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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
49/113

四十六話 ダイエン共和国

ネイシャ視点など色々一人称は変わります。








最高民主機関。




西方100km地点にある国家。

共和国ダイエン内にある組織。


正式な名称を国家代表最高権力実行民主機関。

それを構成する人間は、その全てが国の為身を尽くし努力する国民である。





国家内で生まれた者は基本全員にこの組織への加入が義務として定められており、その組織内での地位が上に行けば行くほど越えられない社会地位を得る。


凡才と天才で扱いが変わる、結果主義。

残酷且つ富裕貧乏の差が大きくある、血の国。






今日も一人、誰かが生死を賭けて勝負する。

それで得られるものが何であっても、生きる為。

















「姉さん、今日はパンと水?」



「えぇ。

…………仕方ないでしょ、この地区はいつも助け合いで賄ってるんだから。

誰か一人が贅沢したら他の人達が苦しむのよ?

それが解らない【バウト】じゃないでしょ。」



「解ってる、解ってるけどさ。

昨日まで元気に話してた隣家のおじさん、今朝方【民主機関】で順位が最低になって斬殺刑にされてたよ。

俺達も何かしないといつかああなるんじゃ。」



「ならない!

そんな事にはならないしさせない、だから今日もいつも通り外で民泊の勧誘して来なさい。

もしかしたら外国の人が何か恵んでくれたりするかも知れないから。」



「ーーーー分かった。

でも、俺はいつか国から出るよ。」








「はーいーーーーえ?

国から出るって、ちょっと待ちなさい!」








ーーーーバウトぉおぉぉぉお!!





姉はいつもああだ。

本当は自分も苦しいのに、俺には丸々一個のパンと500ml分の水をくれる。

対して当人はいつも小さな方ーーー俺に対して支給されてる分量のパンと水で我慢する。


こんなに家族を苦労させて、結果がこんな日常だなんて御免だね。

俺はいつか、最高機関の上まで行って。



思わず豪語する。







「絶対、この国から出る!

強くなってやる、魔物も倒せる位、喧嘩も負けないくらいに!」



「よおバウト、今日も元気だな。」



「あ、建設やってるおじさん。

今日は暇なの?」



「お前、毎日仕事がありゃ苦労してねえよ。

あっても月に数回程度だし、有り金は大事にしねえとな。

ーーーーで、さっき宣ってた下剋上は本気か?」



「本気だよ。

こんな砂埃が吹いてる様な辛気臭い町なんか出てって、この国を出るんだ。

姉ちゃんが可哀想だから、幸せに暮らして欲しいんだよ。」



「そうか、いつもお前は家族想いだからな。

よし、夜になったらバウネ姉さんと二人で家に来い。

なんか飯食わせてやるからよ。」



「え、本当に!?嘘じゃない?」



「同じ地区内でも格差はあるからなぁ。

おれはまだ親の家業を継いで建築やってるからある程度実入りがあるが、お前ん所は毎日数枚の銅貨稼いで生活維持するのがやっとのレベルだろ?

だーから、今日は肉奢ってやるよ。」



「肉。

…………食べた記憶がないよ、おじさん!

美味いの!?どんな味?」







少し窶れた目付きのおじさん。

今日は何か良い事があったのかな。





最も貧相とされる最下位地区の一つ。


貧民町【V】は、8番目に数えられる。

最下位地区はO〜Zまであり、右半分と左半分で6地区ずつ点在する。

ここVは、南南西にある。






産まれて物心ついた時には姉しかいなかった。

母も父も知らないが、姐さんだけはずっと一緒に居てくれた。

唯一の家族だ。


最下位地区は町民同士仲間意識が強く、皆んなが互いに助け合って日々を生き抜く。






ダイエン共和国は、もし誰かが上の位相に出世する事があれば元居た地区へ支援する事が出来る。

そもそも出世する事自体が不可能と言われているが、しかし法として一応存在している。


だから、俺はこのV地区に住んでる家族皆んなに幸せになってもらう為に頑張るんだ。


絶対に、家族を幸せにするんだ。
















人の騒ぎが聞こえる。

何だろう。


騒動の元へ人々が集まって来る。

どうやら北西に移動して来た渡来人が居るらしい。





だが、普段誰が来ようと最下位地区は素通りされる為皆が反応する事は無いはず。

何でこんな騒ぎに。







「へぇ、これが共和国ねぇ。

少なくとも私が生きていた頃は無かったな、こんな貧相な町は。」







その人は、汚れひとつ無い綺麗な赤のスカートを風に靡かせてここVを訪れていた。


横には白色?の綺麗な髪の侍女が居て、その人も気品があった。




その二人組は普段国に訪れる訪ね者とは根本から違っていた。

周囲の人々が物物珍しいと言った表情で見つめるせいか、薔薇色の女性が足を止める。






(全員顔色が悪いね。

普段からどんな生活をしてるのか、雰囲気で判るけどさ。)






ネイシャは、手始めにここダイエン共和国を訪れていた。

最初にここに行くと伝えた時公爵は苦い顔をしていたが、その訳がよく分かる。


悲しい、酷い国だ。

これを巳浦が見たら怒るだろうな。





国の検問所には立派な装備の兵士が居た物だから国内も壮大なのかと期待したら、真逆じゃないか。

格差社会。








「ネイシャ様、情報を探っている事が何かの切っ掛けで知られると不味いです。

此処は最下位地区と呼ばれる外周の貧民街ですから、情報が内部に漏れる事はまずありません。」



「だから検閲では正体隠して入って来たのか。

賢明だね、うん。」



「…………とは言え、何処に居を構えるかはよく考えねばなりません。

住居を提供してくれる方がいれば良いのですが、









「あの!俺の家が泊まりやってまして、でもいつも泊まる人が居ないから空いてるんです。

良かったらどうですか………?」



「ん、そうなの。

エルメル、この子が宿泊場所提案してるけどどうかな?」



「んー、そうですね。

貴方、名前は?」



「ば、バウトです。

姉と二人で暮らしてます!」



「成る程。

お金はどのくらい掛かるの?」








考えてなかった。

でも、他所の人だからといって金額を高くするのは駄目だし。


そうして悩んでいると、バウネが家から出て来ていたのか後ろから寄って来た。







「料金はそちらで決めてください。

私達は日々を配られる食料品で凌いでいますから、高額は望みません。」



「成る程。

では一日銀貨2枚程で良いでしょうか?

私達もあまりお金がないので、すみません。」



「分かりましたーーーー銀貨。

………はい、ですが提供出来るのは部屋だけになってしまいます。

此方で銀貨を適当な食料品と交換して渡す様にします。」



「ん、それは別に渡します。

1日3銀貨にしますのでその内の一枚を私達の食費に回して下さい。」



「っ分かりました。

では、どうぞ此方に。」








バウネは、銀貨という大きな額にも大きな動揺は見せずに何とか宿泊を約束させた。

バウトはそれを見ているだけであったが、家に案内する時に通り際、


『良く引き止めたね。』


と言われ滅多に味わう事のない喜びに包まれた。

そうして人々の目を背にネイシャとエルメルは住宅の並ぶ閑散とした土草の道を進む。






「ありゃあ、夜の飯の件は忘れてそうだな。

…………でも、あの様子なら問題ねえか。」



「あん子もよう引き止めたわ。

私達じゃあ遠目から見るだけで終わりじゃ。」



「銀貨ってそう簡単に渡せる物なのかな。

どうなの母さん?」



「他の国はそうなのかしらね。

少なくともここ最下位地区では中々使う機会のない単位ね。」







反応は様々だが、バウトとバウネは客人を迎え入れた一件で土壇場の強さを見せた。

こうして非力なだけの姉弟から一転して力を秘めた姉弟として認識を改められる事となる。



そして、当の本人達はというと……………

















足を踏み入れる。

床が少し軋むが、埃や汚れなどは一切ない様に清掃されている様子だ。



ネイシャは一張羅の服装を脱いで巾着袋に仕舞い棚に置いてもらう事にした。

これは一種の信用を表す行為であり、物を盗む様な人ではないという認識を示している。


バウト達もそれを理解して軽く頭を下げる。





建物は一階と2階があるのだが、普段二人は一階で寝ており二階は掃除だけしていつも空けていた。

仮にも客室として建ててある箇所なので私用で使うのは駄目だと戒めていたのだ。








ネイシャは一旦二階に行って物を整理する。


他の家の内装やこの町の平均にそぐわない綺麗なソファがある。

少し手を当ててみる。







「あの姉弟の魔力?ーーーーいや。」






このソファからは、とても優しい魔力の残り香が感じられる。

きっと一切手を付ける事なく手入れのみに抑えていた為古い家族の痕跡が残っているのだろう。


それを使うのに申し訳なさを感じ、部屋の入り口付近に一旦足を伸ばしながら座り込む。






ネイシャは生粋の温室育ちだ。

当然だが食料も寝床も、将来も困る事はなかった。


父も王で母も女王。

父方の叔父は皇国の天皇を務めており、

母方の叔母は教会の総司祭を執り仕切っていた。


叔父家の従兄は武人として名を馳せていたし、

叔母家の従姉は教会の司祭として将来の道教を任されていた。




そんな家系の中最後に産まれたのが私。


名前のインディアは父、フォンツォは母。

アムザは叔父の、アーナムは叔母の姓。

古い世代に掛け合わせて行って名前が長くなったそうだ。






一室の両脇は壁になっており,正面には交差式の硝子窓が設けられていた。

其処を開けて外に顔を出す。







「すっげぇ!綺麗なお姉さんが居る!」



「何か私達に良い流れが来てる気がするわ。」



「バウトの奴らもやる時はやるな。」







そんな会話が聞こえて来た。

横に聞き流しつつ、北東を見る。





大きな壁。

岩壁のように聳え立つ縦10m近い鉄の仕切りを作り、内部に階級が上の人間達が暮らす。


ネイシャは、この国に存在するであろう機密書記を手に入れなければならない。




だが、既に薄々ながら感じる。

ーーーー強者の気配。








「当然,居るよね。

私と同じ反英雄が。」



「ネイシャ様。

食事は朝、夕方の2回だそうです。

食べる時は一階でスープや穀類、肉類の調理食を出すと。」



「そっか、聞いといてくれてありがとう。

私はちょっと疲れたから寝るね。

ーーーーあ、ソファには寝ないでね。」



「え?………若しや、床に寝る気ですか?

止めてください、念の為持って来たクッションと毛布がありますから使って下さいね。

それと、今着て頂いてる紺のノースリーブとショートスカートは着ているのも込みで三着ずつなので毎日洗濯と干しで回していきますよ。」



「態々ありがとう。

貴方の着てる執務用の黒い袴服はどうなの?替えを用意するの大変そうだけど。」



「これと伝統式の古いメイド服の二種が有りますので、毎日ネイシャ様の洗濯物と一緒に洗濯して使います。

だから衣類の心配は要りません。」



「解った。

取り敢えずお休み。」



「はい、おやすみなさい。

朝は過ぎてますので、夕方に起こしますね。」








現在。

8月12日。


2日掛けて100kmと少しを馬車移動して来た為中々に疲れていた。

兎に角休みたいので一時仮眠を取る。






「……………どうしたものかな。」






いつか乗り込みに行かなくてはならない。

しかし強引過ぎると中心部まで行くのは難しいので何か手順を考えなければならない。


ーーーー眠い。

考え事は夕過ぎからでもいいかな。

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