十三話 団体戦開幕
ここから暫く団体戦を書きます。
ーーーーーーー幾らか時間軸を遡る事にする。
これは、七月初めの団体戦のお話。
巳浦達一行、魔王やレインドの動向は一先ず置かせて頂く。
無論、この話が終われば順当に戻る事になる。
其れ迄にブレイド達に何があったのか、知っておく必要があるだろう。
★
「俺達は一年。
七月の初っ端からやりあう事になるけど、頑張って勝つぞ!」
「当たり前も当たり前。
俺達が強くなる理由の一つが団体戦だからな。
絶っ対にここで周りと差を付けて、一気にのし上んぜ。」
「当然ですね。
私は現状中間筆記で記録を残し永澤も同じく入院時の検査で大幅な数値を叩き出していますが、特に貴方達の生み出した教師打倒の件はズバ抜けています。
このまま団体戦も取られると身内で差が付いてしまう。」
「………僕は別に今の状況で足りてるけど、君達と格差が付くのは嫌だな。
だから、ここは一先ず。」
ーーーーーー四人一組だーーーーーーーー
こうして、余りにも強過ぎる一年チームが出来上がってしまった。
そしてこれは、6月31日、深夜の寮で行った会話である。
後日七月一日の早朝6時に一年全員、総勢千名の生徒が住宅街ベルに在る寮の転移装置を使い一気に中央街の学院へ転送。
そこから試合開始の8時までにチームを即興で組み、1000人という人数を勝手に割り振らせる。
まぁ結論から言えば、凄まじい勧誘を受ける。
「ブレイド!」
「ん?………あぁ、同じAクラスの。
名前は確か、」
「グシンだよ、名前忘れんなって!
あのよ、俺達大して交遊はねえけど、チーム組まねえか?」
「え、何で仲良くねえ奴と組み合わなきゃならねぇんだよ。
断るぜ、先客が居る。」
「ちょ、おい!ブレイドーーーー!」
ここでは例としてブレイドの顛末を語るが、他3名もほぼ同様に勧誘、チーム組の打診を受けていた。
そしてそれ等は一様に、断られた。
それから1時間後の七時過ぎ辺り。
「ーーーーー皆、もうチームは組み終えたか?」
王城の寮から出勤してきたエイガや、院長のアラガン達教師の面々が、広々として校庭に立ち並ぶ一年達を、中央の大きな登り台から見上げていた。
片手にメガホンを持ち全員にルールの詳細を説明する決まりになっており、その前台詞としてそれぞれのチーム組みが確り行われているかを見渡すのだが、今回は妙に偏っていた。
「ーーーーーエイガ。」
「はい、兄さん。」
「お前、あの組み合わせ、どう思う。」
「はい、え?……………え"っ。」
多数のチームが大体数十という規模で編隊を組んでいる中、登り台の正面にたった四人だけで徒党を組んでいる者達がいた。
そう、ブレイド達の組である。
通常、余りにも総力に偏りがある場合、幾らか引き抜きを行い均等に合わせるのだが。
「この四人は、平均で考えても強過ぎるんじゃないか?
私としては、彼らをばらけさせた方が勝負としては面白くなると思うのだが。」
「そ、うですね。
………ですが巳浦様の言伝があり、ブレイドに関する事の動向に水を差すなと言われています。
俺も勿論の事、学院長である兄さんもこの件には介入出来ません。」
「…………正直あの人が何を考えているのか全く掴めないのだが、まぁこれはこれで新鮮だ。
私としても、正直今回の団体戦この一年達の戦いが最も盛り上がると予想している。」
「はい、それは王城の四階寮で現在鑑賞中のイジャエ姉さんやバルト王も仰っております。
通信機器、お持ちですか?」
「当然。
だが、それにしても妙だ。
あの黒髪を後ろに縛っている少年、ブレイド。」
この時、アラガンはその際立った実力の集団の中でも一際存在感のあるブレイドを見ていた。
六月下旬の稽古中。
王城の三階にある倉庫室に置いてあった魔力の性質検査機にも出たのだが、確かにあの少年は腹違いで遠い血の繋がりがあるらしく、少なからず兄弟の様な遠戚である事が解っている。
それ以来朝の5時から行う稽古に彼が来る度、ロルナレの兄妹関連は全員彼の事を可愛がっているのだがーーーー無論私もーーーーー、六月下旬のある日、突然彼の潜在魔力濃度が跳ね上がった。
それは、私達ロルナレ家の有する魔力量を大きく相場で上回る程の凄まじい濃度である。
それに関して巳浦様から話を聞いており、どうやら私達が以前に受けた魔力の知覚及び操作に関する訓練の負荷を数倍以上に上げた魔力を彼に流し、何とそれに適応したのだとか。
それ以来、彼は魔力を扱うことは出来ずとも自然と纏う魔力の濃度のみで、稽古の度私達の攻撃を受け切っていた。
不思議な様にも感じるが、経歴から察するに彼の血筋の方が巳浦様の本妻との間から続いて来た家系。
真っ当に受け継がれてきた血脈なのだ。
それが何かしら作用し適応したと考えるのが正解なのだろうが、恐ろしい少年だ。
「彼はもう、私達レベル20〜台の性能を大きく上回ってしまっている。
その様な現象が、現実に起こり得るとはな。
正直な事を言うと、彼一人でこの一年試合、ケリが着いてしまう。」
「えぇ、その通りだと思いますよ。
俺がブレイドとフィスタのダブルスに負けた際、そのコンビネーションと当時のスペックにたった一歩の差で惜敗したのですが、その時とは意味が違う。
あれはもう、ある種の壁に躓く段階。
人間らしさの瀬戸際に居る強さだ。」
そんな、ブレイドに対して一種の危険視とも取れる感想を述べつつ、順次ルール説明を行なっていく。
「解っているとは思うが、この団体戦、開始時刻は本日七月一日の午前8時より始めとする。
終了は午後の5時、そこまでに残っていたチームは学院一階の広場にある転移装置で帰る前に校庭に再度集合。
そこで1日を凌いだ成績書を直接手渡しする。」
生徒達が騒つく。
無理もない、これが団体戦の報酬なのだ。
「そして勝ち残った組は後日の朝6時に学院へ出席。
7時迄に一階広場で受付をしている私達教師に前日の成績書を提示し、受付を終える事。
尚、脱落した者達から順に学院一階広場で水晶モニターにより試合鑑賞を行い、次に活かす事。」
全員が同時に緊張を誤魔化す中、四人は暇そうに会話を聞いていた。
態度が横柄なのではなく、それは既にクラスから散々耳に詰め込まれていた為、飽きていただけだ。
「そして、これが最も肝心な要素となる、」
「【ステータスパネル】だ。」
視線を向ける。
そこには、アラガンが首から提げる薄い鉄製のプレートが、ありありとステータスを空間へ映し出していた。
「この片手に収まるサイズのプレート、これには自身の身体能力、潜在的魔力量に影響を受け製作される数値が映る。
私で言えばレベル29、体力は約2000、魔力出力は2000〜2100前後といった具合にだ。
今下で末端の教師見習いがプレートを配っているだろう、自身で確認してみるといい。」
そして手元に来たプレートでどんどんステータスを開いていく者の中、神妙な顔でパネルを見つめる者達がいた。
無論、四人である。
クラスは自身のステータスが信じられないと言った顔付きで、宙を見つめていた。
「レ、レベル10、体力300…………。
魔力出力、きゅ、90……………。」
明晰さと引き替えのそれは、余りに厳しい現実を彼に見せつけて来た。
だが、そんな彼の地獄絵図を気にする事なくフィスタは自身のステータスを確認した。
確認した。
再確認した。
念の為頬を抓った。
「レベル15、体力1600、魔力出力、さ、30。
な、なんだよ、これ、故障?」
「いいえ現実ですよ、フィスタ。
私達は魔力の出力に関してはカス同然、どうしようもないゴミ屑です。」
「ふざけんなぁ!お前よりはまだマシだろうが!
体力300って何だよお前!」
「し、知りませんよそんな事!
1600あっても出来ることなんか壁くらいでしょうに!」
「んだとぉ!おお?やるか!?」
そんな会話が聞こえてくる中、フレムも自身のパネルを視認する。
映し出されたのは、
「………レベル12、体力1000。
魔力出力は…………2742…………………ふ。」
普通に強い。
と言うか魔力量だけで言えば学院長を超えているので、既にそこからおかしい。
横でそれを聞き取った二人が殴り込みに行くが、そこは割愛。
そして、ブレイド。
そう、ブレイド。
彼は、周りのそれを耳にした上でこれを目にし、何を言えばいいのか、どう打ち明けるべきか分からなくなっていた。
それは、もう他と比較する物では無くなっていたのだから。
「レ、レベル30。
体力1500、魔力出力が…………3000。」
ーーーーーーー!!!
三人が直様近づいて来る。
「レベル30ってお前、いつの間にそんな。」
「理解できませんが、私達より強いという事は理解しました。」
「………割合なら僕の方が遥かに高いけど、今この瞬間、ブレイドの方が僕より上みたいだね。」
「あ、まぁその、巳浦先生に鍛えてもらってるからさ、俺。
それが効いてるぜ、これは。」
衝撃の暴露。
隠していた事がデカ過ぎた。
全員が驚愕の顔に染まり、と言うよりも3人掛かりで締め上げて来た。
「うぐうっ!?んごおぉおおぉおっ!??」
「テメェこの野郎ふざけんじゃねえ!
後で俺等も誘えこんの!」
「流石に聞き捨てなりませんねぇ!
やりますよお、私達も!
みんなで強くなるって約束、忘れたとは言わせませんから!」
「ぐおっ………………約束?」
それを言われて、暫し沈黙。
それにより過激な首締めと十文字固めを執行されるが、苦しみに耐えつつ記憶を探る。
そして、少しずつ、ゆっくりとだが思い出す。
あぁ。そういや入学前の15の時。
直ぐ近辺の西バウム村、南のレル村、北のベッツ村に居たアイツらと全員で将来の目標を考えてた時、そんな約束したっけな。
悪い、忘れてたよ。
でも、思い出したぜ。
強烈な膂力で全員を引き剥がし、若干悔しそうにするフィスタを納得させつつ、思い出した旨を伝える。
そして今回の団体戦を勝ち残って優勝できたら、直接王城の一階にある武道館に殴り込んで、訴えてみないかと提案する。
それに対しての皆の回答は。
「おうよ、任しとけ。
乗り込みは俺の得意分野だ。」
「私の頭脳で導き出された答えは、提案に乗る、ですね。
成功したときの恩恵が大きそうなので。」
「やらない訳ない。
君に魔力で負けるのは納得出来ない。」
「皆んな。
ーーーーーーーおし、リーダーは俺だ!
全員付いて来い!」
フィスタに蹴り飛ばされた。
次いでにフレムに火で炙られた。
クラスに寝ている所を椅子代わりにされた。
でも、良かった。
これなら、どうにでもなりそうだ。
立ち上がり、改めてステータスを見合う。
皆がそれぞれに思いを抱きつつも、当面の目標は決まった。
団体戦、絶対に優勝する。
ブレイドが手を突き出す。
それを見たフィスタは阿吽の如き流れで右手を乗せる。
遅れながらクラスも左手を乗せる。
そして一番上にフレムの左手が乗った。
意思を合わせる。
そして。
「勝つぜ!」
「余裕だ!」
「当然です!」
「僕一人で良いし。」
全員の考えが、整った。
目指すは10日間の生存。
そしてより多くのチームを脱落させ一年の団体戦で大きな成績を残し、その勢いで王城に乗り込む。
直接ブレイドに付いて行き、訓練を積む。
その様子を見て、或いは話を耳にした周囲の生徒達は全員顔面を蒼白にしていた。
正直言って勝てる気がしない。
が、何もせず負けるのは有り得ない。
其々が何日生き残れるかを競う、別の競技性が既に誕生していた。
「何とも面白い。
が、同時に恐ろしくもある。
レベル30、私よりも上ではないか。」
「あれが、巳浦様直系の血を引く者ですか。
認める以前に、納得してしまいました。
やはり俺が感じた彼への期待感は、間違いではなかったのだと。」
そして、時刻は8時手前。
既に円周5キロ、半径約800メートルの中央街から人は消えている。
午前8時から午後5時まで建物から人は失せており、その建造物等は全て商品等を中央街外部の街へ転送している。
勿論建物の内部での潜伏、奇襲などが可能。
全員が使用する木製の武具を手に取っていく。
ブレイドは木剣、フィスタは自前の布を手に厚く巻いていた。
フレムは基本的に誰も使わない魔力出力に応じて火力が左右されるライターを一つ手に持ち、クラスはと言うと。
「いやいやいや無理無理無理無理無理無理無理無い無い無い無い無い!」
手に持っていたのは、一本のペンと小さな手記であった。
彼は戦力にならないという判断の元、全体のステータスや状態、敵のあれこれを管理する司令塔としての役割を担う事になった。
無理と言っているのは、自衛手段がない為襲われたら終わりな事に対して呟いていた。
重責に呼応して角度が崩れる眼鏡を戻しつつ、しかし意気揚々にデモンストレーションを行う皆を見て、気を取り直しているクラスであった。
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ブレイド 30 1500 3000
(※ブレイドは巳浦の魔素影響で魔力のみ大幅に伸びている。)
フィスタ 15 1600 30
クラス 10 300 90
フレム 12 1000 2742(以降2800)
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※手記第一ページ
どうなる事やら。




