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お茶
わたしたちが建物に入ると、チリーがお茶をいれてくれていた。
「リオンさん、アスカさん、お茶です、どうぞ!」
チリーにお礼を言ってお茶を飲む。
なんだか懐かしい味で、とてもおいしかった。地球では、自分でいれるのが面倒で、のどが渇いたら水道水をコップにくんで飲んでいたので、温かいお茶は久しぶりだ。
チリーが代わる代わるわたしたちを見ているので
「おいしいよ」
と言う。
「ねえねえ、茶柱、立ってるでしょ?ぼくがいれたんですよ、何かいいことがありますね!」
チリーは満面の笑みでそういった。あわててカップを見る。わたしのカップには茶柱は立っていない。それどころか、そもそも茶柱なんてない。
リオンも同じだったようで、
「これ、わざといれたの?でも倒れてるよ」
「・・・」
「わたし、飲んじゃったみたい」
「・・・!」
チリーがびっくりした顔でわたしたちのカップをのぞく。
「・・・!!」
チリーのびっくりした顔が、すごくびっくりした顔になった。
「ぼくがいれたときは立ってたんですよ!」
わたしはリオンと顔を見合わせ、笑った。
皆さん、茶柱は偶然か立つといいことがあるものです。