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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
55/113

五十二話 裏天使

色々急展開、です。









天使の魔力とネイシャの魔力がかち合う。


それは互いに丁度相殺し合い周囲に猛烈な爆風を吹き起こすのみに収まった。

しかし姿勢が揺らいだ天使の左足首を落下しながら両手で掴み、そのまま両者共に落下した。


先程まで浮いていた天使が肉体の下に固めていた重力魔力の層はネイシャによって蹴り壊され、支えが無くなっていた。







地面に衝突するしかないネイシャを見て守護者達が真っ青な顔で青ざめる。

が、当然の様に天使が片足、ネイシャが片腕で高度10m程度から着地するのを見て物理法則とは何なのか常識の改編が始まった。



そんな中、ブラッドは現状【自身】では役に立たない事を認識していた。

ネイシャの攻防での活躍に険しい顔をしながら、信じる事にする。









天使は髪が地面に擦られるのを見て不快な顔になり、右手の人差し指を指揮棒の様に振るとその異常に長い髪が独りでに巻かれていく。

そうして5秒ほどで髪を肩甲骨を中心に左右へ大きく固結びにした。


顔は髪ばかりを見つめており、周囲よりも自分が大切なのが伝わって来た。

ネイシャが苛つき声を掛ける。






「ねぇ、貴女何?

突然そんな大きな魔力纏って出て来て、ドッキリでもしたかったの?……違いそうだね。」



「ーーーー私は、裏天使りてんし

ルシエル、サキエル、ミカエル、ラファエル、ルシフェル達表天使ひょうてんしと違い裏界りかいを担当している。

そして、彼等は私達を知らない。」



「……………天使、貴女が?初めて見るねー。」



「用があって来た。

お前達二人は管轄上私達の支配下に当たる。

指示には従って貰う。」







ブラッドが前に出てくる。

アルバ達は目を見開いて見守る。








「そんな天使さんが、どんな用件だ?

重大なんだろ、態々出てくる位だ。」



「お前達が世界に出てくると均衡が崩れる。

争いが生まれる。

きっと表天使も英雄達に同じ事を言うだろう。

だが反英雄の管轄は彼等ではない、私達だ。

よって、ファイナルガード諸君には裏天界に戻って欲しい。」



「ーーーーーー嫌だな。」

「私も。」



「………………反抗する?

世界の意思に抗うのか、人間。

高位者に勝てると思っているのか、反英雄。」








二人は静かに近付き合い、背合わせをする。

そして、言い放つ。







「迷惑掛けてないし、帰る必要ないもん。

ね、ブラッド?」



「俺達は、二度目の人生を楽しく過ごしたい。

勝手に裏天界に縛っておいてふざけた事抜かしてんじゃねえぞ糞女。」



「ーーーーーーーーーーーーー」









天使ーーーマリウェルは冷たい表情とは別に興味も覚える。

この者達は人の身でここまでの力を付けた者。


下位の存在である人間の枠を超え。

中位の魔物を超え。

下上位の組分けに入った者、最終防壁者ファイナルガード

(魔族(黒人)は中上位、魔王は上上位

 天使は下高位、原初(&皇帝)は上高位、終焉者エンドカードは中超位)





裏界とは違い表界は実力の相場が低い。

にも関わらず、何故か裏界の人間等のトップ層に匹敵する力を持つ。

世界の意思が修正し作り出した世界は、何と面白いのだろうか。

試してみたくなる、先程の男や女の力を全部見てみたい。


マリウェルはそう思い始める。

だが、それは【試練】となってしまう。






世界の規則として、天使の下す【試練】。

原初や皇帝の与える【使命】。

これ等を乗り越える、つまりある程度認めさせると人類文明が発展する様に造られているのだ。

勝手な行動は赦されない。


マリウェルは地面に胡座を掻いて顎を突く。

急に可愛らしい仕草をするので守護者男性陣が熱い視線を送るが、横の女性陣から殴り飛ばされた。






ネイシャがマリウェルのすぐ目前に体育座りする。

二人の無表情な目線が交互に飛び交う。


ブラッドはそれをネイシャの一歩後ろから見守る。

すると、マリウェルが突然溜息を吐く。








「私のみ考えるのは無駄。

皆を呼ぶ、座して構えよ。

ーーーーーー男、座れ。」



「嫌だね。

お前の近くに座るのは現状、俺の自信が許せね。

立たせてもらう。」



「ちょっと、ブラッド。」








天使がそっと立ち上がる。

ブラッドの目を直視しながら五歩ほど歩く。

片足立ちのまま下から覗き込む様な姿勢で、







「座れ。」






と声を掛けてくる。

普段鈍感なブラッドでも少し男心が動く様な可憐な仕草と冷たく甘い声。


少し気恥ずかしくなり、仕方無く足を伸ばして座り込む。

すると納得した様な顔で天使が真横に密着して胡座のまま座り込んで来た。





それを見てネイシャが妙な噦を覚えると、対面する様にブラッドの顔の前へお姫様座りして来た。

ーーーー足と、股間の上に。


ブラッドでも流石に困惑する。

と同時、宿で抱き合っていたのを思い出して少し嬉しさも覚えた。







「ザラウェル、ラミウェル、ラキウェル、エラウェル。マリウェルの元に集え。」



「っ、五人も。」



「ちょ、かなり不味いんじゃ。」











瞬き。

その瞬間、四人の様々な容貌の女天使が四方を囲い立っていた。





眼鏡を掛けた碧色のワイシャツのベリーショート。

ザラウェル。

大きな胸の突き出ている海色の司祭服を着たセミロング。

ラミウェル。


頭から足先まで漆黒ローブを纏ったカールショート。

ラキウェル。

腰下が紅いロングコートの軍服を着たロングのオールバック。

エラウェル。



最後。

純白のネグリジェ一枚身に付け、髪を足先まで伸ばす極限のハイパーロング。

マリウェル。






彼女達は五人揃うと、ホール中央で綺麗に真横へ並び立つ。

そしてその中から真ん中のエラウェルが前へ歩き出てくる。


男性諸君は全員セルペアナとエンジーナに目を潰されて倒れていたのでこれ以上の負傷は無かった。







「エラウェルと言う。

レイブン・スペルよ、一つ聞く。」



「ん、何だ。

別に今回あんたの仲間を傷付けたりはしてないぜ…………効かなかったからな。」



「マリウェルの心配はしていない。

貴様の心配をしている。」



「ーーーーーーどう言う事だ。」








彼女は真紅の長袖を捲り、ブラッドへ右手を翳す。

ーーーー特に何も起きない。


ネイシャが口を開く。







「一体何をしたの?

彼、普通だけど。」



「普通?阿呆が。

レイブンは今、何も喋れない。

私の電気魔力が奴の脳神経から送られる口を動かす電気信号を殺しているからだ。

これは内部から操作する仕組みでな、防ぐ方法はないぞ?」

「会話自体は聴こえている。

体の感覚もある、ただ口を動かす運動野を電気で封じているだけだ。

コイツに聞きたい事があってな。

ただ答える必要はないから口封じという訳だ。」



「な、なんて。

ーーーーーー魔力操作の次元じゃ、ない。」



「では一つ訊く、レイブン・スペル。」









くっそ、どうなってんだ。

本当に口が動かねぇ。

他の部分は全部動くのに。


焦りを覚え始めるレイブンに、エラウェルが禁句を言い放つ。







「ロウスを出せ。

お前のskillは把握している、出来るのだろう?

お前の様な軟弱と戦う気にはなれん、あの女を出せ。」

「私にーーーー







「敗北を教えた女を、出せ。」



「え。」








ロウス?

ロウス・マクレナ?

前にブラッドーーーレイブンが言っていた初代血術者の女性。


なんでその人の名前が出てくるの?

一体、何が起こってるんだろう。






ブラッドがそれを聞き、次第に顔色が悪くなっていくのが分かった。

そして数秒し真っ青な顔になる。


すると何故かネイシャの頭を撫でて申し訳無さそうな顔をした。

それがどうしてか分からずに話を訊こうとした時。


顔を見上げた瞬間に、事は起こっていた。







またも頭を撫でられる。

しかし先程よりも明らかに手が小さく、そして気配も冷汗が出てくる様な感覚に覆われた。


それは、マリウェルと同じく足元まで届く様な黒髪の女性だった。

ネイシャすら見惚れる様な美しい顔立ちで、且つ肉体面も薄い脂肪と細く締まった筋肉で明らかに強いのが分かる。

同じ様な肉体を持つネイシャには、この女の危険性が判ってしまう。

ーーーー最低で、自分と同じかそれ以上。






此方は漆色の軍服の様な服になっており、少しエラウェルと似ている気もした。


そんな彼女は無言で血の契りを出す。

周りの天使達も少し目を動かす。





何かしらの条件を取り付けると、それを半分に分けネイシャに渡す。

訳も分からず手渡されてしまい吸収する。


すると突然慈愛に満ちた動きでネイシャを抱き締める。

その洗練された体に抱かれて嘗ての母を思い出していると、何の条件を踏んだのかエラウェルの肉体が血色の鎖で締め付けられ、体に取り込まれた。


すると。







「ふぅ、解放されたわ。

エラウェル、私の可愛い後輩を虐めないで?」



「そうでもしないとお前は出て来なそうだが。

実はこんな事をしている場合ではないのだが、どうしてもお前だけは許せん。

戦え、私と。」



「前に負けてるじゃない。

その小細工電気魔力ちゃんで私を封じ込めようとして返り討ちにされてね?」



「ッッ!貴様の魔力封印の対象が自身の体内に入った魔力に代えられると知っていれば負けなかった!

貴様は、私の魔力を小癪な手段で封印し、その、あの、クソォ!」



「アハハっ!!昨日の事の様に思い出すわ!

貴女の服を剥いで、その綺麗な体を一晩中私の玩具に出来たあの時間は至福その物だった。」

「それに貴女、あの時と同じ様にまた魔力封印されちゃったわね?」



「クソ!!魔力無しで勝負しろ!」



「本当貴女は【阿呆】ねぇ?

レイブンみたいに馬鹿可愛い、馬可愛い!」



「ちっ……この世で貴様だけが、私の天敵だ。」








訳が分からない。

さっきから凄い下らない事で争っている気がする。

あれ、天使って意外と人間的。




するとラミウェルと呼ばれていた青い司祭服の女性が前に出て来て、エラウェルに対し両手を翳した。








「ーーーーーー【聖化】。」








そう呟くと、エラウェルの体から赤黒い魔力が滲み出て、それが段々消失していくのが解った。


ロウスは苦い顔をする。

それだって此方には天敵だ、と。





咳き込んで少しして。

エラウェルが開き直る。







「では、改めて勝負だ。

一つ訂正するが、魔力有りで戦おうか?」



「んー、そうねぇ。

ーーーーーーマリウェルちゃん、だっけ?」







「ん。何だ。」



「そもそも何しに来たの?」



「っち、貴様ロウスゥッ!

今更真面目になるな、正々堂々戦え!」



「待て、エラウェル。

ラミウェル、次は治すな。」



「………はい。」








他の天使に命令をしている辺り、マリウェルが1番上なのだろう。

ネイシャは他人事なので気が楽だった。



すると、マリウェルが四人を纏め、ロウスとネイシャの元へ歩み寄ってくる。

何事かと警戒すると、マリウェルがネイシャとロウスの肩に両腕を置き優しく叩いて来た。


別に戦意は無い、という事だろうか。

そしてロウスには真面目に話を聞いておく様に注意も入れる。




適当にはぁーい、と答えるロウスにマリウェルが突然無表情で右ビンタを決める。


ロウスは呆気に取られた顔で固まる。

ネイシャは、幼い頃に見た姉や母の本気で切れた顔を思い出した。






「ロっロウスお前っぎゃはっあはっ!」



「エラウェル黙れ。

私が喋る、他は聴く。」



「っ、すまない。」



「最初に言ったが、帰って貰いたい。」









二度目の発言。

それは一体どう言う事なのか、今一納得出来ない。

ネイシャが問う。








「意思は伝えている。各地に書記を置いた筈。

ネイシャ、貴女と同じく収集している者がいる。

名を巳浦、大英雄兼終焉者なり。」



「…………………え?」








信じられなかった。

それは、彼と会ったら戦わなくてはならないと言う事になる。

それが公国での約束であり、ネイシャが自由を得る為越えなくてはならない山だからだ。

書記を集め、世界全体に妙な気を起こさせないという公爵の狙いを妨げる障害は、除けなくてはならない。








「今頃向こうにも表天使が顔を見せているかもしれない。

理由は同じ、文献収集者が他にいる事、何もしないなら帰る事。

よって、用件は一つ。」










「即帰還か、全書記収集か。

書記には未来が記されている、意思の観測した未来。

未来余りに害、意思は平等を好むが変革は好まぬ。

魔王出現、原初不明、魔族出現、英雄召還。

これら異常なり、排除を求む。」



「直接干渉はしないけど、遠回しに事は起こす性質なんだね、世界さんは。

書記収集は私の目的でもあるし、任せてよ。」



「了解。

敗北即帰還、他反英雄に後継。

現在収集者二名、情報以上。」

「ーーーー書記出現、内容参照。

ーーーーー。

ーーーー。

ーーー。

ーー。

ー。」







マリウェルの顔が無表情から少しずつ目を見開いていく。

何が起きたのだろうか。


口を薄く開き、少し悩んでいる様子だ。

訊こうとした時、口を開いた。







「原初、裏門より帰還。

前回から1世紀経過。

我々の監視隙を見抜かれた、失敗。」


「な、嘘だろマリウェル!?

奴が戻って来てしまったのか?」


「…………不味いですね。

これでは世界の魔力限界が。」


「ラキウェル、探知はどう?

奴はどこにいる?」


「んー、何処だろ。

ーーーーーーえ、嘘。」








ーーーーーー此処だよ。

真上から声が響く。



人間も含め全員が上を見上げる。

そこには、最初のマリウェルの時とは違い空中で剣の上に立つ一人の男がいた。


上半身には半袖の灰色タイトシャツ、下も灰のデニムズボンを着こなす白髪の青年だ。

声は少し高く、優しい声色をしている。







「裏の存在が出しゃばらないでくれよ。

此処の頂点は僕だ……………死ぬ?」



「貴様調子に乗るな!意思様が何故原初と皇帝を天使より上の存在にしたのか理解出来ん!

ここで上下を分からせてやる!」








エラウェルが瞬く間に上空の男へ雷を落とす。

それはもう電気魔力というより、電雷である。


周囲へもその余波の電気が放電される。

咄嗟にネイシャとロウスは魔力を纏い身を守る。







天使全員が爆発した空中を見つめている。

そして、煙からは無傷で剣に立ったままの原初。


エラウェルは驚愕してしまう。

どうして無傷か理解出来なかった。







「お前、何を?」



「【斬った】んだよ。

別に驚く様な事じゃない筈だ。」



「ば、馬鹿な。

そもそも目視出来ている前提ではないか!

見えているのか、それとも何か他の能力が、



「さあね。マリウェルに訊けば?」








「原初。

最重、最速、最力、最堅ーーーー最強。

エラウェル、後退を推奨。」



「な、答えになってないだと!?

しかし、仮に勘で場所を当てたとして、電撃に匹敵する速度で攻撃など出来るのか………?」



「………相手しない方がいい。

裏天使に戦闘特化型は貴女だけ、それでこれなら勝てない。」



「そそ、表天使の奴らは逆に戦闘超特化の奴らしかいないから羨ま。」



「プライモ、忌々しい。

天使が貴様の下だと思っている、舐めている。」








「帰還。

ーーーーーー原初、世に限界が訪れる。

魔を鎮めよ、界を閉じよ、英を帰せよ。

調和、それがお前の機能なり、也。」



「ーーーーそうだね。

楽しくなって来そうだ。」









他の四人が空間の間に帰る寸前。

最後の言葉を聞いてマリウェルが急に踵を返す。


着地していた原初ーーープライモの前に立つと、右手をプライモの顔へと張り出す。


だが。







「っ…………機能を守れ。

世を乱すな、プライモ。」



「嫌だねマリウェル。

僕は君達未完成品とは違うんだ、未来を拓く力がある。

いつまで支配者のつもりだい?人は自由な者なんだよ。」



「愚か。

自由に限度あり、横暴に裁きあり。」








今度は左手の張り手を止める。

そして両手を掴んだまま、マリウェルを抱き寄せる。


ロウスとネイシャはもはや横で観覧しており、あの機械の様な少女を優しく抱擁するのを見て興奮したり恥ずかしがっている。






不愉快そうな顔をしてプライモの胸に両手を当てがうが、あまりの力の強さにそのまま口元まで胸に埋められてしまう。

そして黙らせたままプライモは口にする。








「冷静になりなよ。

そもそも意思は世界に干渉し過ぎだ。

事次第で文明が滅ぼうが生きようがそれは自然の現象だろう。

何故矢鱈と自分で管理したがるんだ?」



「未来がどうと言うが、それは確定ではなく観測した瞬間に見た未来、だろ。

マリウェルも自分で言ってたね。」







確かに。

そう言っていた。



マリウェルがもごもごと何か言おうとしているが、息が出来ずに苦しいのか少し涙目になっている。


失礼だが印象と裏腹で可愛い。

ネイシャとロウスは二人してまじまじ注視していた。







「40世紀で意思が出した答えは、黙認だ。

これから先の運営を世界に任せる事。

でもそれすら一時的な答えで、直ぐにでしゃばる。

邪魔なんだよ。」



「〜〜〜ーーッ!ーーーッッ〜〜っ。」



「で、管理する上で邪魔な僕が偶々席を外して表から消えていた時に、裏に閉じ込めたよね。

この可愛い天使に指示して、さ。」







不意にプライモがロウスヘ目線を送る。

数瞬で意図を理解したロウスは、血の契りを発動した。


契約内容は、【世界の保護】。

そして今の流れから察するに、寧ろ道理を破棄しているのは【世界の意思】側。




その話と理屈から行くと、これで契りをロウスとマリウェルの間に交わした場合。

魔力封印されるのはーーーー。






























「凄い、可愛い天使ちゃんを封印しちゃった。

えっと、プライモさん?凄い機転だね。」



「いや、普通だよ。

ロウスの映像は裏門の通路を走っている時に周囲の空間から見えた。

反英雄達が裏天界の座から僕と巳浦の裏界侵入を嘗て察知できた原理でね。

部分的に共鳴しているんだろう。」



「貴方、すごく素敵。

私強い人好きなの、お時間ある?」



「ん?ーーーー巴に似てる、あとヴェルウェラ。

黒髪の女性には何かと縁があるね。

でもごめん、僕は僕の認めた者にしか興味はないんだ。」



「〜〜〜〜っ素敵ぃぃぃいっ。

欲しい貴方がぁぁぁあ!!」



「ま、まぁロウスさん落ち着こ。

その、おんぶしてる天使ちゃんどうするの?」









マリウェルは魔力封印によって空間移動が出来なくなっており、更に能力も使えない。

それにより先程から拗ねてずっと静かにおんぶされていた。


凄く、愛らしい。

試しに声掛けしてみる。







「ねぇマリウェル、お腹空いてるかな?

私達と何か食べようよ。」



「食事は不要、空腹の概念無し。

ロウス、魔力解除を求む。」



「ダメダメだぁ〜め、これから貴女の事は大切に飼うーーー保護してくんだから。」



「ーーー原初、庇護を求む。

ロウスの説得を指示。」



「知らないって言いたいけど、その点は心配要らないよ。

君は嫌でも僕と一緒に暮らしてもらう。

現実をちゃんと知って貰うよ、そうして裏天使達に変化を与える。

管理者自体を人間の様に成長させる。」








プライモの惨い計画に二人は興奮ーーーー悲哀を感じた。

それはつまり、同棲して二人屋根の下で食事を取り共に寝ると言う事だ。

こんな傾国の少女と秀麗の青年が。


そんな妄想をする絶世の女性がここにも二名。






下を向き何かを考えている様子のマリウェルだが、すとんとプライモの背を降りる。

するとプライモに生意気な事を述べる。







「原初、ならば私を抱っこだ。

命令である。」



「え、おんぶ恥ずかしかったのかな。

良いよ、赤ちゃんじゃないし向かい合う抱っこじゃなくて、






むにゅん。

足や背の柔らかい感触がある。


横の二人は幼少に一度は妄想した王子様の姫様抱っこを現実で見せられて年甲斐もなく敗北感を味わった。

だがそれ以上に愛らしくて堪らないが。





マリウェルはどことなく満足げな顔をしてそのままプライモの胸元で腕を揃えて眠り始める。

何を考えているのか全く分からない。


ただまぁ、可愛いのだけは確定。



そうこうしていると、守護者達が目を覚ました。

天使達5人の辺りで皆魔力に当てられ倒れていたのだ。



ロウスがおっと、と言い咄嗟に目を閉じる。

そして瞬きの間にレイブンと代わっていた。

突然後処理を投げられたレイブンは珍しく怒りの顔を浮かべていたが、事が穏便?に済んだ事に一先ず安堵した。








「なぁ、ネイシャ。」



「ん、なぁに?」



「お姫様抱っこ、してやろうか?」



「……………………え、いや、まぁそのー。」








もぞついてる彼女を無視して下から抱えてやる。

顔を赤くし睨んでくるが、レイブンは自分が初めて。

【愛情】を抱いた事を認知した。


プライモはいつの間にか左通路の談話室を締め切っており、此方もこのまま右の談話室に行こうかと思った矢先。






アルバが立ち塞がる。

ネイシャは思い出した。


彼女が、レイブン推しである事に。







「私も、姫様抱っこだな?」



「え、いや別にお前は、



「ブラッドいや、レイブン。

……………ねぇ、分かるな。」








と言う訳で三角関係になってしまった。

ネイシャ的には迷惑な部分大有りだが。


これから何を目的に動けば良いか良くわからなくなってしまった。



だが、こうなった以上もう一人の書記収集者である巳浦と会う必要が有るだろう。

向こうの話も聞かなければならない。










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