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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
111/113

百八話 命運のカード

大分他の事に気を取られて意欲減ってましたね。





11月3日、午後13時。

東監視塔の室内で遭遇したのは、堕天使。


何故ルシファーがこんな場所にいたのか?

本来天使である以上、空間を瞬間的に移動する能力を使用する事も可能なのだ。

 だが仲間と決別した手前天使らしい能力を使う事を嫌っている為、最後に使ったのはそれこそ生命誕記(1世紀)以来だろう。


そうしてでもダンジョンの元まで出現するつもりだったのだ。

※が、迷宮は魔王の魔素から作られているせいで空間移動をしようにも強烈な妨害を受け不可能。



と言う訳で、ダンジョンが上陸するだろう最果ての監視塔に飛んで来ていた。

イアルには【ダンジョンの知り合い】として部屋にお邪魔させて貰っている。

(ルシファーは戦闘の対象以外に敵意を覚える事はないので、【纏鎧】を解除してさえいれば無闇に魔力を垂れ流す事も無く一般人と交流が取れる。)








「ーーーなるほど、まぁ事情は分かったっす。

で、」


「なんで僕とルシファーさんが友達って事になってるんすか!?

あんな戦闘の後に良く言えましたねっ!?」



「事実そうであろう。

俺としてもこれ程に待望した存在は居らん。」

「ダンジョンよ、そして大英雄巳浦。」



「え、俺も……?」



「俺の生涯に於いて、3本目と4本目に数えた真の強者よ。

また会えた事、嬉しく思うぞ。」



「嬉しくないっすぅぅーーーっー!」

「助けてくれぇぇ誰かぁァァっ!」








イアルがそんな3人のやり取りを見て感じた印象は、腐れ縁の知人であった。

実際そんな所だが、何やら戦闘になるとかではなさそうな雰囲気。


間違ってもこの監視塔が破壊される危険は無い様子だ。

そうこうしていると、ルシファーが54枚1組のトランプを卓の中央に置いた。



先程まで暇潰しにやっていたこのトランプの面白さに気付き、試しにこの場の面子で遊んでみたくなったそうだ。

 それであれば巳浦達としてもまぁまだ安全なので、それを普通に受ける。


だがそれと引き換えに。







「ーーーもし。

仮にだ、この勝負で俺に勝てば復活直後を見逃してやる。」

「しかし俺が勝てば、日を跨いで後日本気の決闘をしたいと考えているのだ。」


「どうだ?譲歩してやっているのだぞ。」



「うーん…………まぁ、はい。

自分は了解っす、で巳浦はどうっすか。」


「え、何で普通に俺も入ってるの?

流れ的にお前の話だろうが!」


「いやいやぁっ?

魔力も全快に復活して調子良さそうじゃないっすかぁ〜もう!」

(ーーー逃げないで下さいよ、マジで。)


(んーーっ……………良し分かった。

俺も巻き込まれてやる、まぁ確かにその方が面白いだろ。)



「話は付いた様子。

勝敗の後日程は決める、皮算用は嫌いでな。」








そうしてイアルはマスターの立場となって、公平なカード配りを任される。


ルールは単純だ。

ルシファーが提案したトランプ種目から、互いの望む種目を選ぶ。

 それらをじゃんけんで決め、後は一対一での真剣勝負をするのみ。


種類はそれぞれ、

【ポーカー】【ブラックジャック】【7並べ】【戦争】

この四つのどれかだ。



先鋒のダンジョンは【ブラックジャック】。

ルシファーも同じく【ブラックジャック】。

勝負内容はお互いに合致、そのまま開始となる。








「ダンジョンよ、何故これを好む。」


「まぁ、キッチリ揃った時の最強感っすね。

ぼこぼこにしてやるんでオッケーっす。」


「………成程、息が合うな。」



「このイアルが直々にカードを配る。

勝利条件は3本先取、良いな?」







そうして1度目のカードを配られる。

ルシファーは表情が動かず中身が予想できない。


ダンジョンの初期手札は6+6。

初手から自爆の可能性がある危険なカード。

 しかし勝ち目も無い出目、引くしかない。


そうして一枚を追加する。

数字は………5。



(17………6は自分が既に引き続き。

上を狙えなくもない、でもここはっ!)








「ーーーー1枚、追加でっ!」


「…………素晴らしい気迫だ。

どれ、俺も1枚貰おうか。」



「よしよし、どんどん引け!

贔屓は無しだ、ガチの引きを見せてみろ!」








そうしてダンジョンは2を引く事に成功。

19、悪くはない出目だ。


しかし。



……………ブラックジャック。


ルシファーの初期手札はAと7。

そこに3を引き21、勝利となった。



内容も悪くなかっただけに安牌な勝ちを期待していたダンジョン。

ここは心理的に一歩遅れを取る。






そして次の手配。

ダンジョンは3と4、一先ず一回は確実な手札を獲得。


そこから1枚を引くと、絵柄となり17。

再び嫌な流れとなる。



ルシファーは引き様子もなく待ち構えるダンジョンの様子を見つつ、カードを一枚引いた。

…………数秒後、静かに7+4+5で止まる。


ここは読み負け、ダンジョンの勝ちとなる。

しかしそんなダンジョンへ一言告げる。








「そんな寒い手札で勝って、お前は納得か。」


「……………そりゃあ、もっとちゃんと勝ちたいっすけど。」

「そう言いつつ自分も寒い手札で負けてますよ?」


「何だと………お前、外で一戦やるか。」


「いやそうしない為のトランプでしょっ。」








そんして第3戦。

ここはまさかの両者後引きブラックジャック。

しかし枚数の関係でルシファーより1枚多くなってしまったダンジョンが負けとなる。


後が無くなると、途端に緊張が増す。

そうして第4戦の手配をされる。



手持ちのカードは…………2と5。

当然一枚引き、3を取って合計10となる。


畳み掛けるように引くも、残念ながら5。

15という瀬戸際の出目。

 気配を入れてもう一枚取ろうとするが、間に挟まる形でルシファーに一枚取られた。


そのカードを見て悩む様子から、大きな数字を引いたか小さな数字を引いてまだ続けられる様子であった。



静かな読み合い。

そこに一石を投じたのはダンジョン。


手にした1枚は5、現在20。

流石に引けない、もう無理だ。







「………自分は、ストップで。」


「成程な。

まぁ大方、17〜20といった所。」


「……っ!」


「俺も止めよう。

さぁ、瀬戸際だ。」






「出目はーーーー4と4、3と8、19だ。」


「あっ!自分は2と3、5と5と5っす!」

「20、ここは最後までもつれ込みっすね。」


「ふん、中々に偏った様子。

次で決着だな。」


「えぇ!」








その時。

ダンジョンの手元には初手からAとAで2か12の手持ちが出来た。

余裕を持って更に引こうとした時、ルシファーが初手AとKで21を引いていた。


その瞬間、ダンジョンは崩れ落ちてしまった。

4枚中3枚がA、これもまた偏りだ。



そうして口を開けっぱなしで天を仰ぐように椅子に座り始めてしまう。

巳浦はその流れを断ち切るべく立ち上がる。






俺だけは絶対に勝つ。

この中で得意な種目は、【7並べ】だ。


そうして7並べを提案するも、ルシファーからは【ポーカー】を選択される。

じゃんけんの末負け、【ポーカー】となった。



初手から不穏な空気になる。

視線が定まらないダンジョンから心からの笑いが飛んでくるが無視する。


もうそれでやるしかない。

自分の手持ちと相談だ、行くぞ。






最初に程度ローカルを設定する。

①シャッフルは一回戦につき2回。

②2本先取。


問題無し、そうして早速イアルから手配される。

初手の組み合わせからして絶望的か。

 ルシファー側も渋そうに見えるが、果たして。



ーーーー結果、向こうのワンペアに出目の強さで負けてしまう。

やはり流れが悪い、ここからどうするか。






折れない気持ちを武器に、2回戦。

ここは安牌でツーペアを狙いにーーー








「2.2、8、10、Jか。

良くも悪くもないね、どうするの?」


「あ?どうするかな。

ーーーなんで言うのォォおォォっ!!?」



「ふむ、どうやら黒人の方は大英雄と俺を戦わせたい模様。

運だけでなく仲間からも裏切られるとは、流石に俺の勝ちだろう。」


「いやぁ、その結果だと僕としては心強いというか。

負けろ!って気持ちが正直あるんすよねぇ。」


「ぐはは!

友にも謀反を起こされているぞ?」



「くっそがぁ!おらぁ引いてやるよォ!

…………普通に負けた。」


「良かったね?」


「あぁ…………お前はな。」








こうして2人は色々あってルシファーに負けた。

片や運に、片や全てに。


今より1週間後、11月10日。

国問わず何処かの闘技場を決闘の開催地として決める事とし、松薔薇が各国と交渉し詳細が決まり次第興行として盛り上げる算段だ。


一先ずの猶予を得たダンジョンは3日の間にキャロ村へと帰宅し迷宮庵の業務をこなし始めた。

 巳浦は予定が入った為に旅を一旦中止、戦いへの準備も兼ねて一時的にバルト王国の王城へ訪れる事にした。



9月7日の原初対魔王の戦いで1日、10月1日の学院戦で1日だけ日帰りしてはいた。

だがロルナレ家の者と長話は出来てない、3〜9日は久しぶりに地元に帰って交流する事になる。








「では、俺はヴァンデル遺跡へ戻ろう。

眼鏡の英雄と遺跡の黒人は連絡手段があるとの事だ、目立たず待機もできる故都合が良い。」


「出来得る全ての対策を立て、俺に挑めい。

では、さらば。」






「ーーーーどっか行ったな。

良し、今回の件俺は関係無いからあんま悪い風に言いふらすなよ?」


「大丈夫っす!だれもルシファーに圧かけられちゃあ敵わないっすよ。」


「まぁ、トランプ自体は勝ち越しだけどな。

お前達、まさか2人とも弱いな?」



「…………」

「…………」

「私もそう思う。」








何はともあれ。

1週間の猶予期間を貰い、双方は道中の帰路を共にしつつその後は別行動となった。


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