十九話 団体戦四日目
クラス達の話を書きます。
「今日は団体戦の四日目になる。
ここまでに残って来た生徒達は、既に何かしらの面で優れた能力を持ち合わせている事になるのだろう。」
「だが、一つ予想外な事が起きてしまった。
嬉しい事なのか将又緊急事態と言うべきか、あまりの攻略ペースに現在時点で既に半数ほどが脱落してしまっている。」
今日は、そのまま前日のおさらいをして終わりではなく、例年と明らかに様相の異なる団体戦の勢いについて言及していた。
そう、今年の団体戦。
正確には一年の俺達のみ異常な成長速度で強くなっており、それに伴い周囲の生徒との差が大きくなってしまった。
このままの状況で続けていくと10日以前に終わるかもしれないと予想外の旨を伝えられ、俺達は困惑した。
団体戦というのは、通常全滅まで行うと言う決まりはない。
ただ性質上長く日数を生き残られてしまうと自分達だけでなく周りも同じ分の成績を修める事になるのでそれを避ける為に他のチームを潰すという行動が主流になっていたのだ。
だが、それでも一年毎に10日という期間を使い切って程よく終わって来たのが今までの団体戦だったという説明を続ける。
「だが、世の中を作って来たのは常に異例例外といった物事の前衛者なのだ。
今回の一年戦のみ、10日間の生存のみでなくどれだけのチームを落としたかでも成績を取る事とする。
頑張ってくれたまえ。」
うん、え。
突然学長がそんな内容変更を口から出した。
いや、根本的にルールが変わっちまってるじゃねえか。
しかもそのやり方、味方だった奴らとの潰し合いにも意味が出てきちまう。
どうすんだ、これから。
俺達は指揮のクラスを中心に話を進める事にした。
「よく聞けば、別にどちらでも良い様に仕様を増やしただけです。
特段今までのやり方が駄目という事ではないでしょう。
特にブレイドとソディア、フィスタとナジャのお二組に関しては相互に支え合い生き残り続けていれば良い。
私達も護衛の生徒8名とフレムで固まって動きます。」
「おう、そうなるよな。
でも今のやり方で行くと、団体戦でここの成績に差をつけるってのは出来なくなるぜ、それは良いのかよ。」
「それは…………そこが問題になりますね。
通常は何組も残る、というのは起こる筈のない現象です。
普通の思考回路ならば潰し合い他を脱落させ、自分達の組みだけが大きく結果を残すという流れで終わるのですから。
一つの組に何人いようが規模の問題ではないですし、そのチームのやり方で生き残れたのであれば極論100人のチームが勝っても1組の勝利とされるのですから実力で劣る方々にはもってこいのイベントです。」
「俺達は、勿論10日目まで生き残るつもりだ。
でもよ、戦って結果を残したいってんなら別に内輪揉めもOKじゃないかとは思う。」
「ブレイド、お前も俺と同じ考えかよ。
俺だって今組んでるナジャに綺麗な額面飾ってやりてえんだ、最終日が10日目以前に来る可能性が高そうだけどよ、そん時は戦って、本当の優勝者を決めようぜ。」
結局仲良しこよしというのは理想でしかなく、自分の矜持や何かを守り抜きたいのだ、全員。
クラスは中立の様な風体だが、フレムと共に中々の数を潰したとか聞いた。
必死なんだよな、こいつらも。
段々とこれから見る事になるだろう最後の光景を頭に浮かべるようになって来た俺達は、その神妙な空気感に呑まれたままに四日目を始めた。
明らかにこれまでとは違い、何かあれば助け合うといった流れはもう無くなりつつあった。
★
クラスは現在、フレムと護衛組を周辺に配置して周りを監視していた。
クラスは自身の結果を残したいという思考と仲間の事も案じたいという考えに挟まれ、ここ最近で一番頭を悩ませていた。
一体どうするのがベストなのでしょう。
このまま戦いを続けていけば、どう事が運んでも間違いなく潰し合いになる。
そうなる事自体が嫌ですし、そうなった場合に私達の組みが幾らか不利。
あの二人組の2チームは、どちらの女性陣も既に個として優秀な戦闘能力を持っているのが解りました。
フレム一人ではとても二人を同時に相手取るのは無理です。
何か、何か作戦が必要です。
悲しい事ではありますが、これから起こるだろう争いは必然であり、偶然に依るものではないのですから。
北の休憩所であるベンチ広場にて四方面を見張らせながらも、全くクラスの脳は休めずにいた。
これから、どうすれば。
そんな時。
とんとん。
突然肩を叩かれる。
「ーーーーフレム、問題は無さそうでしたか。
ちゃんと見張りをお願いしますよ。」
「それは、当然。
でもクラスの顔面真っ青だよ、何でも広く考えすぎでしょ。
…………どうせ僕も君も性分は暗いタイプかもしれないけど、だからといってブレイド連中に配慮を利かせる状況でもない。
生き残るんじゃない、勝つんだ。」
「フレム…………。」
フレムは、ライターから炎を出し始める。
急に何だろう。
あいつらから得た発想だけど、と話始めながら、彼はライターから燃え盛る人二名分の爆炎を少しずつ固めていく。
それは、みるみる内に明らかな硬度を持っていき、最終的には炎により形成された歪な棒の様になった。
見ているだけでそれの熱気に目がやられる。
「あいつらまるで自分達だけが魔力を扱える口ぶりだけど、どう足掻いても僕以下だって事を理解出来てない。
だから、気付かずに安心している部分があるんだ、一点。」
「安心している、点。
ーーーーーーなるほど。」
手渡しされたそれを握り、軽く横に振ってみる。
元が重さのない火炎により生成された物だからか、とても肩に掛かる負担が軽い。
そしてそれを振り抜かれた草は、瞬く間にその全体を燃え上がらせ、数秒で焦げ果てた。
素晴らしい、これは良い。
「これなら、クラスも戦闘要員になれる。
生憎ライターは武具扱いで一つしか持ち込めないけど、元々僕は補助なしに同程度の炎を扱える、問題ないよ。
だから戦闘になりそうならライターに僕が魔力を込めて、その炎の棒を作って渡す。」
「一回で魔力を半分近く込めるから、5分は持つ。
それで君も諸刃の剣にはなれる。」
「十分ですね。
寧ろ貴方の火炎を振り翳せるという現実に、一種の信頼感も有ります。
ありがとう、これなら戦えそうだ。」
「じゃあ、それが消えるまで適当に操作感でも試してて。
僕はまた南側を見張ってるから。」
そうして、クラスは今自身が手に持つその炎棒を手に慣らしていた。
そうして5分ほどが経ち。
「あ、消えてしまった。
それにしてもこれだけの魔力操作が可能とは、流石に私達の中でも一番の魔力の使い手だ。
叶いそうにありませんね。」
手に握るライターを一旦渡しに行こうとクラスは南側へ移動を始める。
その時だ。
不意に、元いた広場にて視界を向ける。
この時、気付かずに通り過ぎていれば良かったのだろうと後悔する。
魔物。
魔力の濃い一帯に生まれる生き物。
これは恐らく、ブレイドやフレム等の濃度の高い魔力が寄り集い誕生した物だ。
生徒としてはあまりに大きなその魔力が、この魔物を生んだ?
良いや、それどころではない。
「こ、この魔物、今現在学院側が把握しているかは不明。
ですが、周囲には丁度護衛が居ないこの状況。
はは、どうした物でしょう。」
「…………いや、手洗い寄ったから僕いるけど。
あれ魔物だよね、もしかしたらあれを倒したら僕達、かなり大きい結果を残せるんじゃない?」
「フ、フレム、居たんですね。
いや、それは不幸中の幸いでしたね。」
黒い外套の左ポケットに入れていたライターを再び取り出し、彼に向ける。
フレムは先程の理屈から言えば今現在半分程の魔力しか残っていない。
だが、ここではそうも言ってられない。
「フレム、先程の炎の棒をまた作ることはできますか?
二人で立ち向かわなければ、あれには深く効きそうにありません。
魔物図鑑に載っていました。
あれば25レベル前後あるとされている【魔猪】です、私達二人分のレベルを合わせて、漸く最低限の土台に立てるかどうか。」
「うーん……………そうだね。
ライターに力を込めて、魔力を流すイメージを浮かべて。」
「え、私の魔力を?
残念な事に出力90の塵魔力ですが、それでも構いませんか?」
「良いから。」
取り敢えずライターに意識を込める。
イメージしたのは、棒ではなく、かと言って剣でもない。
銃火器、遠距離で機能する武具だ。
身体能力で遥かに遅れを取る私に、接近戦は無理がある。
可能であれば銃を使ってみたいですが、こう想像すると現実にはどう作用するものか。
そこにフレムが両手を翳し、間接的に魔力を当てる。
それに気付いたのか、魔物がこちらへ顔を向ける。
ま、まずい、バレてしまった。
「君が構築した骨組みに、僕が魔力を流し込む。
系統が自然魔力の君なら、他の魔力とも調和が取れる。
ほら、形が浮いてきた。」
「………これは、凄い。」
手には、ライターの引火口を引き金として魔素で模られた拳銃が握られていた。
フレムに赤い熱魔力を送られたのにも関わらず、その銃身は私の自然魔力により翡翠の色で形成されていた。
私はそれを見て感動していたのですが、フレムはそれ以前にこれ程精巧に形を為す事が有り得ないと口早に説明する。
私の魔力センスがどうこう、との事ですが。
そんなことより今は。
クラスが銃を相手に向ける。
フレムが両の掌を構える。
「こいつをやりましょう。
話は後からいつでも聴きますよ。」
「ーーーーー君は、もしかしたら僕より。
…………でも、それよりまずこの猪を倒す。」
他の生徒達が互いの結果と保身に走る中、二人の戦闘が始まる。
クラスは魔力精度だけで言えばかなりの素質を持っています。




