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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期六月某日 英雄巳浦召還
12/113

第九話  迷宮

やりたい事多すぎて書けなかった。






臆病な迷宮    全50階。


現在地      最下層50階・玉座








「…………はぁ。」







視界正面に、汚れた魔力が固まっていく。

現れようとする、何かがいる。




玉座に座るこの男は、目前に立ち上がる、









『fuuuuuhhhhh………』








二足歩行のサイクロプス、しかも体高2メートル。

それが振り下ろす鉄塊の棍棒を避けることはなかった。






酷い音がした。

何かの潰れる音、肉がひしゃげ、千切れるような無理矢理な音だ。






男のスキンヘッドは傷以前に何事もなかった。


そして、サイクロプスの腕、正確には棍を握っていた腕甲、指などが全て勢いを受け止め目も当てられない状態になっていた。




男は立ち上がる。





反射的に無事であった左手に棍棒を持ち直すサイクロプスだったが、違和感があった。





…………?


身長2メートルを誇る巨大な揃いであるサイクロプス種、その威圧的であるはずの肉体に、影が差していた。





それはつまり。


この男の方が大きい事を表す。










身長210cm、体重133kg。

体脂肪率10%、約120kgの筋肉の塊。


名を、ダンジョン。

ダンジョン・ドミニオン。




大魔戦記時代、英雄と呼ばれる以前だった人間の彼らと共に戦地を駆け回り、修羅の如き旋風を巻き上げた大剣使い。






そんな彼は、今目の前で見下ろす形になるサイクロプスの棍棒を、鉄の塊であるそれを麩菓子の様に、左手で握り潰した。


潰れた際の手形がくっきりと残っていた。






魔物であろうと本能的な判断は出来る。


自身の目の前にいるこれは、決して魔物ではない。

敵だ。

だが、人でもない。





これは、まーーーーーーーーーーー。















爆撃音と共に、右拳が振り下ろされた。

迷宮の材質は支配者である者の魔力で構成されている為傷は付かない、正確にはすぐに再構築される。




そして、サイクロプスの死体はと言えば、周囲に5メートル以上の亀裂を生んだ大穴に押し込まれ、そのまま地面に取り込まれていった。





戦いになっていなかった。

先のサイクロプス、あれでもレベル40〜50相当の、人界ではかなり危険な部類に指定される魔物だ。


普通であれば即座にギルドに指名手配される程の。






世間ではあまり見掛けられなくなった魔物、それが今現在どこで発生するかと言われれば、


強者の居る場所。





つまり、魔王の根城、迷宮等が分かり易い一例である。


ダンジョンは百年程前の加速文明記の始まり以来、ずっと何年も、何十年も、百年弱という時間を、魔物狩りに費やしていた。





人外ならではの芸当。


魔王とは、災いではなく、守護者。

この世界に於いては守る者である。






迷宮のある場所。

人類生存圏の外部、それ以上先は全てが海水で包まれている地上の終点、海。


その海面上に入り口があり、五芒星の位置取りになる形で世界の端に点在する。

魔王の人数は5人、そのままである。






ここはその内の東北に位置する迷宮、ダンジョンの居城である臆病の迷宮。

それの最下層。






因みに何故魔王がこの場所を人類に認知されていないのかと言えば、理由は単純。


この海面上に入り口を構える迷宮、地上から4〜5km程離れた位置に有り、そもそも発見されていないだけであった。






人類という明るい生命体が地上を支配する事で、嘗ては満遍なく散っていた魔物の発生域は、海にまで押し込まれる形となった。



それでも完全に地上に湧かなくなるということはないので無論対処するが、そこで湧く雑魚とは訳が違う。






国同士の間に広がる数キロ、数十キロ単位で広がる草原、森林地帯に湧いて出る魔物の平均的なレベルが20〜平均だとすれば、









「ん…………はぁ、またサイクロプスすか、ここ一週間はサイクロプスDAYみたいっすねぇ。」








ここ迷宮での魔物の平均は50〜最低ライン。

今の人類が享受している平和の代償が、これであった。



周囲を囲む形で、サイクロプスが10、20とかなりの速度で生み出される。







中央の玉座に憂う顔で座り込むダンジョンを標的とし、同時に襲い掛かってきた。




先程とは違い多少面倒な状況になる。

魔王、魔王といえどこれは流石に、









「…………迷宮大剣。」







そう、呟いた。


すると、背には自分の背丈を超える全長の大剣が魔力の帯と共に固定されていた。






目的の為に立ち上がる。

息をし、食事をするのが当然のように。





ーーーーー魔物が一斉に金棒を振り切る。









「つまんないんすよ、飽きてきたっす、流石に。」








大剣で戦う事は、普通である。





戦闘時に拳で戦っている事それ自体が、真剣を持つ相手に対し素手で挑む事の様な舐めた対応。


彼の強みは、この剣に有る。








「ばいばい。」







言葉と共にダンジョンの黒いタンクトップ、いや体へとその大剣が還元されていく。





この大剣自体には何の能力もない。


この男が強いのは、見た目に違わぬ怪力と、自身の系統である【自然魔力】が起因しているのだから。






先程大剣の薙ぎ払いにより全滅した数十体のサイクロプスの死体を処理する為、足をつけている地面に手を当てる。



そして、一瞬だけ魔力を解放した。






一面へと迸る心地良い暖気の様な魔力。


それは、迷宮の構造へと取り込まれて行き、魔物の死体をどんどんと飲み込んでいった。






自身の魔力によって維持される物である迷宮は、持ち主の意思によって様々に機能する。



この場合、別に自然魔力の恩恵による効果ではなく、ダンジョンという支配者の魔力に反応して、果たさんとする行動を行っただけである。






そして一息つくため再び座すダンジョン。


その時。







「………ん!

…………へぇ。」







微かだが、地上方面からの強烈な生命力を感じた。

この感覚は、もう随分と昔に慣れ親しんだ者の波動であった。




そう、巳浦である。





反射的に飛び上がる。


何か、起こるかもしれないという期待感。






そして、それは各魔王も今頃感じ取ったはず。


何か異変が、面白いことが起きるかもしれない。

そんな期待感が頭を支配した。





となれば、こんな所に居られない。

ダンジョンは座から離れ、地上へと上がっていった。


















海水に迷宮は残して行き、遠く西の方角へと移動し切る準備を終えた。








「砲丸投げの要領で大剣を投げてそれに固定した紐で自分は飛ぶ。

勢いが止まりかけた頃に一旦海面を走り、それと同時に海面で砲丸投げ、それで移動っす。」








彼の場合別に移動手段など泳ぎ、走り、大剣サーフィン、何でも良かったのだが、テンションが上がっていたのでこの様な形式となった。







そして彼は大剣を手に取り、移動を始めた。
















「これ、受けてもいいか?」







東の国との間に有る危険地域、【デルヴァ森林】。

そこに発見されたという推定レベル50の虎型魔物、それの討伐。






初めての任務として適当に選んだそれを手にした受付員は酷く動揺した。

こんな依頼、まず誰も受けないだろう、と。





だが、以前ここのギルドで騒ぎを起こし、ザラデスの人間を足蹴にした【黒装束】の異名を持つこの謎の男なら、或いは。





イジャエは任務内容を見て顔が引き攣っていたが、バルト王にも頼まれた。

名を売れ、と。






「だったらこんくらいやんないとだろ?イジャエ、怖ければ俺一人でもいいぞ、どうする?」




「やります、やりますよ。大丈夫です、大丈夫。

問題ないですから、はい。えぇ。」




「割と俺一人で良いぞ。

怪我しない様気を付けろよ?」







七月中旬、ブレイド【達】が無事最優秀を取ったという報告を耳にしてから早数日。



俺とイジャエは、まず世間の状況を把握してほしいというバルト王の頼みで国外の依頼を受けることにした。






依頼元は、東方面のハイデン王国の王家から出ている。

報酬は直々の顔合わせによる面識と、食事会。



明らかに俺に当ててきてる、丁度いいしやってみる。






「あの、巳浦様。」







イジャエが右手に絡んできた。


もじもじとして。

可愛い娘、いや孫……………遠すぎて分からないが、可愛い。







「何だ?怖気付いたか。本当に無理しなくていいからな。」




「その、恥ずかしながら私、魔物と戦ったことがなくて、その。」




「は?無いって、何で無いんだ。

普通戦ったことくらいあるだろ、腕試しとか、特訓とか。何かしらで。」





話によるとまず人界、それも人の集まる国やその付近ではまず魔物が湧くことはなく、野生動物の多い嘗ての環境に近い自然溢れる区域で、低頻度で生まれる程度だとか。



なるほど、強くなれない訳だ。

で。







「わざわざくっついてくるのは何でだ?」





「ま、守って下さい!」




「ん、分かった。好きに隠れてな。」







酒を飲んでいた男達は、一様に血管に血を巡らせていた。

普通に羨ましかった。






現在時刻は朝の9時。

今回俺と彼女は本日から三日間、バルト王国から離れることになっている。


別段心配な点もないので気兼ねなく遊びに行けるし、個人的にはワクワクしていた。


イジャエはモジモジしているが。







そうして、其々は考えを進めていく。




この二人の場合はチーズパイと果実酒を腹に詰め込みながら、だが。






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