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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
110/113

百七話 復活の魔王






11月3日。

ハイデン王国にラキウェルが訪れた夕刻から巻き戻り凡そ正午。


迷宮の一角。

そこで、ダンジョンが復活する。















「ーーーーーー」


「ーーーーー……………ん…………」

「……………あ、そうだったっす。」



「自分死んでたんだった。

おはようございます世界!」








ダンジョンは、自身の住処である迷宮の最下層50階にある玉座に座った状態で蘇った。


そして何事か。

目前には巳浦とヴェルウェラ、そしてここまで運んできたのだろう船に変形した魔物の館が上の入り口に居るのが気配で分かった。



時刻は正午。

何やら以前にルシファーと戦い撃退した、と。

 ダンジョンはそれを聞き流石だ、と思ったがそのまま戦っていたら確実に死んでいたと嘆く本人を前に余計な事は言わないでおいた。








「俺はその後バルト王国に戻ったんだけどさ。

松薔薇からその実力を信用してダンジョンの目覚めを守って欲しい、とか言われちまったんだ。」


「私達は旅行中のはずなんだけどね………ね?」


「あぁ全くその通りだあの眼鏡野郎マジでふざけやがって幾ら俺が嫌々修行次いでに旅行してるからって、」


「今、なんか変な事言ってなかった?ねぇ。」


「いや、全くそんな事は無い………ぞ。

何があっても俺がお前を守ってやるからなっ!」


「そんなに意気込んで言う事?

絶対に後で聞き出すから。」


「あ………………」






「まぁ、態々ありがとうっすヴェルウェラさん!」

「自分が起きる所守って貰えて助かりましたよ。」


「別に、私は何もする気無いから。

あくまであの眼鏡の頼みを聞いて動いてる巳浦に付いていってるだけ。」


「そう意地になるなよ、ヴェル。

でも何かあったらお前は逃げろよ。」


「…………ふざけてるの?

お前が危険な目に遭うならそれこそ私が守ってやるんだ。」

「急に甲斐性出そうとしないで、普通にして。」


「いーや、これだけは駄目だ。」


「何?私に反抗するの?」








そうして睨み付けてくるヴェルウェラの目付きは正直今でも怖い。

それでも自分の1番大切な存在であるヴェルだけは、擦り傷すら付けさせたくない。


巳浦が珍しく踏み込み、本当に心配そうな顔で彼女の両手を自身の両手で包む。

そうして一言だけ頼むと、ヴェルウェラも珍しく真剣な態度に思わず真顔になる。



二人がそんなやり取りをする中。

ダンジョンは天界でUNOをしていた途中なのを思い出して苛々していた。








「あのまま戦ってたら絶対僕が勝ってましたよ、変なタイミングで送らないで下さいよぉっ?」

「最後の色が赤で、僕の手持ちが赤の+3だったからサキエルに嫌がらせ出来たのにぃ、もうっ!」


「いや、普通に何やってんだお前は?

まぁあいつらも暇なんだろうけどよ。」


「カードで遊ぶくらいいつでも出来るでしょ。

お前の事を拠点に返すまでは同伴なんだし、道中で買って遊ぼうか?」



「いや、あの人達とは毎日やってたんで別に良いんすけど。

でも戦いが中途半端に終わるのは何だかなぁ。」

「あ、魔物湧いてきちゃったっすね。」


「お、本当だ。」


「そうだね。

そうだ、ならお前達二人でどっちが早く倒すか勝負したら?時間は未定。」



「お、それ面白そうっすね。」


「暇つぶしには良いかもな。

…………こんなんじゃレベルは上がんねえけど。」








そうして魔王ダンジョンや大英雄巳浦。

黒人のヴェルウェラの計3名により空間に大量の高密度な魔素が溜まり。


平時の場合。

迷宮自体を構成する魔王の高密度な魔素が、当人の滞在により一定空間内の飽和点を超える事で50LV級の魔物が形成される。


しかし現在、巳浦とヴェルウェラと言う強者が揃う事でその飽和点を大きく超えてしまった。

よって何が起きるかと言うと。






全身を大量の鎖で巻き、右手に錆び付いた銅の槍を握っている。

二足で立つその羊の頭部を持った魔物は、

【魔羊】と呼ばれる平均90lvの凶悪な種族。


迷宮の玉座に堂々と足組みで座り右手で顎を突くヴェルウェラを一目見て危険と判断し。

上半身裸で両腰に拳を突く禿頭の大男からはそれ以上の気配を感じ。



消去法。

最も気配の薄かった黒いロングコートを翻す長髪の男に飛び掛かる。


右手の槍に毒魔力を纏わせ、掠り次第神経を麻痺させる攻撃を秒間3発ほどのペースで振るう。

中々積極的な攻撃を振るってくる魔物に対し、巳浦は魔力を込めた右足を垂直に蹴り上げ顎を跳ねあげる。






中々の手応え。

ただ相手は高レベルの魔物、当然の様に顔を下へ向け直し再度襲い掛かってくる。


皮一枚で完全に見切りながら、仕方無く右腕を背後へ突き出し一本だけ武具を顕現させる。

そうして呼び出された【回帰刃】を使い槍へ真っ向から打ち合う。


普通の武具と違い異質な能力を持った回帰刃から競り合う度浴びせられる魔力の暴風に全身を傷付けられながらも、何とか耐え凌ぐ。



結構良い根性しているな。

でも受けてるだけじゃ、もう終わるぜ。








「悪いな。

こっからはちょっと展開早めるぜ。」


「uhh?」


「そうだな。

ーーーー【惰髄暁刃】、お前だ。」








そこから、と呟き刀剣に魔素を流す。


ずいを呟き刀身の根元にある眼の模様が赤く光る。

次にあかつきのと呼ぶと、剣の中間にある眼の模様が青色に灯り始めた。

そして最終的にじんと告げると、刀剣全体が赤と青色を混ぜた紫の光を放つ。



ヴェルウェラとダンジョンの二人も、滅多に使わない武器を取り出しているのを見て注目する。

 特にヴェルウェラからして見れば、黒人の作る装備の中期型に相当するウォーカーブレード(巳浦は狂いの漆刀と呼称)を特殊改造して製造された惰髄暁刃は、幾らか思う節のある武器だ。


そうして惰髄を右肩に乗せて仁王立ちする巳浦へ多少の警戒を持ちつつ、魔羊は飛び掛かる。






槍を突き出してくる。

その先端に向かって刃先を真上から振り下ろす。


すると、回帰刃の時までは何とか受け止められていた重さの倍近い衝撃があり槍を握っていた自身の肉体ごと勢いで地面に叩きつけられた。


髄は高速の攻撃、暁は強力な一撃。

その二つの性質を持った刃状態、まるで人ではなく魔王や天使にその威力を並べる。



その刃状態を起動し続けるのに普通の魔素量なら1分が相場だろうが、巳浦の場合は3分ほど使い続けられる。






更にそこから右手だけではなく両手で持ち直し、後方へ飛び退く魔羊へ跳躍し接近する。


魔物が込められる最大の筋力と魔力で突き出される槍の一撃は、恐らく真っ向から打ち合えば刃状態の斬撃とも釣り合っただろう。

 そう、ただの一振りであれば。



紫の刀剣に、巳浦自身から膨大に溢れ出した黒の強化魔素が纏われる。

無情にも思える《剣衝》は、槍の勢いを完全に押し返し奇しくも槍の一突きの如くその首を刺し貫いた。


そこから刃先を右へ傾け半分を切断し、左へ向け直すと残った右半分の首を完全に切り落とした。

 こうなっては魔物でも絶命する。



合計1分ほどで魔羊を退治した巳浦は、次はダンジョンの番と言わんばかりに玉座の横で座り込む。








「普段使わない武器が見れて面白かったよ。

良ければ次は私と手合わせしないか?」


「いや、それは遠慮しとく。」


「ふーん、そう。

…………所で今回の旅行についてなんだけど、」


「お前の行きたい所があれば連れてってやるぞ。」


「……………ふん。」






「いやあ、見応えあって良い戦いだったっす。

そんじゃ次は僕がやりますよーっと。」








そんな平和面したダンジョンの正面。

立っていたのは、巨体種の中でも上澄み。


平均80〜90lv、【白銀オーク】だ。

討伐時の素材となる白銀の犬歯は非常に価値の高い素材であり、売値は時価で取引される程。

(先程巳浦が倒した魔羊の持つ銅の槍も神経に作用する毒魔力が染み付いている。

その為強力な武具として使用可能、よって高額で売却可。)



目先の旅費を稼ぐという意味でも気合を入れたダンジョンは、一先ず変換の時計は使わず普段通りの状態で大剣を呼び出す。


その際の風圧だけで周囲の大気を半径5m程吸い寄せる。

その右手に握る大剣を、白銀オークが振り下ろしてくる棍棒に対し右後方から左上へ切り上げる。






耳に響く、金属の削り落ちる音。

その剛腕によって大抵の魔物は一撃で死に至るが、白銀オークは伊達に高レベルではない。


後ろに2歩後退するも、直ぐに体勢を戻す。

それを見てやるね!と喋ると今度は自身からオークへ突っ込む。



ダンジョンが、右手に握る大剣を飛び込みながら左へ薙ぐ。

それを棍棒の上下を握る事で辛うじて停止させ。


反撃の態勢となり両腕で握る棍棒を正面に密着しているダンジョンに叩き落とす。

 大きな鉄板同士を打ち合わせた様な音が鳴る。






ーーーーー自然魔力を吹き荒らし。

右手に握る大剣を左向きに真上へ構え、刀身の横腹で受け切る。


それでもダンジョンに魔力を使わせているだけこの魔物も大した強さである。

その状態のダンジョンが両手で握った大剣を突き出してくると、受けた自分の棍棒ごと後方へ5m以上転かされた。



信じられない顔をするオークに対し。

右手に握った大剣を右後方へ水平に構え、その場で左脚から踏み込むと豪快に投げ飛ばす。

【迷宮大剣ー投擲】である。


それは、起き上がりから即横に構えた棍棒を歪に変形させ貫き。

有り余る勢いでオークの胸部へ突き刺さる。


そのまま壁へと突き進み、衝突と同時に大剣は壁の奥深くまで入っていった。

当然オークは死に絶え、最後に犬歯を残し消滅。








「相変わらず怖いぐらい強いな。」

「それでもあの堕天使には勝てねぇんだ、どんだけ化け物なんだよあれは。」


「いやぁ、本当そうっすよ。

ーーーでも今日からは、分からないっす。」


「………………何か秘策があるのか。

お前、これ以上強くなったらどうなんだ?」


「まぁ、それ相応の代償もありますから。

さて、なんだか魔物も枯れたみたいですし彼が来る前に迷宮から出ましょう!」








そんなこんなで迷宮から出る事にした3人。

来る時は魔王不在の関係で魔物ゼロだったが、今は強力な魔物を2匹倒した事で一時的に湧かなくなっていた。


無機質な四角形の部屋をどんどんと戻り。

順当に50階層から1階層の入り口まで帰る。
















「ーーーーおー、久しぶりだなダンジョン。

俺っちに乗ってけよ、3人とも送ってやるぜ。」


「おー!久しぶりっすね館!

………あーそっか、巳浦とヴェルウェラは彼に乗って来たんすね。」


「そういう事よ。

んじゃあさっさと地上に戻るか。」

「この後俺はバルト王国に戻るけど、そっから準備したらまた動き出す。」


「旅行中の身だから、当然よね。」








現在時刻は12時30分を過ぎた頃。

言われた通りの任を終えてこの場の全員が東の監視塔へ向かう。















そして、上陸した目先。

東監視塔の内室にお邪魔したダンジョン達一行の前に居たのは。


ベルトの外れ掛かったズボンに、襟の立った少し汚れ気味のYシャツ。

そして、微かに上からダンジョンを見つめる大柄な体躯。



首の付け根まで伸びる黒髪を揺らしながら対面する監視員であるイアルとカードで勝負している大男。

ーーーーこいつは。








「ふむ、成程。

では、これでどうだ?」


「ほうほう、良い線行くねあんた。

しかしだな、それは読んでいたと。」


「何?

……………この俺が読み負けた、か。」

「では次は、」






「ーーーーおぉ、ダンジョンではないか。

そしてあの時の大英雄、お前も居るとはな。」


「いや、何してんすか普通に。」


「多分俺駄目だわ、疲れてるんだと思う。」

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