それにより時間経過により何が起こるのかを視界の範囲内で感知した松薔薇は、その情報量を脳で処理し切れず今度は本当に両膝を突く。


だが少しして慣れたのか立ち上がると、周りの英雄達に一言だけ先駆者となった事への感謝と謝罪を述べつつある話を上げる。








「どうやら私は、人間でありながら中位や上位の存在に近付きつつある様です。

まるで原初の彼同じく。」


「そして私は今覚えた skillによりある事実に気付きました。」

「どうやら今日はーーー」












「ーーーーーこの後、雨みたいです。」








そう言って数秒後。

急激な天候の悪化により雲行きが怪しくなると、ぽつりとした水滴が降り始めてきた。


異常な予言をした松薔薇に皆が興味を引かれるが、取り敢えずそれぞれの足達を利用して自国へ帰る準備を始めるのであった。





時刻は現在午後1時。

この日は、その後何事もなく夜を迎えた。

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