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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
52/113

四十九話 二人の反英雄のーー








ーーーーーー。






………………暖かい。

何だろう、温もり?


不思議だ、どうして、








眼前。

顔前。


ブラッドの、顔。

左に首を向けたら、何故かそこに顔があった。


訳が分からずその場から起き上がろうとするが、即座に彼の両腕が背中に回る。

そのまま抱き締められてしまった。








「…………何が、したいの。

君は現状こんな事をしている状況じゃないんじゃない?」



「そうだろうな。

でも関係ないよ、俺の行動を決めるのは俺だ。

他人は無問題だーーーーー料亭のお前の様に。」



「ん………………そうだね。

取り敢えず離してよ、落ち着きたいから。」









普通に離してもらえる。

呆気なさに呆けていると、二人してベッドに座っている状態になる。


ブラッドが無表情に此方へ回答を求めてきた。








「結局どうなんだ。

俺について来てくれるならそれが1番良いんだけど。

お前が反対するなら、仕方無しに首を持ち帰る事になるぞ。」



「随分自信が有るんだね。

ーーーー考えたんだけど、提案がある。」



「何だ?理不尽な要求ならまた枕にするからな。

言ってみろ。」



「そ、それは勘弁。

えっとねーーーーーー私と手合わせして欲しいんだ。

もしそれで負けたら、一緒について行く。」



「ほー、良いぞ。

俺が負けたらどうすんだ。」



「此処の城に連れてってほしい。」



「言ってる事おかしくないか、それだと俺が勝った時と同じ様な事になるぞ。

……………訳ありか。」



「うん。

その場合は私を書庫や図書館の様な場所に連れて行ってほしいんだ。

秘密の部屋とか書斎とか、兎に角書物がある部屋。」



「あぁ、分かった。

俺の【血】に誓うよ。」








血?

血に誓うって、何をする気。






ブラッドが自身の右手親指の腹部分を人差し指の爪で掻き切り、そこから出続ける血液を使って空中に文字を書く。


謎の光景に呆然としながらネイシャは傍観する。








『血は誓う、決して違う(たがう)事はない。

彼の者を信じ、彼の者も信じ。

両者宣誓を契り、この場に儀を約める。』


『甲薔薇の女人、乙黒の血者。

甲の魔力及び乙の魔力を併せ完了とする。

此処に、絶対の書を記し残す。』


「ーーーーーーーー完了だ。」



「何、何をしたの?

私の頭に、何かが見える。

…………ぉぇっ……何…………っ」










頭に映る光景。



嘗ての5人の血術者だろう者達に手足と首を其々掴まれ、無表情に天を仰ぐ顔が見える。




この景色達には、何の意味があるのだろう。

ネイシャは、刹那垣間見た彼の記憶の様な物の断片に触れる。

そして、現実へと意識が戻った。






「First skill【血の契り】。

両者の魔力を混合させた魔素によって文字を記した紙を1枚作る。

これには概念的な効果があって、距離に関係なくこれに込めた人間の願いや思いが違われた時に対象の魔力を封じ込める作用がある。

それを俺が破った場合は勿論俺に行使される。」



「そんな危険な力を、こんな簡単に使ったの?

軽い口約束で良いじゃない……?」



「駄目だ。

そうしてロウスは大きな過ちを冒した。

だからこのskillを身に付けたんだ、彼女の思いを反故にすることは出来ないんだ。」



「ロウス?

…………黒髪を伸ばしていた女性の事?」



「そうだ。

血術者のskillや魔力に触れると、それに込められている記憶や感情が相手に伝わるんだよ。

お前は偶々歴代達の記憶片を見たみたいだな。

まぁそれは良い、これでちゃんと約束はした。」









作られた魔素に起因するその紙を半分に裂き、片方を此方へ渡してくる。

突然それに魔力を流し込むブラッドの体に、先程まで状態を維持していた紙が魔素となって流れ込んでいく。


連鎖して手にしていた紙も此方の体へ勝手に流れ込んできた。

こうして効力が発揮されるのだそう。

とても変わった skillだ。







ネイシャは、この掴み所のないブラッド、いやスペルに対してどう対応するか悩んでいた。

何と声を掛けるか、どう接するべきか。


そうこうしていると、スペルは立ち上がりネイシャの手を持つ。

呆けている彼女を無視して部屋から連れ出す。








一階。

宿主に料金の6銀貨を前払いで払っておいたのでそのまま宿から出ると、突然検問所前の大きな広場まで連れて行かれた。



周囲に人々もいる中、スペルは告げる。

今から戦うぞ、と。








「え、そんな急に、



「俺は一刻も早く自由になりたいんだ。

だからさっさと俺と戦ってくれ、そして負けてくれ。」



「な、調子に乗って!

ーーーーーーやってやる。

宿屋の不意打ちなんか喰らわないよ。」



「あんなのは攻撃ですらない。

さっさと真面目になれ…………本当に死ぬぞ。」



「死ぬ死ぬって、お前言葉の端々が暗いんだよ。

もっと女の子相手なんだから優しく、










赤黒い魔力の槍が、ネイシャの顔面に投擲。

脊髄反射で右に頭部を躱す。


意識がそれを理解する前に投げられた血の槍が空中で散けて本人の体へ霧状に戻って行く。

それはつまり、







ーーーーーー魔力消費が、ない?

あり得ない、なんだそのskill?は。

前例がない、初めて見た。


ネイシャはかなり困惑していた。

運動神経のかなり良いネイシャですら、躱しがかすかに遅れて左頬を切られた。

恐らく秒速80m近い、弓矢のそれだ。






スペルは少し顔付きを曇らせた。

この投擲を不意打ちされて、真面に処理されたのは記憶にない。

魔物などは基本攻撃を避けず、人間は反応的に間に合わない。


だが、ネイシャは避けた。

左頬に一ミリ程掠った程度で、全く問題ない。





少し感動してすらいた。

これが自身と同等の反英雄の力か。


Secondskill【血の槍】を対処した。

ベフマの槍を不意打ちで放って、躱された。

………………面白い、面白いぞ。






完全に警戒状態に入り、ネイシャは全身に加速魔力を纏う。

その場で両足を閉じ、一瞬目を閉じて正面に甲を付け合わせた両手を突き出す。

アムザ体術を使用する前に行う型の始まり。


スペルもその状態のネイシャを目視しながら、お返しとばかりに両眼から血を流し始める。








怪訝な顔をしながらも両者との間にあった20m程の距離を強烈な踏み込みにより一歩で埋める。

0.何秒の話である。


今度はスペルが不意を突かれる形となった。

二人の目線が交差する。





そう、交差である。

ネイシャの動きを、スペルは捉えていた。


third skill【血の眼】に依る効力。

動体視力を跳ね上げ、脳の認識以上に視界内の情報を視認して理解する能力だ。

それによりネイシャの踏み込みを捉える。






(ーーーーーなっ!?)







始動として放った顎震ーーー真下から上へ突き上げる掌底に右手を被せてきた。

そのまま右手を握り込まれ魔力を流そうとする。


咄嗟にフォンツォ刀技の【柄踏み】を左手で行う。

右手を握り込むスペルの右手首へ左手の握り込んだ人差し指の関節を全力で突き込む。







「うおっと、痛い痛い。

意外と人体の弱さ理解してるんだな。」



「へ、体術とか護身とか、あと剣技とか。

私は色々使えるからね。

舐めない方が良いと思うよー?」



「いや、もう俺も本気だよ。

ここまで一人相手に使うことなんてまぁまずないから、楽しくて仕方が無いんだ。」



「…………ふ、私も。

今は他の事なんてどうでも良い、戦おう。」




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