表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
50/113

四十七話 A地区

色々登場します。







A地区。

他とは一線どころか二線を画す圧倒的に贅を尽くしてある街。





街の外観は煌びやかな街灯が道を照らし、道行く人々は皆一様に美しいコートや燕尾服の類を身に付けている。

この者たちは皆産まれた時からこの地位にあり、決して努力により得た住居権ではない。


元よりただ一つの例外もなく、階級を上げた者は居ない。

不可能に近い。
















ーーーー……………強い、気配。

誰か危険な奴がいる。

誰だ。





黒髪で目元が少し隠れ気味の男。

名を、ブラッドと言う。


この者はダイエン共和国にて召還された反英雄であり、その目的は来る脅威の排除と自国の防衛である。

が、かなり問題のある人物である。






こん。

暗く光の差さない部屋に、ノック音が響く。


誰かと思い横目に見ると、この国の代表。

………………







「女傑アルバ、何の用だ。

俺は何をする気も無いし、此処から動く気も無いぞ。」



「うむ、それは困るな。

お前には少々やって貰わねばならぬ事が出来て、今それを伝えに来た。

…………用は分かっているのだろう?」



「……………は、どうせ今この国の何処かにいる危険人物の排除とかだろ。

悪いが手伝うつもりはない、そもそも俺はもう眠りから覚めるつもりなんて無かったんだからな。」



「ふむ。

その者を見つけて捕縛ないし排除出来れば、貴様の身柄を解放し召還の忠誠を破棄してやろう。

自由に暮らして良いぞ。」









その言葉に耳が傾く。

思いも寄らない提案であったが、良い話であった。


ブラッドは日頃から赤黒いシャツと傷付きの黒いジーンズを履いており、何かあった時にも動きやすいように気を遣っている。

だが、それは生前活動をしていた頃の話であり。





現在ブラッドは、召還された時に着ていたその服すら着る事なく。

黒い布生地が傷んでしまっている半ズボンのみを着用して上は何も着ていない状態であった。


見兼ねたアルバがブラッドに適当な黒デニムと黒Yシャツ、上着にこれまた黒のライダージャケットを渡す。








「全部黒か。

気が利いてるな。」



「お前は黒い物しか身に付けたくないみたいだからな。

ーーーーーーおぉ、似合う。」








「どうでも良い。

自由の身になる約束、決して反故にするなよ。

この強力な気配を絶ったら、報告に戻る。」



「あぁ。

…………おっと、白色腕章を右上腕に着ておけ。

それでお前の身分が最上位出身と証明できる。」



「そうか。

そう言えば召還されてこの方、一度もこの建物の階から降りた事がないな。

外まで案内してくれ。」



「分かった。

私に付いてきてくれ、今居るのは本館ではなく別館の2階寮だ。

一階の警備達もお前を見るのは初めてだろうが気にする必要はない。

一旦本館の二階にある会議室でお前を紹介しなくてはならないから大人しくしていろ。」



「あぁ。

…………召還されたのは一階中央の召還室だったが、あの時は夜だったしこの国の事はよく知らないままだった。

まぁ、俺の生きてた2世紀に比べれば建物も木製が全般じゃなくほぼ石製みたいだ。

頑丈なのは良いが、これを作る奴は大変だろうな。」



「まぁその分当人達が得られる見返りもある。

…………随分お喋りだな、もっと寡黙な奴だと思っていたが。」



「元々こうだ。

ただ気力が湧かないからそもそも口を開きたくなかったんだ。

今は例の約束のお陰で幾らか活力が戻ってきてる。」









一階に降りてきていた。


赤いカーペットの敷かれた二階から一階へと降りてくるアルバの姿を確認して揃って敬礼をする兵士達は、裏について来ている異様な風体の男に視線を移す。





国内でも最強との呼び声高い女傑アルバが、人生で唯一対等以上の存在として時折口にする例の男。

ブラッド-スペル。


この男は生前、生涯を通じて追い回される人生だったらしい。

生まれ持って居た血術と呼ばれる呪いのスキルにより災いが降り掛かると言われ、真面に休む暇も無く日々戦いの人生だったと。


その実力は1〜2世紀までに存在したとされる血術使いの中でも歴代最強とされており、女傑アルバが召還間際のブラッドに使役の腕輪を嵌めようとした瞬間圧で動けなかった程と言う。





そんな二人が揃って別館から出て行く。

兵士達はこれから何が起こるのかと緊張して見ていたが、特に大きな事が起きるわけでも無かったので安心して息を吐いた。















本館は一階がホールと左右正面に続く直線の廊下になっていた。

正面突き当たりはそのまま二階への往復階段となっており、左右は待合室兼談話室。


そして二階は14人分の席が設けられている長机が一つ縦向きに設置されていた。

既にB〜Nまでの地区を担当する人間が全員席に着いており、残るA地区担当のアルバを待つのみとなっていた。





アルバはこの者達からも尊敬の念を抱かれており、ダイエンで最も人脈のある人物と言える。


そんな孤高のアルバが、あんな身近に男を侍らせている光景は異常である。

B担当のアルマ、直接の弟が声を上げる。








「何故アルバ姉さんが男と!?

その者は一体誰なのですか?」



「この者は、8月初めに私が独断で召還した古き猛者殿である。

名をブラッドと言うので、皆覚えておくよう。」



「それはつまり、英雄?」



「いいや、反英雄だろう。

大々的に教本に載るような明るい歴史の人物ではないからな。

2世紀に活躍したとされる呪われた男だ。」








「それと、間違っても喧嘩は売らないように。

私ですら全く歯の立たない男だ、素晴らしい。

お前達も同様に歯牙に掛けぬ実力者故、これまで存在を秘匿していた。

だが現在この国に侵入していると思われる別の英雄若しく反英雄の身柄を抑える為、姿を晒してもらう事となった。」



「一応宜しく。

俺はゆっくりと暮らす時間があればそれだけで良いから、別にこの国に敵意とかはない。

静かに行きたいだけなんだ、気にするな。」









この場にいる担当者達は、全員がレベル30級の力ある者達である。

アルバに至っては40以上あるとさえ言われている。


そんな誇りある者達が、先程の貶されるが如き発言を黙って聞き過ごせるはずがなかった。

C担当のドルフと呼ばれる白い短髪の青年がブラッドに突っ掛かる。






アルバは横から一言注意をしたが、ドルフはアルバに納得行かないと旨を通してブラッドに言葉を掛ける。


お前の様な誰かも分からない人間がこの国の最上位地区に足を踏み入れるべきではない。

早急に立ち去れ。




それを言われてやれるならそうしていると返してくるブラッドに素で苛立ちを覚え、得意の至近距離での左フックを入れる。

それは見事にブラッドの右脇腹を捉えた。








「ほら、どうした?こんな物か?」



「試しに喰らってみたんだが特に何も感じなかったよ。

お前らこんな物なのか、アルバの方が多少マシだったぞ。」



「何!?

貴様、アルバ様の名前を軽々しくーーーー」









そうして怒りを口にしようとした時。

自身の左拳が尋常ではない痛みに包まれている事を理解する。


それはまるで頑強な鉄筋を殴打したかの様な感触であり、骨がおかしくなったと錯覚する程の痛みであった。





しかし先程の発言が納得行かなかったのは皆一様であり、全員が席から立ち近い順に襲い掛かる。

全員武人として誇りがあったのだ。

だが。







「はい駄目。

Bのお前はアルバの劣化、Cはリタイア。」


「DはCと似て近接だけ、Eは短剣に甘えすぎ。」


「FもEと似て短剣が下手、Gは肉体鍛錬が足りない。」


「H、 Iは二人して片手剣の振りが遅い。

稽古不足だ。」


「Jは打たれ弱過ぎる、もっと骨以外の部分を守るなりしろ。

Kも攻めだけで守りが雑、せめて細剣の鞘で防ぐなりあるだろうが。」


「Lは不意を突こうとするだけで消極的。

MとNは二人してまだ実践慣れしてないな。」







「全員の弱点を的確に。

流石の鑑識眼だな、ブラッド。」



「当然のことだ。

俺と同じ様に見通す事なんざ、実力者は一人も漏れなく出来る。

アルバに関しては、単純にステータスが低いだけで動きは良いと思うがな。」



「そうか、嬉しいな。

だがこの者達も悪気があって襲った訳ではない。

そこは解ってくれ。」



「おぉ。

ーーーー取り敢えずお前らは今言われた事をしっかりと見直してみな。

二度目はないと信じてるぞ。」



(ーーーー化け物。)









この場の人間全てにたった十数秒で恐怖と絶望を叩き込んだところで、挨拶は終了。


今日は一旦3階の担当者専用寮のアルバが住む部屋に二人で寝て、翌日朝にA地区から出る形となった。







「く、姉さん。

あの男は何なんですか?どうして僕たちの事を左腕だけで倒せるんです?

………誰か教えて。」






















3階寮の一本廊下の最奥。

正面突き当たりにある黄金の装飾が施された燦々とした扉を開ける。





内装は意外。

化粧台がベッド横に置いてあったり、浴室には健康に気を遣って美容の為に薬草や薬液が瓶に詰めて置いてある。


衣類掛けには私服のシャツや薄い上着、中々派手な黒い下着など私生活感溢れる様子が散っていた。






アルバは想定よりじっくりと部屋を観察するブラッドに少し睨む様に視線を送り、早く服を脱いで黒い寝巻きシャツを着るように伝えた。


返事を返すブラッドに一瞬振り向くと。







「そうか。

着替え終わったら直ぐに風呂ーーーー」









「目の前で裸になるなァっ!!」



「うおっと。」








当然の様に全裸になっていたブラッドを豪快に押し飛ばす。

正確には押し飛ばそうとしていなされ、自身が壁に押し倒されていた。


……………全裸のブラッドに。







茶色の長髪をいつも背中の中心で縛っているアルバ。

そんなアルバが、小さい頃に風呂場で見た弟のアレとは明らかに別物の茶色いアレを見せられ。


わいわいと騒がしい夜になった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ