宇宙へ
いよいよ出発です。
「しばらく地球を離れることになるけど、もう出発していい?」
ロケットに乗り込んでしばらくすると、リオンが尋ねてきた。わたしが心を決めるのを待っていてくれたらしい。リオンは、すごくやさしい人だ。チリーがいばりたくなるのもわかる気がする。
わたしがいいよと言うと、リオンがチリーを呼んだ。
「チリー、はじめるよ。」
「はぁい」
「エネルギー、よし!」
「食糧、よぉし!」
「安全、よし!」
「元気も、よぉし!」
「お客さん、よし!」
ふたりが指を指しながら確認していく。最後にふたりで、
「点検、よし!」
と言うと、リオンが指を鳴らした。
しばらくして、窓から外を見ると、地球が小さくなっていた。
「うそっ!?もう出発してたの?」
「うん。さっきぼくが、指を鳴らしたでしょう?」
信じられないほど、揺れない。それに静かだ。
「すごいでしょう。リオンさんが設計したんですよ。」
チリーがさっきと同じことを言っている。見ると目をつむっているので、何を考えているのだろうと思っていたら、リオンが
「チリーは寝てるだけだよ」
と言った。
ぱっと、目が覚めた。辺りを見回し、ロケットの中だったと気づく。いつの間にか眠っていたようだ。チリーもまだ寝ている。リオンは、と探していると、
「アスカ」
と、後ろから声がした。リオンだ。リオンは窓から外を見ていた。わたしがとなりに立つと、
「あれ、見て。」
と、外を指差した。見ると、そこにはたくさんの大きな宇宙船があった。
宇宙船は、爆弾を投げ合っている。戦争だ。
「地球の宇宙船と火星の宇宙船だね」
「そうだね」
どちらの宇宙船にも、わたしやリオンと同じ、人間が乗ってるのだと思うと、怖くなった。
リオンは、ぼんやりと、それでも目を離さずに、激しく動く宇宙船を見つめていた。
読んでくださってありがとうございました。次は、月に着きます。