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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
106/113

百三話 新任の

お久しぶりとなります。

これは前から書いてあったのですが普通に投稿し忘れてました。





11月1日。

松薔薇は、ダンジョン復活まで残り2日に迫っている現状でも既存の問題に向き合っていた。


書記は、【意思】と呼ばれる存在により世界に撒かれた人類混乱の根源。

其れ等を各国と国交を持つ事で一つに統合し無闇な戦争、問題を引き起こさないようにするのが本来の目的。


しかし現状ではそれに加えて堕天使ルシファーによる対処不可能な襲撃を恐れどの地域も満足に外出出来る状況では無くなっている。

困った物ですね、本当に。



元々は巳浦が担っていたこの任をダンジョンが引き継いだ筈が、当の本人も一時死に私自ら各方面に足を運び直接調べなくてはならない始末。

 何やらネイシャさんもイルディア公国の公爵より書記収集を頼まれていたらしく、今は私こと松薔薇とネイシャさんの二人で書記関連の問題を解消している。


本来であれば巳浦ほど戦力になる者は天使や魔王といった高位、上位の存在だけなのでのんびり旅などされては困るのですがね。

ヴェルウェラが敵対でもしたらそれこそ大問題、致し方無いか。



松薔薇は、最近ベルボラン内で誕生した新英雄であるフウェルトヴェルトと言う男の動向をアレンから時折耳にしていた。

まぁ直近の目標が地帯の制圧という事なので後々国交を持つ為にも寧ろ頑張ってもらいたい所だ。


それはそうと全く手を付けていない方面の国々をどうしていくかが2番目の問題だ。

アレンの任務がいつ終わるか分からない以上、既に手を打ち始めるべきかも知れない。





今手が空いている英雄や反英雄の中から、誰をどの地域に任命するか。

これは慎重に決める必要がありますね。






「そう言えば何日か前に凛堂がテンの店に寄ったらしいですが、目的はやはり対ルシファーか。

あのダンジョンでさえ敗北したのを考慮すれば、当然と言えますね。」

「テンに聞いた話によると、確か魔力を溜め込める刀を作ろうとしているとか。

………成る程、居合戦法の弱点である溜め時間を強制的に無くすつもりですか。」


「上手くいけばいいですね。」


















「ーーーー冥界とか地獄界の魔物って、そもそも向こうにしかいねぇんだけど。」

「前回は奇跡的に遺跡で会えたけど、何処に行きゃあ門あるんだよっ?」


「何を騒いでいるんだ?凛堂。」


「んー、レインドかぁ。

いやな、最近また新しい装備を作ろうとしてて前寄った鍛冶屋に行って金払ったんだよ。」

「でもよぉ、肝心の素材元になる魔物が人間界に居ないんだよ。」


「それはつまり、別次元に存在する魔物だな。

私は戦った事がないんだが、強いのか?」


「そりゃあまぁ、前倒した奴も俺が本気になって程良く倒せる位だったからな。

人間で倒すのは難しいしんじゃねえかな。」


「そうか。

ーーーー提案だが、私もその素材集めを手伝っていいか。」





「…………本気か、お前。」

「反英雄が1人居るだけで大分楽にはなるが、最悪普通に死ぬぞ?」


「いや、妻が強くなろうとしているのに私だけ怠けている訳にもいかないだろう。

頼む、連れて行ってくれ。」


「そっか。

まぁ巳浦の奴に置いてかれたくないってのは、俺も分からんでもないわ。」

「よし分かった、どうにか行く方法見つけたら一回ここに戻って来る。

そん時になってもまだ気が変わってなければ、お前を連れてく。」


「助かるよ、凛堂。

ーーーー今は午前12時頃、ザラデス家の者が昼食を摂っている頃だろうし私達も向かおうか。」


「そうだな。

………てか俺、いつの日からかレイレンに6時から8時の訓練を任せっきりにしてんだよな。」

「レインドは俺と比べて熱心だから何だかんだ9時から10時の稽古には顔出してるんだろ。

なんつうかま、今回の装備作りが終わったら俺この国を出ようかなぁ。」





「それは、冗談か。」

「もしお前が居なくなると、レイレンが悲しむ。」


「でもよ、それを発条に強くなろうとするかも知れないならアリじゃねえのか?」

「元々魔王ってのは一箇所に長く滞在するもんじゃないんだよ、此処に来てからもう3年目か。

結構経ったし、まぁ良いだろ。」


「…………仮に本気なら、レイレンには一言声を掛けてから旅に出てくれ。

驚くだろうからな。」


「まぁ、それはそうだな。

ーーーーよし、んじゃ飯食い行くか。」















「なぁクラス、今日の学食って何だっけ?」


「確か、野菜と汁物が中心ですね。」

「好き嫌いは良くありませんよ。」


「んー、でも好きじゃねえしな。」

「てか10月も9月と同じで魔力に関する授業ってつまんねえよな。」




「俺は別にそうでも無いぜ。

爺さん達を見てると、魔力操作とかは完全に出来てるのが当たり前みたいだったしよ。」


「そうだね………黒い炎、紫の炎。」

「あれが使えれば、僕はどれくらい上に。」




「おいおいフレムの奴、上見すぎて下に残ってる野菜が進んでねえぞ。」


「どうやらその様ですね。

ーーーー話は変わりますが、何やら新人の先生がバルト学院に入るそうですよ。」

「女の先生とか聞きましたが、どの単位を受け持つか少し気になりますね。」


「いんや、別にどうでも良いだろ。

俺達に授業付けられるような教師なんて、ぶっちゃけ居ないに等しいしな。

 でも歴史と魔力の授業を担任してるあのハゲ、前に凛堂が教室に来た時凄い圧放ってたな。」

「もしかして、強いんじゃねえかあの人。」


「オルト先生、ですか。

何なら私達より強いでしょう、怒らせないようにしなければ。」


「だよなぁ。」

「……………ちょっとクラス、あれ見てみろ。」


「ん、何ですか急に?

見ろって、一体何を…………」







時刻は正午の12時半。

バルト学院一階ホールの右通路先で営業している食堂。


昼休み中、自前の弁当を食べる人もいれば食堂に足を運ぶ教師もいる。

丁度その新任教師らしい女性が姿をーーーー。



……………なんか、誰かに似てる気がする。

どっかで見た、あの白髪の。

 ブレイドはその人物の外見を観察する。

髪を全て後頭部に流し、目付きは鋭く威圧的。


そうだ、あの髪って確かマリウェルとか言う女の人と似てる。





厨房に言って何かを適当に注文している様子だが、その意識と視線は誰かを探している様にも見えた。

…………うわ、目が合った。


暫し見つめられると、何を思ったのか態々詰め寄ってくる。

俺達4人が集まって食事を摂っている席に堂々と座り込んできた。



(………退いた方がいいか?)

(知らねえよ………よくこの空気に入れるよな。)

(私達の輪に入りたい、訳では無いですよね。)

(………僕だけ離れていい?)






小声で話している中。

その女性はコッペパンを右手に持ち、あろう事か簡単に丸く潰し込んで一口で飲み込んでいた。


人間離れした食べ方で、思わず凝視してしまう。

そんな4人の目に、横目で視線を合わせる。

 残っている野菜を見られると、それに指を差し残さないようにサインを出して来た。


何か不思議な恐怖を覚え、4人は一気に残していた料理を飲み込む。

 それを見て納得したのか、自分の食事に戻っていた。

その手元にあるスープを一気に一口で飲み切り、野菜炒めを一斉に掻き込んで10秒ほどで完食してしまう。


何なんだ、この教師。







「私はエラ…………エイラと言う。

前日この学院に訪れ、急ぎで教師に就かせてもらう事になった。

宜しく頼もう、強い子供達。」


「は、はい!宜しくお願いします。」

「よよ宜しくお願いしますっ」

「……おーっす。」

「…………どうも。」


「ふむ。

10月から3月までの授業内容は分かるか?」

「私としては是非戦闘訓練を受け持ちたい。」


「今月は魔力に関しての授業が中心ですよ。

俺達も気は進まないんですけど、でも無学な訳にもいかないし。」





「そうか、魔力に関しての………ふん。

なら私が一時的に別単位を開けないか、校長に提案してみよう。」

「お前達にその気があるなら、顔を見せればいい。」


「「「「面白そう。」」」」


「ふ、出来ればだが。」

「では、な。」







そうして昼休みが終わり、その日の残り授業も淡々と消化していき。

各々が特定の人物と顔を合わせて家や寮に帰る。


その、翌日。

思っているより早く、事は進展する。

















《ーーーー校長です。

急遽11月からの授業に、戦闘訓練を追加する事にします。》

《新任の先生からの要望でもあり、実際学院側でも考えていた案ですので採用する事にしました。》


《実践に近い戦闘になる為、腕に自信のない生徒は引き続き魔力に関しての授業を受けてください。》

《自身のある者は、校庭の中央に出て一時限目を待機する様に。》







そんなアナウンスが流れる。


ブレイド達4人組、それに付随する女子2名。

ガトレット達4名も勿論、この放送に意識を持っていかれる。

 現在時刻は午前7時頃であり、早朝から食堂に集まり皆がご飯を頂いている時間だ。


その空気を壊す様、急すぎる予定変更。

しかし前日あの教師に会っていた4名はそれが現実になる事に高揚感を抱いていた。



そして一時限目から始まると言う事は、食事は早めに済ませて外に出ておく必要がある。

10名は急いで食事を頼み、大体同じ席に固まって朝食を食べ始めた。






ガトレットは、以前よりも更に体術の威力が向上した。

グラプロは筋力鍛錬に加え、重力魔力を更に1段階鍛え上げ。

デガーは当時クラスに瞬殺された時よりも電気魔力精度が上がり、簡単に敵に捕まらなくなった。


ナジャは加速魔力を生かした小口の攻撃に組み技を合わせる独特な立ち回りを伸ばし。

ソディアは放課後ブレイド達と行う練習で純粋に基礎を積み重ね。

ブレイズは熱魔力を以下に最小限で済ませるか、日夜研究していた。



無論ブレイド達4名も、手合わせを繰り返す事で単純ながら戦闘中の感覚を研ぎ澄ませていった。


その洗練された10名が先立って食事を終え。

緊張と期待に包まれた顔付きで外へ出て行く。















「ほうほう、10名か。」

「他にも来てはいるが、大した貫禄は無し。」


「宜しくな、白髪の先生。

えーっと、エイラ先生。」


「うむ、では黒髪のお前からだ。」




「え、もう始まるのか?

まだ7時50分位だけど……?」


「馬鹿者が。

ただ指名しただけだ、あまり急ぐな。」


「あっ…………すいません。」







ガトレット達から笑い声が上がる。

うるせえこの野郎、勘違いするだろあの覇気は。


始まるのは、果たして訓練と呼べる物なのか。

開始は数分後、その時を待つ。

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