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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月上旬 団体戦
26/113

二十三話 旧団体戦六日目 中





団体戦六日目  Aブロック









時刻、午前8時。

本日を合わせて十日目までの五日間は全てこのトーナメント戦に費やされる。


1日に各ブロック20人ずつが敗戦、脱落。

その形式により最終日までで全ての生徒が篩に掛けられる。


基本はA⇨B⇨C⇨D⇨Eと進んでいき、各ブロックで20試合を消化し切ってから次のブロックに進む形式となる。

(1試合ごとに一人が負け落ち、20試合で単純に20人が落とされる分かり易い内容だ。)








松薔薇と名乗る黒コートの眼鏡男が台上で詳細を紙に纏めている現在、校庭では生徒達が各々どう勝ち上がるのかを考えるのに必死になっている。


当然だ。


もし一敗したらその時点で向こう五日間の成績は0。

旧団体戦でどれだけ活躍したかというのはこれからギルドに進むだろう人間にも、それ以外の者にも大きな意味を持つ。






そんな中、俺はずっとあの男を見ていた。




松薔薇とかいう人、巳浦爺ちゃんみたいに魔力が体から出てない。


前に爺ちゃんから言われた、


『体から出ている魔力から強さは情報として出る、それを見極められる様になれ。』


という言動を実際に実行しようと思ったんだけど、こんな人見た事ない。

 どういう人間なんだ、あれは。





因みにルールの詳細はまだ有って、その部分がかなり重要だ。

それは、





「勝った者は他の者の組み合いとは別に同時進行で試合を続けて貰う。」






そもそも二つの組が同時で試合をする形式で、勝った人はそのまま勝ち残りで何人も抜いていってねとかなりハードなルールなのだ。


ハードとか以前に、仮にそんな奴が居て皆んな戦いたがらないだろうと呆れたのだが。






「負けたら終わり負けたら終わり。」



「勝って今日を乗り越えるんだ、絶対に負けないぞ、勝って場に残るんだ。」



「成績まずいよ、どうにかしないとぉ。

でも俺座学しか能ないんだけど、どうすんの。」






こんな感じで絶対に負ける訳にはいかないという闘志が背中を押している様で、全員血の気マックスだ。


松薔薇、いや松薔薇さん。

あんた悪魔だ。







そうこうしているとどうやら院内の教師連中が校庭に縄を敷き始めた。

半径は25m程の円内で戦うのか。


マッチアップも決まった様子。







「Aブロック第一試合、番号1対番号2。

番号3対番号4、以降は順同で負けた後釜に後続を入れていきますので緊張を解かない様に。」








番号は今朝札で渡されており、俺の場合は20。

今はまだお呼びじゃないらしい。


結局誰が誰と戦うのかは全部松薔薇さんが決めてるらしいから本当に順番が解らない。

不安感が胸に溜まる。






目の前に出て行く生徒達は、各々が団体戦初日より使い続けてきた様々な武器を所持し、開始の合図を今か今かと待っている。


緊張感あり過ぎだな。

もう少し肩を軽く挑みたい所だけど、俺があの実力であの場に立ってたらまぁ固まってたろう。







「8時10分に笛を吹き試合開始。

5分の休憩を挟み試合を二つ同時に進め、9時にAブロックが終了。

Bブロックも似た様なもので9時10分に笛を吹き開始。」


「その様な形式で進めて行き午後の一時までに全ての試合が消化される様に段取りを決めていますので、台上背後の時計台を見て把握しておく様に。

では、開始10秒前。」








びり、そんな嫌な痺れが空気を駆ける。

息も心なしか重くなってきた。


見ているだけでも中々肺に来る物だ。





当事者に至っては、既に血相が幾らか悪くなっているのが分かる。


そして、時は残酷な物で試合は開始してしまう。










⭐︎









「ーーーーでは1の貴方は残って、3の貴方も。

5分の休憩を取ります、お疲れ様でした。」







「勝てた、ほんとに。

う、うん、頑張った、僕!」


「よっしゃ、残れた。

このまま勝ち数を出来る限り増やして、良い数値を出してやる。」








試合はまぁそれなりに見れるものと言った程度だった。

もしこの場にソディアが居たら今頃悲しんでる暇もなく地面に転がされてたろうな。


まぁ、あいつはEブロックだけど。






束の間の休息に見ている側も安堵していた。


人によっては動いているわけでもないのに水を飲んで乾きを抑える始末。

確かにそれだけの重い空気が場を支配している、納得だ。





そんな中、休憩中にテンポ良く準備をしている松薔薇さんは、次の出場者を発表し始める。







「1対3、5対6。

今の内に準備をしておく様に。」







細かい部分把握してなかったけど、残った奴同士で戦うのかよ。

妙に性格悪いな、強いと分かっている奴は直ぐに潰し合いさせるって訳か。


でもシンプルながら理には適ってる、これなら一勝も出来ずに終わる可能性は低くなる。





まぁ、俺が20番に置かれてるのもそういう訳よね、直ぐに出て来られたら台無しになるって事。


全部用意されてる戦闘ってのは面白くねえな。

まぁ仕様がないだろうけどさ。











淡々と試合は進んでいき、先の勝負は3と6が残った。







「次は3対6、7対8。

準備しておく様に。」







この流れで行くと、俺が出てくるのは6試合後って事になるな。


暇だ。

















……6対7、9対10。

……7対10、11対12。

………10対11、13対14。

…………11対14、15対16。

……………11対15、17対18。






11対18、19対、







「20。

では休憩中に準備をしておく様に。」






「ーーーーやっとか。

にしても11番、強いな。」








次の8時50分に出る。

のは良いけど。



気になる奴が一人いる。






今縄の内側で正座で座ってる男、11番の奴。

魔力を使ってる。


何魔力かは良く解らないけど、ずっと右手一本だけを使って左手は肘を曲げて背中に伏せたまま。





強い、なんでこんな奴が団体戦で見つからなかったんだ?

目も薄らと半開きで思考も読めない、長い黒髪の根元ゴムで縛って邪魔にならない様にしてるが、薄い雰囲気と気配の強さが比例してない。





他の生徒は気付いてないみたいだが、松薔薇さんが一瞬その生徒と俺を見比べて口元を吊り上げたのを確かに見た。


あの人はこの生徒の存在を既に承知していて、俺にぶつけに来たのか?

なるほど。


成る程。

…………へへ。







「面白いぜ、やってやる!

やる気出てきたぜ!おらぁ!」







興奮と共に右手に握る木剣に魔力が流れる。


俺はそれを抑える気にはならず、只管に強い奴と戦える事が楽しみで仕方なかった。





薄目が俺の魔力を感知しこちらへ目を向ける。


平然とした目であったが、俺が意図的に魔力を操っている事を理解したのか、一瞬瞼を開く。






俺は奴に木剣を向け、空中に剣先で文字を書く。








「ーーーーーー全力でやろう、ね。

彼は、ちゃんと強いみたいだ。」






魔力の残留で描かれた字を見て奴は少し目を笑わせ、互いの存在を意識したままに試合が開始された。







「悪いな。」



「え?お、俺はやるぞ、お前が相手でもな!手加減なんか、す、すんなよ!?」



「あぁ、分かってる。」










「お前!11番!」

偶々素手で勝ち上がってきたみたいだけど、運もここで終わりだぞ。」



「うん、そうだね。」



「へ、自分の立場分かってんじゃねえか。

だった、大人しくやられとけよぉ?」









二人に其々襲い掛かる生徒。

だが2秒後、共に地面へ倒れ伏していた。






巳浦の真空剣により腹を叩かれ一撃悶絶。


そして薄目の彼は、指を畳んだ右手の掌底を同じく腹に突き刺し、1発で失神。





お互いに現在ここまでで最短の一撃で試合を終わらせ、自然と向き合う。


松薔薇の試合終了を右から左に流し、二人共が縄の内側から両目を向けていた。









「………成る程、良い斬撃だ。

あんなもの普通に喰らってはいけないね。」







何を言うかと思えば、飄々とした顔で言うかそれ。

フィスタとこいつが戦う所を見てみたい気もするが、俺が代表してこいつを潰す。





剣先を向け言い放つ。







「良いか薄目、勝つのは俺だ。

右手が折れない様精々お祈りでもしてな。」



「言うね。

自分こそ木剣が折られたら負けるって事忘れてるよ。

剣が折れない様精々お祈りでもしなよ。」








「……………………」



「……………………」



「次がAブロック最終試合です。

11対20、当事者は今の内にどちらかの縄に移動して準備しておきなさい。」








どちらも動かない。

睨み合っている。





松薔薇は暫しそれを見つめていたが、いつまでも動かないのでブレイドを薄目の居る縄に移動させた。


松薔薇から見ても素晴らしい素質のある両者であり、やっとまともな戦いが観れると内心小躍りしていた。







「良いですか皆さん。」







松薔薇が突然台上から生徒に向けて話を切り出した。

それは当然と言えば当然、だが壁を感じずにはいられない内容であった。







「現在進めている勝ち残り戦、気付いている通り明らかな強者は後半に出るよう調整しています。


失礼ではありますが、凡才である方には戦闘の質ではなく勝敗数を結果として残してもらい成績を残せる様にしてますので。」



「例えばこれから始まる試合は、明らかに貴方達敗者とは本質の異なる人物同士。


負けたとしても勝ったとしても、一定の重みのある成績が残ります。

これは私でもどうしようもない結末です。」



「なので。

どちらが勝つのかを当ててみて下さい。

人を見る目があるのかどうかも評価対象としますので、もし勝者を当てることが出来れば加点評価となります。」



「まだ貴方等の戦いは終わっていません、最後まで見届けるように。」








ーーーーーー周囲に響く轟音。


それは生徒の希望や期待の乗せられた雄叫びであり、両者の背中に一種の責任を芽生えさせる物となった。







薄目の男、名をガトレットと言う。

由来はガントレット、手甲を表す。


家系は裕福ではなく、武力と知力による特待でバルト王国中央学院に入学した。






彼は誓っていた。


実家で叩き付けてきた原木、鉄板。

野生動物、人間。

これらは趣味ではなく、強くなって家族を幸せにする為。



必ずこの健康な五体を以て、優秀なギルドメンバーとなり家族に恩返しをすると。







生まれ付き魔力を扱うセンスを持ち合わせていた自分は、人よりも強くなるコツを理解するのが早かった。



今まで明確に張り合える程の相手は一人としていなかったが、学院の入学時、そして団体戦で見た強い人物を邪魔に思っていた。


だからここで倒す。

自分の強さを改めて認識する為にも、負けるつもりはない。








開始10秒前。








「ーーーーー試合、開始。」







どぼん。

地面が踏み込みで抉り飛ぶ。




初っ端から全開で掌底を打ち込む。







それを目で確認したブレイドもまた、魔力を纏った木剣を両手で握り、応じる。


凄まじい圧力のぶつかり合いが両者の間で奔流する。






「痣じゃすまねぇぞおオ"ラ"ァっっ!!」



「自分の心配でもしてなよ!」








壮絶な打ち合いが始まる。

以降は要所要所の試合展開のみ送ります。

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