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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
54/113

五十一話 反英雄同盟?










「ーーーーーーそういう訳で、俺負けたから。」



「ふ、ふざけるな。

お前程の男が、負けたのか?この女に?」



「どうも〜、ネイシャだよ。

勝ったって言っても制限付きでだけどね。

約束しててさ、この国の書斎だとかがあれば、見せて欲しいんだ。

ーーーーブラッド、大丈夫だよね?」








「あぁ、そういう約束だしな。あぁそれと、俺の本名はレイブンだ。

鴉みたいに黒色だから覚え易いだろ?」



「うん、そうだね。

私の本名はネイシャ・フォン・インディアフォンツォ・アムザ・アーナム。皆んなも覚えてね?」










8月14日。

前日の戦いの後ブラッドはネイシャを連れて最上位地区A内部へと戻って来た。


この地区は夕過ぎになると人々の出入りが少なく、大抵の者は自宅で優雅に過ごしている。

だから先日行われていた戦いも目撃者はおらず穏便に行動することが出来た。






そうして現在。

本館一階にある談話室にてアルバを代表として呼び付け、事の顛末を伝えていた。


まぁ、内心崇拝していたブラッドが呆気も無く敗北したという話がアルバの中で大きくなり真面に会話出来る精神状態ではないが。

兎に角伝えた。







ブラッドはネイシャを連れて立ち上がる。

二人は互いに実力を察しており、それに付随して関係も良好になった為今日本日から腕を組んだり繋いだりして動くようになっていた。


しかし勘違いしてはいけないのが、この二人。

異常に友好的というだけで決して恋慕や愛の類による行動ではないという事なのだ。



が、アルバは自身にとって初めて格上となる男性が何処の誰か判らない女性と連んでいるのを見て毛羽立っていた。

それはつまり、彼女にとってはブラッドは恋愛の対象であったという話である。

まぁ、難しいだろうが。








「確か二階の会議室は周りの壁を覆う様に書棚があった筈だ。

そこでなら読めるかも、行こう。」







「そう。………………アルバさん、一応言っておくけど私は別に好きな人がいるから安心してね。」


「ーーーーーな……………え?

そう、なのか……………?」


「彼とは戦友として、単にお友達だから。

それに私用が済んだら直ぐに別の国に向かわなくちゃいけないし。だから大丈夫だよ。」


「そう、か。

解った、なら良い。取り敢えず上には後輩達がいるから私は監視役として付いていこう。」


「うん、ありがと。…………アルバさん、いやアルバ。貴女、私の生前の女友達に良く似てる。

アリオネって言ってね、その縛り髪や鋭い目付きが似ていたな。」








ーーーーーーアリオネ。

瞬時にその言葉に耳を疑う。







「どの武家も、大体30年前後を節目に後継ぎへ当主を任せる。

つまり、1世紀で大体3代ほど当主が入れ替わる。

その初代となるのがアリオネ・エンウィ。

5世紀初期にフォンツォ王国にて本流のフォンツォ家とは別に副流の血筋として仕えてきたエンウィ家の最初の当主。

お互いの片親が兄弟姉妹だったから、従姉妹だね。」



「………………いとこ、だと。

それは、つまり…………………」



「うん。貴女の……………従姉妹のお姉ちゃん?

まぁ今は随分と遠戚になってるだろうけどね。

フォンツォ王国は別名女傑国って言われててね、その副流の現当主である貴女も女傑と呼ばれ敬われているなんて、誇らしいよ。」








アルバは、自身が反英雄の血を引いていた事に誇りを感じたのと同時。

伝説として語り継がれている初代女傑のアリオネと友であり、そして従姉妹である彼女に上からの口調で会話していた事に恥じらいを感じていた。


今更ながらその事について畏まった態度で謝る。

だが、







「アハ!そういう几帳面な所、アリオネと良く似てるよ。

ーーーーーうん、気に入った。」


「何かあったら、元フォンツォ王国だったこのダイエン共和国を…………私が全力で援護する。

ーーーーん、ブラッドと一緒に守る事になるのかな?まぁいっか。」



「そんな、有難うございます!

反英雄二人が仲間として国に属してくれるとは、感謝仕切れません!

ネイシャ様、遅れましたが早く二階へ参りましょう。」


「お、急だね。

ブラッドは最初の内に行っちゃったみたいだけど、大丈夫かな?」












会議室。

そこでは、ブラッドが勝って消える物だと思っていた地区の守護者達が皆彼の負けを知り絶望していた。

そんな奴が直ぐ近くにいるという事にも。


明らかに苛ついているアルマの気配を感じ取り、他の者達は一旦解散した。




アルマはブラッドに詰め寄る。








「どうして貴方程の男が負けた!?

アルバ姉様の憧れでもある貴方が敗北したら、アルバ姉様は負ける様な男を好きになった事になるのでしょう!?」



「まぁまぁ、口論は後に。

ーーーー待て、アイツ俺の事気になってるの。」



「どう考えてもそうでしょ?

気持ち踏み躙る様な事をしたら、僕は貴方を許しませんよ…………反英雄でもね。」








「ふーん、君がアルマ君?

お姉ちゃんにはあんまり似てないね〜?」



「アルマ、この方がブラッドに勝ち残ったお方だ。そして、私達の古い親戚に当たる。

…………無礼は許されないぞ。」



「え。戻ってきたんですか!姉さーーー」









アルバは、ネイシャを視界に入れて視線が釘付けになってしまった。

元々この子は母親似で顔付きも優しく、父からはあまり好かれていなかった。


母であるエルネアは病弱で、アルバが15、アルマがまだ10歳の時に逝去した。

妻を死なせてから父は人が変わり姉であるアルバを厳しく指導する様になった。


ーーーーーーそして一年前、24歳という若さで父アルゾを超えたアルバは、エンウィ家当主となり、A地区の担当守護者となった。





そんな過去が原因で姉であるアルバに一種の母性を求めていたアルマの目の前には、実家の掛け写真に写る母と良く似た女性が居た。

反射的に立ち上がりネイシャの前まで小走りする。






優しい目付き、穏やかな口調。


何よりその顔や仕草までが、似ている。

アルマは、ネイシャという人物を脳内で母と捉え始めていた。

目から感動の様な涙が出てきてしまい、それを手で拭おうとする。


すると、







「鎧なんか身に付けて擦ると危険だよ。

眼球に装具が当たると怪我を負う。

もっと気を付けて?」



「え?……………うん。」



「君は確りした弟だと聞かされたんだけど、思ったよりも可愛い子だね。アルバの弟か、ふふ。

私の事は遠い姉だと思ってね、アルマ。」



「解った……………………お母さんがいいな。」








「アルマ、こんな時に亡き母の背を見ているのか?妙な指摘かもしれないが、母ではなく御婆様が家系図的には近いぞ。

ネイシャ様すみません、アルマは母に良く懐いていたので動揺しているのです。」



「良いよ、別に。

私もアルマの事可愛いし、好きに甘えて良いからねー。」



「っ。

取り敢えず、二階に他の者が来る前に書棚を確認下さい。アルマ、お前は一旦私と居なさい。」








ブラッドはこれからどうしたものかと考え耽る。


約束であった勝利を逃し、負けた。

であれば条件不成立だ、この国からは出られない。

どうしたものか。



少し遠目から3人が家族の様に円を作り何かの書を探しているのを見つめながら、ブラッドは外通路へ出た。










「俺、弱いのかなぁ。

あんなに豪語して、何か恥ずかしい。」



「そんな、ブラッド先輩負けたんですか!?

誰に?てかそんな奴居るんですか?」



「ん。たしかドルフ、だったかな。

先輩って何だ、俺は人に敬われる様な行いはしてこなったんだぞ。

師事する様な言い回しは止めておけ。」






ーーーーーー兄だけじゃない、俺達全員あんたの事を生涯で二度目の目標にしてる。





そう言われて階下のホールへ向き直る。

そこにはアルバ、アルマ以外の全ての守護者が揃っていた。


そして本日、皆の一致によりブラッドの元で強くなる事に決めたのだ。

当人が受け入れるかは分からなかったが。






しかしブラッドは先程の悩みを解決する為。

この12人(いや、14人?)を鍛錬し、個々で魔巣を突破出来るまでに強化する事に決めた。


自分が居なくても問題ない程度まで全員の戦力を上げれば、アルバからも出国の許可を得られるだろう。

ーーーーそもそも出るだけなら最初から出られるが、身元が無いままになる上義理があるブラッドにそのつもりは無かった。






その提案をすんなり受ける。

皆が顔を強張らせたまま固まった。


ブラッドはどうした?と訊き込む。

すると、細剣使いのセルペアナが反応する。







「二言は、無いですよね。

私達に、力を付けてくれるんですよね?」


「おう。

それが結果的に俺の為になるだろうからな。」





「兄だけでなく俺にもちゃんと近接を教えて下さいよ、ブラッド先輩。」


「おう、ダルフ。

兄貴と同じ位に力入れてやるよ。」





「私にもちゃんと教えて下さいよー?

やられっぱなしは性に合いませーん。」


「そうか。

確か、ウヌル?」


「エヌルでーす。」





「約束ですよー?お願いしますー。」


「ん、エヌーー


「妹の方ですー、ウヌルでーす。

間違え過ぎでーす。」






「俺、いつかあんたの攻撃も受け流して見せますよ。反撃術の指導、お願いします。」


「あぁ、腹弱かった奴。

名前は確か、アーダル?」


「そんな怠けた名前じゃないですよ、グーミルです。」






「「お腹空きました?お腹空きました。」」


「ダルシィとデルミィだな、よし。」


「「ダルミィとデルシィです。」」






「俺もあんたに負け続けるのは嫌だしな。

体術で上回って、いつか一本取ってやるよ。」


「……………………ん。」


「?な、何だよその反応?おかしかったか?」


「デルシェンド?」


「ゲンシェルドッッ!!」






「あのぉ、私まで教えて貰えるのでしょうか?

暗器術ですしぃ、難しいですよね…………?」


「あー、エンジニアか。

まぁ気配の消し方とかその手は得意分野だから、大丈夫だろう。」


「ありがとうございます、エンジーナですぅ。」





「俺、兄ちゃんみたいに強くなるよ。

嘗ての、俺の兄ちゃんみたいに。」


「僕も、うん。

色々、武具の使い方教えて欲しい…です。」


「オーリー、アーリー。

ーーーー任せろ、武具は慣れてるんだ。」


「俺アーリーです!間違えないでください!」


「僕も、オーリーです。

ちゃんと呼んで欲しいです、兄じゃないです。」








ーーーーーそうだそうだ!ちゃんと覚えろ!

ーーーーー俺達は兄弟で俺は弟だ。

ーーーーー私達双子だから難しい?

ーーーーー私達も双子だね。

ーーーーーゲンシェルドですからね?

ーーーーー機械技師じゃなくてエンジーナですぅ

ーーーーー俺達も双子だ!宜しくな!

ーーーーー俺は怠るじゃない、グーミルだ!





正直覚えられない。

ブラッドは人を認識し覚えるのが苦手だ。


それがこんな、嫌がらせみたいな名前の連中ばかりで既に嫌になって来ていた。

上を見上げて目を瞑る。





ブラッドはこれからホール辺りを借りて鍛錬場にするか考えながら、一先ず飯を食べる事にした。











そうして。

ダルミィが肉、デルシィが魚が良いと口論になり始めた頃。


二階から三人が降りてきた。

他の守護者はネイシャが何者かは分からなかったが、ブラッドを見つけて直ぐ腕を組んで来たのを見て思わず滑りそうになった。





アルマはアルバに手を繋いで貰うのが久々で喜んでいたが、アルバはそんな弟を一瞥しながらこれからの事を考えていた。





(結局、ネイシャ様が何の為にこの国に来たのかまでは教えてもらえなかった。

そこがどうしても気になるが、どの道私達の味方である以上争う可能性もあるまい。)


(しかし、仮に国へ背く様な事情を抱えていれば、その時私は。)




そんなアルバの左手をネイシャが握ってくる。

ハッと顔を見上げると、期待した目でアルバに訊いてくる。









「美味しいご飯はある?

皆んなお腹空いてるみたいだし、私も空いてきちゃった。

暫くこの国に滞在するから、お勧めのお店教えてよー!」



「え?あぁ、沢山有りますよ。

どういった物が好みで?」







「肉、肉ー。」


「私魚、魚ー。」





ーーー男側は全員ブラッドさんについて行きます


「殊勝だな。

まぁ、ちゃんと稽古付けてやらんでもないか?」


「「「「うぉぉおおぉぉっ!!」」」」


「「やったぁ!!」」




「私は、アルバ様やネイシャさんーーーネイシャ様について行きます。

男達とは食べたくありません。」


「「私達も。」」

「「だね。」」


「えーっとぉ、私もぉ…………」







…………………。


困ってしまった。

全員意見が散散である。




そこでネイシャが不意に提案する。

男女で別れれば良いんじゃない?と。


…………………、








「じゃあ、こっちはこっちで肉食ってくる。

店は弟子どもに訊くから心配すんな。」


ーーーーおっす!







「そう、分かった。

じゃ、皆んなは私と行こうねー!」


ーーーーはーい。









こうして、ダイエン共和国から危険は去った。

そう、思えた。





ネイシャとブラッドが反射的に上を見上げる。

それが何故から来る行動だったかは解らなかった。

ただ、数多の経験から来る脊髄反射であるとしか言えない。


上を見上げる二人の反英雄に秒で気付き、全員が視線を上げる。

その時点で、もう遅かったのかもしれない。







ブラッドが、ネイシャにも見せていない全開の力を見せる。






「Second、third、fourth、fifthskillッ」







全身に赤黒い魔力を滾らせ血涙を流す瞳で見つめる先。

そこに居たのは、天使。


それも表世界に存在する天使ではなく。

裏世界に存在する天使。






足元までありそうな純白の長髪を空気に靡かせ。右足首を左膝の上に乗せ足組みしているその女は、ブラッドを見つけ一瞥する。






ブラッドは血の槍を数本連続で投擲する。

しかし、全て彼女の半径1m近くに迫ってから霧散してしまう。


ネイシャが加減しなくて良いと伝える。

彼女は直接戦って彼の槍の性質を知っているからだ。

だが、真実は違った。






ブラッドは、消して手元に戻している訳ではなかった。

自身の魔力が体に戻らず、彼女に吸われている事を理解した。


赤黒の流液魔力が無色の魔力に分解され、それが吸われていっている事にネイシャも気付く。

それは間違いなく自身の魔力性質と同じ。

ーーーー原始魔力。





ブラッドを大声で呼び、3秒ほど視線を交わす。

意味を理解したブラッドは直ぐ様他の者達を自身の元に集め何かあったら守れる距離に置いた。


他の者達は状況が完全に理解できていなかったが、ただ英雄級の者達が脂汗を流す程の何かである事は見て理解した。

無言になる。







ネイシャが足に加速を纏い全力で壁まで走る。

秒速40m、巳浦に拮抗する秒速で走り抜け、壁を踏みつける。


そして速度の慣性を上に付けてから今度は斜め上の空間へ蹴りの勢いで飛び上がる。

天使と目が交錯する。






お構いなしに右脚に重力魔力を纏わせて真上からの斜め右回転の掛かった蹴り下ろし。


始ー転脚に直前の加速魔力で凄まじい回転力を付け、更に重魔力を割合全開で纏わせ右足を中心に半径2m近い空間の歪みを起こしながら落ちてくる爆撃の様な威力の転脚を見て、天使は未だ余裕の顔をしていた。


が。






ーーーーーーばーか。






突然脚に纏われていた魔力が無色で質量を持った魔力に変質した。

天使は瞬時に余裕な表情から驚いた顔になり、左膝付近で顎を突いていた左腕を斜め左上のネイシャに突き付ける。

極大の原始魔力が集約される。





そうして、両者の膨大な魔力が衝突した。

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