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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
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百十話 修羅場





11月3日。

午後5時を過ぎた頃。


ゼンジャとのやり取りを経て幾らかの疲労感もありつつ、巳浦はヴェルウェラと共に学院へ訪れていた。



10月初めの学院戦以来久し振りにブレイドに会おうと思った、どの程度の実力か気になる親心的な心理だ。

ヴェルウェラと同伴で来訪した為、まるで学院の下見に来た親御さんに見えなくもない。


まぁ実際には2人とも学院で確認された事のある人物である、その勘違いは起きない。

 どちらかと言うと、極稀にいる途轍もなく強い人という認識を持たれている。








「エイラ先生……厳しすぎるぜ………っ」


「はは、そうだな!

でも私は初日のダブルスより今のトーナメント形式の方になってまだ楽しめているぞ?」


「まぁ…………いやうーん……え!?あれっ?」








やっと気付いた様子だ。

旅に出ている云々の話を聞いていたので、全く想定していない巳浦達の来訪にブレイドとソディアは疲労した体で垂直に跳んでしまう。


しかし理由が分からない。

別に二人で来る必要なんかない気もするけど。








「ヴェルウェラおばさま、こんばんは。

丸1ヶ月振りですね、今日はどうして学院に?」


「んー。

気紛れに二人の様子を見に、ね。」

「あは、仲良さそう。」


「へ、変に茶化すなよばあちゃん!

巳浦じいさんもなんか言ってくれってっ」



「ん?仲良さそうだな。」


「なんでだよ!なんで擁護しないんだよ!?

……………まぁでも本当の事、だな。」






「いやまぁ、今日は偶々授業終わりに会ってさ。」

「最近凄い強い人が教師になって、朝から夕方まで実戦的な練習してるんだ。

ーーーあ、丁度来たぜ。」


「ふむ、優秀な平均がこの学院の生徒だとするならば確かにこのトーナメント形式、中々良い。

…………ほう、ブレイドとソディアか。」



「へぇ、アンタが新しい先生か?

俺は一応非常勤務の教師なんだけど、今は訳ありでバルト王国から離れててな。

名前なんて言うんだ?」


「む?……………貴様ぁぁァァァっ!!」


「え、なんだ急に?

ーーーーえぇぇえぇぇぇエェっ!!?」


「ん?二人って知り合いなのか?

やっぱ強い人同士って面識あるんだなぁ。」


「「違うっっ!」」






「な、なんだか危険な雰囲気だぞ、ブレイド?」


「お、おう。

…………ばあちゃんもなんだかおっかないぜ。」






「ーーーー知り合いなの?

誰、これ。」


「えっと、まぁ、なんつーか、難しいんだよ。

あんまり説明しにくいっつーか、うーんっ。」


「私はエイラ、この男とは前に一度バルト王国ではなくハイデン王国で会っている。

巴、という名前と姿で暫く滞在していた筈だ。」


「ふーん。

ーーーーお前、人じゃないね。」


「……………それはそっちもだろう?」


「「……………ふん。」」



「おいやめろ、俺を挟んで険悪な空気になるのをやめてくれ。」

「よ、よしブレイド!連れと一緒に早く帰れ!

この場にいると碌な事ないぞーーっ!?」


「お、おう!ありがとなじいさん!

行こうぜソディア、息が詰まる………っ」


「あ、あぁそう、だな。」







ふう、何とか子供達は外せたか。

何で王城に戻るついでの寄り道が厄介事になんだよ、俺なんかしたか?


まぁまぁ、一旦落ち着こう。

取り敢えずこの場はヴェルウェラを強引にでも連れてさっさと城の寮に寄る。

 4日からの予定と、10日にあるルシファー戦の件をじじいか松薔薇に伝えねえとな。


そっからーーーー、




視界。

瞬きの間に、顔で埋まる。


エイラの口吻が、何を思ってか巳浦へ。

自分より一回り上背のある彼女に少し屈まれるような姿勢で口付けをされた、以前にあった意思とのやり取りを不意に思い出す。


ーーーいや、それ所ではない。



何故なのか分からないが、エイラは屈辱を晴らしたかのように両腰に手首を当てて鼻を鳴らす。

そんな彼女の行動を目撃したヴェルウェラはいつ振りか、暫く出ていなかった悪癖が再発してしまう。






とても自然な動作だった。

右手首に巻かれた黒のチョーカーに魔力が走り、コンマ1秒で右手に刀が握られる。


巳浦や黒人の戦闘員が持つ武具。

旧名称ウォーカーブレード、

略称漆刀、当然ヴェルウェラは持っている。


それの最新型だ、携帯性能を上げる為に長々とした刀剣の形状を維持せず日頃はチョーカーの形状に変化しているのだ。

使用者の魔力が注入される事で瞬間的に形状が漆刀へと成形される、圧倒的な技術力。


だが、今それはどうでも良い。






巳浦も認識出来るかどうかの超速斬撃。

秒間9〜10回の太刀筋は、四刀剣の手数を上回る程だ。


それを、エイラは同等の動体視力を以て皮一枚掠りながらも対処してみせた。

これが、裏天使の武闘派の力なのか。



それにもう一つ、驚くべき事実がある。

ヴェルウェラとエイラ、両者とも保持する魔力系統が強化、加速、電気(感電)なのだ。


何の奇跡か。








「ーーーー早いね、白髪。」

「私の攻撃避けた奴なんて、違う白髪と巳浦ぐらいだよ。」


「ほう奇遇だな、私も自分の攻撃を避けられた初めての相手が白髪の男だった。」


「「ーーープライモ。」」


「な、なんだその共通点は。

あいつ、いつこの二人と戦ってたんだ?」






「ーーーさっきの行動、何が理由?

お前強そうだし、一先ずお仕置きはやめる。」


「そうか、それは助かるな。

理由か、聞いたらもっと怒りそうだが説明しても良いか?女誑し。」


「……………え、俺が女誑し……?」






「女、誑し………………?」


「あぁ。

その男は、私の主君である神の如きお方に畏れ多くも1分という長時間唇を重ねていた。

その主君と間接的に繋がる為に、その男の口が必要だったのだ。」


「そう、そうなんだ。

ーーーー良し、お前は別にコイツを好いてる訳では無いんだね。」


「逆だ、嫌っている。

おっと、口は拭かせて貰ったぞ。」



「まぁ、今回は事情もありそうだし見逃す。

だけど巳浦、お前私以外と何してるの?」


「………………面倒くせぇぇぇえぇぇぇっ!!」














巳浦は、普通に逃げた。

因みに周囲の生徒達は最初の方に教師達に誘導されて転移帰宅していたので騒ぎは無かった。


逃げたついでに中央街を抜けて南の住宅街ゼルに訪れ、午後5時半頃でもまだ業務に追われ忙しない松薔薇の元へと寄っていく。



ヴェルウェラをブチ切れさせた事を愚痴るも、自業自得と言われて静まり返る。






4日から9日をエレエラ民主国に協力する条件で国交を持てそうな事を伝えると非常に喜んでいた。

だが10日にルシファーと公式な試合がある事を伝えると全く以て不快な顔付きになる。


しかもなんだか一階が騒がしい。

一体なんだ?






「また客人ですか……………はい、どうぞ。」


「はろー眼鏡。

よ、さっきぶり馬鹿。」


「ごめん、俺行かなくちゃいけないんだ。

一日巻きである国にっ!」



「エレエラ国でしょ。」


「例の迎えは翌日では?」



「ーーー空気読めやおらぁっ!!」








そうして背後から首元と胴体を裸締めされ、巳浦は何度も手を叩いて根を上げる。

無論無視され気絶するまでの数分間、万力さながらの怪力で捻られ続けた。


松薔薇は生前の二人がよくやっていた喧嘩(一方的に巳浦が負ける)に構っている暇もないとばかりに書類業務に戻った。

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