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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
58/113

五十五話 ダンジョンロロイの旅








8月25日。

そこそこ日も経ち、ダンジョンは自身が16日の遠征開始から既に10日が過ぎようとしている事実に焦った。


思ったよりも居心地が良くて滞在し過ぎちゃいましたね。

流石にバルト王国に向かいましょうかね。


そう思い今日は朝11時の日課仕事である田植えや巨岩砕きを中止して宿を営んでいたロロイの母に一言告げる。




ロロエ。

ロロイの母である彼女からしてもここまでロロイと仲良くなってくれた友達は初めてであり非常に感謝していた。

出発の前にお弁当を作ってくれるという話で、暫し待つ事にした。


そんな時、一階の会計台裏の自室からロロイが目を覚まして来た。

何事かと思い話を訊くと、ダンジョンがもう家を出て行くという話である。








「そ、そんなぁ!おらぁアンタが居ねえと楽しくねえだよ!

行かんでくれねか!?な?」



「うーん、でもあんまりうかうかしてると自分が怒られちゃうんすよ。

怒るとやばい人なんで、そろそろ行きます。」



「そ、そうかぁ。

ーーーーそっか。」







そう言い本心から残念そうな顔をするロロイに申し訳なく思う。

すると、母であるロロエが自身の身に付けているペンダントを首から外す。

そして、それをロロイに渡した。


何事かと尋ねるロロイに、







「……………あんた、そろそろ良いんじゃない?」



「?な、なにがぁ。」



「いつまでここに居ても、以前来たイジャエとか言う可愛い子は来ないと思うよ。

だったらさ、前バルト王国に勤めてるって話もあったし一緒に付いて行ったらどうだい。」



「え……………おら、村出ちまっていんか?」



「ダンジョン君の働き溜めで1人欠けた程度じゃ問題無いくらいに作業は進んだ。

感謝しなさいよ、あんた。」



「っっ。

解った、分かった!んじゃおらも準備する!」









そう言うと意気揚々と自室へ戻るロロイ。

ダンジョンに対して暫く世話をお願いして来るロロエにダンジョンは、








「お弁当のお礼だと思って下さい。

それならお母さんも気兼ねないでしょ?」



「っ!

ーーーーーありがとね、良い人だ。」







そう返す。

そうして時間は過ぎ。











朝9時。

二人は背に旅路用の干し肉や水筒を入れて動き始めた。


ダンジョンの提案により貨幣は持たずに行こうと言う話になり、ロロイもそれは楽しそうだと言って賛同した。

そして、両者無一文で出発に至る。







草の生えない整備された道を徒歩で進みながら、ダンジョンは昔の記憶を思い出す。




涼木や永澤、巳浦達と共に戦車魔物の館に乗り込んで日々魔物狩りをしていた日々。

その過程で様々な危険地帯にも踏み行ったが、人の限界に迫る力を備えた彼等と共に強力な魔物を倒す日常は今でも高揚感のある経験だった。




しかし、今は加速文明記。

全ての上位者、高位者の結束により人類の平和を勝ち取り。

魔物達の水準も大きく下がり生命終記以前まで存在した危険な自然区域は無くなっていた。

もう、あの命を賭ける熱い戦いをする事は無い。


それを思うとダンジョンの馬鹿みたいな縦一本の両目から涙が溢れてくる。

ロロイは何かあったのか心配するが、ダンジョンは直ぐに涙を拭く。




(この環境は、巳浦達が存命だった頃の夢。

それを無碍にする発言や考えは良くないっす。)




そう思い、ダンジョンは嘗ての記憶を懐かしみながらも目的に向けて歩み続けた。

そして。












視界前方。

急激な魔素の収束が起こる。


ーーーーこれは。

ダンジョンは即座にロロイへ下がる様に伝える。

それを聞き直ちに後退するロロイに荷物を投げ、ダンジョンは道の正面へ向き直る。






赤い魔力が塊を成す。

その時点で誕生する魔物が加速魔力を持つ事は察知した。


15秒ほど経ち、それは明確な意思と形状を持つ。





(………………今の時代に?危険な奴っす。)





全身に赤い魔力を電流の如く走らせる相手。

それは推定で50〜以上の階級があると判った。


見た目は体表を腐らせた外観のボスゴブリンであり、得物として両手に長さ1m程の鉄棒を所持している。

ダンジョンは一瞬魔力を解放しようか悩む。


しかし、魔王の基本階級は200。

魔力抜きでも肉体性能だけで階級100の英雄を相手出来るだけの身体を持っている。

無駄にロロイを怖がらせるのは良く無いと思い、タンクトップの無い袖を捲る。




ロロイは目前に立つゴブリンと一瞬目が合う。

その途端に此方へと走り始めるゴブリンを見て恐怖を覚え後方へ逃げた。


そしてダンジョンが前方を遮る様に左腕を突き出す。

制止を掛けて来た巨体の人間?からは魔力を感じなかった。




邪魔臭かったので無視したかったが、面倒なので右手の鉄棒を全開で横薙ぐ。


それはダンジョンの背中を強打した。

感触からして通常なら脊椎が砕けている衝撃があり、その肉塊を固い物で殴打した音を聞いてロロイは反射的に後ろへ振り返る。








「ダ、ダンジョンさーーー










「いやぁ、初対面の相手に酷いっすよ。

暴力は止めましょ、ね?。」



「え。

あれ、すんげ音しただよな………流石だぁ。」










ゴブリンはその際にこの男は只の人間とは何か違うのを肌で感じた。

何の焦りも無く、汗も流さず。


淡々と此方へ注意をしているのだろう態度や身振りに異常を感知した。

急激なターンを見せ外周にある木々の中へ逃げ込もうとする。


が。






ぐぐっ。

右手で持っていた鉄棒が全く動かない。


動悸を収める事なく後ろを見つめる。

そこには鉄棒を右手でヌンチャク宛らに折り曲げ自身の左腕手首に巻き付けている男がいた。


その時点で危険を感じて右手を離す。

刹那。






轟音。

先の巨漢が徐に上空へ突き上げた右拳。

全開で自身の元居た地点の足元へ下段突きを行った。


そして部分に偶々あった幅1m近くの切り株が丸々土砂へ陥没する。

脇まで埋まった右腕を強引に引き抜き、此方へ向く。

ゴブリンは理解した。




ーーーーma、ou?

瞬間、地に両手を付けて首を垂れる。

ダンジョンは畏まるゴブリンの肩を叩くと、








「ーーーー〜ー〜〜!!???、ーーeーーo!」



「!?ohoho、ahahaho、uuhhhッ」








ロロイにも聞き取れない謎の呻きにも聞こえる言語を発してゴブリンに対し諭す。


別にお前を殺すつもりはない、通りの人間に手は出すな。

そう伝えられた魔物は直ぐに生きられる喜びとそれに対しての了承を伝えた。




そして、そそくさとロロイに対して含みのある目線を送りながら周囲の森の中へと紛れて行く。

無事に済んだ様だ。


ロロイは荷物をダンジョンに返しながら事情を訊く。


 





「一体、ダンジョンさんはなにもんだ?

あの危険そうな魔物、あんたにあたま下げてただよ?」



「あぁ、その事っすか。

自分人間じゃないんすよ、でもって大抵の魔物は自分と会うと戦いでなく傅く選択を取るんす。

魔物の上、魔王っすから。」



「ま、まおう?

人間じゃ、無いだか?本当か?」



「えぇ。

これでも相当力抑えてるんすけどね、はは。

さぁてそろそろ動くっすよ、シャリン村から出て1時間経過して5kmしか進んでないっす。

残り5km、30分で行きましょ。」



「えぇ!?えぇと、んん?軽い走りだかね。

意外と難しいだよそ、







ーーーー置いてくっすよー。


彼は既に小走りしていた。

ロロイも直ぐに後を追いかける。






彼は内心で更にダンジョンへの信頼を上げていた。

これだけ大きな安心感と信頼を持てる男はもう出会えない。


(以前会った巳浦さんも凄かっただ。

けど、大して交流は持てんかった。)




あの人出会った女性。

イジャエは彼によって理想像その物であった。


綺麗な金髪に、明るい性格。

優しい表情に、美味しい食事。


素敵な彼女を頭から忘れた時は無かった。

そんな事を考えつつ、二人は残りの道程をそこそこ早く進んで行った。






















「おぉ、村っすね。

ロロイが僕の分まで水飲んじゃったから、補給させて貰いましょ。」



「すまねぇなぁダンジョンさん、いくらなんでも八月は暑いだよぉ。

気温32℃位あるだね、今日は。」



「そうすね、干し肉なんて食ってられないや。

ロロエさんから貰ったお弁当もありますし、村に着いたら木陰で食べましょう。」



「お、いいだね!

母さんの飯は美味いだから、楽しみだぁ!」








ダンジョン達は村に着く。

其処はバルト王国の外壁が目視できる距離に点在している村々の一つであった。


そう、方角は東に当る位置であり。

ーーーー嘗て巳浦が産まれ、ブレイドの実家がある村でもあった。

名をカタ村と言う。






2人連れを見掛けても気にする事なく各々の作業を熟す人々を見て、ロロイは何処の村もやる事は大して変わらないんだと感想を持つ。

が、ダンジョンは一人だけ何故か鳥肌を立てていた。


どうしたのかと思い視線の先を見る。






村の中央にある数本の木が集まった木陰に、一人の女性が居た。

その人はその長い黒髪を風に吹かせながら、何とも暇そうな目付きを周囲に向けていた。

何となく、誰かを待っている様な風に見えた。


そんな女性は身に付けている黒いロングスカートを軽く摘んで立ち上がる。

そして、ダンジョンの方へ顔を向けた。




そうして無言のまま右手の人差し指を手前に揺らして来いと指示してくる。

ロロイは何が起きているか分からなかったが、ダンジョンが静かにその指示に従い歩き始めるのを見て忍足で付いて行く。




ダンジョンは少し警戒した顔付きで彼女へ話し掛ける。









「なんで、貴女がここに?

ヴェルウェラさん。」



「うん、ここに待機してればハイデン王国から戻って来た巳浦と会えるでしょ、だから。」



「あー、成る程。

彼と会いましたけど、10月頭頃にバルト王国に戻るみたいっすよ。

何か学院戦とか言う試合を行うみたいで。」



「へぇ、詳しいね。

全部教えて。」








な、何だに?この人。

ダンジョンさん相手に何も物怖じせず堂々としてるだに。

それに、何処となく巳浦さんにも似てる様な。


ーーーーいや、似てない、だにかね。

ロロイは黙って二人のやり取りを聴く。








「ーーーーーそう、娘ね。

レイレンか、まぁた片親に押し付けたな彼奴。

ーーーー殺す。」



「え!?いやいや、今回は訳ありでして。

実は、」










「ーーーーーーへぇ、まぁそれなら。」



「ね?ヴェルウェラさんの時はどう考えても巳浦が悪いっすけど、あの娘は事情込みで情状酌量で許してやって下さい。

それに時折、ヴェルウェラさんにどうやって顔を合わせたらいいか解らないとか呟いてました。

彼も色々悩んでましたっすから。」



「ふん、それで許すか。

絶対に借りは返して貰うし、それを止める奴がいたらそいつを殺す。」



「それでしたら、自分が止めますよ。」



「…………………何?」








突如険悪な雰囲気に包まれる。

その周囲数mに危険な気配が立ち込め、ロロイはなんとなしに距離を空けた。


瞬間、突風が走る。

反射的に怯む。


その次に瞼を開けた時。






ダンジョンが構えた謎の大剣に真っ黒な刀が鎬を削っていた。

その二人の間でぶつかり合う魔力の衝撃が先程の突風を引き起こした。

思わず周りの人達も中央へ視線を向ける。


そして別軸による理由で驚いた。






地元では有名なヴェルウェラと呼ばれる女性。

古くからこの土地に姿を見せるその人は、どんな障害や危険をも遠ざけ。

自身の前に立つ邪魔者にも容赦をしない。


軽く済んで骨折、酷いと腕や足が片方失われる事例もあったと言う。

その衰えず美麗な面貌と肉体を持つ彼女は、しかし誰も手を付けられない。


その彼女が滅多に見せない全力の一撃を、その大男は受け止めていた。

村人達は立ち止まり事の次第を観戦する。




ダンジョンは告げる。









「彼は元々、原初に連れられてこの世界から消えました。

元凶はあの白髪の男です。」



「知ってる。

けどそれから帰って来て、何をするかと思ったらお前等と一緒に毎日魔物退治や手合わせばかり。

双子の子供達はいつも背を見せるだけの父である彼奴に不可思議に尊敬を抱き、私の夢見た静かで普通な暮らしはとうとう叶わなかった。」



「ーーーーそれは、すみません。」



「だから、私は彼奴を許さない。

正直お前達にも良い感情は持っていないけど、まぁ直接悪い訳ではないから許してあげる。

なので、戻って来たら私が彼奴に何をしても看過する事。

分かった?」



「う、うっす。」









何だか聞いている感じ巳浦さんの話だかね。

ロロイ含め周辺の人々は仮にその巳浦と言う男が戻って来ても二人のやり取りは黙視する事を内心決めた。

だが、巳浦という名前は教科書に載っている歴史上の大英雄の名前だ。


だがしかし気のせいだろうと思う人達とは別に、ロロイはまさか?と前見た姿を思い出す。








「まず手始めに、毎日一緒に暮らすだろ?

で、前は出来なかったから今回は私も同伴して旅をしたい。

どう?悪くないだろう。」



「えぇ、そうっすね。

ーーーーーーえ………………旅っすか?」



「うん、そう。

今回はお前達仲良しが全員くっ付いて動いている訳じゃないみたいだから、なら私が行く。

間違っても巳浦の奴が嫌がったら、その度に一発切り付ける、良いでしょ。」



「ま、まぁ好きにして下さいよ。

奥さんっすし、巳浦の方も依頼の旅に連れてくのは許可するんじゃないすか。」



「依頼?眼鏡が何か言ってたな。

討伐依頼がどうとか何とか。」

「で、色々あってハイデン王国に滞在してる。

まぁ、10月1日にやるとか言う学院戦は私も彼奴と一緒に観るよ。」



「うん、良いと思いますよ。

当初は巳浦と凛堂が戦う予定だったんすけど、確か最後に聞いた話だとブレイド?とか言う少年と例の娘のレイレンが戦うとか。」



「そう。

その子は一応片親違いの娘って事よね、レインドとか言う名前、いつかに聞いた様な?

ーーーーあぁ、10世紀の時居た男。

そいつとエイレーンの娘、か。」








ヴェルウェラはふーんと言った顔で何かを思い出している。

一旦別行動の旨を伝え、ダンジョンがロロイを呼ぶ。




ロロイは薄らと聴こえていた会話の内容が非常に気になったが、ダンジョンのほっと安心した表情を見て訊くのをやめた。

そして、取り敢えず中央広場にある出店などを回る事にした。

水場が何処にあるか分からないからだ。


その時、ヴェルウェラも止めていた体を動かし始める。

彷徨く二人に声を掛ける。








「おい、あまり彷徨くな。

片方の男は良いが、お前はデカくて目に付く。

邪魔ったいから、私の家に来い。」



「え、良いんすか?

それこそ邪魔なんじゃ。」



「礼の意味もある、巳浦の情報ありがと。

その家は昔私が暮らしていた家だから、今暮らしている女性も私や巳浦の遠い子孫に当たる。

私とも仲は良いから気軽においで。」



「じゃあ、ありがたく。

ロロイもどうぞ、水貰いましょ。」



「は、はいっす!

ありがとうござんます、ヴェルウェラ?さん。」



「うん。

…………結構良い顔してるな、喋りを直せばそこそこだし悪くないと思うよ。

地方の訛りがあると周りは遠慮するからね、私の喋りは女性風だからダンジョン。

ーーーー以外の王都周辺の男の喋りを覚えたら良い。」



「え?そ、そうだにね。

ありがたいだね!助かるだよ!」









会話していると案外普通の女性だと感じ、ロロイは安心する。

だが、彼女の本性を知っているダンジョンは何も知らないロロイの気楽な態度に羨ましさを覚えた。


(本当は巳浦より強いかも解らない程の実力者っすからね。

相性的に自分は最悪ですし、魔王や天使に匹敵する力を持った黒人はやっぱり侮れないなぁ。)




そんな感想を再度抱きつつ、煉瓦の一軒家が並ぶ並木の住宅帯へ入って行く。















「おーいヴェイダ、邪魔するよ。」



「あ、御婆様。どうぞ入って下さい。

………………連れの方も、気にせず座って。」



「うっす。」


「すんません。」








朝の11時頃。

飾り気のない質素な内装で落ち着く雰囲気の煉瓦壁を見つめながら、ダンジョン達二名は水を飲んでいた。


特にロロイは若干脱水気味で水を飲みながら天国にいるかの様な顔をしていた。

それを見ていたヴェイダは然り気なく軽食に酒蒸しした牛の一枚肉を皿に盛り二人に出す。


塩分補給ついでに小腹も満たせる蒸し焼き肉はありがたかった。




そうこうしていると、予期せぬ来訪者が訪れた。








「母さーん、帰ったー!」



「あら、急にどうしたの?

今お客さん来てるから、上に行ってなさい。

服が汗っぽい、脱いで水浴びして来な。」



「うん、でもさ、その。

ーーー俺も連れがいるんだけど入れて良い?」



「えぇ、良いけど。

フィスタ君達?仲良かったものね。」



「いや、あいつらは今日途中まで一緒だったけど自分の家に戻ってるよ。

そういうんじゃなくて、その、










ブレイドの背後に隠れて覗き込んでくる紺色の髪を後頭部で縛る女子。

ソディアが少し謙遜した態度で腕の隙間から顔を見せる。


ヴェイダはそれを見ると急に驚いた声を上げる。




ヴェルウェラも吃驚した顔をする。

先月バルト王国へ足を運んだ際に見掛けた巳浦に良く似た男の子と、将来有望な女の子。


突拍子もなく実家に帰ってくる物なので二人して座っていた台所の椅子から立ち上がる。

ダンジョンとロロイはブレイドを見て其々巳浦かと勘違いして声を掛ける。







「巳浦!離れて下さい!

殺されますよ!」



「んだぁ!殺す殺すってヴェルウェラさんが言ってただによぉっ!」



「え、爺さんがどうしたんだよ。

俺はブレイドだぜ?容姿似てるらしいけどそんなに紛らわしいのか、変に申し訳ないぜ。」






ーーーーーえ?

二人して冷静になり、良く体付きや風貌を見る。


確かに、巳浦と似てはいるが体格や年齢が合わなかった。

そして、背後にいるヴェルウェラから此方に対して声を掛けられた。








「余計な事を言うな。

次口開いたら、喉に突き刺すから。」



「す、すまないっす。」


「ご、ごめんだに。」









「あ、あの。

入っても宜しいだろうか?」



「良いのよソディアちゃん。

貴女は後で義理の娘になる子だからね、遠慮しないでね。」



「ありがとうございます、おばさま!

えっと、ヴェイダお母様、初めまして。」








ヴェイダは、何の拍子もなく突然現れた元気で明朗な女子がブレイドの彼女と告げる物で。

力が抜けて椅子に座り込んでしまった。


こんなに綺麗で可愛いらしい子が、彼女?

ブレイドったら、学院生活は順調そうね。



そうして丁寧にソディアを迎え入れると、二階にあるブレイドの自室に入っている様に伝える。

二人は来客の邪魔にならない様上に上がり、ヴェイダも共に二階へ上がって行った。


そして、下にはヴェルウェラとダンジョン達が残る。







話題もなく微かな気まずさが漂う中。

場違いな空腹の音がロロイとダンジョンから鳴り響く。


地獄その物の顔をした二人が正面の椅子に座っていたヴェルウェラを見上げる。




だが、意外にも優しい顔をしていた。

どうやらお気に入りの二人が順調に仲良くしているのを知って気分が良い様子だった。


そして柄にもなく長髪を纏めると、頭巾の後ろ穴に通して急に白いエプロンを付け始めた。

まさかと思った二人に対し、








「今私は上機嫌だ。

特別に料理してやる、何が良い?」



「え、えぇ!?手料理?あのヴェルウェラの?

じゃ、じゃあ取り敢えず肉物、



「肉はさっき食べたろ、栄養が偏る。

まぁ仕方無い、卵と肉で朝食代わりに飯を作ってやる。

二人が持っているお弁当は上の二人にあげてやれ、他人の作る飯は美味しい物だからね。」



「りょ、了解だぁ!持ってくだによ!」










そう言うと丁寧に布で包まれていた木箱を二つ布袋から取り出しロロイは二階へ上がって行った。


ダンジョンは随分昔にこの家へ訪れた事を微かに脳裏に甦らせる。

確かその当時も彼女は料理を作っていた気がしたが、宮廷で出される料理並みに美味であった。




心なしか期待感を持ち始めるダンジョンの態度と仕草を見て、ヴェルウェラは昔面倒を見ていた自分の子供を想起する。


二人がバルト王国に向かう理由は知らなかったが、今は一先ず食事を作る事にした。

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