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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月上旬 団体戦
31/113

二十八話 隠れた本性

流れでちょい性描写有ります。









「ナジャ、確認しておくが加減は無しだろう?

性格的にも本気を出し切りたい人なのは解っている。

怪我は問題ないか?」



「余裕ね、貴女。

怪我をするのは自分かも知れないのに、他人の心配なんかしてる場合?

行くわよ、精々足掻きなさい。」








「ーーーーー解った。」








瞬く間に視界から赤い軌跡を残して姿を消すナジャ。

目で追うのは無駄だと判断し、両手で木剣を構える。




前回は一太刀に伏せる為の堅い構えだったが、今は柔軟に対応する為に普通に正面へ構えている。

剣道の構えだ。






周囲の音を聞く。

風を切るような移動音が彼方此方から聞こえてくる。


判断が難しい。

何か聞き分ける方法は。







ーーーーーーッ。


背面へ腰を軸に横薙ぐ。

全力で振り抜いたが、そこに残るのは虚しい電気の跡だけ。


ナジャの接近した証拠であろう赤い肉体サイズの霧を切り飛ばし、再度周囲に警戒を戻す。






(何か、彼女の癖や特徴。

糸口になる隙はないのか?)


(この状況は常に魔力を張っておかなければ奇襲に備えられない点もあり燃費が悪過ぎる。

ーーーーーそうか。)







ソディアは、思い切って木剣に魔力を全て込める。

ブレイドが対ガトレット戦でやった魔剣の状態に近い。





電流を激しく纏うその木剣を周囲に一閃する。

すると、ソディアの剣が振るわれた円形の振り幅に電撃が残される。


それは、触れるだけでも肉体にダメージを残すだろう電圧であることが解る。






ソディアは、次々に縄を駆け回りながら空気中に電撃を残していく。






それは、目に見える程分かりやすく電気の空間を作っていき、当人以外には被害を齎すダメージゾーンになっていく。


縄を動き回り疲弊させるつもりだったナジャが、逆に行動を制限される事態となった。





流石のナジャも動きを止め、ソディアに接近し始める。

だが、それは悪手であった。








「甘いぞナジャ、限られたルートから私に感知されにくいルートはーーーー右後ろの一本道!」



「なっ!?」









ソディアは、背面から来る彼女の事が分かっていた様な顔付きで先の男子生徒を切り伏せた斜め上からの切り下ろしを放った。


咄嗟に短い木剣で受け止めるも、明らかな質量差と出力差により後ろに弾き飛ばされてしまう。


しかも、その存分な魔力と腰の入った強打は、彼女の肉体を後方へ数メートル吹き飛ばす。






ナジャはたった一撃で防御越しに刻まれる鈍痛を我慢しながら、直ぐにスタイルを変える事にした。


ソディアも思わず声を漏らす。









「に、2本。

ルール的に良いのか?それは。」



「駄目だなんて一言も聞いてないわ。

良いですよね、松薔薇先生。」







「…………寧ろ褒めましょう。

素晴らしい発想の転換だ、問題ないです。」








「だって、ソディア。

貴女も2本使えば?無いでしょうけど。」


「馬鹿者!2本もこのサイズの木剣を振れる訳が無いだろう!

そんなの【人間業】ではない!」







「ーーーーーーまぁ良い。

私は変わらず一本で行く、ナジャは2本で来れば良いさ。

負け筋は其方にあるのだからな。」










ソディアは自信に満ちた表情を崩さず、背後の彼女へ向き直る。

ナジャ残して一挙手一投足を見逃さないように、注視し続ける。



ナジャは、そんなソディアに不意に漏らす。








「……………私の本気、貴女が初めての相手よ。」



「何、団体戦でも見せていないのか?

フィスタにも?」



「えぇーーーーー見せてあげる。」









土煙と共に彼女は消える。

先程までの移動と違い、態と地面を強く蹴り付け煙を立て始めた。


これでは移動先が読めない。

上手くカモフラージュしている。





ソディアは、再度木剣に魔力を込め自身の周囲に円を作る。


これにより直接的な攻撃は難しくなる筈。

そう思っていた。







突如眼前に彼女が飛び込んでくる。

意味が分からず動揺し、理解が遅れた。


正面に斬撃を放とうとしたが、彼女の短剣が左右に往復しながら、ソディアの顳顬や鳩尾を3度打ち抜く。







(ーーーーがはっ!

…………痛過ぎる、何だこの連撃は……?)







木製の短剣が加速した勢いで脇や首を更に数度打ち抜く。

その度に体に杭を打たれたような衝撃が走り、ソディアは思わずその場から走って逃げようとする。


だが、体の痛みが強過ぎたのか脚が引き攣り、


どさり。

転倒する。







まずいとは解っているものの、経験したことの無い内部への痛みがソディアの華麗な身のこなしを全て鈍重な亀のそれへ変えてしまう。


口から反射的に痛いと言葉が出そうになるが、それは流石に堪える。




何とか痛みを耐えて立ち上がる。

しかし目前にナジャが立ち塞がる。








「驚いた、よ。

君が、こんなに強いなんてね………」



「吃驚してくれた?

なら、







足を横に蹴られる。

回避どころか受身すら難しい状態で、そのまま地面に倒れ込んでしまう。


倒れた状況から起き上がる気力も上手く湧かず悔しさが込み上げる。






ナジャはソディアの顔を見ようと膝を並べてしゃがみ込む。

涙目になって痛みに耐えるソディアの顔を見て持ち前の加虐趣味が刺激されてしまう。


彼女の制服のボタンを上から外す。

ソディアが突然の事態に声を上げる。







「な、なにを?」



「動かないと服脱がしちゃうわよ。

ほら動いた動いた。」



「なっ?やめ、








問答無用で服の3つ目、四つ目が外される。

中に着けている晒などが周囲に見える。


急な光景に男子生徒達は顔を真っ赤にしながら見入ってしまうが、他の女子生徒に殴られる。






流石のソディアもナジャの悪行を止めさせようと腕を掴みに行くが、途端に加速魔力で腕を高速化され、上手く掴めない。


逆に上手いこと両腕を掴まれて、ポケットから出てきた小さい紐で頭の上側に縛られてしまう。







ナジャから見ても綺麗な女性である彼女が、両腕を縛られながら涙目になって痛みに堪えている。


おまけに開いた胸元に紺色の長髪が垂れてとても扇情的であった。





これにはナジャも堪え切れず、ソディアの腹や脇腹などを擽り始める。


痛みを耐えるのに必死な状況で体を弄られ、痛みと痒みが混ざりあられもない嬌声を上げてしまう。

絶対に他人に聞かれたくはない声だったが、ナジャの加虐心を更に加速させる。




溢れる涙を舐め取られ、序でに頬擦りされる。

急なスキンシップに戸惑うが、体を擽る手は止められる事はなく常に半笑いさせられる。








「や、ひゃめ、ナニャあっ!

痛っ痒いひぃいっ!?」



「ほらほら、もっと楽しんで。

何ならキスしてあげましょうか!?

私も興奮して来たわ、ごめんねフィスタ。」



「ふ、ふざけりゅなぁあっ!

私にもブレイドが居るんだ!こんな事止めーーーーーーーふにゃあぁぁあっ!」















一方。

保健室。



地獄のような光景を見せられて、ブレイズは本能的に顔を下げた。

到底理解する気も起きない惨状に、いつからこうなったか記憶を遡ろうとする。


だが、それをガトレットに止められる。







「あれは………考えない方が良いと思う。

それはきっと、ソディアに失礼だから。」



「ーーーーあぁ、そうだな。

にしてもフィスタよ、お前の彼女は随分な性格だな。

お前もああなのか?」



「ふざけんな、あんなの知らねぇ。

あいつ、どういう性格してんだよ。

攻めも受けも好きなのか?」



「どらにしても、ブレイドが気の毒だ。

自分の彼女さんがあんな醜態を晒す事態になるなんて思ってもみなかったろうに。」







その言葉を耳にしクラスがブレイドを見てみると、思いっ切り寝ていた。

極度の疲労からくるものだろう、寧ろ救われたと言って良い。


良かったですね、ブレイド。




















「どう!?耳舐められたことあるの?ねぇ!」



「にゃい!にゃいです!だから離せぇっ!」



「一々可愛いわね貴女、周りも盛り上がってるみたいだし、この際だから貴女の魅力を皆んなに知って貰いなさい!」



「ナジャなんか死ね、死ね、帰れ!

もう私に喋りかけるなあァッ!友達辞める!」



「それは困るわ、もっと貴女の体の事知りたいって思っちゃったから、









そうしてソディアの服の胸元に手を掛けようとした瞬間、まさかの事態が起こる。








「誰よ、邪魔しないでーーーー」



「私です、松薔薇先生です。」







「ーーーーーえ、先生?あの、何でしょうか?」



「ルール違反です。

1、戦闘不能者に危害を加えない

2、戦闘に関係無い行動はしない

ナジャ、貴女は二つのルールを冒しましたね?

この場合どうなるか、解っていますか?」



「え、あの、私ただ、



「敗北です。

貴女は現時点を以て負けになりました。

速やかに縄より出て、後日以降は観戦者に回るように。」



「え、嘘。

ーーーーー私の、馬鹿。」









松薔薇は、それに加えてもう一つの報告を行う。









「今試合を持ちまして、初日のトーナメントは終わりになります。

現時刻13時より13時10分までは校庭に待機、それ以降は自由時間にしなさい。

以上、お疲れ様でした。」



「……………ぇ?

じゃ、じゃあ先生、私はこの場合、



「あまり褒めるべきではないでしょうが、ソディア、貴女の勝ちです。

それと、








松薔薇は途端に尋常では無い量の魔力を大気から集める。

突如動き出す大気の流れに保健室組も全員が窓から顔を出す。





松薔薇は、今日1日で生徒達が消費した魔力総量に匹敵するだろう魔力を大気から集め、それをソディアの全身に集中させた。


ソディアは体を包む温かい魔力にふっと意識を飛ばしてしまう。





松薔薇はそんな彼女を魔力の塊で拘束したままにし、服の形状や肉体の傷を即座に解析し、たった2、3秒で元の状態まで回復させた。


それによりソディアの体に付けられた深い痣や、ナジャの攻撃で襤褸布になっていた服の一部さえもが完全に修復される。

その場の全員が目を飛び出させる現象だった。




倒れ込むソディアを一旦支え、ナジャに抱えさせる。

呆然とするナジャにしか聞こえない声で松薔薇は一言だけ言葉をかける。








「この勝負、貴女の勝ちでした。

実戦では貴女が勝者です、誇って良いですよ。

成績も勝者として特別に付けてあげましょう、がっかりしないで下さい。」



「え?

ーーーーー松薔薇先生、あの、本当に有難うございます!」



「貴女の残した結果です。

では、ソディアのアフターケアの仕事は確りこなす様に、心の傷までは癒せませんので。

では失礼。」








そう言うと松薔薇は瞬間的に片手で握れるサイズの銃を作り出し、途端に空へ飛び上がり始めた。


それはブレイズの炎浮遊に求められる技量のそれとは数段桁の違う難度の物であり、重心の取りにくさや出力の完全な調整、さらに自在に移動する肉体的技術と全てが揃わなければ不可能な代物であった。






周りの皆が一様にその光景を目にしている中、松薔薇は王城の方角へ直ぐに飛び始めて行った。


あれが現代に生きる英雄、【万里眼】の松薔薇。

生徒らは唖然とそれを見つめつつも、今日の激しい一日を終えていくのであった。


そして場所は変わり。




















保健室内は、ほぼ地獄の様な言い合いが発展していた。





先の戦いのあの様子は何だと問い詰めるフィスタにどう言い訳するかあたふたしているナジャ。


ブレイズに熱魔力の調整感覚やどんな鍛錬が良いのか質問をするフレム。


ナジャにそっぽを向いたまま仕方なしにブレイドと同じベッドで横になるソディア。


デガーはそんな状況で疎外感を味わいながら、同じく排他されているクラスとガトレットと三人で今後の流れを話し合っていた。







「おいナジャ、お前あんな痴態を晒して何考えてんだ?

流れで俺も恥を掻いたんだぞ。」


「だって、そう言う性格なんだもの。

なら貴方が私に虐められてくれるって言うの?」


「………お前がそうしたいなら、俺はまぁ。

恥ずかしいから他の人間にはやるなよ。」


「………フィスタ………解ったわ、貴方に全部こなして貰う。

期待してるわ、早速今日の夜私の量部屋に来なさい。」


「えぇ、今日からか?」


「何?駄目なの?さっき良いって言ったわよね?嘘だったの?貴方は嘘を吐く人なの?」


「わ、分かった分かった!

付き合ってやるから、今は勘弁してくれ。」










「ねえブレイズ、僕はこれからどうやって熱魔力の扱いを上手くすれば良い?

青火は出せても、君みたいに浮くのは無理だ。」


「一度に何でも出来るわけが無い。

焦ればそれだけ成長も遅くなるぞ、何がしたいか目標を決めろ。」


「…………なら、僕は極限まで威力を高めた火を作りたい。

至近距離で最強を誇る炎を、創りたい。」


「………言い伝えでは、かつて魔の棲む大地を燃やし尽くした英雄【双炎】の永澤は、黒と紫の炎を操ったと聞く。

どう頑張っても私はそれを出すには至らなかったが、何か【特別な力】なのかも知れないな。」


「……………助言、ありがとう。

ーーーーー黒と、紫か。」










「ブレイド、今日私、とても大きな恥を晒したんだ。

どうしたら良いか分からないんだが、もし君がそうなったらどうする?」


「……………」


「聞いてくれるだけで良い。

疲れて寝ているのだろう、寧ろありがたい。」


「私、もっと強くなるよ。

何なら君より強くなってしまおうかな、ハハ。」


「…………団体戦が終わったら、巳浦先生に聞きにいくって初めて会った時に言ったろ。

一緒に強くなるんだ………それじゃ、駄目か?」


「………嬉しいよ、そんな事を覚えているなんて。

そうだな、君に連れて行って貰って、そこで私も一緒に鍛錬することにしよう。

ーーーーーはわぁ、眠くなって来た。」


「俺は寝る。

お前も精神的に疲れてるだろうし、休んどけよ。」


「あぁーーーーお休み。」











「私の予測ですが、6日目の今日より4日後の10日目までは暫く暇な日が続くでしょう。

ブレイズやグラプロ達といった猛者達がそう多くいる筈がありません。」


「俺もグラプロもよ、まさか負けるとは思ってなかったんだ。

クラス、フィスタ、世の中にはお前らみたいな上がいるって事実に果てしなさを感じてるぜ。」


「俺も同感だな。

フィスタは強い、だからこそ越えねばならん。

俺の目標が現状フィスタである様に、デガーの目標もまたクラスだ。」


「「精々越えられない様に気を付けとけ」」


「……………僕が会話に入る余地は無いみたいだね。

でも、推測だと三日間は暇なんでしょ?その間に僕は皆の事もっと知りたいな。」


「はは、私が知っている事なら全部暴露してあげますよ。

ブレイド達のリアクションが楽しみですね。」









こうして、団体戦の実質的な選定が終了した。

残るは4日後の決勝戦。

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