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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
47/113

四十四話 ダンジョンの旅








「ーーーーじゃあ、またいつかに会いましょう。

さよならっす、巳浦に凛堂。」







8月1日。

ダンジョンがハイデン王国を離れバルト王国に渡る初日。


極力巳浦達との接触は避け適当に宿で過ごしていたダンジョンは、バルト王国にて国王直々に下界証明書へ印を押してもらう必要があった。


(本当は面倒で仕方無いんすけど、松薔薇が作った組織も今や大きな力を持っているみたいですからね。

従わないと仲間を裏切る行為に他ならないすから。)















全開で走る。

その速度は体重133kg、身長210cmから考えると異常の秒速10m。


先日のヴェルウェラや巳浦、若手だとフィスタ等の例がある為遅いと感じるかもしれないが、ダンジョンの肉体や戦法を諸々考慮すると速い。







颯爽と駆け抜ける。

踏みつけた地面は足跡が残り、周囲に猛烈な風が吹き上がる。


圧倒的な質量の高速移動は向かいから移動して来る馬車一行の興味を大いに引いた。


通り抜けようとする。

だが不意に声を掛けられた。







「ちょっと、お待ちくだされ。

貴方様は何者で?」



「ん、ダンジョンっす。

何か御用ですか?」



「あぁいやいや。

凄い巨漢が前方から走り込んでくる物ですから、しかもとんでもない速さで。

気になって声を掛けてしまいました。

申し訳ありませぬな。」



「そうっすか、この辺りは開けてますし確かに自分は目立つかもっすね。

そう言えばこのままバルト王国まで行くんすけど、道中寄れる場所ってありますか?」



「あぁ、キャロ村があるかなぁ。

ハイデン王国からなら75km先ってことになるけど、一応あるよ。」



「あざっす!

取り敢えずこのまま暫く走ってそこまで行くのを目標にします。

道中お元気で!」







こうしてキャロ村まで走り抜けていくダンジョンであった。


それはそうと先程の馬車には誰が乗っていたのか。

そんな疑問が頭によぎるが、無視して行く。
















2時間程経ち。

無事例のキャロ村に到着した。





ダンジョンは、現時刻10時程で日差しも強いこの八月中に精力的に働く人々を発見する。


近付いて物資について訊こうとした。

すると。






「ふぅーーーーうわ!?何だあんた!?

随分大きいなぁ!!」



「どもっす。

ちょっと食料品とか買い足したいんすけど、幾らぐらいで売ってます?」








ダンジョンの手持ちは現在銀貨5枚程度。

元々買い足しなどせずハイデン王国までは移動してきていたのだが、流石に口寂しくなり何か食べようと思った次第であった。


因みにこの銀貨は7月26日から7月末までベイルと言う冒険者の子と適当な依頼を毎日こなして集めたお金である。

1依頼銀貨1枚の最低報酬ではあるが、ベイルがまだ実力不足で実戦は嫌だと言う為仕方なく1時間の雑草刈り等を行っていた。


ベイルは入国審査の時に面識を持って以来、流れで共に行動する事となっていた。

意外とダンジョンのマイペースな部分が性格的に合っており、中々楽しい数日であった。

と、思い出話はそこそこに。







適当に散策する。

先の人に聞いた所軽い穀物類や干物などが1つ2銅貨均一で売っているとの事なので、取り敢えず5個調達する予定であった。


しかし、店内で妙な物を見つける。






「…………これ、巳浦っすよね。

それに、相手の誰か分からない女の人。」


「すいません、この録画円形水晶一つ下さいっす。」



「一つ3銀貨だよ。

買うかい?」



「この飲み物3本と干し肉2つも一緒に頼みます。

はい、銀貨4枚っす。」



「はいよ。

…………あんさん、随分と強そうじゃないか。」



「はい?それがどうか?」







会計を済ませる中。

何やら店員が話題を振ってくる。


『最近このキャロ村に魔物が現れる。

レベルも幾らか高く、村の男や子供に女達では到底倒す事ができない。

もし討伐してくれたら報奨金を出す。』


この話はダンジョンの財布にとって嬉しい話であった。

具体的に訊く。






レベルは推定30〜程度。

群れて来る事が基本で、種はゴブリン族。


1匹につき2銀貨、群れ全体で5体程の為、可能なら全て倒せる人が理想。

ダンジョンはその話を二つ返事で即決した。






店主は一瞬問題ないかと訊きそうになったが、その時。







「き、来た!

全員集合ーーーー!魔物が来たぞぉっ!」


「男達は武器を取れ!

女は子供を守れ!」


「よぉし!ーーーーーーな,何だこの数?」







ダンジョンはその騒ぎを聞き付け、外に飛び出す。

そこには、村の前方から20〜30体近い様々な種の魔物が複数の群れで行軍している光景。




村の人々は、これまでの対処では到底太刀打ち出来ない事を悟り一斉に逃げる準備を始める。


店主も、ダンジョンに急いで逃げる様に声を掛ける。

だが。







「コイツら、倒したら幾らになりますかね。」



「な。

そ,そんな勘定している状況じゃな、



「取り敢えず全部殺してきますから、適当に休んでて下さい。」







店主の唖然とする顔を横目に、ダンジョンは人混みを割って村の前方。


ーーーーーー魔物の大群が居る数百m先へ一気に走り込む。

まるで鈍器を叩きつけた様な足音を鳴らしながら。







走りながら。


武器を使うか悩む。

しかしこのレベルなら只の打撃でも過剰だろうと判断して生身で突っ込む。





背後から村人達が心配そうに見て来る。

その背景へ大きく手を振ると、すぐ様正面へ振り戻る。


眼前には、その大男から妙な気配を感じて停止する魔物達の姿。

ダンジョンは一言告げる。







「ー?。ーーーんてーー?!。ーー。??」






ーーーーーッッッッ!!!!

魔物達は、漸くその男の素性を理解した。


ーーーー魔王。

ほぼ全ての魔物達が停止し、まるで王への忠誠を誓う様に頭を地に付ける。





此方からすると中途半端に従われるのは都合が悪い。

そうして対処に悩んでいると、何やら一体の魔物が前へ出て来る。







「ん。

…………群れの代表っすかね。」



「ahhhh、ohahhhhh。」



「ーーーー死合たい、と。

うん、なら貴方だけ俺と戦いましょっか。

他の子は皆んな戦う気なくなっちゃったみたいですしね。」








そう告げたと同時、威勢良くオーク族の魔物が棍棒を振り回す。

軽く躱すと、横にあった木が鈍い音を立てながら薙ぎ倒される。


それを見ていた観衆は、直ぐにその魔物の危険性を理解した。

そして、それを相手取るあの男は果たして無事に済むのか、と考えた。


しかし、無用の心配であった。







ダンジョン目掛けて勢い良く2m程の棍棒が叩き付けられる。

その瞬間、金属同士を叩き付けた様な音が周辺へ鳴り響く。


土煙が立つ。







………………。

ほんの数cm横にずれた足跡のみを残して、堂々と溜息を吐く魔王がそこにはいた。





周りは、魔物達も含めて状況の理解が出来なかった。

ただ唯一、そのオークのみが事の重大さを把握していた。




鉄製の巨大な棍棒。

それは本来、人間程度なら直撃時点で全身から血を噴き出し骨が飛び散る程の威力を持つ。


それを真面に喰らい、平然と息をしている。

どころか、左側面に触れたままの棍棒に鬱陶しそうに左裏拳を叩き付ける。






ーーーーーー梃子の原理で、体長3m近いオークが棍棒を握る右手伝いに空中へ投げられる。


空中に舞うオークに対し、此方も跳び上がる。

ーーーー更に上へ。






上空10mまで飛ばされ身動きの取れないオークの更に上。

高度30m近くまで尋常ではない筋力で跳び上がり、そこで大剣を生成する。


上を見つめるオークの視界には、翠の鮮やかな魔力が魔王の右手へ渦を巻きながら集約されていく景色が映っていた。

そうして、当人の身長をも超える丈の大剣が右手へ握られる。






「本当はこんな事する必要はないんすけど、貴方の誇りに敬意を表して全開で殺します。

次会う時はもっと楽しめると良いっすね。」











「ーーーーーー《迷宮大剣-投擲》。」






空中のダンジョンから蒸し上がっていた魔力が全て右手へ吸引され。

一瞬閃光の様な眩しい緑光が周囲の半径50m程を照らす。





上空から、回転の空気摩擦により電撃を纏った暴風が直下する。


それは見た者に[災い]を連想させる程の破壊力を伴い。

天の怒りーーーー即ち【竜巻】や【落雷】。

それに匹敵する破壊力を伴った大剣が、オーク諸共真下の地上半径15m程を吹き飛ばす。







余波で周辺には風が吹き込み、近辺の魔物達は勢いで後方へ飛ばされる。

ダンジョンはそんな中地面へ段々と落下する。


地上に2秒少しで墜落。

まぁ、当然の様に無傷。





適当にタンクトップの埃を体内から放出した魔力で飛ばす。


それと同時に地面に突き刺さっていた大剣が魔力の霧と化し霧散して行く。

不思議な現象であった。




ダンジョンは他の魔物達が皆逃げ惑っていくのを見つめながら、意識を現実に戻し村へと走り戻った。














「あんた何者だい!?

幾らか前に村に来ていた凄い人達がいたけど、あの人達と比べても全く引けを取らない所か下手をすれば上!

確かダンジョンさんとか言ってたよな?

あれだけの事をすれば魔物も寄り付かんだろうし、銀貨2枚と言わず金貨5枚やろう。」



「良いんすか、ちょっと多過ぎるんじゃ。」



「群れの数を考えれば金貨6枚でも良い位だ。

しかし村全体から余裕のある分寄付して貰っても金貨5枚分しか無かったので、すまない。」



「銀貨2枚で良いっすよ。

それで食べ物と飲み物を追加で5個ずつ来れれば問題ないっす。」



「おぉ、何と言う。

……………解りました、なら先程の戦いの様子を偶々録画していたこの水晶を複製販売する許可を、金貨5枚で貰うという体にしましょう。」



「へぇ、店主さんは他の人達と違って結構余裕あったんすね。

ーーーーまぁ、そう言う事なら。」






こうしてキャロ村にて予想外の大収穫を得たダンジョンは、何だか眠気が来たのもあり村に泊まる事にした。


宿は一晩3銀貨らしいのだが、村を救った偉人として村の空き家を一軒貸してもらえる事になった。






何だか運が良いと喜びつつ、仮拠点を手に入れる事が出来たダンジョンはバルト王国で用が済んだら一旦キャロ村に戻って過ごす考えでいた。





特段地上で目的がある訳でもないので、何かやりたい事を探す意味でもこの町は丁度良かった。

東方面から主要国であるバルト王国に来る人間は多いので、色々情報も入る。


時折他の三方角から寄って来る旅人や商人なども予想されるので、意外と定住も悪くないなとわくわくしていた。







追記。

キャロ村に仮住まいを持つ事になったダンジョンの事は直ぐに噂となり、並の人間や冒険者では対処出来ない依頼などを個人的に受ける萬屋。


【依頼屋 迷宮菴】


が開店された。

店は通常の建築物通りの煉瓦造りだが、他と違い2階まで増設されており1階の仕事部屋と2階の自室に別けられている。








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