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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
64/113

六十一話 凛堂先生?






9月3日。

午前10時。


授業は二時限目に入っており魔力に関する勉強を行なっている様子が学院の一階〜6階までの全てで見られた。









凛堂は柄にも無く眼鏡をし、日頃来ている床に擦る長さの黒いコートを置いて規律ある教師用のYシャツに着替えていた。


これは松薔薇からの提案であり、

『そのままだと怪し過ぎます。』

という事から念を込めての変装であった。




髪も普段の天然で広がっている地毛を垂直に梳かし長さも目上と耳上、後頭部は項辺りと一般的な長さに揃えた。

これなら皮だけは真面な教師に見える。


………実際どうかは試しだが。







適当に一階を歩き回っていると煩そうな中年教師の怒号が廊下まで響く。

気になって二階乗降口に隠れて聞き耳を立てる。


どれどれ。









「こらぁぁぁ!!ブレイド貴様、最近三時限目じゃなく二時限目から抜ける事が多過ぎるぞ!?」


「いやぁすいません!やる事あるんで!」


「それは授業だろうがぁぁ!!」

「こんの馬鹿者ぉ…………待てーー!」








「ーーーーブレイド。

Aクラスに在籍してんのね、覚えとくか。」


「うぉおぉぉぉーーーーうぉぉえぇっ!?

凛堂っ!?」


「よぉ、6月に会った以来か?

…………お、強くなってるな。」








飛び出して来たブレイドを待ち構えて静止させると、感覚的に溢れる魔力の強さを測る。

すると、平均してLV30台に乗っている事が解った。


以前は10中間から20中間あるか無いかの実力だったのに頑張ったんだな。

素直に感心する。






そうして呆けている凛堂にブレイドが何事か訊いてくる。

軽く以前との違いを見に来た事、遠縁の妹(見方によっては姉)の存在とその実力を伝える。


それを聞くとブレイドは一時思考が止まった。

つまりそれは、大した汗も掻かず既に俺と同等に強いって事か?

おかしいだろ、おい。


焦燥を見せるブレイドを見兼ねて凛堂が提案を出す。

これが目的と言えるだろう。









「ーーーーなぁブレイド。

お前は今の世界で才能を除いた強さの上げ方は何があるか知ってるか?」


「え、知らないよ別に。

…………何か、あるのか?」


「んー……………大有りだな。」


「え!?何だ?教えてくれ!」


「ちょ、声でけ、」









教師が何事かと教室から出てくる。

それは中に居たフィスタや他の生徒にも聞こえており100人近い全員が様子を見に外へ出てくる。


すると飛び出した筈のブレイドが背丈180は超えていそうな初見の教師と立ち止まっているのが見えた。

何事かと思い興味が湧いた。






禿げ頭の教師が訝しむ顔で凛堂に声を掛ける。

貴方の名前は?担当教室は?

当然返答に詰まる。








「あ、えーとですね?多分Sとかですね。」


「ほう、Sとな?

ーーーーこの学院は各年にJまでしか無い!!」


「え、そうなの?じゃあA?」


「そりゃあ私じゃぁぁぁぁあっ!!」


「あ、確かにな。」







「不審者めぇぇぇ!!生徒達に私の力を見せる良い機会だ!見とれ!」


「お?ーーーへぇ、skill使えんだ。」


「こう見えても私は若い頃ギルドで活躍しとったんじゃあ!丁度50lvじゃわい!」








喰らえい!

first skill、《鉄拳》!!




そう言い放ち高濃度の強化魔力が右拳に集まるかと思えば、凛堂の顔面目掛けてその右拳を直線上に殴りつけて来た。


普段舐めて掛かっていた教師がまさか学長よりも強いとは思っておらず多くのA生徒が急に畏まり出したその時。






フィスタやクラス達30lv級の人間と禿げ教師は直後に気付いた。

謎の男が眼鏡を一瞬だけ外した刹那、当人の抑え込まれていた魔力が台風の様な風圧を巻き起こしたのを。


………凛堂の身に付けている眼鏡は、松薔薇がダンジョンの腕時計に着想を得て発明した魔力制限が可能な道具であった。

※尤も、天使の作る遺物とは違いあまり高度な仕組みは作れない為1か100の極端な調整になっている。






そうして教師がその場から後方へ4m程吹き飛ばされたかと思うと、いつの間にか凛堂は眼鏡を付け直して慌てて駆け付ける。


大丈夫ですか?医務室行きます?

そんな事を言い出す。




禿げ頭こと教師オルトは、経験でこの者の危険性に気付く。

伊達に50lvではないと言う事である。


即座に正座をすると、頭を床に付けて嘆願し始める。

これには周囲も驚いた顔になるが、一番意味不明なのは凛堂である。








「私が若い頃に一度だけ見た松薔薇様と同等かそれ以上の魔力を感じましたぁぁ!

貴方様は恐らく教師などではなく何かの組織に属する方なのでは無いでしょうか……?」


「うーん、組織かぁ。

まぁ、魔王って肩書きが組織扱いならそういう事にはなるのか………?」


「え、魔王?……………え、え!?

嘘ですよね?貴方があの歴史に載る!?」


「おう、今は身形整えてるから分からないかとも思ったが。

今の時代に50台まで上げるなんて、あんたやるなぁ。」


「は、ははぁ!

有難きお言葉です!それと先程は無礼な行動大変失礼しましたぁ!!」

「事情は分かりませんがきっと学院に何か御用があるのでしょう?私が後々説明しておきますので好きに見ていってください!」


「ん、助かる。

おいブレイド、行くぞー。」


「なぁにぃぃいいぃいぃっ!!?

ブレイド貴様、何を仕出かしたぁっ!?」








え、俺?

何もしてないんだけど。


フレムやクラス達はその様子を見てある決心をする。

ーーーーーー尾けよ。






そうして先程の男に関する話題が尽きぬまま二時限目は過ぎていった。

しかしフィスタ、クラス、フレムの姿は無かった。

※フレムは魔力授業を自主的に受けていた為教室にいた。

















学院中央。

王城を囲む外門周囲に設置されているベンチに座って凛堂と話をしていた。


その内容は。










「なぁブレイド。

10月初めに行われる学院戦、お前は確実に負ける。」


「はぁ?何でだよ?

前にエイガ先生から聞いたけど、レイレンって俺の妹?がそんなに強いのか?」


「まぁ、な。」


「…………凛堂がそこまで言うなんて。

俺が弱い、のかな。」








それを聞いて即否定する。

お前は強い。

只あの子が強過ぎるだけだ。


それを耳に入れると、ブレイドは人生で三度目の敗北感を味わう。

一度目はガトレット、二度目はソディアだ。


しかし今回はその二人とも更に格が違いそうな相手。

ブレイドは頭の中でその強さを想像していた。




そんな上の空のブレイドに少し哀れみを覚えつつ、先程話せなかった内容に触れる。









「良いかブレイド。

秀才なお前でも天才には勝てない。」

「そんな時、どうするか解るか?」


「…………頑張る?」


「まぁそうだ。

でも同じ事してても加速度的に差が開く。

だからお前は、」







「魔物と戦え。」










魔物。


いやいや、凛堂は何を言ってんだ?

国のどこにも居ねえよあんな旧時代の化け物。


反抗的な表情を見せるブレイドに落ち着く様に言うと、話を続ける。








「良いか?

お前は対人経験しか無い、それは別に駄目ではないんだ。

今の時代は昔の頃とは違う、魔素濃度も薄くて余程の事が無いと人里や国を襲う力を持った個体は生まれない。」


「でもな、さっきのおっさんがどうやって50lvまで上がったから気にはならないか?」


「っ!気、気になる。」


「それは簡単だ。

ギルドってのは一般の人間でも学院からの伝手でも、どっちからでも入れる。

そんでもって安全な依頼から危険な依頼まである訳だが。」









真剣に話を聞く。

そうして彼は口を綴る。










「バルト王国内での依頼は基本的に安全な内容が多い。

低級の雑魚でも一応時間を掛ければ強くはなるが、何年も掛かるんじゃ遅過ぎるな。」


(別に遅くないんじゃ。)


「お前は今から一月で強くなる必要がある。

そうだな、最低でも50lvだ。」


「ぇええぇぇっ!!?」







「「「えぇぇぇぇええっ!!?」」」


「ちょ、何お前ら聞いてんだよ!?」


「お前の連れだろ、そいつらも誰かさん達に似て強い魔力を感じるな。

よし、資格ありとして話聞いとけ。」








そうしてクラスは誇らしげに眼鏡を上に上げる。

承認欲求が癪過ぎて軽く脇を殴る。


痛みに堪えていた。




フレムとフィスタは凛堂とブレイドが座るベンチの左右にあるベンチに其々座る。

因みにクラスは右ベンチに座るフィスタの更に右側に座って悶えている。


そうして話は続く。









「で、だ。

俺が学院に話通しとくからこの1ヶ月は社会見学だ。

……………実践のな。」





「ダイエン共和国って知ってるか?

ここから西100km地点にある国だ。」


「知っています。

中央から外れるにつれて貧困の姿が見える、現代では珍しい三角社会の国ですね。」


「おぉ、松薔薇に似て博識だな。

まぁ魔力的にも子孫だろうしな、ハハ!」


「な、やはりそうなのですか!

生ける英雄の子供とは、特別感があります。」


「ま、フィスタとか言う奴は涼木の魔力流れてるしフレム、お前も永澤の魔力が流れてるな。

要は血縁からしてお仲間なんだよ、お前ら。」






「「「「え、そうなの?」」」」


「おう。

まぁ実力的には遥か足元だけどな。」








怒りに震えた。

そんな英雄達と比べられたら誰だって同じ事言われるだろうが。

少し機嫌が悪くなる周囲を気にもせず話す。









「ダイエン共和国は魔巣が豊富でな。

最上位地区Aから下位地区Nまでの各街に一つずつ魔巣が点在する。

中は10階層に渡る構造になってて、詳細は分からねぇ。」


「A地区の魔巣は突破されてるって話だから合計BからNまでの13だ。

そこに、」







「殴り込みに行く。」







それを耳にすると、四人は心を大きく揺らされた。

それは恐怖ではなく、興奮であった。


凛堂はその遠足前かのような空気感に軽く笑いつつ、明日から9月末まで帰れなくなる合宿である事を伝えた。




少しは戸惑い悩むかと思っていたが、全員が即答した。

行く、と。









凛堂はそれを聞くと右ポケットに入っていた連絡水晶を取り出し右耳に当てる。

そうしてギルドのバルト支部にて書類印鑑の業務に追われている松薔薇に連絡を繋ぐ。







『何ですか?今冗談抜きで目前に1メートルの書類が積まれているのですが。』


「そうか、ブレイド達四人組をダイエン共和国に連れてくから親御さんへの連絡とか学院への口利き宜しく。」


『は?急に何を言ってるんですか貴方?

ふざけていーー』


「はいっと。

てな訳で伝えといたから。」







「「「「…………伝わってなかっ」」」」


「んじゃ明日の八時にバルト王国の西検問所に集合だ。

荷物は武器とか手帳とか、後は学生証だ。

向こう行った時身分証明書無いと入れないからな。」


「………妙な所で確りしてんだな。」

「もっと勢いだけの人かと。」

「な。」

「………大丈夫、そうかな。」


「心配すんな。

あ、金銭は向こうでギルド任務を外来受注して直接稼ぐぞ。

その方が命懸かってて楽しいだろうし。」


「ふざけるなぁ!!」

「ふざけないでください!」

「じゃあお菓子持ってくか。」

「………飲み物は良いよね。」


「うるせぇ、殺すぞ。

じゃなくて、殴るぞ。」









一同、絶句。

一瞬本人から出た魔力に込められた微かな苛立ちが、この四人からしたら冗談では済まない殺意として感じ取れてしまったからだ。


凛堂はそんな様子で固まる四人に仕方無さそうに左ポケットにある個包装の飴を渡して少し休憩させると、締めの会話に入る。








「移動は自力だ。」

「それと飲み物、食料品は手に持てる量だけだ。」

「目標は4日の朝8時頃から午後6時までに到着だ。

時速10kmペースだから常に軽い走りを続けてりゃ10時間で着く。」


「あと、遅れた奴から罰筋トレあるから。

腕立て、腹筋、スクワット各100〜400までな。

全員遅れた場合ビリは400って意味ね。」

「じゃ、気合い入れて準備しとけよー。

また明日ー。」


「「「「……………」」」」









「「「「きっつ。」」」」











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