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英雄までの物語  作者: ノンプロット
一年期七月下旬〜 反英雄
105/113

百二話 後日

百二話






10月30日に繰り広げられた大英雄と堕天使の戦闘を記録した映像。

これを朝7時に到着した永澤へと渡すと、急ぎでバルト王国に帰還させた。

 現在魔素を完全に閉じ込めているルシファーの存在は明かされておらず、永澤も素直に帰ってくれた。
















「ーーーーなんと。」

「流石は巳浦………昔よりも強くなっていますね。」


「うん。

やっぱりあいつの攻撃って範囲が広いから街中だと人目に晒されるよね。」

「そんなのお構いなしにskill振り回してるけど。」


「そんな事今更気にしても遅いですから。」

「それにしてもルシファー、やはり大英雄の名に釣られて来たんですね。」


「他の国に行かないのは何でなのか疑問だったけど、どうせ戦うなら1番強そうな奴が良いって話かな。」

「脳筋だね、この大男。」


「ええ。」

「ですが結果的に巳浦のお陰で撃退も出来ましたし、この映像は英雄達が仮に堕天使と対峙した際の対策にも使えます。」

「有り難く配布させて頂きましょう。」








そうして現在同盟を結んでいる各国へ松薔薇と永澤が直々に足を運び。

東2国、西1国、南1国、北2国(実質1国)

北東2国、南東2国、南西飛ばして北西3国。


各方向へ永澤と松薔薇が別々に動き。

永澤は1時間弱で一国を渡り、松薔薇は1時間と23分少しで一国を渡る。


移動の遅めな松薔薇は東二つへ向かいながら南東へ向かい帰る手前で南に寄り合計5国。

7時間ほど掛けて完遂。

 比較的移動の早い永澤は北東へ向かいつつ北も回り、北西遠方に足を進めながら帰り際西へ入り合わせて8国。

 急作業でその日中に終わらせ7時間30分程。



午後4時過ぎ。

ギルド2階で疲労に襲われる2名だが、やる事はやっただろう。

















ダイエン共和国。

午後4時現在、A地区中央の本館左談話室。


現在プライモ管理の元マリウェルが住み着いている部屋。


先刻、ここへ永澤と名乗る人物が訪れた。

プライモは彼の事を知っていた様だが、息も絶え絶えに何かを渡したかと思えば直ぐに飛び去ってしまった。

 忙しいようだ。





マリウェルは部屋のベッドに寝転がりながらその映像を記録してある水晶を何度も再生していた。


(片方の黒い男、天使。)

(もう片方の黒い男は、人間。)


そんな、本来戦闘として成り立たない筈の組み合わせが何故成立しているのか。

 類稀な魔力総量、異常なまでに冷静な精神。

異なる性質を持つ多彩な武器、強烈なskill。



何度見ても、自分がその場で危機に晒されていると錯覚するほどの緊張感。

面白い、面白い。





そうして見直し続けている映像を、偶々外出していたプライモが目視した。


誰が戦っているのか理解出来なかったが、暫し見ているとどちらも知った人物である事に気付く。



自身が活発に動いていた人類初期の1世紀頃。

その当時から、どうしても引き分けで終わってしまう大男。

黒い鎧を身に纏う天使、ルシファー。


自身の眠りを起こす強者が居た21世紀。

人生で初めて同じ人間に傷を負わされた。

その張本人であり親友、巳浦。


その両者の死闘。

自分もベッドに座り、一緒になって映像を見る。



ーーーー。

ーー。







「堅いな、やっぱり。

……………でも、彼奴の攻撃は1発も当たらない。」


「………凄いな、この男。」

「何者?」


「あれ、知らないの。

大英雄、僕の親友。」


「そうか………この男が。」

「うむ……裏天使の武闘派と同等程度、強い。」


「さぁて、それはどうだろう。

巳浦は結局、一度もthird skillを使ってない。」


「third skill?………どんな力だ。」





「端的に言えば、絶対に攻撃を避けるskill。

だから頑張って届いたと思っても当たらない、おまけに本人の反応速度も早いからそもそも自力で殆ど避けちゃうしね。」


「そうか、それは恐ろしい。

能力に恵まれているのだな。」


「能力の才能と戦闘の才能、どっちも最高だよ。」

「本人的にはthird skillは使いたくないんだけど。

よっぽど狡い能力って自覚が有るんだろうね。」


「ふふ、面白い人間だ。」


「はは、そうだよね。」









そんな会話をしていると、不意に背後から気配を感じた。

その状態をマリウェルは知っており、いつ振りかの再会に右手を小さく振る。


プライモが後ろを見ると、青い司祭服を身に付けた白髪の誰かが居た。

以前ロウスがエラウェルへ仕掛けた《血の契り》を1発で解除した裏天使。



反応するより先に能力を行使したかと思えば、マリウェルの肉体から赤黒い魔素が霧散する。

ーーーー《血の契り》が、解かれた。







「…………マリウェル、迎えに来ました。」


「……そうか。」

「だが、私はここから動かない。」


「…………何を、言っているんですか?

今を逃せばどうなるか、解っているのですか。」





「そっか、考えが変わったんだねマリウェル。」

「僕の思った通り、人間社会を気に入ってくれたみたいだ。」


「そう、なのか?

私は…………」


「毒されたのですかマリウェル………?

それは良くないです、無理矢理連れ去ります。」


「放っておいて、貰いたい。

私は、人の描く未来をこの目で見たいのだ。」

「裏界の様に不変の世界など、つまらない。」


「なっ。」








そうこうしていると、ラミウェルは何処かへと消え行く。

そして去り際、一言だけ言葉を残す。


それは、プライモからしても聞き捨てならない内容であった。








「………考え直してくださいね。

もう、この表界の均衡は崩れ始めています。」

「ヴァンデル遺跡地下にて、冥界の魔物と魔王凛堂が戦闘した際の映像を記録した水晶を確認しました。」


「冥界……………それ、本当かい?」

「まずいよ、冥界と地獄界は繋がっちゃ駄目だ。」


「だから言ったでしょう。

反英雄も英雄も、数が多過ぎるんです。」

「この表界に収まり切らない魔素が、目に見えない別次元、つまり冥界門と地獄界門へ流れ込んでいるのです。」


「ーーーーやはり、か。

私も以前忠告した筈だ、原初。」


「ん…………世界の均衡どうこうって話か。」

「へぇ、こんな事態初めて………じゃないな。」








冥獄崩壊記。

22世紀に起きた冥界と地獄界の異変を、天使と魔王が直々に解決した事がある。


その異変とは簡単に言えば均衡の崩壊。

本来人間界に湧いては行けない上級系統の魔物が目撃され始めた。

 その原因、21世紀に起きた騒動(大魔戦記、黒魔暗記)による魔素溢れ。


何なら21世紀後半の領土侵魔記時代の大量繁殖した魔物達がその予兆であったのだが、一旦殲滅した事で人類も勘違いしていたのだ。

 そして、人間では手に負えない事案である事から表天使代表のサキエルと魔王代表のガイダルが協力して冥界と地獄界の魔物達を鎮圧した。



その二の舞が、また起きようとしている。

それは、意思も召還を止めようとする筈だよ。







「とはいえ、意思の気紛れで消そうとした表界が想定より揺らいだから、自分の手下に当たる裏天使達を派遣し反英雄達を帰還させて均衡を戻そうって。」

「案外適当なんだね、意思はさ。」


「…………そこが、主の岐路なのです。」

「今主は、私達裏天使を駒に表界の英雄と反英雄を帰還させるつもりです。」

「そしてそれとは別に、大英雄巳浦を原初と同じく300lvまで鍛えて自らを殺害させようと考えているのです………私はどうすれば。」


「巳浦がそんな状況に。

もしそうなったら本当の人類最強になるだろうね。」






「今を機に申しておきます。

現状、裏天使達による英雄、反英雄の帰還。」

「大英雄巳浦による意思殺害。」


「この二つが進行しています。」

「前者が通れば、此度の召還騒ぎも二度と起きません。」

「後者が通れば…………凡ゆる世界に自由が齎される。」


「そんな事、絶対にさせません。」

「ですからマリウェル、帰って来てください。」




「……………危険な状況、なのだな。」

「原初、私はどうしたらいいのだ。」


「さぁ。

僕からはもう君に対して何もする気は無いよ。」

「自分で決めな。」


「ーーーーー私は。」







部屋を後にして何処かへと向かうプライモ。

その間、マリウェルは苦悩していた。


自分は、これからどちら側に付くべきなのか。

同じ裏天使達の元か、愛してしまった人間達か。


直ぐに決められる話ではない。
















ラミウェルによって解除された bloodskillの一件はレイブン本人にも伝わっており、別館の2階寮から急ぎで駆け付けて問い正す。


マリウェルは全くの無抵抗であり、適当な条件を付けて再度ロウスの手により魔力を封印された。

だが初期に比べて考えが変わったのだろう、どこか安心した顔に見える。



そしてマリウェルが付く側は、人間側となった。


それにより今後どうなるのかは分からないが、上から見下げるのではなく同じ地上で歩みたいと思ったのだ。

それだけの可能性を、人間達から感じた。


マリウェルはただ、より意義のある行動を取ろうしているだけであった。

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